東横フラワー緑道(東急東横線廃線跡)

東横フラワー緑道

東京メトロ副都心線の直通が迫り、話題の多い東急東横線ですが、反対側の横浜側では2004年にみなとみらい線との直通運転開始に伴い、地下化されてできた廃線跡の遊歩道化が進んでいます。今回は遊歩道が完成した東白楽~横浜間を中心にこれらの廃線跡の現状をお伝えします。

■東横線・みなとみらい線直通開始と地下化

みなとみらい線Y500系 みなとみらい線元町・中華街駅。みなとみらい線は独特なデザインの駅が多い。
左:みなとみらい線Y500系。2012年6月21日、代官山駅で撮影
右:みなとみらい線元町・中華街駅。みなとみらい線は独特なデザインの駅が多い。2011年6月19日撮影

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 2004(平成16)年2月1日に横浜高速鉄道みなとみらい線(みなとみらい21線)横浜~元町・中華街間が開業し、東急東横線との直通運転が開始されました。この直通運転開始に伴い、東横線東白楽~横浜間は地下化され、横浜~桜木町間は廃線となりました。
 地下化された東白楽~横浜間は全線にわたり既設の線路の地下にトンネルが建設されており、反町(たんまち)駅付近は地上への影響を避けるため、都市部では珍しいNATM工法(新オーストリアトンネル工法)が採用されています。また、地下線への切り替えはみなとみらい線開業前々日の1月30日終電後から翌31日初電までの一晩で行う必要があったため、地下線接続部分の軌道は取り外し可能な桁構造とし、当日は降下・スライドさせるだけで地下線への切り替えを行いました。翌31日の初電までの間に行われ、31日は渋谷~横浜間のみの臨時運行(横浜~元町・中華街間は試運転を兼ねた回送運転)を行い、2月1日に予定通りみなとみらい線の開業を迎えました。

▼参考
みなとみらい線との相互直通運転に伴う東急東横線地下化事業 - 東急電鉄
アップデートされる交通インフラ - KAJIMAダイジェスト2004年9月
東横線とみなとみらい線の相互直通運転に伴う地下化工事 - 東急軌道工業株式会社・ライブラリー



 2004年の地下化後、東白楽~横浜間の線路跡は別用途への転用が開始されており、横浜駅構内は高架橋が取り壊され、横須賀線ホームの拡幅スペースとして利用されています。また、これ以外の部分は横浜市都市整備局・神奈川区が管轄しており、地域住民との協力の下、遊歩道化が進められています。遊歩道は2006(平成18)年7月に東白楽~反町間(新太田町駅跡付近)の一部が完成したのを皮切りに順次延伸を続け、2011(平成23)年4月に東白楽駅前から横浜駅手前(環状1号線台町入口交差点付近)までの全区間が完成しました。遊歩道の名称は2006年3月に地域住民を対象に公募が行われ、全263通の中から「東横フラワー緑道」に決定しました。
 今回は東白楽駅から横浜駅に向かってこの東横フラワー緑道を歩いてみました。(取材日:2012年4月30日)

■東白楽~横浜間に完成した「東横フラワー緑道」

東白楽駅前にある東横フラワー緑道入口
東白楽駅前にある東横フラワー緑道入口

 東横フラワー緑道は東白楽駅の改札口を出て道路(横浜上麻生道路)を挟んだ反対側から始まります。この部分は暗渠化された滝の川上部を利用した滝の川せせらぎ緑道・二ツ谷公園と一体化しており、東横線の線路側には神奈川水再生センターの高度処理水(下水)が流れる池が設けられています。なお、公園は周辺の小学校の通学路にもなっているため、自転車を含め車両の乗り入れが禁止されており、入口には写真のように厳重な防護柵が設置されています。

線路脇のスロープから地下に入る列車を見る。 スロープは線路を覆うトンネルの上に通じる。
左:線路脇のスロープから地下に入る列車を見る。
右:スロープは線路を覆うトンネルの上に通じる。

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二ツ谷公園付近で東横線の線路は徐々に高度を下げ、コンクリートで囲まれたトンネルに突入します。2004年の地下線切替時はこの部分に架かっていた鉄桁を撤去して地下線に接続しました。二ツ谷公園はその作業基地の跡を利用して設置されたものです。東横フラワー緑道はこのトンネル入り口脇のスロープを上り、トンネルの上部に出ます。トンネル入口の上は小さな広場になっており、アクリル板越しにトンネルを出入りする列車を見ることができます。また、線路の反対側には平川町公園があり、東横フラワー緑道と階段で接続しています。

トンネル上部の遊歩道。 新太田町駅跡の広場。<
左:トンネル上部の遊歩道。
右:新太田町駅跡の広場。

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 トンネルは内部を通る線路の勾配に合わせて下っており、200mほどで周囲の地面と同じ高さとなります。線路が地下に完全に入った地点は1946(昭和21)年に廃止された新太田町駅の跡地で、この部分のみ遊歩道の幅が広くなっており、地面に砂が敷かれた広場となっています。この広場から反町駅手前までの区間は東横フラワー緑道の中で最初に完成した部分です。
 ここから先反町駅までの遊歩道内には上部にルーバーが付いたコンクリートの箱が50m程度の間隔で設置されています。これは地下のトンネルの換気口で、真下を電車が通過すると走行音が聞こえます。また、新太田町駅跡から坑口までは換気口が無いため、トンネルに列車が突入した瞬間には新太田町駅跡の換気口から「ボン」という音とともに圧縮された空気が吹き出してきます

東白楽~反町間のほぼ中央付近。「フラワー」の名に相応しく、季節の花々が多くみられる。 東白楽~反町間のほぼ中央付近。「フラワー」の名に相応しく、季節の花々が多くみられる。
東白楽~反町間のほぼ中央付近。「フラワー」の名に相応しく、季節の花々が多くみられる。
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 新太田町駅跡から反町駅までの遊歩道は地面が茶色いタイル張りとなっており、歩道の左右には花壇が設けられています。花壇は沿道の住民の方々が管理を行っており、遊歩道の名称である「フラワー」の名に恥じない、美しい季節の花々が咲き誇っています。また、歩道部分は地面が所々木材になっており、地上時代の東横線で使用されていたと思われるレールが埋め込まれています。

国道1号線を跨ぐ橋梁。遊歩道側は階段となっており、エレベータは奥にある。 階段から今歩いてきた遊歩道を見る。地上時代の東横線はこの先東白楽駅まで高架だった。
橋桁は東横線時代に使用されていたものをそのまま流用している。 橋梁の床面のタイルの一部はガラス瓶をリサイクルした素材が使用されている。
左上:国道1号線を跨ぐ橋梁。遊歩道側は階段となっており、エレベータは奥にある。
右上:階段から今歩いてきた遊歩道を見る。地上時代の東横線はこの先東白楽駅まで高架だった。
左下:橋桁は東横線時代に使用されていたものをそのまま流用している。
右下:橋梁の床面のタイルの一部はガラス瓶をリサイクルした素材が使用されている。

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 反町駅の手前で国道1号線をまたぐため、遊歩道は陸橋になります。この陸橋は地上時代の東横線で使用されていた橋桁をほぼそのまま流用しており、軌道を撤去したうえでその上にコンクリート・タイルでできた床を新設しています。東白楽駅側・反町駅側ともに階段・エレベータが併設されており、バリアフリー化も十分考慮されています。なお、陸橋上の床タイルの一部には廃棄されたガラス瓶をリサイクルした素材が使用されています。

反町駅駅舎。改札口は駅舎左の高架下にある。 反町駅ホームの地上。遊歩道右側には地下駅の換気機械が並ぶ。
左:反町駅駅舎。改札口は駅舎左の高架下にある。
右:反町駅ホームの地上。遊歩道右側には地下駅の換気機械が並ぶ。

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 国道1号線を渡ると遊歩道は反町駅の上部を高架橋で通過します。反町駅の駅舎は高架橋の西側にあり、改札口は遊歩道の高架橋の真下にあります。改札口前には地域住民のための集会施設である「反町駅前ふれあいサロン」が設置されています。遊歩道の脇には直下にある反町駅の空調の室外機やトンネル換気用の送風機を収めた建物が数棟建ち並んでいますが、いずれの建物も周囲に調和するよう民家風のデザインとなっており、違和感は感じられません。

高島山トンネル手前には開閉式の柵があり通行時間が制限されている。
高島山トンネル手前には開閉式の柵があり通行時間が制限されている。

 反町駅の先には高島台をくぐる「高島山トンネル」があります。このトンネルも遊歩道として開放されており、東横線地下化以前はトンネル上部の急坂が続く住宅地を抜けるか、東側の第一京浜まで迂回する必要があった反町駅~横浜駅間の徒歩ルートが大幅に短縮され、利便性が向上しました。(今回訪問時も遊歩道を散策する人よりも横浜駅と反町駅の間を往復する住民の方が多く見られた。)このトンネルは防犯上の理由から開放時間が6:00~21:30の間に制限されており、それ以外の時間帯は柵で閉鎖されます。

高島山トンネル反町駅側坑門 坑門上部に掲げられている扁額
左:高島山トンネル反町駅側坑門
右:坑門上部に掲げられている扁額

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 高島山トンネルは1926(大正15)年の東京横浜電鉄丸子多摩川(現・多摩川)~神奈川(廃止)間開業の際建設された古いトンネルで、遊歩道への転用に当たっては安全性向上のための補強がなされています。また、当初の計画ではこのトンネルは2009(平成21)年度中に遊歩道として開放されることになっていましたが、直前に行われた調査で、反町側坑門のコンクリートに亀裂が見つかり補強が必要となったため、開放が2年余り延期されました。補強後の坑門は白く塗装されており、上部には「高島山トンネル」と書かれた扁額(へんがく)が追加されています。

高島山トンネル内部。壁面には照明やPR用の旗を掲出する台座が設置されている。 壁面補強に関する銘板
左:高島山トンネル内部。壁面には照明やPR用の旗を掲出する台座が設置されている。
右:壁面補強に関する銘板

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 トンネル内は壁面が厚さ40cmの鉄筋コンクリートで補強されており、照明やイベントのPRに使用する旗を掲出するための台座があわせて設置されています。この補強コンクリートには漏水対策用の導水樋が埋め込まれていますが、表面からは見えないように処理されており、排水溝も床下に完全に埋め込まれているため、ほとんど気づくことはありません。このほか、トンネル両端には展示用のショーケースが設置されています。

高島山トンネル横浜駅側坑門。落石除けは東横線地上時代から設置されているもの。 トンネルを出た直後に「神奈川宿歴史の道」と交差する。
左:高島山トンネル横浜駅側坑門。落石除けは東横線地上時代から設置されているもの。
右:トンネルを出た直後に「神奈川宿歴史の道」と交差する。

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 高島山トンネルの横浜駅側の坑門は東横線として使用されていた当時よりコンクリートの落石除けが設置されており、遊歩道化された現在もそのまま残されています。東横線はトンネルを出た後高架橋となり、そのまま横浜駅に向かっていましたが、遊歩道への転用に当たっては高架橋がすべて撤去されており、終点まで地形に合わせて下り坂となっています。トンネルを出てすぐのところには東横線開業当初神奈川駅が設置されていましたが、現在の位置に横浜駅ができるまでの仮の駅であったことからその痕跡はほとんど残っていません。
 トンネルを出た先で交差する道路は周辺に江戸時代、神奈川宿の名残で史跡が点在していることから、「神奈川宿歴史の道」という愛称が付いています。(詳しい解説は以下の神奈川区役所ホームページでどうぞ。)

▼参考
横浜市 神奈川区 神奈川区役所ホームページ 東海道神奈川宿

下り坂を降りるともうそこは横浜駅前。 東横フラワー緑道の終点。地面にはレールが埋め込まれている。
左:下り坂を降りるともうそこは横浜駅前。
右:東横フラワー緑道の終点。地面にはレールが埋め込まれている。

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 トンネルの先の下り坂を降りるともうそこは横浜駅前です。環状1号線と交差する手前は遊歩道の幅が広くなり、地面にはレールが埋め込まれています。ここが東横フラワー緑道の終点となります。ここから横浜駅までは鶴屋町の繁華街を抜けることになります。周辺には男女がアレなことをする店があったりと色々カオスな空間となっています。

この先は横浜駅西口駅ビル再開発の事業用地となっている。奥の二重高架は首都高速2号三ッ沢線。その下には拡幅された横須賀線ホームを覆う骨組みが見える。
この先は横浜駅西口駅ビル再開発の事業用地となっている。奥の二重高架は首都高速2号三ッ沢線。その下には拡幅された横須賀線ホームを覆う骨組みが見える。

 ここから先の廃線跡は高架橋の撤去は完了していますが、現在も工事用の柵で覆われたままとなっています。これは間もなく始まる横浜駅西口駅ビルの再開発事業で使用するためです。再開発は西口駅ビルの一部である横浜エクセルホテル東急・横浜CIAL(シァル)を解体し、地上33階、地下4階建ての高層ビルに全面改築するもので、北側の東横線跡地には地上9階建ての立体駐車場を建設し、歩行者用デッキで接続する計画となっています。東横線地下化直後から跡地を利用して行われていた横須賀線ホームの拡幅がようやく完了したばかりの横浜駅ですが、まだまだ工事は続くことになります。

▼参考
(仮称)横浜駅西口駅ビル計画の環境アセスメント手続き着手について - JR東日本

 横浜駅から先の東横線廃線跡についても遊歩道としての整備が計画されていますが、現在は軌道や高島町・桜木町駅の設備が撤去された程度にとどまっており、本格的な整備は開始されていません。この区間についてはまだ未調査の部分もあるため、日を改めて紹介したいと思います。

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▼参考
横浜市 都市整備局 都市交通課 東急東横線の跡地利用
横浜市 神奈川区 神奈川区役所ホームページ 東横線地下化跡地整備について

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