新橋駅改良工事(2011年3月26日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2011年08月21日18:37
テレビ番組のインタビューでお馴染み新橋駅SL広場

JR新橋駅では現在、高架下のコンコース拡張やバリアフリー化など駅施設の改良工事が進められています。今回は鉄道関係の専門雑誌の記事と現地の調査をもとにこの改良工事について解説いたします。

■新橋駅の現状と改良工事の概要


新橋駅は山手線・京浜東北線・東海道線・横須賀線の4つのJR線に加え、東京メトロ銀座線・都営浅草線・新交通ゆりかもめの3つの他社線が乗り入れる都内でも重要な交通の要衝となっています。また、駅の南側には2000年代初めに整備された汐留シオサイトのオフィス街があり、1日当たりの利用者数はJR東日本全体で第7位の244916人(2010年度)となっています。駅の構造は山手線・京浜東北線・東海道線が高架橋の島式ホーム3面6線、横須賀線が地下の1面2線となっています。このうち、山手線・京浜東北線の高架橋は築100年を超えるレンガアーチ高架橋となっています。新橋駅はこれまで利用者の増加に伴い増築を繰り返してきた経緯から、現状では以下のような問題が発生しています。


1、コンコースが狭い
新橋駅の地上の改札口は駅の両端に計3か所(日比谷口・銀座口・烏森口)あるが、いずれも高架下のごく一部のスペースのみを利用していることから面積が狭く、混雑が発生している。しかし、中央部は業務施設や店舗として利用されているうえ、レンガアーチ高架橋であるためもともと内空断面が小さく、コンコースとして使用するには無理がある。

2、バリアフリー施設が未整備
地上・地下にある4つのホームはいずれもエレベータが未整備であり、車いすでの利用が困難である。また、地上の銀座口・日比谷口側からホームに上がる階段は各ホーム1箇所しかなく、エスカレータの追加が困難である。

3、高架橋の耐震補強が未整備
山手・京浜東北線のレンガアーチ高架橋と東海道線の鉄筋コンクリート高架橋はともに戦前に建設された大変古い構造物であるが、耐震補強がいまだに未施工である。しかし、前述の通り高架下は店舗や駅施設として利用されていることや内部の空間が狭いことから耐震補強の施工が難しく、今まで先送りされていた。

4、東海道線ホームの混雑
東海道線ホームの階段は全部で3か所しかなく、朝夕のラッシュ時には慢性的に乗降客の「渋滞」が発生している。2013(平成25)年に東北縦貫線が開業すると、夕方ラッシュ時は現在の横浜方面(東海道線)に加え上野方面(高崎・宇都宮・常磐線)の列車を待つ利用者もホーム上に並ぶようになるため、深刻な容量不足になることが懸念される。

これらの問題解決のため、新橋駅では以下のような改良工事を行うこととなりました。

新橋駅の改良部分
新橋駅の改良部分
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1、レンガアーチ高架橋を鉄筋コンクリート高架橋に改築・耐震補強
山手線(内・外回り)・京浜東北線(南行)のレンガアーチ高架橋のうち駅中央部分については取り壊し、鉄筋コンクリート高架橋に改築する。これにより、柱間隔が広がり、高架下の空間を有効に利用できるようになる。また、改築を行わない東海道線の鉄筋コンクリート高架橋は柱に鉄板を巻き京浜東北線(北行)のレンガアーチ高架橋は内面にコンクリートを巻き立てることによりそれぞれ耐震補強を行う。これにより、日比谷口SL広場に面したレンガアーチ高架橋はそのまま保存され、駅の機能向上と歴史的価値を後世に伝えることの両立が可能となる。
なお、高架橋の改築は列車を運行しながら行うため、以下のような手順で進める計画となっている。

高架橋改築の手順
高架橋改築の手順
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1、レンガアーチ高架橋の上に工事桁を敷き、アーチ部分に仮設の柱を取り付ける。
2、工事桁と仮設の柱で線路を支えながらレンガアーチを解体する。
3、工事桁の周囲にコンクリートを追加して本設桁として完成させる。(このため、工事桁は完成後の構造物の一部となる)


2、コンコースの拡張と階段の移設・増設・バリアフリー化
改築された高架下の空間を利用して南北に分かれている改札内コンコースを連結する。連結されたコンコース部分を利用してホームへあがるエレベータを新設するほか、銀座・日比谷口側にある階段をすべて移設し、銀座口・日比谷口の改札口統合とあわせてコンコースの拡張を行う。また、東海道線ホームについてはこれに加えて烏森口側の階段・エスカレータ1箇所の移設と階段・エスカレータを1箇所ずつ増設し、混雑緩和を図る。

3、東海道線ホームの拡幅
今後東北縦貫線が乗り入れる東海道線ホームのうち、上り線中央部110mの線路を移設することによりホーム幅を最大で0.7m拡幅し、階段の移設・増設と合わせてホームの混雑緩和を図る。0.7mという幅は交差する道路の橋桁(東京寄りの二葉橋Bv(外堀通り)・烏森橋Bv(品川よりの烏森口改札外コンコース))を移設しないで済むギリギリの寸法ということで決定されたものである。

このほか、地下の横須賀線ホームについてもエレベータが全く整備されていない(現在あるのは業務用のエレベータで一般利用にはJR社員の付添が必要である)ため、こちらについても地上~地下1階と地下1階~地下5階ホームのエレベータが整備される予定となっています。工事に必要な作業スペースは駅周辺に全く利用可能な空間が無いことからやむを得ず高架下の店舗を退去させて行うこととなっており、順次店舗のオーナーと退去に関する交渉が行われています。なお、現在の計画ではコンコースの拡張は駅の中央~東京寄りをメインに行うこととなっていますが、資料では残りの部分についても「継続して検討するエリア」となっており、状況次第では追加で改良工事が行われる可能性もあります。

■現在の状況(2011年3月26日取材)

今後高架橋が改築される山手線内・外回りの線路(4・5番線) 同じく高架橋が改築される京浜東北線南行(3番線)とホームが拡幅される東海道線上り線(2番線)
左:今後高架橋が改築される山手線内・外回りの線路(4・5番線)
右:同じく高架橋が改築される京浜東北線南行(3番線)とホームが拡幅される東海道線上り線(2番線)

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2011年3月の取材時点では高架下の店舗の退去作業が続いており、本格的な改良工事にはまだ着手していない状態でした。高架橋が改築される京浜東北線南行き(3番線)、外回り(4番線)、山手線内回り(5番線)の線路はいずれも幅広のPCまくらぎとロングレールを使用した省力化軌道となっていますが、このままでは工事の支障となるため、本格的な工事の開始時に仮設の軌道に交換されるものと思われます。
一方、ホームを拡幅する東海道線上り線はバラスト軌道となっています。ホームの拡幅量は最大で70cmであり、屋根も既に線路までを覆い被さるサイズで設置されていることから、ホーム拡幅にあたっては構造物の大きな手直しは不要であると考えられます。

銀座口改札口から改札内コンコースを見る コンコース内の店舗は退去済み
左:銀座口改札口から改札内コンコースを見る
右:コンコース内の店舗は退去済み

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今後レンガアーチ高架橋が改築される銀座口・日比谷口の改札内コンコースでは店舗の退去作業が行われており、跡地は仮設の白い壁で覆われていました。こちら側の改札内コンコースはレンガアーチ高架橋2連分の幅しかなく、天井の高さも低いことから、現状ではかなり狭く感じられることが写真からお分かりいただけると思います。今後は退去した店舗部分の高架橋が改築され、反対側の烏森口側のコンコースと接続されることになります。

烏森口側の改札内コンコース 横須賀線地下コンコース(汐留口改札)へ降りる階段
左:烏森口側の改札内コンコース
右:横須賀線地下コンコース(汐留口改札)へ降りる階段

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一方、烏森口側は今回訪問時点では特に目立った工事が行われていませんでした。今後は左写真の中央付近に見えるトイレを撤去し、その奥に向けてコンコースを拡張することになります。その左側の階段を上った部分は山手・京浜東北線ホームへ向かう階段で、現在のところ改良工事の対象外となっている部分となっていますが、「継続して検討するエリア」として扱われていることから近いうちに何らかの変化が起きる可能性もあります。
右の写真は地下1階の横須賀線コンコース(汐留口)へ降りる階段・エスカレータで、現状ではエレベータが設置されておらず車いすでの利用が困難な状態です。改良工事では写真左端に見える東海道線ホームへ向かう階段がさらに左側(東京方)移設に移設され、開いた空間(階段手前の現在は時刻表が貼ってある壁の部分)に横須賀線コンコースへ向かう階段が新設される計画となっています。


この新橋駅改良工事は手始めとして東北縦貫線が開業する2013(平成25)年度に南北のコンコースの一体化を完成させたのち、2016(平成28)年度までにエレベータ新設や階段の増設・移設などの工事を完成させる計画となっています。東北縦貫線の開業が見えてきた今、こういった目立たない部分の改良工事も着々と進められています。

▼参考
大川,坂本,山後 - 新橋駅改良計画 - 日本鉄道施設協会誌2011年3月号45~47ページ
東海道線新橋駅改良工事の着手について - JR東日本プレスリリース(PDF)

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