大崎駅(現地写真) - りんかい線東臨トンネル(30)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■大崎駅 12km246m
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 278~292ページ

●概説
前回の記事を参照。

●現地写真
大崎駅5・6番線ホームから新木場・蛇窪方面を見る。
大崎駅5・6番線ホームから新木場・蛇窪方面を見る。

 りんかい線が乗り入れる大崎駅の5~8番線は全ての線路が渋谷方面・蛇窪(信)方面・りんかい線新木場方面のいずれにも進出入可能な配線となっている。南側は蛇窪方面と新木場方面の2方向に進出可能であるが、出発信号機は5番線のみ2進路分設置されており、そのほかの線路は信号機を1機のみ設置し、その下に進路表示器を設置することで大崎支線・りんかい線の進入方向を指示している。また、信号機に添えられている文字板の表記は5番線が「下本」、6番線が「中1」、7番線が「中2」、8番線が「上本」となっており、「○番線」という呼び名は旅客案内上の通称であるとみられる。

大崎駅ホーム端から地下へ進入していくりんかい線70-000形電車を見る。中央に見える錆びた橋桁は百反歩道橋。その奥では横須賀線・東海道新幹線が直交している。 百反歩道橋から大崎駅構内を見下ろす。
左:大崎駅ホーム端から地下へ進入していくりんかい線70-000形電車を見る。中央に見える錆びた橋桁は百反歩道橋。その奥では横須賀線・東海道新幹線が直交している。
右:百反歩道橋から大崎駅構内を見下ろす。

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 蛇窪(信)・新木場方は構内全体がカーブしている他、上を交差する横須賀線(品鶴線)・東海道新幹線の橋脚が建っているため、ポイント(分岐器)の設置場所に著しい制約を受けた。このため、両渡り分岐だけでなく、振分分岐などの特殊分岐器が多用されており、各分岐器の番数も小さく(開き角が大きく)なっているため、制限速度は30~65km/hと遅くなっている。また、同様な理由から分岐器以外の部分も曲線半径がめまぐるしく変化する複心円曲線となっている。

地下に入るりんかい線をさらにズームアップ。70-000形の左に見えるりんかい線上り~大崎支線下りの片渡り線の制限速度は30km/h。 大崎支線の脇を通る道路から地下に入るりんかい線の列車を見る。
左:地下に入るりんかい線をさらにズームアップ。70-000形の左に見えるりんかい線上り~大崎支線下りの片渡り線の制限速度は30km/h。
右:大崎支線の脇を通る道路から地下に入るりんかい線の列車を見る。

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大崎駅のホーム。右から順に5、6、7、8番線。
大崎駅のホーム。右から順に5、6、7、8番線。

 大崎駅の5~8番線ホームは15両編成対応の全長310mで、廃止した側線の用地内でホームを建設したため幅は標準で10m前後、最も狭い蛇窪・新木場寄りでは3m程度しかなく、直線にもなっていない。また、駅の北側で品川方面から来る山手貨物線の本線と合流するため、山手線(1~4番線)と比べホームが南にずれて設置されている。4本ある線路は外側2線が湘南新宿ラインとりんかい線・埼京線の直通列車、内側2線を大崎駅折り返しのりんかい線区間列車が主に使用している。また、4線全てが全方向に進出入可能である構造を生かして、ダイヤ乱れや工事の際には湘南新宿ラインの列車が渋谷方面・横浜方面に折り返し運転を行うこともある。
 なお、ホームのデザインや案内板は全てJR東日本のフォーマットとなっているため、一見すると全部がJR東日本の所有物であるように見える。しかし、工事誌によると実際は各ホームの全長・幅の半分ずつ、すなわち1/4は東京臨海高速鉄道の財産として設定されており、あくまでJR・TWRの共同所有という扱いとなっているようである。

ホーム中ほどにある軌道構造の変化地点。手前が通常のバラスト軌道、奥がTC型省力化軌道。 6・7番線の渋谷寄りにあるりんかい線・大崎支線終点を示すキロポスト
左:ホーム中ほどにある軌道構造の変化地点。手前が通常のバラスト軌道、奥がTC型省力化軌道。
右:6・7番線の渋谷寄りにあるりんかい線・大崎支線終点を示すキロポスト

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 ホーム部分の軌道は蛇窪・新木場方5両分が通常のPCまくらぎを使用したバラスト軌道、渋谷方10両分がTC型省力化軌道となっており、後者の方は太いまくらぎを使用している。前者の普通軌道部分については当初ただ砂利を盛るだけの一般的な構造とする計画であったが、工事段階になってTC型省力化軌道と同様の充填処理が追加で施されており、一般的なバラスト軌道と比べ省メンテナンス化が図られている。渋谷方のホーム端から1/3程度進んだ6・7番線の線路間には「12KM246Mりんかい線/2K018M大崎支線」と書かれた三角柱が立てられており、ここがりんかい線・大崎支線の正真正銘の終点となっている。

大崎駅北改札口を山手線側から見たところ。改札口を出て右に行くとニューシティ大崎。 北改札口をりんかい線・湘南新宿ライン側から見る。奥が旧来からある部分だが、リニューアルされており見た目では区別がつかない。
左:大崎駅北改札口を山手線側から見たところ。改札口を出て右に行くとニューシティ大崎。
右:北改札口をりんかい線・湘南新宿ライン側から見る。奥が旧来からある部分だが、リニューアルされており見た目では区別がつかない。

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 大崎駅の橋上駅舎は北側(渋谷方)と南側(品川方)の2群あり、双方の駅舎は山手線上空の通路でつながっている
 北側の駅舎の一部はりんかい線着工前からあったもので、増床・改札口の移設・5~8番線に通じる階段・エスカレーターの追加など大幅な拡張を行っている。この際、屋根や床などあらゆる部分を増築部分と同等になるようリニューアルしており、現状では既設の部分と増築部分を見分けることはほぼ不可能である。

南改札口。改札口を出て左に行くとゲートシティ大崎、右に行くとシンクパークである。 南改札口側の5~8番線の通路は開業後に階段を増設している。
左:南改札口。改札口を出て左に行くとゲートシティ大崎、右に行くとシンクパークである。
右:南改札口側の5~8番線の通路は開業後に階段を増設している。

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 南側の駅舎はりんかい線着工前は存在せず、全て新築したものである。改札口の前は東西自由通路となっており、左に進むとゲートシティ大崎、右に進むとシンクパークタワー・ソニーシティ大崎にそれぞれペデストリアンデッキ(歩道橋)で接続している。南側の駅舎から5~8番線ホームに降りる設備は開業当初エスカレータしかなかったが、周辺の再開発の進展により混雑が激しくなったため最近になって階段を増設している。この階段は幅も狭く、床の一部は縞鋼板を使うなどいかにも急ごしらえといえる作りとなっている。

南北の駅舎をつなぐ通路は「Dila大崎」の一部となている
南北の駅舎をつなぐ通路は「Dila大崎」の一部となている

南北の駅舎をつなぐ通路は幅が広く、「Dila大崎」としてBECK'S COFFEE(喫茶店)、ユニクロ、薬局などの店舗が数店設けられている。Dila大崎は上野・東京・品川などと並び駅構内における本格的なショッピングモールとしては最初期にオープンしたもので、今日のJR東日本の駅ナカビジネスの先駆けと言える施設である。

●駅データ
駅名:大崎(おおさき)
住所:東京都品川区大崎1丁目21-4
乗車人員(降車客を含まない):50,653人(2010年、東京臨海高速鉄道ホームページによる)
※JR東日本の乗車人員は126,436人(2010年度、JR東日本ホームページによる)
Web:大崎駅|りんかい線

■大崎駅構内の電力供給

 大崎駅の駅施設は前述の通りほとんどがJR東日本の仕様で造られており、調査開始当初は架線の電力もJR東日本が一括して供給・管理を行っているものと思い込んでいた。しかし、実際に現地を調査したところ、そのような簡単な設備ではないことが判明した。

大崎駅入口の架線。右のベージュの建物がJR品川変電所。 品川変電所建屋前に並ぶ出力端子
左:大崎駅入口の架線。右のベージュの建物がJR品川変電所。
右:品川変電所建屋前に並ぶ出力端子(超高解像度版:2500*1875px/474KB

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 大崎駅の南側、横須賀線の高架と交差した先にはJR東日本の品川変電所が存在する。この品川変電所は目の前を通る山手貨物線の他に山手線、横須賀線などこの付近一帯を走るJR東日本の線路全てに電力を供給する拠点となっており、変電所建屋には右の写真の通り合計13個もの出力端子が設けられている。

<品川変電所建屋の出力端子(左から順)>
品鶴線上り(新鶴見方面) ※横須賀線。
品鶴線下り(新鶴見方面) ※同上。
横須賀線下り(芝浦方面) ※上の送電区間との境界(エアセクション)は目黒川(信)付近にある。
横須賀線上り(芝浦方面) ※同上
山手貨物線上り(目黒方面)
山手貨物線下り(目黒方面)
山手線外回り(田町方面)
山手線内回り(田町方面)
山手線内回り(目黒方面)

山手線外回り(目黒方面)
山手電車区(2F)       ※山手電車区(現・東京総合車両センター)は2階建て構造。
山手電車区(1F)       ※同上
試(工場)            ※大井工場(現・東京総合車両センター)構内用

品川変電所前の山手貨物線の架線にはエアセクション※1が設置されており、大崎駅構内を含めここから北側は「山手貨物線」、南側が「品鶴線」の送電区分となっているようである。

▼脚注
※1 エアセクション:送電系統の異なる2本の架線を並行に張り、列車のパンタグラフへの電力供給を中断することなく送電系統を切り替える装置。ここにパンタグラフがかかった状態で発車しようとすると不完全接触・両系統の電圧差により大電流のアークが発生し、架線が溶断する場合がある。

▼関連記事
高崎線架線切断・・・原因とその対策(2007年6月22日作成)
→エアセクションでの発車時に架線を溶断した事故。これを契機に首都圏の各鉄道事業者ではエアセクション近傍に停車禁止を指示する標識が取り付けられた。

山手貨物線下り線に並行して大崎駅構内へ入る「構内専用」の送電線。 添え板のアップ
山手貨物線下り線に並行して大崎駅構内へ入る「構内専用」の送電線。右は添え板のアップ。
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 一方、品川変電所前で地下から出てくるりんかい線も同様にエアセクションがあるが、架線と並行するき電線※2は何故かここでは終わらず「構内専用」なる文字が書かれた添え板がつけられた上で線路の南側を並行し、断流器を挟んだ後今度は6・7番線上空を通るき電線に再度接続している。この6・7番線のき電線は北側は渋谷方のホーム端まで、南側は横須賀線と交差する付近まで延びているが、先ほど見た地下から出てくるき電線とは接続されておらず、大崎駅構内専用となっている。
 また、ここから大崎駅までの線路は山手貨物線とりんかい線を接続する多数の渡り線が設置されているが、渡り線上部の架線には全箇所にFRPセクション(絶縁体)が挟まれていて、4線ある線路は電気的に厳格に区分されているのである。文章ではわかりにくいので図で描くと以下のようになる。

▼脚注
※2 き電線:直流電化では低電圧・大電流を送電することになるため、通常の架線(トロリー線)だけでは発熱による損失(電流の2乗に比例)が大きくなり送電能力が不足する。これを防止するため、架線と並行して太い送電線を配置し、一定間隔で架線と接続し、送電ルートを増やすことにより容量アップを図っている。なお、交流電化では一般に送電電圧が直流電化の10倍以上と高く、同じ電力を送電する場合でも電流が少なくなるため、き電線を設置しない場合もある。

大崎駅構内の架線設備の詳細図
大崎駅構内の架線設備の詳細図 ※クリックで拡大

図中の太い線が線路上部の架線(列車のパンタグラフが接触する部分)、細い線がき電線で、オレンジ色の部分はJRが電力を供給している部分、濃い水色の部分はりんかい線が電力を供給している部分である。6・7番線のき電線は図が複雑になりすぎるため省略している。そして、最大の特徴が大崎駅入口にある断流器で、この部分は「構内専用」と書かれた電線と山手貨物線のき電線から分岐した電線の2つが延びており、通常は山手貨物線側のみスイッチが投入されている。(この断流器は公道に面しており、駅の外からでも容易に確認できる。下記写真。)

大崎駅ホーム入口にある電力供給の切り替えスイッチ
大崎駅ホーム入口にある電力供給の切り替えスイッチ。
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 実はこの設備、大崎駅の6・7番線にりんかい線と山手貨物線両方から電力供給を可能にするための物なのである。なぜこのような設備としたのかを場合分けして解説していくこととしたい。

(1)通常時(JRから電力供給)
通常時(JRから電力供給)

先ほども触れたとおり、通常時の大崎駅の断流器は山手貨物線側のみスイッチが投入されている。この場合、大崎駅6・7番線の架線はJR東日本の品川変電所から電力が供給されることになる。

(2)りんかい線の停電時(JRから電力供給)
りんかい線の停電時(JRから電力供給)

この状態でりんかい線で停電が発生した場合でも地下のトンネルと地上の大崎駅構内はエアセクションで区分されているため、大崎駅構内は4線全てに電力供給が継続できることになる。これにより本来であれば大崎駅からりんかい線に直通する埼京線の列車を6・7番線で新宿方面に引き返させるといった運行が可能となる。

(3)山手貨物線の停電時(TWRから電力供給)
山手貨物線の停電時(TWRから電力供給)

今度は逆にJR側で停電が発生した場合である。この場合、大崎駅の断流器をりんかい線の構内専用き電線に接続することで6・7番線にはりんかい線から延長給電することが可能となる。これにより停電のため当駅から渋谷方面の運行ができなくなった場合でも6・7番線のみを使用することでりんかい線内の運行は通常通り維持できる

(4)6・7番線のみを停電させる
6・7番線のみを停電させる

次に大崎駅入口の断流器を山手貨物線側・りんかい線側ともに開放した場合である。この場合、6・7番線とりんかい線の間にはエアセクションがあり、両側を通る湘南新宿ラインとの間にもFRPセクションがあるため、6・7番線への電力供給を完全に断つことができる。このパターンを使う例としては運行中に列車のパンタグラフが破損してしまい、大崎駅に収容して列車の屋根に作業員が登り、点検・応急処置を行う場合などが考えられる。

6番線のみを停電させる

ちなみに、大崎駅にある6・7番線の断流器はそれぞれ個別に投入・開放が可能となっており、片方の線路だけ停電させることもできるが、その場合でも新木場方のポイントは使用できず折り返し機能が失われるため特に利点は無い。

大崎駅の電力設備をわざわざこのような大掛かりなものにしたのは、双方の事業者で運行トラブルが発生しても相手方に影響を及ぼさないための工夫であると考えられる。特に、湘南新宿ラインは首都圏の広範囲にわたって運行されていることから、遠方で発生したトラブルの影響を受けやすい。りんかい線の開業当時はまだ池袋駅の立体交差化が未完成で運行本数は少なかったが、当時から現在の大量運行を目論み、線路・信号・電力などあらゆる設備で周到な準備を重ねていたことが窺える。来る2015(平成27)年には新たに湘南新宿ラインと相模鉄道(相鉄)の直通運転が開始される計画となっており、こういった設備の重要性はますます高まっていくものと思われる。

【修正履歴】
2013年11月13日:大崎駅ホーム入口の送電切り替えスイッチの写真を追加

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