京急蒲田駅連続立体交差化工事(2012年5月19日取材)

京急蒲田駅東側、空港線の第一京浜踏切

東京都大田区を走る京急電鉄の京急蒲田駅付近では、今年度中の完成を目標に現在高架化工事が進められています。昨年10月の取材から半年が経ち、下り線側の使用開始に向けた工事が本格化してまいりましたので、今月再度取材を行いました。今回は本線・空港線の全区間を調査しましたので、その状況についてお届けいたします。

▼関連記事
京急蒲田駅連続立体交差化工事(2011年10月29日取材)(2011年12月21日作成)

■京急蒲田駅高架化工事の概要



 京急蒲田駅付近連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間4.7kmと京急空港線京急蒲田~大鳥居間1.3kmを高架化するものです。京急蒲田駅付近には第一京浜(国道15号)環状8号線の踏切があり、いずれも都内ではワースト3に入る深刻な交通渋滞が問題となっていました。また、高架化着工前の京急蒲田駅は島式ホーム1面+片面ホーム1面の2面3線でしたが、空港線については駅構内が単線となっており、羽田空港における国際線ターミナルや新しいD滑走路の新設に伴う列車増発が困難となっていました。
 この区間が高架化されると区間内にある28か所の踏切が廃止され、交通渋滞の解消、安全性向上、地域分断解消などが実現します。また、高架化後の京急蒲田駅は上下線が2層構造となるため、空港線が複線となり、列車本数を増加させることが可能となります。また、本線側には6両分の切り欠きホームが新設され、優等列車の追いぬきが可能となり以前と比べて余裕のあるダイヤ構成が可能となります。
 工事は2001(平成13)年から開始され、用地買収を待たずに現在線の真上に高架橋を建設する「直接高架工法」を最大限に活用した結果、2010(平成22)年5月に上り線のみ高架化が完了しました。この高架化により区間内にある踏切の遮断時間が4割減少したほか、環状8号線については高架化前に上り線が使用していた仮設高架橋を活用することにより、先行して踏切の完全廃止が実現しました。現在は引き続き下り線の高架化に向けた工事が続けられており、2012年度中の使用開始が予定されています。
 なお、この京急蒲田駅付近連続立体交差事業は「高架化による踏切の解消」「駅設備の拡張による羽田空港アクセスの改善」という2つの側面を持っています。このため、国・自治体からの補助についても道路整備である「連続立体交差事業」(ガソリン税・自動車重量税が財源)と鉄道整備の一環である「駅総合改善事業」の2種類の対象事業として扱われています。総事業費は約1650億円となっており、国が660億円、東京都が460億円、大田区が200億円、京浜急行電鉄が330億円をそれぞれ負担することとなっています。

■各地点の状況(2012年5月19日取材)

 ここからは今回調査した工事区間の各地点の状況をお伝えしていきます。

●品川方接続部分
平和島駅のホームから見た高架・地上接続部分。 下り列車から見た接続部分。高架橋が以前と比べ拡幅されている。
左:平和島駅のホームから見た高架・地上接続部分。(2010年5月16日の同じ場所の様子
右:下り列車から見た接続部分。高架橋が以前と比べ拡幅されている。

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 2010年5月の上り線高架化時、品川方・横浜方の既設高架橋との接続部分はどちらも上り線の脇に仮設の高架橋を設置し、新旧の高架橋を接続しました。下り線の高架橋は地上に降りる旧上り線を撤去した跡地に設置されており、今回は高架橋の拡幅がおおむね完了し、一部では軌道の敷設が開始されていました。品川方の接続部分は用地が厳しいためか、現在線と新設された高架橋の間に段差ができており、この部分をどう埋めて高架線に接続するのか気になるところです。

●大森町駅
大森町駅高架の上り線ホームから未使用の下り線ホームを見る。エスカレータ・エレベータ・階段の工事を行うため、囲いが設置された。 大森町駅地上の下り線ホーム。エレベータシャフトなどの設置が進んでいる。
左:大森町駅高架の上り線ホームから未使用の下り線ホームを見る。エスカレータ・エレベータ・階段の工事を行うため、囲いが設置された。(2011年10月19日の同じ場所の様子
右:大森町駅地上の下り線ホーム。エレベータシャフトなどの設置が進んでいる。

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 大森町駅は昨年10月訪問時に地上の下り線ホームが旧上り線の跡地に移設され、上下線の改札口が一体化されていました。今回訪問時は旧下り線ホームの跡地で高架の下り線ホームへ上がる階段・エスカレータ・エレベータの設置工事が開始されており、未使用の高架の下り線ホーム上にも囲いが設置されていました。なお、囲いには手作りの切り抜き文字(修悦体?)で「エスカレータ・エレベータ・階段・待合室新設工事中」と書かれています。(囲いの切り抜き文字

●梅屋敷駅
梅屋敷駅高架の上り線ホーム。左が閉鎖された下り線ホームを利用した暫定ホーム。 上り線ホームの階段は一部がまだ仮設。
左:梅屋敷駅高架の上り線ホーム。左が閉鎖された下り線ホームを利用した暫定ホーム。(2011年10月29日の同じ場所の様子
右:上り線ホームの階段は一部がまだ仮設。

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 梅屋敷駅の上り線ホームは2010年5月の高架切り替え時からこれまで下り線のホームを拡幅した暫定ホームとなっていました。上り線高架化後は地上の旧上り線の撤去と跡地に高架ホームへの階段。エスカレータ・エレベータを設置する工事が進められ、今回それらが完成したことから、5月13日(日)より本来の上り線ホームの使用が開始されました。ホーム自体は完成していますが、接続する階段・エスカレータまだ途中が未完成となっており、引き続き工事が続いています。また、この上り線ホーム使用開始に伴い、上下線の改札口が分離されました。
 なお余談ですが、京急本線が走る東京都大田区は現在NHKで放送中の朝の連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の舞台となっいます。これにちなみ、梅屋敷駅では2012年4月9日から9月上旬までの予定で駅名板の装飾、待合室・階段壁面へのポスター掲出、列車接近メロディーのドラマの主題歌であるSMAPの「さかさまの空」への変更が実施されています。

▼参考
梅屋敷駅に駅メロ導入!「梅ちゃん先生」ドラマ主題歌・SMAP「さかさまの空」 - ニュースリリース【京急電鉄】(PDF)

梅屋敷駅の改札口。上り線ホームの使用開始に伴い、上下線出改札口が分離された。
梅屋敷駅の改札口。上り線ホームの使用開始に伴い、上下線出改札口が分離された。

●京急蒲田駅
京急蒲田駅の高架上り線ホーム。一部未設置だった上階の下り線ホームへ向かうエスカレータの設置が始まった。 ホーム中央にある階段・エスカレータは2010年5月時点でほぼ完成しており変化は無い。
左:京急蒲田駅の高架上り線ホーム。一部未設置だった上階の下り線ホームへ向かうエスカレータの設置が始まった。
右:ホーム中央にある階段・エスカレータは2010年5月時点でほぼ完成しており変化は無い。

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 京急蒲田駅は上り線ホームが2階、下り線ホームが3階という2層構造で、2010年5月の上り線高架化時より2階ホームから3階ホームへ上がる階段・エスカレータが設置済みとなっています。今回高架ホームは横浜寄りの仮設階段付近で新たにエスカレータの設置が始まった以外に変化はありませんでした。

地上の下り線ホームから工事中の高架橋を見る。 中2階部分はエスカレータの設置工事が開始された。
左:地上の下り線ホームから工事中の高架橋を見る。
右:中2階部分はエスカレータの設置工事が開始された。

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 地上は上り線の高架化後、旧上り線ホームの撤去と将来改札口となる中2階部分の床面の建設が進められてきました。今回はその中2階の床面がほぼ完成し、一部では2階の上り線ホームへ上がるエスカレータの設置工事が開始されていました。地上ホームから高架ホームへ向かう通路は上り線高架化時から大きな変化は無く、工事中の部分を避けて遠回りしながら迂回するルートとなっています。

駅前交番の前から第一京浜をまたぐ空港線の高架橋を見る。3階の下り線でも架線柱の設置が始まった。 第一京浜をまたぐ新しい歩道橋。手前にある砂利の部分が旧歩道橋の跡。
左:駅前交番の前から第一京浜をまたぐ空港線の高架橋を見る。3階の下り線でも架線柱の設置が始まった。
右:第一京浜をまたぐ新しい歩道橋。右側は将来延長できるような構造になっている。手前にある砂利の部分が旧歩道橋の跡。

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 3階の下り線は電気設備の工事が開始されており、第一京浜をまたぐ空港線の下り線の高架橋には架線柱が新設されたのを確認できました。(架線はまだ敷設されていない。)また、駅本体の工事とは直接関係はありませんが第一京浜と空港線が交差する踏切の脇にあった歩道橋が今回撤去され、その南側の京急蒲田駅前交差点付近に新設された歩道橋の使用が開始されました。この歩道橋は駅側の桁を見ると分かる通り、京急蒲田駅側へ延長可能な構造となっており、将来的には京急蒲田駅中2階の改札口と接続される予定となっています。また、今回撤去された旧歩道橋の跡地には再度歩道橋が設置されることになっており、今後大田区産業プラザPiO脇に建設される駅前ロータリーに接続する予定です。

第一京浜をまたぐ新しい歩道橋から第一京浜を見下ろす。右の広い空き地には今後駅前ロータリーが建設される。
第一京浜をまたぐ新しい歩道橋から第一京浜を見下ろす。右の広い空き地には今後駅前ロータリーが建設される。
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●雑色駅
京急蒲田~雑色間の下り線敷設状況。軌道敷設がほぼ完了し、信号・電気設備の工事に移っている。 雑色駅地上の下り線ホーム。以前と比べ大きな変化は無い。
左:京急蒲田~雑色間の下り線敷設状況。軌道敷設がほぼ完了し、信号・電気設備の工事に移っている。
右:雑色駅地上の下り線ホーム。以前と比べ大きな変化は無い。

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 雑色駅は2010年5月の上り線高架化時より上下線の改札口が分離されています。今回訪問時は駅自体に大きな変化はありませんでした。
 京急蒲田~雑色間の下り線が3階に向かって上っていくスロープ部分は上り線高架化時点では高架橋が未完成でしたが、今回は高架橋・軌道敷設ともに完成し、信号や電気設備の工事が開始されていました。

●横浜方接続部分
六郷土手駅のホームから見た高架・地上の接続部分。下り線の軌道敷設が始まっている。 高架下から上り線の仮設高架を見る。桁の下には地上へ降りる旧上り線のよう壁が残っている。
左:六郷土手駅のホームから見た高架・地上の接続部分。下り線の軌道敷設が始まっている。
右:高架下から上り線の仮設高架を見る。桁の下には地上へ降りる旧上り線のよう壁が残っている。

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 横浜方の既設高架橋との接続部分は品川方と同じく上り線が仮設の高架橋となっています。今回はすでに下り線の新しい高架橋が完成し、軌道敷設もおおむね完了した状態となっていました。下り線の軌道は品川方とは異なり、用地に余裕があるためか地上から上ってくる現在線と同じ高さになる地点ギリギリまで敷設済みとなっています。なお、上り線の仮設高架橋は線路の西側を並走する区道に張り出して設置されており、桁の下には地上に降りる旧上り線のコンクリートよう壁(内部の盛土は撤去済み)が残っています。2014(平成26)年の工事完了時には現在の下り線の跡地に高架橋を新設し、線路を着工前と同じ位置に戻すものと思われます。

●糀谷駅・羽田空港方接続部分
糀谷駅高架ホームから羽田空港方向を見る。下り線の軌道敷設が進む。 地上ホーム。旧上り線ホームの撤去はほぼ完了した。
左:糀谷駅高架ホームから羽田空港方向を見る。下り線の軌道敷設が進む。
右:地上ホーム。旧上り線ホームの撤去はほぼ完了した。(2010年5月16日の同じ場所の様子

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 空港線の京急蒲田~大鳥居間は2010年5月の上り線高架化以降単線並列となっており、その途中にある糀谷駅は行き先によって発着ホームが異なっています。(詳しくは2010年5月作成の記事の「その2」を参照。)上り線高架化後は地上の旧上り線の撤去が行われ、今回はそれらの工事がほぼ完了していました。

糀谷駅羽田空港方の踏切から地上へ降りる高架橋を見る。 糀谷~大鳥居間の踏切から地上・高架の接続部分を見る。
左:糀谷駅羽田空港方の踏切から地上へ降りる高架橋を見る。
右:糀谷~大鳥居間の踏切から地上・高架の接続部分を見る。(2010年5月16日の同じ場所の様子

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 糀谷駅の羽田空港方は地上へ降りる下り線の高架橋の建設が行われ、こちらも軌道敷設の一部を残すところまで工事が進んでいます。現在はこの先にある両渡り線を使って横浜方面・品川方面の列車の振り分けを行っていますが、下り線の高架化完成後はこの両渡り線が京急蒲田~糀谷間に移設されることになっており、糀谷駅構内の単線並列は解消される予定です。

 このほか、高架の下り線は本線・空港線ともに全線で信号・電気設備の工事が開始されており、線路脇のケーブルトラフのフタが全て開けられ、一部では信号機を設置する柱が設置されています。今年度中の下り線効果かに向け、着々と準備が進んでいます。

▼参考
平成24年度 設備投資計画 総額 約188億円 - ニュースリリース【京急電鉄】(PDF)
京急蒲田駅付近連続立体交差事業の進捗に伴い、2010年9月26日(日)始発から 環状8号線の踏切がなくなります。 - ニュースリリース【京急電鉄】
京急蒲田駅付近連続立体交差事業の上り線高架化に伴い 国道15号の渋滞長が約6割減少しました。 - ニュースリリース【京急電鉄】
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業
京浜急行本線 京急蒲田駅付近上り線を立体化|東京都

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