東急東横線5050系副都心線対応車

東急5050系4000番台フロントのナンバー表記

今年度末に予定されている東急東横線と東京メトロ副都心線の直通運転に向けた動きについての続きです。ラストの今回は東横線の主力車両である東急5050系電車の副都心線乗り入れ対応車についてお伝えします。

▼関連記事
東急東横線地下化工事&渋谷ヒカリエ開業(2012年4月取材・その1)(2012年5月11日作成)
東急東横線地下化工事&渋谷ヒカリエ開業(2012年4月取材・その2) (2012年5月12日作成)
東急東横線・みなとみらい線10両化工事(2012年4月取材)(2012年5月17日作成)

■東急5000系の概要

田園都市線5000系 横浜高速鉄道みなとみらい線Y500系
目黒線5080系 車内のドア上部にある液晶ディスプレイ
左上:田園都市線5000系。2008年1月1日、あざみ野駅で撮影
右上:横浜高速鉄道みなとみらい線Y500系。2007年9月8日、代官山駅で撮影
左下:目黒線5080系。2007年9月8日、多摩川駅で撮影
右下:車内のドア上部にある液晶ディスプレイ。2012年4月30日撮影

※クリックで拡大

 東急5000系電車は1970~1980年代に造られた8000系・8500系などの古い車両の置き換え用として2002年から田園都市線で導入が進められている車両です。5000系はJR東日本の低コスト車両であるE231系の設計をベースに、目黒線用の3000系で導入されていたシステムを一部加えたもので、従来の8000系列と比較して走行性能が向上している他、回生ブレーキの改良(全電気ブレーキ化)により省エネルギー化が図られています。また、車内は各乗降ドア上部に案内用の液晶ディスプレイを2基備えている他、導入当初より日本語・英語対応の自動放送を設置するなどサービス面でも改善が図られています。田園都市線は混雑が激しいため、5000系の導入に合わせて6ドア車の導入も進められており、一部の編成では10両中3両(4・5・8号車)が6ドア車となっています。
 東横線5050系目黒線5080系横浜高速鉄道みなとみらい線Y500系はいずれもこの5000系の派生車両であり、各路線の実情に合わせて搭載品の仕様が変更されています。ただし、基本的な走行性能は同一で混用可能であり、田園都市線の6ドア車組み込みで余った中間車の一部は東横線の新造編成に組み込まれて使用されています。
 また、大井町線の急行列車専用車両である6000系や池上線・多摩川線の7000系はこの5000系をベースにした車両で、これらの車両における改良点を5000系に逆移入するといったことも行われています。このため、5000系は同一系列を名乗りつつも、初期に製造された編成と最近製造された編成で一部仕様が異なっています。(例えばドアの窓の複層ガラス化など。)

▼関連記事
みなとみらい線~港ヨコハマのシンボル~(2006年6月27日作成)
東急東横線・目黒線(多摩川駅)(2007年9月19日作成)
東急7000系(新)(2008年3月4日作成)
東急大井町線急行と6000系電車の概要(2008年8月18日作成)


■東横線5050系副都心線対応改造

東急5050系渋谷ヒカリエ開業記念ラッピング編成
東急5050系渋谷ヒカリエ開業記念ラッピング編成。2012年4月21日、代官山駅で撮影

 東横線5050系は導入当初より台車中継弁※1を採用するなど、将来の副都心線直通に向けた準備がなされていました。2010年頃からはこれをさらに深度化させ、副都心線内で使用するATO(自動列車運転装置)を本搭載した新造車が現れるようになりました。さらに昨年からはグループ会社だった東急車輛製造(現・総合車両製作所)を動員し、既存の編成についてもATOの追加搭載をはじめとする副都心線乗り入れ対応に向けた改造が開始されています。

ATO搭載前の運転台 ATO搭載後の運転台。計器類の配置が大幅に変化している。
左:ATO搭載前の運転台。2011年1月9日撮影
右:ATO搭載後の運転台。計器類の配置が大幅に変化している。(ボタン・計器の機能を加えた高画質版
2枚とも2012年4月30日撮影

※クリックで拡大

 従来車と副都心線対応改造車の一番の違いは運転台です。従来の5000系の運転台は計器パネル中央の速度計の両側に機器の動作状態を表示するLEDランプが並んでおり、左側には主回路電流計と元空気溜(MR)・ブレーキシリンダ(BC)圧力計とブレーキ段数表示のLEDランプ、右側にTISの液晶モニタという配置となっていました。
 副都心線対応車では速度計両側のLEDランプが全廃され、代わりに左側にもう1つ液晶モニタを追加してそこに全ての機器の動作状態を表示する形に変更されています。追加されたモニタの表示内容は従来からあるATCに関するものの他に、「ホームドア」「TASC」などATO特有のものも多く見られます。このモニタの設置に伴い、従来その場所にあった主回路電流計とMR・BC圧力計は右側に移設されています。また、ハンドル周囲のボタンの配置にも変化しており、副都心線内のワンマン運転時に使用する出発ボタン(2個※2)やドアの開閉ボタンに加え、乗り入れ先の東武東上線で使用するATS復帰ボタン※3や行路表の照明スイッチ※4などが追加されています。さらに、運転席の頭上には副都心線内のワンマン運転時に使用するホーム監視用のモニタが設置され、フロントガラスは上部はモニタの視認性向上のため黒い遮光フィルムが貼られました。
 これらの運転台の仕様は乗り入れ先を走る西武6000系と酷似したものとなっています。異社間の乗り入れでは乗務員に対する負担の軽減のため、機器類の取り扱い方法を極力統一することが多く、今回もその例に倣ったものと考えることができます。

乗務員室と客室の仕切りドア上部に新設された「通行可」の表示灯 渋谷方先頭車5150形の床下に搭載されたATO装置と台車中継弁(右のエアタンク)
左:乗務員室と客室の仕切りドア上部に新設された「通行可」の表示灯。2012年4月30日撮影
右:渋谷方先頭車5150形の床下に搭載されたATO装置と台車中継弁(右のエアタンク)。2011年6月19日撮影

※クリックで拡大

 この他の変化としては先頭車の乗務員室・客室を仕切るドアの電磁鎖錠化と床下へのATO装置搭載が挙げられます。
 電磁鎖錠はワンマン運転中に非常事態(大地震による緊急停止や列車内での火災など)が発生し、車外への避難が必要になった際に乗務員室と客室を仕切るドアの鍵を自動で解錠するシステムで、ドア上部の壁には解錠中であることを表示するランプが設置されています。
 また、ATO装置本体の機器箱は渋谷方先頭車(5150形)の後部台車付近に設置されています。ATO装置と地上子からの情報を受信する車上子はこちら側の先頭車のみに搭載されており、反対側の先頭車が先頭に立つ場合、編成内に引き通されている回線を通じて制御内容を転送するようになっています。これは現在副都心線で運用中のメトロ・西武・東武の車両も同様です。(副都心線内の地上設備はこれを見越した構成になっており、例えば駅のATO地上子は走行方向に関係なく和光市方にオフセットして設置されている。)

▼脚注
※1 台車近傍にブレーキ用のエアタンクを搭載し、ブレーキの応答性・精度を向上させる仕組み。ATOによる自動操縦時はブレーキ段数を20段以上に多段階化し、停止位置精度の向上を図る。
※2 出発ボタンだけは誤操作を防止するため2個を同時に押した時のみ動作する。
※3 東武東上線は2015年度に池袋~小川町間がATC(T-DATC:詳細は後日記事化予定)に変更される予定だが、5050系がそれに対応しているかは不明である。
※4 東武鉄道はJR東日本に似た大型の行路表を使用する。

■10両編成の5050系(4000番台)

5050系4000番台。
5050系4000番台。2012年4月30日、菊名駅で撮影。

 5050系の既存の編成の改造が進められる一方、新規製造による副都心線乗り入れの準備も続けられています。前回の記事でお伝えしたとおり、副都心線直通開始後の東横線は優等列車が10両編成で運行される予定となっており、昨年からは10両編成の5050系の製造が開始されています。この10両編成の5050系は以下に示すとおり、既存の編成とは若干仕様が異なるため番号が4000番台に区分されており、現在は一部編成が6・7両目(4600・4700)を抜いた8両編成となり、東横線で運用されています。(一部では「4000系」と呼ばれているが、これはあくまで俗称であり正式名称ではない。)

5050系4000番台の車内。既存編成と大幅な違いは無いが、荷物棚はアルミの板材に変更された。 ドア上の液晶ディスプレイはサイズが拡大された。
左:5050系4000番台の車内。既存編成と大幅な違いは無いが、荷物棚は板材に変更された。
右:ドア上の液晶ディスプレイはサイズが拡大された。2012年4月30日撮影

※クリックで拡大

 5050系4000番台の基本的な仕様は既存の編成とほぼ同じですが、車内については座席上の荷物棚がステンレスの網からメッシュ状の板材に変わったほか、ドア上部の液晶ディスプレイが17インチのワイド画面(アスペクト比16;9)に拡大されるなど、JR東日本のE233系に近い仕様となっています。液晶ディスプレイは表示内容も変更されており、右側の次駅・乗換案内は東京メトロ16000系や東武50070系の最新編成などと同じく滑らかなアニメーション表示が可能となっています。左側のディスプレイは配信される動画がまだワイドサイズのディスプレイに対応していないためか、常時「ご乗車ありがとうございます。」の文字のみを表示しています。

■乗り入れ先での試運転も始まる

 東急東横線と副都心線の間は渋谷~代官山間の地下化が未完了であるため、まだ線路がつながっていませんが、東急の車両の乗り入れ先での試運転はすでに開始されています。これは東京メトロ南北線と有楽町線が市ヶ谷駅構内の連絡線を介してつながっているのを利用したもので、車両は「東横線→目黒線→南北線→有楽町線→副都心線(→西武池袋線・東武東上線)」というルートで回送しています。また、東京メトロ・西武・東武の車両がこのルートを逆に進んで東横線内に入り、試運転を行う場合もあります。
 筆者は残念ながらまだこれらの試運転を目撃する機会を得られていませんが、撮影が出来次第この記事もしくは新しいきじとして追加したいと思います。

▼参考
交友社「鉄道ファン」 2002年6月号・2011年7月号
「東急5050系 副都心線 試運転」の検索結果(Google)
※検索結果に表示されているページの内容は正確であるとは限りません。参考にされる際は十分ご注意ください。

▼関連記事
●東急東横線内の動き
地下鉄副都心線建設状況4・・・東急東横線へ(2007年6月10日作成)
渋谷駅 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(13)(2008年6月25日作成)
東急東横線代官山~渋谷間地下化工事(2009年3月21日取材)(2009年11月12日作成)
東急東横線地下化&10両編成対応化工事(2010年3月20日取材ほか)(2010年4月19日作成)
東急東横線代官山~渋谷間地下化工事(2011年1・6月取材)(2011年6月30日作成)
東急東横線・みなとみらい線10両編成対応化工事(2011年1・6月取材)(2011年7月3日作成)
東急東横線地下化工事&渋谷ヒカリエ開業(2012年4月取材・その1)(2012年5月11日作成)
東急東横線地下化工事&渋谷ヒカリエ開業(2012年4月取材・その2) (2012年5月12日作成)
東急東横線・みなとみらい線10両化工事(2012年4月取材)(2012年5月17日作成)

●副都心線で運用中の車両
副都心線を走る車両 - 地下鉄副都心線全線全駅レポート(9)(2008年6月22日作成)
西武6000系東京メトロ副都心線直通改造車(2007年5月22日作成)
東京メトロ10000系の車内(2007年5月12日作成)
【速報】東京メトロ10000系撮影会(2006年9月30日作成)

▼おすすめ商品(by Amazon.co.jp)
東急ステンレスカーのあゆみ (キャンブックス)東急ステンレスカーのあゆみ (キャンブックス)
(2010/10/29)
荻原 俊夫

商品詳細を見る
日本の私鉄 東京急行電鉄日本の私鉄 東京急行電鉄
(2011/01/27)
広岡 友紀

商品詳細を見る
東急東横線・みなとみらい線 渋谷~横浜~元町・中華街 往復(Blu-ray Disc)東急東横線・みなとみらい線 渋谷~横浜~元町・中華街 往復(Blu-ray Disc)
(2010/12/21)
ビコム ワイド展望

商品詳細を見る
NゲージNO.63 東急5050系NゲージNO.63 東急5050系
(2010/09/26)
トレーン

商品詳細を見る


2012年10月14日:改造前の運転台画像を差し替え このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサード リンク

カテゴリ:東急電鉄 の最新記事

東横線・副都心線直通に向けた車両の動き(2012年9・10月取材)(2012年10月17日作成)
東急東横線5050系副都心線対応車(2012年05月20日作成)
東急大井町線急行と6000系電車の概要(2008年08月18日作成)
東急7000系(新)(2008年03月14日作成)
東急池上線(2008年03月13日作成)
東急大井町線開業80周年記念ヘッドマーク列車(2007年10月10日作成)
東急東横線・目黒線(多摩川駅)(2007年09月19日作成)
東急多摩川線(2007年09月18日作成)
東急世田谷線(2007年03月02日作成)
渋谷駅前に「青ガエル」東急5000系出現!(2006年10月26日作成)
その他の記事はこちら

Facebookのコメント

コメント

有楽町線にて
本日、有楽町駅にて、4000番台が営業運転中であるのを目撃しました。いつの間に、といった感覚です。
2012/09/14 16:34 | URL | 投稿者:krs13
Re: 有楽町線にて
krs13様

9月初めより、副都心線関連の試運転のため直通先に貸し出されている車両が続々と営業運転を開始しているのを確認しております。目撃された東急5050系の副都心線・西武池袋線・東武東上線での運行に加え、東横線では9月上旬から下旬にかけて東京メトロ10000系が営業運転を行っており、私も乗車しました。現在は車両が入れ替わり、東京メトロ7000系が営業運転を行っている模様です。
2012/10/03 19:03 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
コメント機能をご利用の際は必ず注意事項のページをご覧ください。
不適切な投稿内容は修正・削除される場合があります。また、内容によっては管理人からのレスが付かない場合がございます。確実に返信が欲しい場合はEメールをご利用ください。

管理者にだけ表示を許可する(管理人からの返信が付きません)


最新記事

首都圏外郭放水路庄和排水機場(2016/10/02)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016/09/10)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
月別アーカイブ

全記事タイトル一覧

お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

おすすめ記事

@takuya870625 Twitter