靖国神社・千鳥ヶ淵の桜 - 2012年桜めぐり(2)

カテゴリ:公園・風景花・植物 | 公開日:2012年04月17日12:06
靖国神社の桜

先々週の東京の桜めぐりの続きです。今回は東京都千代田区にある桜の名所、靖国神社千鳥ヶ淵についてです。(なお、当日の実際の訪問順序は靖国神社→千鳥ヶ淵→目黒川です。)

▼関連記事
目黒川の桜 - 2012年桜めぐり(1)(2012年4月9日作成)

■靖国神社の概要



 靖国神社は地下鉄九段下駅の西側(場所的には九段下駅と市ヶ谷駅の中間地点)にある神社です。毎年春には桜の名所として話題になるほか、毎年7月には「みたままつり」という祭りが開催され、30万人が訪れることで有名です。
 靖国神社は1869(明治2)年6月29日に明治天皇の勅許により「東京招魂社(とうきょうしょうこんしゃ)」として建立されたことに始まります。東京招魂社建立の目的は「戦争のために国に命をささげた人々の霊を慰め、それを後世に伝えること」であり、その目的の通り戊辰戦争、西南戦争、日清戦争、日露戦争、満州事変、支那事変、大東亜戦争(太平洋戦争。靖国神社では大東亜戦争と称している。)などの戦死者が祀られています。建立当初の東京招魂社は軍が管轄していましたが、1879(明治12)年には名称を「靖国神社(やすくにじんじゃ)」に改称するとともに、内務省(現在の総務省・警察庁・国土交通省・厚生労働省の前身)と軍の共同管轄になりました。「靖国神社」の名称は明治天皇の命名によるもので、「祖国を平安にする」「平和な国家を建設する」という願いが込められています。

靖国神社拝殿 拝殿の前にある能楽堂。1881(明治14)年に芝公園に建てられ、1903(明治36)年に移築されたもの。
左:靖国神社拝殿
右:拝殿の前にある能楽堂。1881(明治14)年に芝公園に建てられ、1903(明治36)年に移築されたもの。

※クリックで拡大

 戦後は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による政教分離(政治と宗教の分離:国家神道の否定)の方針により、宗教法人として独立し現在に至ります。ただし、もともと戦死者の慰霊施設として設立された経緯から、全国の神社を統括する神社本庁の傘下には属していません。
 このように靖国神社は戦死者を慰霊するという大義名分の下、現在に至るまでその形を残しています。しかし、一方で太平洋戦争を指揮した東条英機を含むA級戦犯が合祀されていることから、「軍人たちを英雄として讃えている」との批判も絶えないほか、毎年8月の終戦記念日には政治家の参拝に対する賛否両論が巻き起こり、果ては過激勢力による破壊行為のターゲットになるなど、その存在をめぐって激しい論争が絶えません。

遊就館の外観。 遊就館玄関ホールに展示されている三菱零式艦上戦闘機(ゼロ戦)52型 同じく玄関ホールに展示されている蒸気機関車C56形31号機
左:遊就館の外観。
中:遊就館玄関ホールに展示されている三菱零式艦上戦闘機(ゼロ戦)52型
右:同じく玄関ホールに展示されている蒸気機関車C56形31号機

※クリックで拡大

 境内には「遊就館」という施設があり、戦死者の遺品の収集・展示などを行っています。その中には泰面鉄道(旧日本軍がタイで敷設した鉄道で、現在はタイ国鉄の一部となっている)で使用されていた蒸気機関車C61形31号機も収蔵されています。収蔵に当たっては軌道を京王帝都電鉄(現・京王電鉄)、部品再生産・整備を国鉄・日本車輛の協力により行っています。館内にはこのほか、戦時中に中国大陸で実際に使用された戦闘機(ゼロ戦)や大砲なども保存されており、その他にも戦地から回収された遺留品などが多数展示されていますが、時間の関係上今回はパスしました。

■靖国神社の桜

靖国神社境内の桜
靖国神社境内の桜 ※クリックで拡大(1000*750px/289KB)

 前置きが長くなりましたが、今回の本題である桜です。靖国神社の境内にはソメイヨシノやヤマザクラなどの桜の木が約600本植えられており、毎年春になるとそれらの花が一斉に咲き、桜の名所として多くの人が花見に訪れます。この桜の一部は東京都の桜の標準木にも指定されており、この桜の開花を以って「東京で桜が開花した」と宣言しています。

靖国神社境内の桜。 現在ブログタイトル文字の背景画像として使用中。
靖国神社境内の桜。右は現在ブログタイトル文字の背景画像として使用中。
※クリックで拡大

靖国神社神門の菊の御紋と境内の桜 参道は千代田さくら祭りの主要会場となっており、多数の屋台が出店していた。
左:靖国神社神門の菊の御紋と境内の桜
右:参道は千代田さくら祭りの主要会場となっており、多数の屋台が出店していた。

※クリックで拡大

 九段下駅から靖国神社の本殿まで続く参道は千代田区観光まちづくり実行委員会や商工会などが主催する「千代田さくら祭り」のメイン会場にもなっており、多数の屋台が出店していました。また、今年は昨年3月に発生した東日本大震災の被災地復興支援の一環として、東北3県の特産品販売や観光PRなども行われました。

■千鳥ヶ淵の桜

千鳥ヶ淵の桜
千鳥ヶ淵の桜 ※クリックで拡大(1000*750px/156KB)

 地下に都営新宿線・半蔵門線が走る靖国通りを挟んで靖国神社と対面に位置するのが、東京のもう一つの桜の名所である「千鳥ヶ淵(ちどりがふち)」です。千鳥ヶ淵は江戸城を取り囲んでいた濠(ほり)のうち、九段下駅前にある田安門から内堀通りの千鳥ヶ淵交差点付近までのおよそ700mを指します。かつては南側にある半蔵濠ともつながっていましたが、1900(明治33)年に北の丸公園付近を横切る道路を建設するため一部が埋立てられ、分断されました。この千鳥ヶ淵沿いにはソメイヨシノやオオシマザクラなどが260本植えられており、毎年春になると100万人もの花見客が訪れる都内でもトップクラスのお花見スポットとなっています。

田安門前にある品川弥二郎像付近の様子 直進すると田安門。この日は日本武道館で法政大学の入学式が行われていたため学生が多かった。
左:田安門前にある品川弥二郎像付近の様子
右:直進すると田安門。この日は日本武道館で法政大学の入学式が行われていたため学生が多かった。

※クリックで拡大

 靖国神社と靖国通りを挟んで反対側にあるのが旧江戸城田安門です。田安門は1636(寛永13)年に造られたもので、現存する江戸城の建築物としては最古のものであり、国の重要文化財にも指定されています。この田安門を入ると左側に日本武道館があり、その先は科学技術館国立近代美術館がある北の丸公園があります。また、さらに先に行くと旧江戸城跡である皇居東御苑にも行くことができます。訪問した日はちょうど日本武道館で法政大学の入学式が行われており、写真の通り花見客と入り混じって混雑を極めていました。

▼関連記事
皇居外苑(日比谷~和田倉橋)(2007年12月1日作成)
皇居東御苑の紅葉(11月25日)(2007年12月3日作成)
北の丸公園の紅葉(11月25日)(2007年12月5日作成)

千鳥ヶ淵緑道の混雑 千鳥ヶ淵緑道から濠の中を見下ろす
左:千鳥ヶ淵緑道の混雑
右:千鳥ヶ淵緑道から濠の中を見下ろす

※クリックで拡大

靖国通りを西へ向かい、麹町消防署九段出張所の脇を南へ曲がると千鳥ヶ淵に沿う緑道に入ります。今年は桜の開花のタイミングが週末と重なったこともあり、千鳥ヶ淵緑道はご覧の通り九段下から半蔵門へ向かう花見客で大混雑となっており、落ち着いて花見を楽しめるような状況ではありませんでした。右の写真は密集する花見客の列の隙間から何とか見ることができた千鳥ヶ淵の濠の中の様子です。
 なお、千鳥ヶ淵には手漕ぎボートがありますが、訪問したのは人が少ない正午にもかかわらず、乗船までに2時間待ちとなっていました。この日は待ち時間が最高で3時間を超えることもあったようです。

千鳥ヶ淵緑道の桜は全体的に背が低く、至近距離で花を見ることができた。 桜の根元にはシャガの花が群生していた。
左:千鳥ヶ淵緑道の桜は全体的に背が低く、至近距離で花を見ることができた。
右:桜の根元にはシャガの花が群生していた。

※クリックで拡大

ボート乗り場の上にある展望台から半蔵門方面を見る。
ボート乗り場の上にある展望台から半蔵門方面を見る。
※クリックで拡大(3枚合成・1000*388px/75KB)

■千鳥ヶ淵戦没者墓苑

千鳥ヶ淵戦没者墓苑入口 遺骨は写真中央の六角堂に納められている。
左:千鳥ヶ淵戦没者墓苑入口
右:遺骨は写真中央の六角堂に納められている。

※クリックで拡大

千鳥ヶ淵の脇には「千鳥ヶ淵戦没者墓苑」があります。この施設は海外で戦死した日本人の遺骨うち、遺族がいないなど引き取り手が見つからないものを納める「無名戦没者の墓地」として、1959(昭和34)年に開設されました。2011(平成23)年10月現在で355,404名の遺骨が納められており、毎年5月に厚生労働省主催の慰霊行事が行われています。また、民間団体主催の慰霊行事も年間を通じて行われており、今回訪問時も公園内で奉仕団体・東京葵ライオンズクラブ主催による慰霊式典が開催されていました。

千鳥ヶ淵公園の枝垂桜
千鳥ヶ淵公園の枝垂桜

ここから先、半蔵門方面にも桜並木は続いており、そのまま皇居の周りを一周して日比谷駅や東京駅へ抜けることも可能です。このルートはジョギングコースとしても有名で、季節を問わず楽しむことができます。ゴールデンウィークのお出かけ先として考えてみてはいかがでしょうか?

▼参考
靖国神社(公式Web)
千鳥ケ淵戦没者墓苑[環境省]
千鳥ヶ淵戦没者墓苑(公益財団法人千鳥ケ淵戦没者墓苑奉仕会のページ)
皇居 秋葉原 丸の内 神保町 東京観光;千代田区観光協会
千代田さくら祭り2012公式ガイドMAP(現地配布の情報誌)

▼関連記事:東京都内の桜
●2007年
東中野の桜と中央線(2007東京さくら紀行[1])(2007年4月3日作成)
桜満開の井の頭公園(2007東京さくら紀行[2])(2007年4月5日作成)
神田川と井の頭線(2007東京さくら紀行[3])(2007年4月6日作成)
外濠の桜・市ヶ谷→飯田橋(2007東京さくら紀行[4])(2007年4月8日作成)
中央線と春の風景(2007東京さくら紀行[5])(2007年4勝ち9日作成)

●2008年
隅田川の桜1 - 昼の隅田川テラスを歩く(5)&2008年桜めぐり(1)(2008年4月4日作成)
隅田川の桜2 - 昼の隅田川テラスを歩く(6・終)&2008年桜めぐり(2)(2008年4月5日作成)
飛鳥山公園の桜 - 2008年桜めぐり(3)(2008年4月9日作成)
国立科学博物館付属自然教育園の桜 - 2008年桜めぐり(4)(2008年4月25日作成)

●2012年
目黒川の桜 - 2012年桜めぐり(1)(2012年4月9日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサード リンク
テーマ:東京都 ジャンル:地域情報
タグ:  靖国神社  遊就館  千鳥ヶ淵  桜  花見

カテゴリ:花・植物 の最新記事

青梅市梅の公園・・・今年限りで見納め(2014年03月28日作成)
千葉公園の大賀ハス2012(2012年07月12日作成)
靖国神社・千鳥ヶ淵の桜 - 2012年桜めぐり(2)(2012年04月17日作成)
目黒川の桜 - 2012年桜めぐり(1)(2012年04月09日作成)
清水公園(2011年5月8日取材)(2011年10月01日作成)
昇仙峡の紅葉(2010年11月21日取材)(2010年12月01日作成)
昭和記念公園の花々(2010年5月2日取材)(2010年09月13日作成)
神代植物公園(2010年5月2日取材)(2010年08月03日作成)
神宮外苑の銀杏並木(2008年12月15日作成)
養老渓谷の紅葉(2008年12月07日作成)
その他の記事はこちら

Facebookのコメント

コメント

コメント機能をご利用の際は必ず注意事項のページをご覧ください。
不適切な投稿内容は修正・削除される場合があります。また、内容によっては管理人からのレスが付かない場合がございます。確実に返信が欲しい場合はEメールをご利用ください。

管理者にだけ表示を許可する(管理人からの返信が付きません)


最新記事

首都圏外郭放水路庄和排水機場(2016/10/02)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016/09/10)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
月別アーカイブ

全記事タイトル一覧

お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

おすすめ記事

@takuya870625 Twitter