大井町駅(概説) - りんかい線東臨トンネル(25)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■大井町駅 10km550m
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 200~231・356・357ページ

●概説

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品川シーサイド駅を出て都道420号鮫洲大山線の地下を進んできたりんかい線は京浜東北線大井町駅と交差する。りんかい線の建設に当たっては乗り換えの利便を図るため、りんかい線側にも駅が設けられた。駅中心のキロ程は新木場駅起点10km550m(駅トンネルは10km400m~10km831m、ホームは10km446m~10km651m)である。駅は前後の区間と同じく都道420号線の下に設けられており、道路の幅が15mと狭いため、ホーム部分はシールド工法で建設し、上下線を2段に重ねた構造(上段が下り線、下段が上り線)とされた、また、駅施設は都道の下に納まりきらないため、駅中央南側の道路下に張り出す形で開削工法で建設し、完成後にシールドトンネルを切り開いて接続する形態とを採っている。

大井町駅のトンネルの構造(上が当初計画、下が変更後)
大井町駅のトンネルの構造(上が当初計画、下が変更後)

当初の計画では大井町駅のトンネルは駅部分と大崎側の駅間トンネルで別々のシールドマシンを持ち、大井町駅の両端には発進・Uターン用の立坑を設けることになっていた。しかし、地上は前述の通り道路幅が狭く、立坑の設置に伴う長期にわたる掘削工事は沿道に与える影響が大きすぎることから、この計画は実現不可能と判断された。そこで、代案としてマシンを大井町~大崎間にある第2広町立坑(完成後は大井町変電所として供用)から発進させることとなった。しかし、大井町駅のシールドトンネルは線路とホームを1つのトンネルに収めることから、直径が大きくなっており、第2広町立坑発進時からこのサイズで掘進した場合、ルート上にあるJR東日本広町住宅の基礎杭の移設量が非常に多くなり、工期・コスト面で不利になることが予想された。このため、広町住宅からギリギリ外れた地点にに仮設の立坑(第1広町立坑)を設け、ここで第2広町立坑から掘進してきた小さいマシンに部品を追加し、駅のトンネルに対応する直径に拡幅することで、広町住宅の基礎杭への干渉を最小限に抑えることとした。この第1広町立坑やシールドマシンの拡幅作業については説明が長くなるので、大井町~大崎間についての記事で改めて解説する。一方、新木場側は隣接するシールドマシンと地中でドッキングさせるという特殊な構造に変更することで立坑を不要とした。なお、この方法をとった場合でも駅ホームの両端にはトンネルの換気や非常時の脱出口を設ける必要があるが、これらの施設については駅中央の開削部分と同様の方法で建設することとした。以下、各部分の特徴を解説する。

(a)シールドトンネルと地中接合
大井町駅のホーム部分を構成するシールドトンネルは直径10.1mで、上下線とも南側に幅5m、長さ205mのホームが設けられている。ホームは全長に渡り直線で、大崎側へ向けて5パーミルの上り勾配となっている。駅両端と中央はそれぞれセグメントの一部を撤去して開削部分と接続するため、セグメントは強度が高いダクタイル鋳鉄を使用したほか、セグメント切り開き時に設置する柱の台座を設けている。
また、大井町駅のシールドトンネルの最大の特徴は到達立坑がなく、隣接する品川シーサイド~大井町間の駅間トンネル(東大井シールド)と地中でドッキングさせることである。このドッキング作業は東大井シールド側から円筒形の「貫入リング」と呼ばれる部品を押し出し、駅シールド側の隙間にこれを挿入することで両シールド間を接続するものである。以下はその手順である。


地中接合の手順
地中接合の手順 ※クリックで拡大

(1)チェックボーリング
双方のシールドマシンが1mの距離まで接近したところで東大井シールド側から位置確認用の水平ボーリングを行う。(双方のマシンのカッターフェイスにはこのための穴が予め設けられている。)地中接合時の双方のシールド間の位置の許容誤差は水平(断面)方向が75mm、角度は0.5度と非常に小さいため、接合にあたってはこの水平ボーリングの他に、東大井シールド側は地上からのボーリング調査を行い、駅シールド側は開削部分から測量孔を設置してずれがないことを確認している。実際の施工精度は上下線とも水平方向のずれが最大2mm、角度は0.14度と許容値を大幅に下回った。位置確認が終わったら、最終位置まで掘進を行う。接合時の両シールドの間隔は5cmである。
なお、掘進は下段のトンネルで先に行うが、上下のトンネルの離隔はわずか1mしかないため、地中接合の位置を同じ位置にすると下段トンネルの掘進の際周辺の地盤が撹乱され、上段のトンネルが沈下しての接合位置がずれる恐れがあった。これを防止するため、上段のトンネルの接合位置は東大井シールド側へ2.3mずらしている

(2)駅側シールドの貫入スリット清掃
駅シールド側は貫入リングを受け入れるための隙間(貫入スリット)が設けられている。この隙間は大井町駅手前(第1広町立坑)でシールドマシンを拡幅するため、元々の小さいマシン(緑色)の外側にリング状のマシン(水色)を取り付けた際生じた継ぎ目であり、駅部分の掘進中はジャッキ(黄色)により固定されていた。隙間には掘進中に取り込んだ礫などのゴミが溜まっているため、マシン内部に設けられたジャッキ(アーム)を使い、それらを除去する。除去が完了したら貫入リングを受け入れるため内外のマシンをつないでいたジャッキ(黄色)を収縮させ、円環状の隙間を準備する。

(3)貫入リング押し出し
東大井シールド側に装備された円筒状の貫入リング青色)を押し出し、駅シールド側の隙間に挿入する。駅シールド側にはゴム製の受圧リングが設けられており、貫入リングをこのゴムに押し付けることで地下水が漏れないよう密閉する。貫入リングの押し出しが完了したら、チャンバー内の泥水を徐々に抜いていき、漏水がないことを確認する。泥水を抜き終わったら内部を洗浄して貫入リングとマシンの外枠を溶接する。

(4)部品撤去・二次覆工
貫入リングとマシンの間に残る隙間を充填材(ピンク色)で塞いだら、マシン内部の部品を解体して外枠だけの状態にする。その後、内側に鉄筋コンクリートの二次覆工を行い完成となる。(マシンの外枠はトンネル壁面の裏に埋め殺しとなる。)

地中におけるシールドトンネルのドッキングは画期的なものであり、その技術を高く評価され、2001(平成13)年度の土木学会技術賞を受賞している。

(b)開削部分(駅中央)
駅中央の開削部分の断面
駅中央の開削部分の断面 ※クリックで拡大

駅中央の開削部分は都道420号線から中央口駅前ロータリーへ向かって分岐する区道の下にあり、改札口・ホーム連絡通路などの駅施設や地上出入口・乗り換え通路を収容している。トンネルは幅30m、長さ58m、高さ30mの5層構造で、地下1階が改札口、地下3階が下り線ホームへ接続するコンコース、地下5階が上り線ホームへ接続するコンコースとなっている。改札口とホームの間を連絡する通路は乗り換え路線が2路線と多いため、多数のエスカレータを設置し、混雑緩和を図っている。地上出入口はアトレ大井町がある駅南側(A1・A2)と東急大井町線が乗り入れる駅北側(B)、イトーヨーカドーが入るK-1ビル脇(C1・C2)の計5箇所あり、これとは別に独立したエレベータが1箇所設置されている。また、換気塔はK-1ビル脇に2箇所設置している。

開削部分とシールドトンネルの接続部分
開削部分とシールドトンネルの接続部分

駅中央の開削部分の構造体は鉄筋コンクリートではなく鉄骨構造を採用しており、掘削も上層階から順番に完成させていく逆巻き工法を採用し、可能な限り後期を短縮している。また、シールドトンネルとの接続部分は、水ガラス系の薬剤を用いた地盤改良と、ディープウェル(井戸)による地下水位低下を併用したパイプルーフ工法により、非開削で切り拡げを行っている。シールドトンネル上部には水道管があり、地上からでは十分に地盤改良が出来ないため、不足する部分はトンネル内から行っており、注入後に湧水量をチェックし、出水や陥没などの事故を未然に防止した。

▼脚注
※ パイプルーフ工法:トンネルの天井部分に掘削方向に向かってパイプを隙間なく打ち込み、これを支えにして非開削でトンネルを建設する方法。

(c)開削部分(駅両端)
駅両端の開削部分。左が新木場側、右が大崎側。
駅両端の開削部分。左が新木場側、右が大崎側。 ※クリックで拡大

駅の両端の開削部分はいずれも鉄筋コンクリート構造で、非常階段を設置している。
新木場側の開削部分は幅12m、長さ37m、高さ37.5mの6層構造で、シールドトンネル側に非常階段、駅ロータリー側に換気用の機械室を収容している。非常階段は構造体の中央から分岐しており、都道420号線からアトレ大井町へ向かうペデストリアンデッキの下に出る。また、地下1階・地下2階からはトンネル換気用のダクトが伸びており、東口駅前ロータリーの中央にある換気塔Aに接続している。
大崎側の開削部分は幅6.2m、長さ10.1m、高さ33.6mで、非常階段のみが設置されている。階段が地上に出る地点は開削部分本体からは離れており、幅2mの通路で接続している。

(つづく) このエントリーをはてなブックマークに追加
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