東京テレポート駅~13号地立坑(夕陽の塔) - りんかい線東臨トンネル(13)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■台場第3トンネル 5km005m~5km960m(L=955m)
  13号地立坑(潮風公園夕陽の塔) 5km972m

▼参考
臨海副都心線の工事概要 - 建設の機械化1992年12月号3~8ページ
首都圏における新線開業 5、東京臨海高速鉄道臨海副都心線 - 日本鉄道施設協会誌1996年9月号20~31ページ
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 614~633ページ

●概説

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東京テレポート駅を出たりんかい線は国道357号線から北に外れて東京港をくぐる海底トンネルへ向かう。この区間のトンネルも東京テレポート駅手前と同様、昭和50年代に京葉線用として建設されたものを流用している。トンネルは単線シールドトンネル(直径7.5m)2本で、りんかい線への転用に当たっては「台場第3トンネル」(新木場起点5km005m~5km960m・L=955m)の名称が与えられている。線形は東京テレポート駅側が国道から外れるため半径800mのカーブとなっている以外はほぼ直線で、勾配は東京港の海底トンネルへ向けて下り勾配になっているが、後述する理由によりその数値は5~10パーミルの間で目まぐるしく変化している。この台場第3トンネルと東京港の海底トンネルとの境界にあるのが13号地立坑(新木場起点5km972m)で、りんかい線開業後は作業用出入口・換気口・排水ポンプ室として使用されている。
なお、この台場第3トンネルと13号地立坑は1996(平成8)年の臨海副都心線第一期開業以前に取得済みとなっており、東京テレポート駅よりの数百メートルは2001(平成13)年の天王洲アイル駅延伸まで車庫(洗浄・検修線)として利用していた。

1979年の東京テレポート駅予定地から13号地立坑にかけての航空写真。左端が工事中の13号地立坑で、その右側には測量跡と思しき線や作業基地が見える。
1979年の東京テレポート駅予定地から13号地立坑にかけての航空写真。左端が工事中の13号地立坑で、その右側には測量跡と思しき線や作業基地が見える。
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋

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台場第3トンネルを構成する単線シールドトンネルは、13号地立坑を起点に第一期区間の有明立坑まで掘進が行われた。発進立坑となった13号地立坑は地下5層構造で、地上で造ったトンネル筺体の下部を掘削して徐々に埋めていくケーソン工法を用いて建設された。一方、シールドトンネルは地下水位が高く地盤が軟弱な埋立地を通過することから、掘削を行うシールドマシンには当時としてはまだ珍しかった完全密閉型の泥水加圧式が用いられた。さらに、トンネルの建設当時はまだ埋め立て後の自重沈下が終息していなかったことや、トンネルが埋設される地下20m付近には氷河期に形成された溺れ谷があり地盤の固さが急変していることから、壁面を構成するセグメントには1.8~10.8m間隔でゴムを用いた伸縮継目を組み込み、完成後に行われた二次覆工とあわせて地盤沈下や大規模地震時の大きな変形にも耐えられる構造とした。
このシールドトンネルの建設は1976(昭和51)年4月から1982(昭和57)年4月にかけて行われた。1979(昭和54)年の航空写真を見るとお台場の埋立地のふちに13号地立坑の角穴2つが開いており、今まさにシールドトンネルの掘進中である様子が見て取れる。また、立坑の東側の地面には測量を行った跡と思われる線が表れており、その北側には立坑と道路で接続された作業基地らしき建物群も確認できる。

台場第3トンネルの地点別の沈下量
台場第3トンネルの地点別の沈下量 ※クリックで拡大

その後、京葉線の建設凍結により15年余りの放置期間を経てこのシールドトンネルはりんかい線の第二期区間の一部として活用されることとなったが、再利用に先立って行われた健全度調査で調査の結果、設計当初の予測を遥かに超えるスピードでトンネルの沈下が進んでいるというあるまじき事態が起きていることが発覚した。
特に沈下が深刻だったのは13号地立坑に近接する新木場起点5km800m~5km950mの区間であり、1996(平成8)年沈下量は最大で73cmと、建設当初の予測を実に30cm以上も上回っていた。前述のとおり、この沈下区間のトンネル壁面には最小1.8m(セグメント2リング)間隔でゴム製の伸縮継目が挿入されているが、沈下量があまりにも過大であることからこれ以上沈下が進むとその伸縮継目でさえも破断してしまう恐れがあった。また、沈下の形状は5km885m付近を谷底にしたV字型となっており、たとえトンネルの強度に問題が無かったとしても、その急峻な縦断線形では列車の運行に支障をきたすことが予想された。これを受け、鉄建公団と東京臨海高速鉄道では(社)日本トンネル技術協会に設けられた特別委員会に対し、台場第3トンネルの沈下対策について調査と検討を依頼した。

台場第3トンネルの沈下量の時系列変化
台場第3トンネルの沈下量の時系列変化 ※クリックで拡大

ここではまずトンネルの沈下量と経過年数の関係が注目された。台場第3トンネルは1980(昭和55)年の完成時から沈下し続けているが、上のグラフの通りその中でも1984(昭和59)年6月()と1992(平成4)年1月()に折れ点がみられた。このことから、この2つの時期に沈下を加速させる何らかの力がトンネルに作用したことが推察された。
この間に何があったのだろうか?
さらに調査を進めたところ、トンネル完成後の1980(昭和55)年から3年間の間に沈下区間の真上に公園を造成するため最大で2.5mの盛土が行われていたことが判明した。また、1991(平成3)年以降は臨海副都心の開発に伴い、周辺で基礎工事が活発化し地下水が多量に汲み上げられたため、平常時よりも20m以上地下水位が低下したことも判明した。前者は1984年、後者は1992年のグラフの折れ点と非常に接近しており、この2つがトンネル沈下の元凶であると見て間違いない判断された。また、いずれの現象も原因となった工事がすでに終了しており、委員会では今後更なるトンネルの沈下を起こすことは考えにくいということもあわせて報告されている。
これを受け、鉄建公団と東京臨海高速鉄道では万一の伸縮継目の破断に備え、トンネル内面の二次覆工の一部に伸縮継目にかかる力をバイパスする防護プレートを設置し、トンネル自体はそのまま使用することとした。トンネル内に敷設する軌道はJR東日本の規格に従い、縦曲線半径を3000m(やむをえない場合は2000m)、床面からレール面までの標準的な高さを62cmとし、沈下区間では必要に応じてかさ上げすることにより調整を行うこととし、将来さらに30cmの沈下しても対応可能とされた。
このように台場第3トンネルは未完成であったが故に管理が十分行き届かないまま地上で開発が進み、トンネルに深刻な影響を及ぼすこととなった。この反省から、りんかい線開業以後は地下水位の監視やトンネルの沈下量測定が継続的に行われており、さらに沈下が進むと予測された場合はトンネル下の沖積層の地盤改良による沈下の抑制なども検討されている。

▼脚注
※縦曲線:勾配を滑らかに変化させるために挿入する移行区間のこと。この曲線半径が小さすぎると乗り心地が悪くなったり、車両が浮き上がるなど走行安定性に影響が出る。

●現地写真(地上)
りんかい線は正面のホテルグランパシフィックLE DAIBAの下を横切って東京港の海底トンネルへ向かう。
りんかい線は正面のホテルグランパシフィックLE DAIBAの下を横切って東京港の海底トンネルへ向かう。

東京テレポート駅を出たりんかい線は2012年4月19日にオープンしたダイバーシティ東京を横目に見つつ、半径800mのカーブで国道357号・首都高速湾岸線とその上を跨ぐウエストパークブリッジの下を斜めに横切る、そして、ホテルグランパシフィックLE DAIBAの中央を突っ切って東京港の海底トンネルへ向かう。ホテルグランパシフィックLE DAIBAはトンネルを避けて建物の基礎杭を打ち込んでいるため、建物の向きが地下のトンネルの向きと完全に一致している。

りんかい線は正面のホテルグランパシフィックLE DAIBAの下を横切って東京港の海底トンネルへ向かう。 潮風公園入口から夕陽の塔を見る
左:東京都立潮風公園入口
右:潮風公園入口から夕陽の塔を見る

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ホテルグランパシフィックLE DAIBAを過ぎ、新交通ゆりかもめの軌道の下をくぐるとトンネル上部は東京都立潮風公園に入る。ここから先がトンネルの沈下が問題になった区間である。現在の潮風公園は1996(平成8)年に完成したものであるが、工事誌には公園の造成に際してトンネルの沈下防止対策を行ったとの記述は特にない。しかし、前述のような苦い経験から、非公式ながら一応協議は行ったようで、トンネル上部は盛土や植樹が行われず、幅の広い遊歩道になっているなど可能な限り地下のトンネルにかかる重量を軽減する配慮がなされていることは容易にうかがい知ることができる。

13号地立坑の地上出入口「夕陽の塔」
13号地立坑の地上出入口「夕陽の塔」

その遊歩道の突当たりにある「夕陽の塔」こそが13号地立坑の地上出入口である。地下鉄の立坑が公園の施設の1つとなっているのは後にも先にもここしかないはずである。塔の形状は正八角錘(すい)で、頂部には深い切り込みが入っている。壁面は全面に御影石(?)を使用しており、地下鉄の立坑としては史上最も美しい姿をしているといっても過言ではないだろう。
ちなみに、塔頂部の切り込みは正確に東西方向を向いており、太陽が真西に沈む春分の日・秋分の日の夕方に塔を東側から眺めると切り込みの間に太陽が沈む美しい光景を見ることができる。

塔の海側にある扉。南京錠が幾つも掛けられており、非常口として使うことは考えられていないようだ。 扉の右下には「東京臨海高速鉄道株式会社」の銘板が埋め込まれている。 切り込みの間には換気口があり、真下を列車が通過すると空気が押し出される。
左:塔の海側にある扉。南京錠が幾つも掛けられており、非常口として使うことは考えられていないようだ。
中:扉の右下には「東京臨海高速鉄道株式会社」の銘板が埋め込まれている。
右:切り込みの間には換気口があり、真下を列車が通過すると空気が押し出される。

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夕陽の塔の海側には地下の13号地立坑本体に出入りするための扉があるが、立坑としてはあまりにも無防備なため扉はいくつもの南京錠で封鎖されており、非常口として使用することは考慮されていない模様である。扉の右下には「東京臨海高速鉄道株式会社」と書かれた銘板がはめ込まれており、この塔がりんかい線に関する施設であることは一目瞭然である。
なお、塔頂部の切り込みの内側は換気口(ルーバーがある)となっており、直下の立坑を列車が通過した際は空気の流れが吐き出しから吸い込みに急変するため「ボン」という大きな音が発生する。音が聞こえるタイミングは新木場方面行きが東京テレポート駅到着時刻1分前、大崎方面行きは1分後がおおよその目安だ。

●現地写真(地下)
東京テレポート駅の端から大崎方を見る。ここから先は沈下に備えてバラスト軌道となっている。 大崎方面行き列車の前面展望。立坑手前でトンネルがV字に窪んでいる。
左:東京テレポート駅の端から大崎方を見る。ここから先は沈下に備えてバラスト軌道となっている。
右:大崎方面行き列車の前面展望。立坑手前でトンネルがV字に窪んでいる。

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左は東京テレポート駅のホーム端から台場第3トンネルを見たところで、二次覆工がしてあるものの建設から年月が経過しているため漏水が激しくなっており、総武線・横須賀線の東京地下駅付近のトンネルと同じような見た目となっている。線路は沈下に備えて上下線とも全区間がバラスト軌道となっているのが確認できる。
右は沈下が最も激しい13号地立坑手前の区間は列車内から見たところで、トンネルが明らかにV字型に窪んでいるのがわかる。この区間は軌道をかさ上げして一応急激な高さの変動は抑えてあるが、それでも乗車していると明らかに不自然な上下動が感じられる


りんかい線前面展望・4/7 東京テレポート→天王洲アイル - YouTube 音量注意!

(つづく)

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※2012年5月5日:記述内容小修正 このエントリーをはてなブックマークに追加
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