相鉄11000系

工事中の瀬谷駅に停車中の11000系

相鉄・JR直通線の建設に合わせて、相模鉄道(相鉄)では車両の更新も進めています。今回はその新型車両である11000系について解説することといたします。

■相鉄の車両の変遷

相鉄8000系 相鉄7000系の台車 相鉄9000系
相鉄の前世代の車両の例。
左:相鉄8000系。2011年9月10日、瀬谷駅で撮影
中:相鉄7000系の台車。軸端に付くディスクブレーキが特徴的。2006年9月17日撮影
右:相鉄7000系。2006年9月17日、二俣川駅で撮影

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相鉄の車両は「1990年代までに導入された車両」「2000年代以降に導入された車両」に大きく分類することができます。
前者は2001年に製造が終了した9000系までの4ケタの形式が該当します。これらの車両は台車で通常は左右の車輪間に付くディスクブレーキを左右の軸端に取り付ける「外輪ディスクブレーキ」や、モーターを車軸と直角に置きかさ歯車など特品機構を使って動力伝達を行う「直角カルダン駆動」など他社には見られない特殊な駆動装置を装備していました。また、車体に関してもボタン1つで自動開閉する電動窓など首都圏の私鉄ではかなり珍しいシステムを多数採用していることで有名となっていました。
高性能電車の黎明期であった昭和30・40年代でこそ、他社でも技術検証の意味でこれらのシステムを使用している会社は存在しましたが(例えば直角カルダン駆動は東急の初代5000系「青ガエル」初代6000系で採用していた)、その後は保守性などの問題から淘汰が進み採用例は相鉄のみとなっていた物も多々ありました。この結果、製造にはオーダーメイドに近い設計が必要となり、交換部品の調達困難やコストの増大などデメリットが目立つようになりました。

相鉄10000系 東急5000系 小田急4000形
E231系類似車両の例。
左:相鉄10000系。2011年9月10日、上星川駅で撮影
中:東急5000系。2010年1月1日、東急田園都市線あざみ野駅で撮影
右:小田急4000形。2008年1月6日、東京メトロ千代田線綾瀬駅で撮影

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一方、時を同じくしてに首都圏全域で通勤路線網を持つJR東日本では国鉄から引き継いだ大量の老朽車両の置き換えの切り札として「寿命半分・重量半分・価格半分」をコンセプトとした209系・E231系の導入が行われており、同一設計車両の大量生産によるコストの大幅削減に成功していました。これに目を付けた首都圏の各民鉄ではE231系を自社線向けにアレンジして導入する動きが相次ぎ、東急電鉄の標準型車両である5000系(5000・5050・5080系)、小田急電鉄の地下鉄乗り入れ車両4000形などが登場しています。相鉄でも2002(平成14)年からE231系の設計をほぼそのまま流用した10000系の導入を開始し、それまでの個性的な車両設計の考え方を完全に捨て去ると同時にコスト削減を実現したのでした。

■11000系の概要

相鉄10000系の製造は2006(平成18)年に終了しましたが、その直後の2007(平成19)年に相鉄長年の懸案だった都心直通プロジェクト「相鉄・JR直通線」の建設事業が始動し、併せて自社線の信号保安装置のATS-P化や列車無線の空間波無線(デジタル)化が決定し、今後の新造車両は「1、新しい保安装置への対応」「2、直通線によるJR線に乗り入れ」の2点を念頭に設計する必要が生じました。これを受け、2009(平成21)年から導入が開始された11000系はJR東日本のE233系をベースとし、「1」への対応をメインに場合によっては「2」の仕様にも対応できることを目指した車両として設計されました。

中央線E233系 京浜東北線E233系1000番台
京葉線E233系5000番台 東海道線E233系3000番台
左上:中央線E233系0番台。2007年9月1日、武蔵小金井駅で撮影
右上:京浜東北・根岸線E233系1000番台。2010年2月6日、浦和駅で撮影
左下:京葉線E233系5000番台。2010年7月10日、千葉みなと駅で撮影
右下:東海道線E233系3000番台。2009年1月6日、品川駅で撮影

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JR東日本のE233系は2007(平成19)年の中央線快速を皮切りに、京浜東北線、京葉線、常磐線各駅停車、東海道線で導入されている通勤形の標準車両です。E233系は一世代前のE231系をベースとしていますが、時代に即したサービス提供や、さらなる信頼性の向上のため以下のような改良が行われています。

●故障に強い車両
動力系統、パンタグラフなど主要機器をを二重化し、故障が発生しても運転が継続できるようにする。

●ユニバーサルデザイン
車両の床面高さを下げ、ホームとの段差を縮小して足の不自由な乗客や車椅子での乗降をスムーズにできるようにした。また、車内の荷物棚、吊革の高さを下げ、身長の低い乗客でも利用しやすくした。

●快適性の向上
エアコン内に空気清浄機能を追加、抗菌加工された吊革の採用、座席幅の拡大(1人当たり45cm→46cm)

●情報化社会への対応
ドア上部に液晶ディスプレイ(LCD)を設置し、駅の案内や運行情報、動画広告などを配信する。

横浜駅に停車中の11000系。先頭車のドア位置が異なるため、ホームの転落防止柵の移設が行われた。
横浜駅に停車中の11000系。先頭車のドア位置が異なるため、ホームの転落防止柵の移設が行われた。

相鉄11000系では10000系と同じくベースとなったE233系の設計をほぼそのまま流用しており、外見上の違いは先頭部の形状程度となっています。車体幅は11000系導入に合わせて建築・車両限界を2950mmに拡幅したことから10000系(2930mm)と異なり、E233系と同じ2950mmとなっており、先頭車のドアもE233系と同じく踏切事故対策で先頭ドアを後部側にずらした配置となっていたものをそのまま採用しています。(これについては車両基地の昇降台や横浜駅のホームにある転落防止柵が対応していなかったため、社内各部署の協力の下、対応させる改良工事が行われています。)また、前世代の10000系では自社線で要求される走行性能を満足するため、E231系には存在しない単独のM車を追加して動力車の比率を5M5Tに高めていましたが、11000系ではベースとなったE233系が故障対策として元々6M4Tの編成なとなっていたため、この点について特に変更せずそのまま設計を流用しています。

相鉄11000系の車内 各ドアの上部にある液晶ディスプレイ
左:相鉄11000系の車内
右:各ドアの上部にある液晶ディスプレイ

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車内はE233系の設計を全面的に採用するのではなく、E231系や10000系のデザインを一部残したものとなっています。一例として座席の上部にある荷物棚はE233系のアルミパネルではなく、E231系・10000系と同じステンレスパイプによる構成となっています。また、定期的な交換が必要なつり革もE233系の黒色のものではなく、E231系・10000系と同じグレーのものを採用しています。これは導入両数が少なく、少量多品種の交換部品をストックすることによるコスト増大を防止する目的があるものと思われます。一方、ドア上部の液晶ディスプレイは表示内容は若干異なるものの、装置自体はE233系のものをそのまま使用しています。
運転台もE233系と同じく計器類を全面的に液晶ディスプレイ化しており、表示内容もE233系とほぼ同じものとなっています。唯一の違いは列車無線と現行ATSを装備している点ですが、これらの設備は今後JR東日本と同一のシステムに更新される計画となっており、容易に撤去できるよう外付けによる簡易的な固定方法が採られています。(これについては10000系も最近の改造で同じ設置方法に変更されつつある。)

相鉄・JR直通線にも対応する車両として増備が進められている11000系ですが、車体幅の関係上相鉄・東急直通線での使用は不可能となっています。このため、相鉄・東急直通線の対応車両については事業の進展を見つつ新たに設計・製造に取り掛かることとなっています。

▼参考
相鉄11000系まもなくデビュー。 - 編集長敬白アーカイブ
相模鉄道11000系 - 交友社「鉄道ファン」2009年8月号

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相鉄8000系「つり革多っ!」(2006年9月24日作成)
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