東京メトロ東西線15000系

試運転でJR総武線津田沼駅に乗り入れた東京メトロ15000系。普段は入らない4番線に停車中。2010年9月8日撮影

久しぶりの民鉄車両についての記事となります。
昨年春から東京メトロ東西線に新型車両15000系が導入されました。このたび、当初の予定本数である13編成の新製が完了し、調査を行うことができましたので車両の概要についてお伝えしたいと思います。

■東京メトロ東西線の激しい混雑とその対策


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東京メトロ東西線は東京都のJR中央線中野駅から都心部を貫通し、千葉県のJR総武線の西船橋まで至る全長30.8kmの地下鉄線です。中野駅からはJR中央線各駅停車の三鷹駅まで、西船橋駅からはJR総武線各駅停車の津田沼駅とと東葉高速鉄道の東葉勝田台駅までそれぞれ相互乗り入れを行っています。この東西線は東京都心内で完結する利用の他に、都心と東京・千葉の両都県の郊外を結ぶ通勤路線としての性格を持ち合わせており、朝夕のラッシュ時には激しく混雑します。特に、距離が長い千葉県側の混雑率は国内の民鉄では1位となる197%(木場→門前仲町、2009年)と際立って高く、駅での乗降に時間がかかることから朝ラッシュ時を中心に列車の遅延が常態化しています。東西線では民営化前の営団地下鉄時代から

●浦安以西各駅停車の「通勤快速」の新設(列車ごとの混雑を平準化)
●ワイドドア車(05系)の導入
●CS-ATC化による運転間隔の短縮(最短2分)


といった混雑緩和対策がなされてきました。

1991(平成3)年から導入された05系ワイドドア車。1両目の1つ目と2つ目ドアの幅に注目。 :WS-ATC(地上信号)からCS-ATC(車内信号)に変わり消灯した西船橋駅構内の信号機(現在は撤去)。
左:1991(平成3)年から導入された05系ワイドドア車。1両目の1つ目と2つ目ドアの幅に注目。2006年8月31日、津田沼駅で撮影。
右:WS-ATC(地上信号)からCS-ATC(車内信号)に変わり消灯した西船橋駅構内の信号機(現在は撤去)。2007年5月4日撮影

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しかし、沿線での宅地開発の進展により2000年代後半に入るとこれらの対策にも限界が見え始めたことから、東京メトロでは東西線のさらなる混雑緩和対策を検討しました。その結果決まったのが

●ワイドドア車(15000系)の増導入
●南砂町駅の2面3線化(交互発着による線路容量の増大。2018年度以降完成予定)
●門前仲町駅のホーム拡幅(2013年度完成予定)
●茅場町駅のホーム延長・拡幅(東西線ホーム40m延長・停車位置を変更・日比谷線ホーム拡幅。2016年度完成予定)


といった対策です。特に南砂町・門前仲町・茅場町の3駅の改良工事は総工費400億円以上と見られており、まさに東京地下鉄全社を挙げた一大プロジェクトといっても過言ではありません。また、今回お伝えするワイドドア車両15000系の導入は短期間でできる対策であったことや、折しも1980年代に導入した05系初期車(1~4次車)が更新時期を迎えたことから、他の対策に先駆けて完了させることになったものです。

▼参考
平成23年度(第8期)事業計画 - 東京地下鉄株式会社(PDF)
路線別のラッシュ時における混雑率の推移/千葉県

■15000系の概要

15000系は05系の最終増備車である13次車がベースとなっています。このため、当初は車両形式も「05系14次車」という扱いで計画がなされていましたが、に、有楽町線・副都心線用として製造された10000系の最新技術を取り入れたため、各所で大幅に仕様が変更されており「15000系」という新形式が起こされました。具体的な仕様の変更点は以下の通りです。

1、車体関係

15000系 05N系
左が15000系(2010年9月8日、津田沼駅で撮影)、右が05N系(2006年5月1日、西船橋駅で撮影)
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●前面デザインの変更
前面の基本形状は05系(05系8次車以降、通称05N系)とほとんど同じだが、ライトの配置を変更するとともに全体をブラックとし、角の部分に丸みを持たせたことにより従来とは全く違う見た目となっている。

●側面デザインの変更
車体側面は窓下に加え、雨どい部分にもラインを引き、10000系に近いデザインとなった。また、窓下のラインはドア部分を濃い色に変えることでワイドドア車であることを強調している。

幅が1300mmから1800mmに拡大された乗降扉。 乗務員室直後もワイドドア。
左:幅が1300mmから1800mmに拡大された乗降扉。2011年8月12日、津田沼駅で撮影
右:乗務員室直後もワイドドア。2010年9月8日、津田沼駅で撮影

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●ワイドドアの採用
駅での乗降時間短縮のため、乗降扉の幅を従来の1300mmから1800mmに拡大した。05系では先頭車の乗務員室直後のドアのみが1300mm幅となっていたが、15000系では先頭車の全長を250mm延長し、第1扉と第2扉の間を座席1名分短縮して全ての扉を1800mm幅とした。(従って、この座席は5人掛けとなる。乗り入れ先のJR東日本E231系と同じ考え方。)
なお、当初は日比谷線03系のような多扉車(4つよりも多い扉がある車両)の導入も検討されたが、東西線は階段の位置がまちまちで効果を得るには10両編成のうち7両程度を多扉車にせざるを得ず、着席定員の大幅な減少によるサービス低下が懸念されたことや編成内に従来の4ドア車が存在するとその車両で乗降時間が延びて結局遅延が発生すると判断されたことからワイドドア車に決定した。

●車体強度向上・材質の変更
車体は日立製作所の「A-Train」の設計を利用しており、アルミ合金製で摩擦撹拌溶接(FSW)※1を採用し、歪みが少ない車体となっている。ワイドドア化により開口部面積が増えたことから、車体剛性向上のため車体外板の板厚を増加させているほか、オフセット衝突対策として車体隅部の柱を強化している。また、車体の材質はこれまで必要な性能に応じて数種類のアルミを組み合わせていたが、リサイクル性に難があったため、6N材(6000番台のアルミ合金※2)に統一した。

▼脚注
※1 摩擦撹拌溶接(FSW):溶接部分に回転する器具を押し当てて部材同士を溶融・練り混ぜることにより溶接を行う方法。
※2 6000番台アルミ合金:アルミニウムにマグネシウムとシリコンを添加したもの。

▼参考
鉄道車両のFSW(摩擦かくはん接合)技術 - 日本機械学会誌2009年3月号(PDF)

2、内装・旅客案内機器関係

15000系の車内 各ドアの上に設置されている液晶モニター
左:15000系の車内
右:各ドアの上に設置されている液晶モニター。2枚とも2011年8月12日、津田沼駅で撮影

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●車内全般
車内の配色はグレーを基調としており車端部は木目調となっている。床や壁が若干暗めの配色となったものの、ドア間の窓は戸袋部分にも設置され3枚となったことから、昼の地上区間では外光か十分に入るためさほど暗い印象は感じられない。なお、3枚ある窓のうちの中央は開閉可能となっている。一方、座席は一般席が濃い青色、優先席が水色で、1人当たりの座席幅は460mm、着席定員は一般席が6名(先頭車第1扉~第2扉間のみ5名)、車端部が2名となっている。また、2号車と9号車の車端部には車いすスペースが設けられている。

●荷物棚・つり革の高さ変更
背の低い利用者にも配慮し、これまでは全て床面から1800mmだった荷物棚の高さを車端部は1700mm、一般部は1750mmに低くした。また、車端部のつり革の高さも1660mmから1580mmに低くした。なお、荷物棚は10000系とは異なり、従来と同じ網を使用している。

●ドア上部の案内表示器
ドア上部の案内表示器は05系までの3色LEDに代わり、液晶ディスプレイ2台を設置している。画面のサイズは10000系よりも大きい17インチのワイドモニター(アスペクト比16:9)となっており、画質も向上した。左側は動画広告、右側は次駅名、乗り換え案内、階段の位置などを表示する。このモニターは自動放送とともに乗り入れ先の路線内でも動作する。

車体側面の行先表示。路線名と行先を交互に表示する。 車体側面の行先表示。路線名と行先を交互に表示する。
車体側面の行先表示。路線名と行先を交互に表示する。2枚とも2011年8月12日、津田沼駅で撮影
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●前面・側面行先表示
車両の前面と側面の行先表示はフルカラーLEDを採用し、視認性の向上と表示内容の充実を図っている。側面の行先表示は乗り入れ先のJR東日本E231系と同様、路線名と行先を一定時間ごとに交互に表示する。

3、走行機器・運転機器関係

15000系のボルスタ台車(FS778形) 15000系の運転台。
左:15000系のボルスタ台車(FS778形)。2010年9月8日、津田沼駅で撮影
右:15000系の運転台。2011年8月12日、津田沼駅で撮影

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●台車
東西線は半径600m以下の急曲線区間が全体の3割を超えるため、曲線での走行安定性が重要となる。このため、15000系では10000系と同様調整が難しいボルスタレス台車ではなく、従来のボルスタ台車を採用し、改良型の差圧弁・高さ調整装置を併用することで急曲線での輪重変動を抑えて、走行安定性を向上している。

●主回路関係
15000系のMT比は05系13次車と同じ5M5Tだが、モーターの出力を165kWから225kWへ大幅にアップし、ギア比も従来の6.21から7.79と低速重視にすることで常に効率の良い出力帯で使用できるようにした。(ただし、回転数が上がったことから高速走行時は騒音が生じやすい。)また、モーターや制御装置に使用する材料も電気抵抗が少ない素材(主に銅)に変更することで効率をアップと省エネルギー化を実現した。

●その他機器
このほかの搭載品(補助電源、パンタグラフ、ブレーキなど)の仕様は05系のものを踏襲している。運転機器も05系と仕様をあわせており、TIS(情報管理装置)や自社線と乗り入れ先双方に対応した保安装置(CS-ATCとJRのATS-Pを搭載)もすでに05系で信頼性を確立しているものをそのまま採用している。

■営業運転開始以降

この15000系は2010(平成22)年2月に試運転を開始し、5月から営業運転を開始しました。当初は東京メトロ東西線内のみでの運行となっていましたが、同年秋までに乗り入れ先であるJR東日本・東葉高速鉄道での乗務員訓練が完了したことから、現在は乗り入れ先を含めた全区間で見ることができます。特に当初の目的であった平日のラッシュ時の運用には05系のワイドドア車(14~18編成)とともに重点的に投入されており、平日の朝夕のみ東西線直通列車が乗り入れるJR総武線の津田沼駅にも頻繁に姿を現すなどその性能を遺憾なく発揮しています。
営業運転開始以降も増備は続けられ、去る2011(平成23)年7月末には最終編成が完成し、予定数である13編成130両が出揃いました。これにより、05系の初期車(高周波分巻チョッパ制御の1~4次車)は一部が廃車となyています。廃車となり搬出された車両のうち一部は、海外(インドネシア)に譲渡されています。

▼参考
東京地下鉄15000系 - 交友社「鉄道ファン」2010年8月号(通巻592号)
東西線15000系|東京メトロ

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