横須賀線武蔵小杉駅(2011年8月17日取材)

使用開始となった横須賀線ホーム東京方のエスカレータ

開業前から当ブログでお伝えしている横須賀線武蔵小杉駅の新設工事ですが、去る2011年6月25日に南武線ホームとの本設連絡通路の供用が開始されたため、再度取材を行いました。今回はこの連絡通路の状況を中心にお伝えいたします。

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■横須賀線武蔵小杉駅の概要と連絡通路の供用延期


横須賀線武蔵小杉駅の新設は2005(平成17)年3月に制定された川崎市の都市計画「川崎フロンティアプラン」の中に盛り込まれたもので、武蔵小杉駅周辺の工場移転に伴う再開発のメインをなすものとして位置づけられています。新駅は西大井駅から6km、新川崎駅から3kmにある横須賀線と南武線の交差地点に設けられており、駅の新設に必要な用地は隣接するNEC玉川事業場の敷地を一部譲り受ける形で取得しています。新駅の本体部分は2010(平成22)年3月13日ダイヤ改正時に開業し、以後は横須賀線・湘南新宿ラインの全列車に加え、この区間を走行する特急列車のほとんどが停車しており、東京都心方面への所要時間が従来と比べ大幅に短縮されました。また、新駅の南側には新たに新南口改札口(横須賀線口)と駅前ロータリーが開設され、新駅西側の再開発地区で建設が進む高層マンション群(入居戸数5千戸、入居人口1万5千人)にスムーズにアクセスできるよう配慮されています。

武蔵小杉駅横須賀線ホーム 南武線ホーム川崎方端の連絡通路
左:武蔵小杉駅横須賀線ホーム
右:南武線ホーム川崎方端の連絡通路

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横須賀線の駅新設に当たっては南武線・東急線との乗り換えがスムーズにできるよう、南武線ホームの川崎方端と横須賀線ホームの東京方端を接続する連絡通路が新設されることになりました。この連絡通路は当初、2010年の横須賀線新駅開業時に全面的な供用開始が予定されていましたが、途中交差する東海道新幹線の盛土高架を貫通するトンネルの処理をめぐり、新幹線を運行するJR東海から線路の沈下を絶対に防止するよう注文がつけられたことから当初より1年程度工期が延びることとなりました。このため、2010年の開業から1年間は南武線の線路に並行して設けた仮設の通路で両ホーム間を連絡することとしました。この連絡通路は幅が狭いところで3mしかなく、乗り換え客が集中した場合「渋滞」が発生する可能性があったため、2010年の開業時にはJR東日本では初となる改札外乗換えの制度(30分以内に乗換える両路線の改札を通過すれば下車したとみなさず新たに運賃を徴収しない)を適用しました。なお、この一連の変更により横須賀線武蔵小杉駅の工費は当初計画より50億円増加しました。横須賀線武蔵小杉駅は川崎市の依頼で設置される「請願駅」であるため、このうち39億円は川崎市が負担しました。

■使用が開始された本設連絡通路

2010年開業時点で供用開始が延期された本設の連絡通路は当初2011(平成23)年春の完成が予定されていました。今年1月に取材した際は、新幹線の下をくぐるトンネル本体がほぼ全て完成し、残る作業は動く歩道本体の搬入と照明設備の取り付け程度であったことを確認しています。しかし、完成目前の3月11日発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)により動く歩道をはじめとする機械メーカーの生産がストップし、当初の予定通りの完成が困難となってしまいました。このため、連絡通路の供用開始は6月25日(土)まで再度延期されることとなりました。

通路が工事中のためカバーが掛けられていた頃のエスカレータ。 カバーが取り払われ使用を開始したエスカレータ 一番東京寄りのエスカレータは2人乗りが1機のみで常時下り運転。
左:通路が工事中のためカバーが掛けられていた頃のエスカレータ。(2010年4月3日撮影)
中:カバーが取り払われ使用を開始したエスカレータ
右:一番東京寄りのエスカレータは2人乗りが1機のみで常時下り運転。

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横須賀線ホームと6月に使用開始となった連絡通路は従来からあるホーム下の通路の他にホーム東京方に新設されたエスカレータで接続しています。エスカレータは全部で3基あり、朝ラッシュ時(平日7:25~8:45)は全基下り(ホーム→連絡通路)、それ以外の時間帯が1基上り・2基下りという運転パターンとなっています。東京都心から放射状に延びる路線の場合、朝ラッシュ時は利用者が多いホームへ出る方向のエスカレータを増やすのが一般的ですが、武蔵小杉駅では接続する南武線の沿線に多数の工場が存在することからこのような特殊な運転方法が取られたものと思われます。

エスカレータ下の通路。直進すると2010年から使用されている横須賀線ホーム下のコンコースへ通じる。 今回使用が開始された連絡通路(トンネル)の入口。
左:エスカレータ下の通路。直進すると昨年から使用されている横須賀線ホーム下のコンコースへ通じる。
右:今回使用が開始された連絡通路(トンネル)の入口。

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そのエスカレータを降りると今回使用が開始された南武線ホームへの本設連絡通路に出ます。エスカレータ下の空間はラッシュ時の利用者の滞留スペースとなることを意識しているのか、かなり幅が広くなっています。南武線ホームと反対方向は従来からある横須賀線ホーム下のコンコースに続いており、連絡通路直近のエスカレータが全て下り運転となる平日朝ラッシュ時は、このコンコースの途中にある階段・エスカレータを利用して横須賀線ホームに上がることになります。
一方、連絡通路は横須賀線ホームからのエスカレータを降りて南武線ホーム方向に進むとすぐにコンクリートのトンネル内を進むようになります。トンネルは横須賀線・東海道新幹線の盛土高架をくぐるため、途中が数m低くなっており、この段差部分には階段のほかにJR東日本では初となる動くスロープ(傾斜型の動く歩道)が3箇所(上下1組の計6基)設置されています。動くスロープの傾斜角度は最大で10度あることから、車椅子・ベビーカーの利用は安全上禁止されており、このような利用者はスロープ脇の水平の通路の先にあるエレベータを利用することになります。

動くスロープが終わると連絡通路は直角に曲がる。(3枚合成)
動くスロープが終わると連絡通路は直角に曲がる。(3枚合成)
※クリックで拡大(1000*338px)

動くスロープを降りると通路は直角に曲がり、横須賀線・東海道新幹線の下をくぐります。この部分の通路はやや幅が狭いため、床の一部をを黄色く着色し、ステンレスパイプの柵を設置することで南武線ホームへ向かう利用者と横須賀線ホームへ向かう利用者の通行ゾーンを明確に分離しています。通路の内装は壁が掲示物を貼ることを考慮して白いパネル、天井がトンネルのコンクリート地がむき出しとなっており思いのほか質素な雰囲気となっています。

南武線ホームへ向かう連絡通路 南武線ホーム側の動くスロープ入口
左:南武線ホームへ向かう連絡通路
右:南武線ホーム側の動くスロープ入口

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横須賀線・東海道線の盛土高架をくぐり終えるとクランクしながら動くスロープ2箇所を上り、2010年開業時から使用している南武線立川方面行きホーム(2番線)川崎方の通路に出ます。この部分もやはり車椅子・ベビーカーの迂回路としてエレベータが併設されています。6月まで使用していた仮設の通路はこのエレベータへ向かう通路の途中から分岐していたもので、分岐部分は現在は柵で覆われており仮設通路の撤去作業が行われています。

2010年4月訪問時の本設通路と仮設通路の分岐部。 2011年1月訪問時の同地点。トンネルへ向かう通路が見えるようになった。 今回訪問時の同地点。左の柵の先が6月まで使用していた仮設通路の跡。
左:昨年4月訪問時の本設通路と仮設通路の分岐部。(2010年4月3日撮影)
中:今年1月訪問時の同地点。トンネルへ向かう通路が見えるようになった。(2011年1月19日撮影)
右:今回訪問時の同地点。左の柵の先が6月まで使用していた仮設通路の跡。

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■おわりに

改札外乗換えの制度が廃止されたためオレンジ色の着色が取り払われた新南口の自動改札機
改札外乗換えの制度が廃止されたためオレンジ色の着色が取り払われた新南口の自動改札機

今回の連絡通路完成をもって、横須賀線武蔵小杉駅の新設工事は全て終了したことになります。連絡通路の完成により、昨年開業時から行われていた改札外乗換えの制度も廃止されており、自動改札機に合ったオレンジ色の着色も全て元に戻されています。今回訪問したのは平日夕方でしたが、横須賀線側・南武線側ともかなりの乗り換え利用が見られ、武蔵小杉駅は川崎市内と東京都心を結ぶルートとしてすっかり定着したように感じられました。駅前の再開発もまだ続いており、武蔵小杉駅は今後も更なる発展が期待されます。

▼参考
小杉駅周辺地区のまちづくり - 川崎市まちづくり局
横須賀線武蔵小杉新駅設置に関する基本覚書の締結 - 川崎市
2010年3月ダイヤ改正について(PDF) - JR東日本
横須賀線西大井新川崎間武蔵小杉新駅設置計画について - 第32回土木計画学研究発表会・講演集 - 土木学会(PDF)
JR武蔵小杉駅の連絡通路公開 乗り換え距離短縮 - MSN産経ニュース

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