成田スカイアクセス(2011年9月18日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2011年11月10日00:54
成田スカイアクセスの新線区間に設けられた成田湯川駅

2010(平成22)年7月17日、東京都心と成田国際空港を結ぶ新しい鉄道路線「成田スカイアクセス(京成成田空港線)」が開業しました。開業から1年以上が経過してしまいましたが、このたび開業前に取材ができなかった成田湯川駅などの新規建設部分について取材が完了しましたので、それらの様子についてお伝えいたします。

■成田スカイアクセス(成田新高速鉄道プロジェクト)の概要

成田スカイアクセスのルート図
成田スカイアクセスのルート図

成田国際空港(以下、成田空港)と東京都心を結ぶ鉄道は当初「成田新幹線」と呼ばれるフル規格の新幹線で計画されていました。しかし、計画が立案された1970年代は一般市民の公害に関する関心が急速に高まっていた時期にも当たり、成田新幹線は着工早々からルート周辺の住民から激しい建設反対運動に遭い、東京駅の連絡通路の一部や成田空港周辺の路盤が完成した段階で工事が凍結され、未完成のまま国鉄分割民営化を迎えて計画が消滅しました。この代替として完成していた成田空港周辺の新幹線路盤を活用する形でJR成田線と京成本線が1990年代初めに空港直下への乗り入れを開始しました。しかし、いずれのルートも都心~空港間の所要時間は1時間程度かかっており、海外の大規模空港に比べ利便性が大きく見劣りしていたのが事実です。
このため、国では引き続き成田空港のアクセス改善に向けた検討を行い、北総鉄道印旛日本医大駅から成田空港の間に新線を建設することが決定し、「成田新高速鉄道プロジェクト」として2006(平成18)年から工事が開始されました。この新しい空港アクセス鉄道の開設に当たっては可能な限り所要時間短縮を図るため、既設の北総線については最高速度130km/hで走行可能な設備へ改良を行い、新線区間については新幹線に準じた高規格な設備で建設を行い、国内の在来線では最高速となる160km/hで走行することにより日暮里~空港第2ビル間を最速36分で結ぶこととされました。この新しい空港アクセス鉄道は北総線の区間も含め「成田スカイアクセス」という愛称を持っており、都心・空港間を直通する列車は京成電鉄が運行を担当しています。京成電鉄ではこの成田スカイアクセスの開業に合わせ、160km/hで走行可能なスカイライナーの新型車両「AE形」や羽田空港直通特急(アクセス特急)に使用する通勤車両「3050形」など新車を大量導入したほか、都心・空港双方の駅の大規模改良も行いました。これらの改良については本記事で後述するほか、昨年までに作成した記事でも解説しておりますのであわせてご覧ください。

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印旛日本医大~成田空港間の配線図
印旛日本医大~成田空港間の配線図

今回は昨年は開業前だったため取材できなかった新線区間の途中駅である成田湯川駅空港第2ビル駅・成田空港駅の成田スカイアクセス線ホームを中心に解説することといたします。

■成田湯川駅

駅前ロータリーから見た成田湯川駅
駅前ロータリーから見た成田湯川駅

成田湯川(なりたゆかわ)駅は成田スカイアクセス線の新規建設区間の途中、印旛日本医大駅から8.4km、空港第2ビル駅から9.7kmの地点に設けられている途中駅です。駅は高架橋となっており、成田空港寄りではJR成田線(我孫子支線)が下を交差しています(現在のところ成田線側に駅設置の計画は無い)。成田スカイアクセス線には並行して北千葉道路(国道464号)の整備が続けられていますが、当駅付近では上下線とも成田スカイアクセス線の北側を通っており、今回訪問時点では南側の駅前ロータリーは全て完成していました。駅前ロータリーには千葉交通の路線バス3路線が発着していますが、後述する通り成田スカイアクセス線側の列車本数が非常に少ないことから朝晩以外は事実上「空気輸送」と化している場合もあり、どこまで維持できるかは未知数といえそうです。

成田湯川駅改札口 駅舎内部
左:成田湯川駅改札口
右:駅舎内部

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成田湯川駅の改札口は高架下にあり、自動改札機は3台、自動券売機は2台(増設スペースあり)設置されています。トイレは1階の改札口を入って正面のところにあり、3階のホームへは2階にある上下線兼用のコンコースを経て上がる形態となっています。上下方向の移動が必要な個所にはいずれもエスカレータ(上下1機ずつ)、エレベータが併設されており、バリアフリー面での問題はありません。(なお、本記事作成時点では京成電鉄ホームページに成田湯川駅の構内図が無い)駅舎内部の内装は高架橋のコンクリート地肌や自然木の質感を生かしたものとなっており、シンプルながらも温かみが感じられるデザインとなっています。

成田湯川駅のホーム
成田湯川駅のホーム

成田湯川駅は特急スカイライナーが最高速度160km/hで通過することから、駅構内の配線は新幹線に準じたものとなっており、4本ある線路のうち内側の2本が通過線、外側2本がホームのある待避線となっています。ホームの幅は階段がある京成高砂寄り以外は3m前後と狭くなっていますが、屋根はホーム全長にわたって設置されています。線路は最近の新線では一般的な弾性まくらぎ直結軌道となっており、架線は待避線が一般的なシンプルカテナリ吊架式通過線が高速通過に対応したコンパウンドカテナリ吊架式となっています。ホームの出発側に設置されている信号機はいずれもスカイライナーの高速進行現示に対応した6灯式です。
日中は上下線ともアクセス特急が40分間隔で発着しており、停車中にスカイライナーの待避を行うダイヤ構成になっています。

ホームから京成高砂方を見る。トンネルになっている。 成田湯川駅到着直前の上り列車の前面展望。38番分岐器で単線から複線に分岐する。
左:ホームから京成高砂方を見る。トンネルになっている。
右:成田湯川駅到着直前の上り列車の前面展望。38番分岐器で単線から複線に分岐する。

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成田湯川駅の京成高砂方は待避線と通過線が合流した直後にトンネル(松崎(まんざき)トンネル)となっています。トンネル内には下り線から上り線に入ることができる渡り線が設置されており、今後よ利用状況次第では成田湯川駅から都心方向に折り返す列車の設定も可能です。(このため、っ下り線の2番線ホームの京成高砂方にも出発信号機が設置されている。)
一方、成田空港方は駅の500mほど先で複線から単線に変わります。この合流部分には分岐側でも最高速度の160km/hで通過可能な「38番分岐器」が使用されています。分岐器全体の長さは135m(電車7両分)にも達する巨大なもので、可動レール(トングレール・クロッシング部分)は合計3台の転轍機(モーター)でスライドさせています。この38番分岐器は国内では成田湯川駅の他に上越新幹線の高崎駅(下り線の長野新幹線分岐部)にしか設置されていません。

■空港第2ビル駅

空港第2ビル駅2番線(既設)ホーム 空港第2ビル駅1番線(増設)ホームと停車中の京急600形アクセス特急羽田空港行き
左:空港第2ビル駅2番線(既設)ホーム
右:空港第2ビル駅1番線(増設)ホームと停車中の京急600形アクセス特急羽田空港行き

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成田スカイアクセス線着工前の空港第2ビル駅単線のJR成田線と京成本線が1つのトンネルに収まっており、それぞれが対向式ホーム1面ずつを使用するという形態になっていました。これでは成田スカイアクセス線開業に伴う列車増発に対応できないため、既設のトンネルの外側にさらに1面1線のホームを増設し、既設のホームと数か所の通路で接続して島式ホームとして使用することとなりました。また、既設ホーム側はホームを延長し、中央を区切って京成上野駅側を京成本線、成田空港駅側を成田スカイアクセス線が使用することにより運賃が異なる両系統の利用客を分離することとしました。

2番腺ホーム中央の京成本線ホーム・成田スカイアクセス線ホームの仕切り 1番線ホームは京成本線の列車が成田スカイアクセス線ホーム側にはみ出して停車する。
左:2番腺ホーム中央の京成本線ホーム・成田スカイアクセス線ホームの仕切り
右:1番線ホームは京成本線の列車が成田スカイアクセス線ホーム側にはみ出して停車する。

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トンネル・ホームの工事自体は昨年の開業直前の取材時点ですでに完成していましたが、2010年7月の成田スカイアクセス線開業後はさらにホームの中央に京成本線ホームと成田スカイアクセス線ホームを分離する柵が新設されました。なお、ホームの全長は既設ホーム(2・4番線)が16両(8両編成2本分)となっているのに対し、新設ホーム(1・3番線)は13両分程度しかないため、京成本線の列車は成田スカイアクセス線ホーム側にはみ出して停車するという異様な光景が見られます。成田スカイアクセス線ホームのうち、京成本線の列車が停車してしまう箇所には天井にLEDの案内板が設置されており、京成本線の列車が停車している間はこの電車は経路が異なるためご乗車できませんという表示を出しています。これに加え、京成本線の列車の停車中は付近に係員が常駐し、間違って乗車することが無いよう注意を促しています。

京成本線の列車の停車目標は青色に発光する。 成田スカイアクセス線の列車の停車目標は橙色に発光する。
左:京成本線の列車の停車目標は青色に発光する。
右:成田スカイアクセス線の列車の停車目標は橙色に発光する。

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京成本線と成田スカイアクセス線は縦にホームが並ぶ形態となったため、列車の停車目標がLEDによる電照式に変更されました。LEDの色は京成本線側が、成田スカイアクセス線側がで、停車する側のみの照明が点灯することで運転士が停止位置を間違えることを防止しています。

ホーム上階のコンコースには中間改札口が新設された。
ホーム上階のコンコースには中間改札口が新設された。

ホーム上階のコンコースは京成本線と成田スカイアクセス線で運賃が異なることから、京成本線ホーム側の階段手前に中間改札が新設されました。これにより、京成本線を利用する場合は乗車時・降車時ともに2回改札口を通過する必要があります。(降車時はこれに加え、セキュリティチェック(検問)があるため時間がかかる。)

■成田空港駅

特急スカイライナー専用になった既設ホームの終端側(2・3番線) 新設されたアクセス特急専用ホーム(1番線)
左:特急スカイライナー専用になった既設ホームの終端側(4・5番線)
右:新設されたアクセス特急専用ホーム(1番線)

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成田スカイアクセス線着工前の成田空港駅は成田新幹線用として建設された2面4線のホームをJR・京成が1面ずつ使用していました。成田スカイアクセス線開業に際しては空港第2ビル駅と同様、既設ホームは全長を16両分に延長して半分で区切り、空港第2ビル駅側を京成本線(2・3番線)、終端側を成田スカイアクセス線(4・5番線:特急スカイライナー専用)として使用しています。また、既存のトンネルとは別に8両編成分の長さを持つ片面ホーム1面1線(1番線)が新設されており、こちらはアクセス特急専用ホームとして使用されています。この1番線は空港で大きな荷物持つ利用者が多いという事情のためか、上階のコンコースとはエスカレータ・エレベータのみで連絡しており、階段は一切設置されていません。

ホーム上階のコンコース。空港第2ビル駅と同様京成本線側に中間改札口がある。
ホーム上階のコンコース。空港第2ビル駅と同様京成本線側に中間改札口がある。
※クリックで拡大(2枚合成・800*320px)

ホーム上階のコンコースは空港第2ビル駅と同様、京成本線ホーム側に中間改札が新設されています。アクセス特急用のホームもあるため、天井にある案内板は空港第2ビル駅よりも大きく目立つものが使用されています。

▼参考
成田空港への新しい鉄道アクセス線の開業に向けて「成田新高速鉄道プロジェクト」 - 日本鉄道施設協会誌2010年1月号48~51ページ
成田新高速鉄道プロジェクト「『160㎞/h』線路の建設」 - 交友社鉄道ファン2010年3月号(通巻587号)
成田高速鉄道(成田高速鉄道アクセス株式会社)
都心から成田空港へ36分。スカイライナー・スペシャルサイト|京成電鉄
など他多数。



最後に成田スカイアクセス線成田空港→印旛日本医大の前面展望動画をご覧頂きながら締めくくりとしたいと思います。途中、新根古屋信号場で10分、成田湯川駅で5分程度停車しますが、停車中の映像は全てカットしてあります。


成田スカイアクセス成田空港→印旛日本医大 - YouTube 音量注意!
※再生リストです。4本の動画を順に自動で再生します。
※1本ずつご覧になりたい場合は以下のリンクよりどうぞ。

成田スカイアクセス アクセス特急前面展望・1/4 成田空港→空港第2ビル - YouTube
成田スカイアクセス アクセス特急前面展望・2/4 空港第2ビル→新根古屋 - YouTube
成田スカイアクセス アクセス特急前面展望・3/4 新根古屋→成田湯川 - YouTube
成田スカイアクセス アクセス特急前面展望・4/4 成田湯川→印旛日本医大 - YouTube

次回以降はこの成田スカイアクセス線の列車に使用されている特急スカイライナーの「AE形」アクセス特急の「3050形」、そして競合他社であるJR東日本の特急成田エクスプレス「E259系」それぞれの乗車レポートを順番にお送りいたします。

(つづく) このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

成田湯川駅のバスの本数が多い理由
成田湯川駅発着のバスの本数が多いのは、駅ができる前から、ここがバスの折り返し場だからです。
2011/12/29 19:22 | URL | 投稿者:まるーべり
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