長浜鉄道スクエア - 関西旅行2010(21)

カテゴリ:遠征旅行記関西旅行2010 | 公開日:2011年09月20日20:57
北陸線電化記念館のD51形793号機とED70形1号機

昨年夏の関西旅行のレポートはまだ続きます。4日目(2010年8月26日)はまず宿泊地である京都から滋賀県の北陸本線長浜駅近くにある長浜鉄道スクエアに向かいました。

■北陸本線と長浜駅の歴史


北陸本線長浜駅は1882(明治15)年3月10日に開業しました。
ここから遡ること13年前の1869(明治2)年、明治維新で発足したばかりの新政府は日本の国の発展の骨格として、東京と大阪を結ぶ官営鉄道(現在の東海道線)を建設することを決定しました。また、日本海側と太平洋側を接続する観点から、枝線として琵琶湖沿岸を通り敦賀に到るルートも示され、2年後の1871(明治4)年には早くも長浜~敦賀間の測量が開始されます。その結果、現在の北陸本線と同じ米原~木之本~飯浦~塩津~敦賀のルートが基本路線として確定しました。しかし、国の予算が乏しいことからすぐにこのルートで鉄道を建設することは難しいとされ、1879(明治12)年には長浜から先を柳ヶ瀬経由で敦賀に到るルートに変更されました(現在の国道365号線に近いルート)。また、米原以西はまだ鉄道の建設工事が始まっていなかったことから、この区間については当面の間長浜港~大津港(現在の京阪浜大津駅付近)の琵琶湖に汽船を運航することで代替することとしました。長浜~敦賀間の工事は翌1880(明治13)年から開始され、2年後の1882(明治15)年には途中の柳ヶ瀬トンネルを除く区間が開通し、そのさらに2年後の1884(明治17)年には当時国内最長の1332mを誇る柳ヶ瀬トンネルが開通し、長浜~敦賀間が全通しました。また、長浜駅の開業にあわせて太湖汽船(現在の琵琶湖汽船(京阪グループ)の前身)による長浜港~大津港の連絡船運航も開始されました。2隻導入された蒸気船は国内最初の鉄船で、総トン数は500トン、定員350名、航行速度は14ノット(約26km/h)を誇りました。(当時はまだ帆船も多く残っていた。)これらの交通網の開設により、長浜駅は陸路と航路の一大中継地点として賑わうようになり、乗り継ぎ客を目当てに飲食店などの商業施設も急速に増加していきました。
その一方で、米原~長浜間と東海道線新橋~神戸間の工事も突貫工事で進められ、両者とも1889(明治22)年に完成を迎えました。これにより、長浜港~大津港の汽船も廃止され、長浜駅は陸路・航路の乗り継ぎ駅から太平洋側と日本海側を結ぶ鉄道の途中駅へと変化しました。

長浜駅に進入する683系する特急「しらさぎ」。湖西線開業により、北陸本線を経由する特急は大きく減少した。
長浜駅に進入する683系する特急「しらさぎ」。湖西線開業により、北陸本線を経由する特急は大きく減少した。

終戦後は急勾配が続く柳ヶ瀬トンネルを蒸気機関車牽引で通過していたことによる輸送力不足が問題となり、1957(昭和21)年に余呉~敦賀間が当初の計画されていた近江塩津経由の新線に付け替えられ、同時に田村~敦賀間の複線化と当時最新鋭の技術を駆使した交流2万ボルトによる電化が行われました。1974(昭和49)年、琵琶湖の対岸に湖西線が開業すると大阪駅を発着する北陸方面の特急列車の多くが同線経由に変更され、長浜駅は徐々に地方のローカル線の途中駅という性格を強めるようになり、街の空洞化が危惧されるようになりました。これを受けて滋賀県をはじめとする北陸本線の沿線自治体では、北陸線の電化方式を交流から直流に変更し東海道線を走る新快速を直通させることをJR西日本に要望します。これに応える形で1991(平成3)年に米原~長浜間の直流化を行い新快速の乗り入れが開始、あわせて東海道線京都~米原間と北陸線米原~長浜間に「琵琶湖線」の愛称が与えられ、両路線が一体的に運行されるようになりました。これに合わせて長浜市では駅付近にある古民家などを活用した観光拠点(黒壁スクエア)の整備を行い、結果として長浜を訪れる観光客は直流電化への転換前の2倍以上に増加し、街づくりに対し絶大な効果を発揮しました。その後、北陸本線の直流化は琵琶湖対岸の湖西線も巻き込んだ「琵琶湖環状線構想」へ発展し、2006(平成18)年には敦賀までの直流化が完成して、新快速も同駅まで延長され現在に至っています。

■長浜鉄道スクエア

この北陸本線と長浜駅の歴史を保存し後世に伝えるため、長浜駅の南側に設けられているのが今回訪問した「長浜鉄道スクエア」です。長浜鉄道スクエアは開業から1903(明治36)年まで使用されていた旧駅舎、2000(平成12)年に解説された長浜鉄道文化館、2003(平成15)年に開設された北陸線電化記念館の3つの施設により構成されています。

●旧長浜駅舎(鉄道記念物・滋賀県指定有形文化財)
長浜鉄道スクエアの入口、旧長浜駅舎。
長浜鉄道スクエアの入口、旧長浜駅舎。

長浜鉄道スクエアのエントランスとなっているのが長浜駅の旧駅舎です。旧長浜駅舎は1882(明治15)年の北陸本線開業に合わせて建設されたもので、設計者はイギリス人技師ホルサム、施工は神戸の稲葉弥助が請け負ったと記録されています。建物の大きさは東西24.5m、南北9.7m、木骨構造の石灰コンクリート造2階建てで、建物の四隅には花崗岩のブロック、窓枠・出入口の開口部周囲にはレンガがそれぞれ積まれています。この旧長浜駅舎は国内に現存する最古の駅舎であり、1958(昭和33)年には鉄道記念物に指定され、1983(昭和58)年から鉄道資料館として公開されています。さらに2005(平成17)年には滋賀県の有形文化財にも指定されています。

旧長浜駅舎1階出札出入口
旧長浜駅舎1階出札出入口(4枚合成・1000*266px) ※クリックで拡大
待合室 駅舎の前にある旧長浜駅ポイント
左:待合室
右:駅舎の前にある旧長浜駅ポイント
 ※クリックで拡大

旧長浜駅舎は1階に駅事務室と待合室、2階に北陸本線(当時は敦賀線)の管理を行っていた鉄道事業部門がありました。現在は1階のみが一般に公開されています。改札口・待合室には駅舎で使用されていた備品や当時の衣装をまとったマネキンが置かれており、駅舎だった頃の様子をしのぶことができます。また、駅舎前の庭には現在はルート変更で廃線となった柳ヶ瀬トンネルの扁額(トンネル坑口上部にある文字盤)や長浜駅開業時から1958(昭和33)年まで構内で使用されていた分岐器(ポイント)の一部(鉄道記念物・滋賀県登録有形文化財)が保存・展示されています。

●長浜鉄道文化館

左:長浜鉄道文化館2階から展示スペースを見下ろす。画面上のテラス部分にはNゲージが走る。
右:展示物の例
 ※クリックで拡大

長浜鉄道文化館は北陸本線や長浜駅に関する様々なコレクションを保存・展示する施設で、運営は静岡県の大井川鉄道で蒸気機関車の保存運行を行っている財団法人日本ナショナルトラストが行っています。館内2階のテラス部分には全長66mの鉄道模型(Nゲージ)が敷設されており、北陸本線を走行した車両(583系など)の模型が走行しています。

●北陸線電化記念館

北陸線電化記念館はかつて北陸本線の列車を牽引した蒸気機関車D51形793号機電気機関車ED70形1号機を保存・展示する施設です。

D51形793号機の外観 D51形793号機の運転台
D51形793号機の外観(左)と運転台(右) ※クリックで拡大 

蒸気機関車D51形793号機は1942(昭和17)年に三菱重工で製造され、東北線・東海道線・中央線・北陸線の各線を1970(昭和45)年まで走行しました。引退後、「消え行く蒸気機関車をぜひ長浜で保存したい」という長浜市民の要望に応え、長浜市が当時の国鉄金沢鉄道管理局から借用し、琵琶湖沿いにある豊公園で展示しました。1995(平成7)年には北陸本線米原~木之本間でSL北びわ湖号が運行されるのに合わせて現在地に移転し、2003(平成15)年からはこの北陸線電化記念館に収蔵されているものです。展示にあたっては京都府の梅小路蒸気機関車館(当ブログで今後解説予定)などと同様、運転台にも上れるようになっています。

ED70形1号機の外観 ED70形1号機の運転台
ED70形1号機の外観(左)と運転台(右) ※クリックで拡大

電気機関車ED70形1号機日本初めて電源に交流2万V60Hzの電気を使用した営業用の電気機関車で、1957(昭和32)年に三菱電機で製造されました。完成後は北陸本線田村~敦賀間で18年間に渡り使用され、引退後は敦賀駅構内に野ざらしの状態で放置されていました。平成に入ると車体の傷みが激しくなったことから、2004(平成15)年にJR西日本が修復を行い、近代化遺産として日本ナショナルトラストに寄贈し、この北陸線電化記念館に収蔵されました。車体は当時主流だった長手方向に台形状の断面を持つもので、中央の機器室内には架線から得た高圧電気を変換する水銀整流器が設置されています。このED70形も運転台に入ることができるようになっており、電気機関車特有の2つ並んだブレーキハンドルなどに触れることができます。

館内壁面にあるサボ 2階のバルコニーからは長浜駅に出入りする列車を見下ろすことができる。
左:館内壁面にあるサボ
右:2階のバルコニーからは長浜駅に出入りする列車を見下ろすことができる。

※クリックで拡大

このほか、館内には北陸本線の列車で実際に使用されていた行先表示板(サボ)や電気機関車のナンバープレートが展示されています。また、2階には北陸本線の線路に面してバルコニーが設けられており、長浜駅に出入りする列車の様子を間近に見ることができます。


3館の間にある腕木式信号機


■休館日・開館時間・入館料

休館日:12月29日~1月3日
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
入館料:大人300円、小中学生150円(20名以上の団体は2割引)


▼参考
長浜鉄道スクエア解説リーフレット(現地のみ配布)
長浜鉄道スクエア
過去に県指定された文化財/滋賀県
滋賀県 - 琵琶湖環状線いよいよ実現へ!!
滋賀県長浜市の観光名所 ガラスの街【黒壁スクエア】


2006年に改築された長浜駅の橋上駅舎。建物の意匠は旧駅舎のものを継承している。
2006年に改築された長浜駅の橋上駅舎。建物の意匠は旧駅舎のものを継承している。

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