大崎駅(概説) - りんかい線東臨トンネル(29)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■JR埼京線とりんかい線の直通に至るまでの経緯
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 7ページ

 山手貨物線(湘南新宿ライン)の上下線間に割って入る形で地上に出たりんかい線は終点大崎駅に進入する。りんかい線の列車のうち約半数はここから山手貨物線経由で埼京線と相互直通運転を行っていることは、読者の皆様の周知の通りである。新宿駅から東武日光行きの特急列車が発着している今日では至極当然と思われそうなこの直通運転だが、実のところ計画当初はJR東日本は乗り気でなかったことが工事誌に記されている。
 東京臨海高速鉄道(以下、TWR)とJR東日本の協議はりんかい線の第一期区間開業よりも前の1991(平成3)年に開始された。東京臨海高速鉄道側は、東京の都市構造再編や広域的な鉄道ネットワークの整備が必要であるという観点から、埼京線との直通運転を望んでおり、それに必要な大崎駅の整備についてもTWRの負担で行うことを提案した。一方、JR東日本は相互直通運転に対して積極的な考えはなく、大崎駅での接続に関しても現行の用地内でのホーム設置は隣接する大井工場(現・東京総合車両センター)の大幅な改修が必要であることから、「TWR側で民有地を取得し、接続されたい」という事実上拒絶に近い返答がなされた。しかし、大都市で新たな公共事業の用地を取得する場合、用地買収に多大な時間を要することが通例であり、このままでは当初計画であった2001(平成13)年前後の開業に支障をきたす恐れがあった。第二期区間の概要の記事でも述べたとおり、りんかい線の建設費は2001年の開業を前提に臨海副都心の進出企業がその一部を負担しており、開業時期の大幅な延期は絶対に避けなければならない。そのため、TWRでは引き続きJR東日本と協議を続けた結果、若干であれば大井工場の施設縮小が可能であるとの結論に至り、当初の提案通りTWRが必要経費を負担することを条件に現在の大崎駅構内での接続について合意がなされ、1994(平成6)年3月に東京都・TWR・JR東日本の3者の間で「臨海副都心線第二期事業に関する基本覚書」が締結された。これにより、大崎駅はりんかい線と山手貨物線が直通可能な形で建されることとなったが、実際の相互直通については時期尚早であり引き続き検討することとされ、JR東日本は慎重な姿勢を崩さなかった。これは当時の山手貨物線は信号・設備が古く、他社線との直通を行うだけの余裕がなかったためと考えられる。

新宿駅を発車する湘南新宿ラインE231系と停車中の埼京線205系。
新宿駅を発車する湘南新宿ラインE231系と停車中の埼京線205系。2006年5月4日撮影

 この状況が一変したのは1999(平成11)年に直通運転へ向けた具体的な協議が開始されて以降である。当時、JR東日本社内では埼京線の混雑緩和などを目的に山手貨物線を活用し、新宿止まりとなっていた宇都宮・高崎線を横浜方面に延長する「湘南新宿ライン」の構想が持ち上がっていた。この湘南新宿ラインの運行にあたっては埼京線と山手貨物線が平面交差で分岐していた池袋駅の立体交差化、池袋~新宿間で埼京線のみが使用していたATC-6形(ATCバックアップ)のATS-P化、東京圏輸送管理システム(ATOS)の整備による運行管理のシステム化を併せて行い、旧態依然とした山手貨物線の設備を電車列車用に特化したものに改めることも計画された。これにより、山手貨物線の線路容量は以前と比べ格段にアップし、りんかい線の直通運転による列車本数の増加にも十分対応できるようになると予想された。この構想をもとにJR東日本では、りんかい線との直通を含め山手貨物線の運行体系を刷新する方針を固め、2001(平成13)年12月にTWRとの間で直通運転に関する覚書を締結し、埼京線との直通運転が正式に決定した。
 なお、この覚書締結と同月に行われたダイヤ改正より早くも湘南新宿ラインは運行を開始している。これは行き先・停車駅・本数・車両などが現在とはかなり異なっており、試験的な意味合いが強いものであった。

■大崎駅 12km246m
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 278~292ページ

●概説

より大きな地図で 東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル を表示

 りんかい線着工前の大崎駅は東側から順に山手線(電車線)の島式ホーム2面4線、山手貨物線(列車線・品川方面)の上下線、大崎支線(新鶴見方面)の中線と上下線、側線が4線という配線となっていた。このうち、大崎支線の上下線間にある中線は1996(平成8)年からりんかい線が開業する2002(平成14)年まで、恵比寿止まりの埼京線の折り返し線として使用されていた。また、西側にある側線群はかつて貨物列車が使用していたものであるが、りんかい線の乗り入れが決まった頃の山手貨物線は既に貨物列車がほとんど走っておらず、もっぱら保守用機材の留置線として使用されていた。

りんかい線着工前の大崎駅の配線
りんかい線着工前の大崎駅の配線 ※クリックで拡大

 りんかい線の乗り入れに当たってはこのうち大崎支線の中線と西側にある側線群を廃止し、島式ホーム2面4線を新設することとなった。工事は1999(平成11)年10月12日から開始され、合計25回に及ぶ線路切り替え工事が行われた。この間に一般軌道4.6km、普通分岐器24組、両渡り交差分岐器(DSS)1組を撤去し、新たに一般軌道3.3km、普通分岐器18組、両渡り分岐器(SC)3組を敷設した。線路切り替えの手順は以下の通りである。

りんかい線乗り入れに伴う大崎駅の線路切り替え工事の手順
配線図
※クリックで拡大
内容
第1回切替第1回切替

西側にあった側線群を使用停止にし、関連する線路・分岐器をすべて撤去する。また、第7回切替の準備のため、大崎支線と大井工場を接続する分岐線に線路と分岐器を追加しておく。
第7回切替第7回切替

撤去した側線跡に島式ホーム1面を建設し、そこに沿う形で大崎支線上下線・中線を移設する。また、蛇窪方は大崎支線上り線を大井工場側に移設し、りんかい線の敷設スペースを確保する。
第8回切替第8回切替

蛇窪方の大崎支線下り線を西側に移設する。この際、切替前の線路の一部は中線に通じる線路として残す。
第15回切替第15回切替

渋谷方にある山手線(電車線)と山手貨物線(列車線)の連絡線を撤去し、大崎支線との分岐部分を移設する。
第18回切替第18回切替

蛇窪方にある大崎支線上下線と中線との接続部分を片開き分岐器から両渡り分岐器に交換する。また、渋谷方は第15回切替で撤去した山手線と山手貨物線の連絡線を復旧する。
第24回切替第24回切替

大崎支線と山手貨物線の間に島式ホーム1面を新設し、大崎支線上り線を移設する。また、蛇窪方・渋谷方ともに分岐器を移設し、完成時の配線に切り替える。
第25回切替(完成)第25回切替(完成)

蛇窪方で地下から出てくるりんかい線と接続する。


山手貨物線は深夜帯でも貨物列車や回送列車が走っているため、いずれの切替工事も列車の時刻変更・運休により作業時間を確保したうえで工事を行った。第25回切替工事完了後は直ちにりんかい線から建築限界測定車が乗り入れ、構造物の寸法が間違っていないことを確認した。
 なお、新設されるホームは当初りんかい線の10両編成に合わせた全長210mとする計画であったが、実際の工事の段階になって15両編成対応の310mに延長している。これは言うまでもなく湘南新宿ラインを大崎駅に停車させるためである。また、軌道はいずれもPCまくらぎを使用したバラスト軌道を基本としているが、当初計画されていたホーム10両分の区間についてはTC型省力化軌道を採用している。これは従来より幅広のまくらぎを使用し、まくらぎとバラストを充填剤により一体化するもので、軌道の変形が少なくなるため省メンテナンス化が実現できる。TC型省力化軌道は当時すでに山手線で導入が進んでいたが、山手貨物線への採用に当たっては重量が大きい貨物列車が通過するため、充填材をセメント系モルタルからアスファルト系モルタルに変更し、強度アップを図ることとした。
 このTC型省力化軌道はその後首都圏の主要幹線全体に導入が進んでおり、都内のJR線ではほとんどがこの軌道構造となっている。

大崎駅橋上駅舎の拡張前後。ピンク色の部分が増築した部分。
大崎駅橋上駅舎の拡張前後。ピンク色の部分が増築した部分。なお、この図はりんかい線開業当時のもので、現在は階段・エスカレータの数量が若干異なっている。(開業後の変化については次回解説予定)
※クリックで拡大

 ホームの増設に伴い、大崎駅では線路上空にある駅舎も大幅に拡張が行われている。具体的には従来からある西口・東口の橋上駅舎に加え、南側(品川方)にもう一つ橋上駅舎を新設し、コンコースの大幅な拡張と東西自由通路を新設するというものである。新設される南側の自由通路は駅前にあるゲートシティ大崎・シンクパーク大崎とペデストリアンデッキ(歩道橋)で接続しており、改札内外とも地上に降りる階段にはエスカレータ・エレベータが新設されている。 この橋上駅舎の増築は山手線のホーム上空で行うことになるため、工事に当たっては線路上空に大型のタワークレーンを設置し、線路をまたいで資材の搬出入を行った。
 なお、この工事で新設されたエレベータのうち、山手線内回りホームと北側駅舎の東口に新設されたものについては公共施設のバリアフリー化促進の一環として品川区から補助を受けている。


(つづく) このエントリーをはてなブックマークに追加
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