海老江駅~御幣島駅(概説) - JR東西線(21)

JR東西線 前人未到の深さで大阪中心部を貫いた地下鉄道のすべて
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■淀川シールド 6km105m~8km430m(L=2325m)
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 57~59・223~248ページ・断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ

●概説

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海老江駅を出るとJR東西線は引き続き国道2号線の地下をシールドトンネル2本で北西に向かって進む。この区間は「淀川シールド」という名称で、施工は鉄建公団が担当している。線形は平面方向が海老江駅側から順に半径2000m、半径430m、半径254mのカーブが入るが、区間の1/3が淀川の地下を横断していることもあり直線が主体となっている。なお、JR東西線よりも前に建設された道路・鉄道は全て淀川と橋梁で交差しており、JR東西線は史上初めて淀川を地下で渡河した構造物となった。一方、縦方向は淀川横断時に直上に位置する淀川大橋基礎との離隔を確保するため、海老江駅を出た直後から34パーミルの急勾配で地下40mの深さまで下り、淀川直下に入った後は姫里換気所まで4.6パーミル、2.3パーミルの下り勾配、姫里換気所から御幣島(みてじま)駅の直前までは33.5パーミルの上り勾配となっている。なお、海老江駅から御幣島駅の手前(国道2号線歌島橋交差点付近)までは引き続き建設省施工の共同溝トンネルと並走する。
淀川シールドが通過する地下9~41m付近は地質が硬度の異なる沖積層・洪積層から成っており、シールドマシンのカッタービットの耐久性、洪積層中にある最大圧力4kg/cm2に及ぶ被圧地下水の処理が課題となった。また、ルート上には共同溝の立坑淀川堤防など重要構造物が多数存在しているが、中でも淀川横断中に上部に位置する淀川大橋1926(大正15)年に完成した大変古い橋で、河道内の橋脚は一応井筒基礎にはなっていたものの、老朽化によるコンクリートの肌落ち・クラックは相当量生じており、シールド掘進中のわずかな沈下も許されない厳しい施工条件となった。さらに、淀川シールドの発進立坑は海老江駅の開削部分となっていのたが、肝心のこの部分の完成が出水事故の影響で大幅に遅れたため、工区長が最長であるにもかかわらずシールド発進がJR東西線の全工区の中で最後になってしまい、高速施工が要求された。

淀川シールドと淀川大橋の関係
淀川シールドと淀川大橋の関係
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このうち、シールドマシンの安定性については安定性に優れた泥水加圧式シールドを採用するとともに、地質の変化に即応できるよう泥水圧と排泥流量の非干渉制御、掘進ジャッキの伸張に先取りして泥水圧を制御するフィードフォワード制御などシールドマシンの運転方法の改良を行った。また、長距離掘進とカッタービットの磨耗対策として従来の固定式のカッタービットに加え、回転式のローラービットを追加したり、チャンバー・排泥管の閉塞対策としてウォータージェットによる洗浄装置などを配置した。これらの対策により、淀川シールドでは1ヶ月あたり321mという高速掘進を達成した。なお、淀川の下を横断することからトンネルのセグメントは防水シールを二重にしているほか、海老江・御幣島両駅との境には防水扉を設置している。(工事中はセグメントに突起を設けてそこに仮設の防水扉を設置した。)
一方、ルート上に存在する淀川堤防と淀川大橋については管轄する建設省から沈下量を10mm以内に収めるよう要請されたため、後者については橋脚のクラックの補修と橋桁への補強材の追加を行った。実際の沈下量は堤防がシールド直上で10~15mmを観測したものの、全体的には3~4mmにとどまり、淀川大橋についても沈下量は3~7mmに収まり、おおむね当初の想定どおりの範囲に収まった。なお、淀川シールド掘進中の1995(平成7)年1月17日には阪神・淡路大震災が発生したが、淀川シールドの工事には大きな影響は無く、数日後に工事を再開している。淀川大橋の補強は設計時には不要と考えられていたが、補強を行っていなかった場合、震災での被害は免れなかったものと見られており、「念のため」の対策が有効に機能した事例となった。

●現地写真
→姫里換気所と合わせて次の記事で解説予定。

▼脚注
※OP:大阪湾最低潮位。OP=TP(東京湾平均海面)+1.3mの関係がある。

▼参考
鉄道・運輸機構 | 鉄道の建設 | これまでの実績 | 鉄道建設技術 | 土木 | トンネル

■姫里換気所 7km520m
▼参考
JR東西線(片福連絡線)工事誌 - 日本鉄道建設公団1998年 253~260ページ・断面図
特集「平成9年開業新線」Ⅱ.JR東西線(片福連絡線) - 日本鉄道施設協会誌1997年7月号13~24ページ

●概説

より大きな地図で JR東西線(片福連絡線)詳細版 を表示

姫里換気所は淀川シールドのほぼ中央地点、国道2号線の野里交差点の南東に設けられた立坑で、淀川シールドの排水と換気(排気)を行う。また、当立坑は淀川の対岸から淀川シールドの上下線間を並走してきた建設省施工の共同溝シールドトンネルの到達立坑も兼用している。

姫里換気所の断面図(左)と平面図(右)
姫里換気所の断面図(左)と平面図(右) ※クリックで拡大

姫里換気所付近の軌道深さはJR東西線全線の中で最深となる地下42mで、軌道よりも深い位置に淀川シールド本体からの排水を受ける貯水槽を持つことから延べ10層、地下48m(地中連続壁は地下54.5m)に及ぶ巨大な構造物となっている。立坑は線路方向に大きく分けて3つに分割されており、京橋方が建設省共同溝シールドの到達立坑(シールドは地下7・8階に取り付く)、中央がJR東西線の姫里換気所のダクト部分、尼崎方が建設省共同溝の立ち上がり部分(地下7・8階から地下2階)となっている。また、当立坑は半径430mのカーブ上に位置しているため、立坑本体もそれに合わせてカーブしている。淀川シールドと立坑の連結部分はJR東西線のほかの換気所と同様、周囲の土砂を凍らせて崩壊を防止しながら掘削する凍結工法が使用された。深度が大きいことから、凍土の厚さは1.6mとやや大きめにとられた。

●現地写真
→次回解説予定

(つづく)
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