八潮車両基地(東臨運輸区) - りんかい線東臨トンネル(33)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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■第二期区間開業前の車両保守と車両基地用地の選定
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 338・339ページ

 続いて、りんかい線の車庫である八潮車両基地(東臨運輸区)について解説するが、その前に第二期区間開業以前のりんかい線の車両保守と八潮車両基地が現在の場所にできるまでの経緯について見ておくこととしたい。
 りんかい線第一期区間開業時は車両基地として利用できる場所が一切なかったため、当初は新木場駅で線路がつながっているJR京葉線の新習志野駅付近にある京葉電車区(現・京葉車両センター)の一部を借地し、車両の留置を行うことや、JRに列車検査を委託することを計画していた。しかし、この時期になると京葉線の利用者数も増加し、京葉電車区でも収容能力一杯の車両を保有する状態となっており、一時的とはいえ新たな車両の留置場所を確保するのは困難となっていた。りんかい線の第一期区間開業時は車両数が4編成16両しかないことから、留置と列車検査は自社で行うこととし、東京テレポート駅大崎方(台場第3トンネル内)の下り線に全長130mの検修線・洗浄線、上り線に全長170mの留置線を設置した。また、月検査、重要部検査、全般検査はJR東日本に委託することとし、京葉電車区や大井工場(現・東京総合車両センター)にて実施された。(大井工場へ回送する際は折り返しの都合で外房線誉田駅まで入ることもあった。)

八潮車両基地の建設場所
八潮車両基地の建設場所
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(平成元年)より抜粋

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 一方、全線開業後は車両数が10編成80両(当初10両編成5本+6両編成4本、現在は10両編成8本)に増えることから、本格的な車両基地を用意することが必須となった。車両基地の場所の選定にあたっては本線から近い場所を前提として検討していたが、臨海副都心側は既に開発計画が固まっていたこと、第二期区間側についても既に成熟した都市であることから、車両基地として使用できるようなサイズの土地を確保することは困難であった。そのほかの場所としては東京貨物ターミナル駅構内、国際救援センター(2006年閉鎖)敷地内、東京都みなとが丘ふ頭公園地下、青空野球場敷地内(東京都港湾局所有)の4か所を候補地としていたが、各企業・省庁などとの利害関係調整やコストの問題から、協議が難航していた。
 その後、大崎駅におけるJR埼京線との直通運転に関する協議の中で、JR東日本から東京都・東京臨海高速鉄道に対し、東京貨物ターミナル駅海側の一部を車両基地用地として斡旋するとの申し出がなされた。現地は東海道貨物線下り線と東京都みなとが丘公園・大田区道に挟まれた南北に細長い土地で、貨物線を若干山側に移設することにより、車両基地の建設が可能であった。また、既設の京葉線のトンネルを有効活用できることから、工期・こすとともに大きく低減できる利点もあり、この場所を車両基地の建設用地として選定することとなった。
 なお、重要部検査・全般検査については車両基地の面積が狭いため必要な設備を設置できないことや車両数が少なく、検査にかかる日数も年間60日程度と少ないことから引き続きJR東日本に委託することとされた。ただし、大崎駅で線路がつながったことから、京葉線・総武線を経由する大回りの回送は解消された。

■八潮車両基地(東臨運輸区)
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 339~343ページ

●概説
 八潮車両基地が建設されたのは東京貨物ターミナル駅・新幹線大井車両基地をまたぐ大井中央陸橋の海側で、敷地面積は約2万8千平方メートル、幅は18~41m、全長は1313mで南北に細長い形状となっている。構内は車両を留置することから、全長に渡りレベル(水平)となっている。工期は1998(平成10)年6月~2000(平成12)年3月までの21ヶ月間で、東海道貨物線に隣接していることから分離柵を設置して工事を行った。(ただし、東海道貨物線は当時すでに休止中で列車は走っていなかった。)この場所は昭和40年代に埋め立てが行われた場所で、貨物線の車庫として使われていたこともあったが、地盤が非常に軟弱であったことから、各種の改良・補強が行われている。

八潮車両基地の構内の施設
八潮車両基地の構内の施設
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 車両基地の施設は敷地が南北に細長いことから、検修庫と留置線を直列に配置している。北側には屋外に車体の清掃を行う洗浄線があり、検修庫の中には列車検査と車輪転削を行う線路月検査を行う線路が1線ずつ設置されている。また、列車検査・転削線の延長上には架線が無い修繕線が設けられており、故障発生時はここで機器を取り外し・分解して修理することも可能となっている。南側には全長400mの留置線が3線設置されており、それぞれ10両編成の列車を2本直列に留置可能となっている。また、将来の車両数が増加した場合は海側にある作業用の道路を留置線に転用可能となっている。本線に接続する入出庫線は南北の設備の境界付近に接続しており、入出庫線上には洗車機(水洗・薬洗1機ずつ)とパンタグラフ・車輪の損耗状態を監視する装置が設置されている。各機器の詳細は以下の通り。
八潮車両基地構内の設備(工事誌341ページ 表5-7-2-2)
設備名仕様
車輪転削機在姿型フライス盤。車輪フラット※1・フランジ※1直立摩耗を修正する。
リフティングジャッキ車両全体または台車単体を昇降させる装置。通常は床下に格納。
天井クレーン検査時に車輪・主電動機・冷房装置など重量機器の取り外し・運搬に使用する。
集塵装置(移動式)月検査線に設置。ピット内を自動走行し、気吹※3を行う場所まで移動する。
集塵装置(カートリッジ式)検修庫内に設置。主電動機・車内ラインデリアの機器清掃に使用。
車体洗浄機(水洗・薬洗)コンピュータに指定列車を入力することで、該当列車の入区時に自動的に洗車を行う。
パンタグラフ自動計測装置架線上部に配置した超音波センサーにより、パンタグラフ擦り板の摩耗量・欠けなどを測定する。
車輪自動計測装置車輪踏面・側面をCCDカメラにより撮影し、光ファイバーにより事務所に寸法データを転送する。
車両管理システム車両の検査計画・清掃計画・運用計画・履歴管理・資材管理などを行うコンピュータ。
構内機器故障表示器車両基地内の設備に不具合が発生した場合にそれを知らせる装置。

▼脚注
※1 車輪フラット:ブレーキ時に車輪が滑走(ロック)することにより車輪踏面に水平の摩耗痕ができてしまう現象。
※2 フランジ:車輪の内側にある突起(直径が大きい部分)。曲線走行時はレール側面に接触するため、垂直に摩耗する。
※3 気吹:機器内に付着した埃を圧縮空気により吹き飛ばすこと。

なお、修繕線は4両分、車輪転削線は6両分の有効長しかないため、使用する場合は編成の分割が必要である。また、車輪転削機は他社で一般的な旋盤ではなく、フライス盤(回転式の刃を当てて削る方式)となっているが、これは東京臨海高速鉄道側の要望によるものである。

●現地写真
※すべて2011年7月23日撮影

東京貨物ターミナル駅へ向かう踏切から八潮車両基地構内を見る。車両基地入口には保守機材線が設置されており、この日はバキュームカーを載せた貨車がとまっていた。 東京貨物ターミナル駅へ向かう踏切から八潮車両基地構内を見る。車両基地入口には保守機材線が設置されており、この日はバキュームカーを載せた貨車がとまっていた。
東京貨物ターミナル駅へ向かう踏切から八潮車両基地構内を見る。車両基地入口には保守機材線が設置されており、この日はバキュームカーを載せた貨車がとまっていた。
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 八潮車両基地は前回入出庫線のトンネル入口を撮影したJR東日本大井ふ頭変電所のすぐ先から始まる。車両基地に入ってすぐのところの入出庫線脇には保守用車両の留置線があり、終電後にここからトンネル内に入り、保守作業を行っている模様である。この日はバキュームカーを載せた貨車が置かれていたが、これはトンネル内の清掃作業に使うものだろうか?

大井中央陸橋から車両基地北側を見る。右端の洗浄線では70-000形の洗車が行われていた。右側の森はみなとが丘ふ頭公園。 同じ陸橋から車両基地南側を見る。奥留置線が3本設置されている。
左:大井中央陸橋から車両基地北側を見る。右端の洗浄線では70-000形の洗車が行われていた。右側の森はみなとが丘ふ頭公園。
右:同じ陸橋から車両基地南側を見る。留置線が3本設置されている。

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 続いて、車両基地中央の上空を横切る大井中央陸橋から車両基地を眺める。
 北側には本線へ続く入出庫線、検修庫、洗浄線が設置されている。2基ある洗車機はいずれも入出庫線状に設置されており、入出庫の際は必ず通過しなければならない配置となっている。洗車は入区時のみ行うため、排水溝も洗車機の車両基地側にしか設置されていない。検修庫は北側に向かって敷地の幅が広がるため、建屋の幅もそれに合わせた形状となっている。洗浄線は一番海側にあり、線路両側に作業用の台が設置されている。
 南側は全長に渡り留置線が3線設置されており、それぞれ10両編成の列車が直列に2本留置可能となっている。この留置線は自社車両の他に直通先のJR埼京線の車両も入ることがある。

留置線の奥にはJR埼京線205系と70-000形が停車中。
留置線の奥にはJR埼京線205系と70-000形が停車中。

留置線の脇には作業用の道路があり、将来車両数が増えた場合はこの道路を留置線の軌道敷として転用可能である。留置線の線路番号は北側半分が2-1、3-1、4-1、南側半分が2-2、3-2、4-2となっており、未敷設の1線分が欠番となっている。留置線の車止めは本線との分岐点から4260m地点(新木場駅起点のキロ程は11km113m)となる。
 なお、留置線海側を並行している公道は品川区と大田区の区界となっている。


東京臨海高速鉄道りんかい線東臨運輸区車両入換作業 - YouTube 音量注意

■おまけ

八潮車両基地脇の東海道貨物線は開発中の軌道の試験敷設(?)が行われていた。 上空は羽田空港を離着陸する航空機が頻繁に横切っていく。
東京貨物ターミナル駅を挟んだ反対側は東海道新幹線大井車両基地。奥には923形「ドクターイエロー」が見える。 先頭部は形状が複雑なため手作業で洗車が行われていた。
左上:八潮車両基地脇の東海道貨物線は開発中の軌道の試験敷設(?)が行われていた。
右上:上空は羽田空港を離着陸する航空機が頻繁に横切っていく。
左下:東京貨物ターミナル駅を挟んだ反対側は東海道新幹線大井車両基地。奥には923形「ドクターイエロー」が見える。
右下:先頭部は形状が複雑なため手作業で洗車が行われていた。

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 八潮車両基地脇の東海道貨物線はやはり休止後放置されており、一部は保守基地や新しく開発中の軌道を試験的に敷設するスペースに転用されていた。試験用に敷設されていた軌道はスラブ軌道であることや、軌間が在来線の物より広いことから、新幹線で使うことを意図したものであるようだった。
 東京貨物ターミナル駅を挟んだ反対側は東海道新幹線の大井車両基地となっている。品川駅前にあった車両基地が廃止されて以降はここが東海道新幹線の東京側の唯一の車両基地となっており、敷地面積・車両数とも非常に大きなものとなっている。大井車両基地上部の陸橋は物を投げ込まれたりしないよう、網目の細かい柵で囲まれており、内部の様子はよく見えないが、辛うじて検修庫内で洗車が行われていることが確認できた。新幹線の先頭部は空力的な性能が要求されることから非常に複雑な形状となっており、機械による洗車が困難であるため、モップや雑巾を使った手洗いが行われていた。
 なお、この大井埠頭地区は羽田空港のすぐ近くにあることから、上空を数分間隔で航空機が行き交っており、高度が低いことから肉眼でもその姿を明瞭に見ることができる。

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