りんかい線の車両 - りんかい線東臨トンネル(34)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
※クリックすると目次ページを表示します。

前回まででりんかい線の施設に関しては解説が終了したので、以前当ブログでお届けした京葉線のレポートなどと同様にりんかい線を走る車両である東京臨海高速鉄道70-000形JR東日本205系について見ていくこととしたい。

■東京臨海高速鉄道70-000形

●車両概要
大崎駅に停車中の東京臨海高速鉄道70-000形。
大崎駅に停車中の東京臨海高速鉄道70-000形。2011年7月18日撮影

 りんかい線の自社車両である東京臨海高速鉄道70-000形(ななまんがた)はJR東日本の209系をベースにした車両で、現在は10両編成8本(合計80両)が在籍している。209系をベースとしたのは1996(平成8)年の第一期開業時にメンテナンス(月検査・重要部検査・全般検査)をJR東日本に委託していたことや、当時のりんかい線の乗務員の大半がJR東日本からの出向者で占められていたことによるものである。また、全線開業時に増備された車両についても、引き続き重要部検査・全般検査をJR東日本に委託することから、既存の車両とおおむね同仕様で製造されている。
 70-000形は製造時期にかかわらず全車両が川崎重工製となっており、車体は同社の軽量ステンレス車体の製造方法である「2シート工法」※1により造られている。外板の厚さは209系では1.2mmであったが、歪みが目立つようになったことから、この70-000形では1.5mmに増量されている。また、前面の形状は209系とは異なり、曲面を多用した立体感のあるデザインとなっている。車体のラインカラーは沿線にある海をイメージしたライトブルーとコバルトグリーンの2色とし、ドア部分を含め側面全長に渡り配している。

▼脚注
※1 2シート工法(貼り合わせ工法):頑丈な骨組みの代わりに、ある程度強度を持たせた外板・内板の2枚のステンレス板を貼り合わせて車体の側面を構成する工法。

東京臨海高速鉄道70-000形の車内。座席の形状がJR東日本209系と異なる。
東京臨海高速鉄道70-000形の車内。座席の形状がJR東日本209系と異なる。2011年7月9日撮影

 70-000形の車内は209系と同じく内装材にFRPパネルを多用しており、川崎重工製であることから、天井部分にはパネルを固定するボルトが露出している。パネルの色はベージュとなっており各車両車端部の壁には木目調のプリントが施されている。また、ドアについても室内側に白色の化粧板が貼られており、ステンレス地がむき出しの209系とは異なり、温かみのある雰囲気となっている。

新製時から使用されている水色の座席モケット 更新後は濃い青色のモケットに変更
左:新製時から使用されている水色の座席モケット
右:更新後は濃い青色のモケットに変更。2枚とも2011年7月9日撮影

※クリックで拡大

 座席は209系と同じ壁からの片持ち式であるが、袖仕切りは当時一般的だった背の低いものとなっており、座面も209系のようなバケット型ではなく、平たいクッションとなっている。また、スタンションポールは4人+3人(209系は2人+3人+2人)の区切りとなっている。なお、座席のモケットは当初水色1色の物が使用されていたが、使用開始から長期間が経過し劣化が進んだため、昨年から波状の模様が入った濃い青色の物への交換が開始されている。

先頭車・付随車のKW152形台車。209系のTR246形と同仕様。 一部編成にはレール塗油器が装着されている。
左:先頭車・付随車のKW152形台車。209系のTR246形と同仕様。2007年12月1日撮影
右:一部編成にはレール塗油器が装着されている。2011年7月18日撮影

※クリックで拡大

 駆動装置・電気機器は形式名が異なるものの、使用している製品自体は全て209系と同一品となっている。台車は209系のDT61形(M台車)・TR246形(T台車)と同じ軸梁式のボルスタレス台車で、形式はKW151形(M台車)・KW152形(T台車)となっている。全線開業後は大井町駅付近を中心に急カーブ区間があることから、一部の台車に潤滑油を噴射するノズルが取り付けられている。
 保安装置は第1期開業時はりんかい線内で使用するATS-Pのみで、工場への回送時には可搬式ATS-SNを取り付け可能としていた。(ATCは準備工事)全線開業後はATS-Pと埼京線で使用するATC-6形のみとし、ATS-SNは撤去した。
 また、第1期開業時は編成が4両編成であったため電動車が1ユニットしかなく、パンタグラフが1基では離線を起こした際室内が停電する可能性があっためM1車にパンタグラフを2基搭載していた。
 なお、昨年からは電気機器の老朽化対策として機器更新が開始されている。更新内容は以前等ブログで解説したJR東日本E217系の機器更新とほぼ同等で、VVVFインバータやSIV(補助電源装置)が最新のE233系に準じたものに交換されている。

▼関連記事
E217系機器更新車(2008年5月17日作成)

●全線開業に伴う編成組み換え
新木場方のパンタグラフ台座が残る70-061。
新木場方のパンタグラフ台座が残る70-061。2011年7月18日撮影

 70-000形はまず1996年の第1期開業時に4両編成4本が製造され、その後2001(平成13)年の天王洲アイル駅までの暫定開業までに2本が増備された。そして2002(平成14)年の全線開業に合わせてさらに車両の増備を行い、線内運転用の6両編成5本と埼京線直通用の10両編成5本に組み換えを実施した。組み替え作業は全線開業直前の2002年夏より開始され、9月より順次営業運転に入った。組み換え前後の編成表は以下の通りである。(表は3つとも左が新木場方面、右が大崎方面

表1 天王洲アイル駅暫定開業までの編成
TcM1M2Tc'
70-01070-01170-01270-019
70-02070-02170-02270-029
70-03070-03170-03270-039
70-04070-04170-04270-049
70-05070-05170-05270-059
70-06070-06170-06270-069

表2 全線開業後の6両編成(赤字は全線開業時に増備した車両)
TcM1M2M1M2Tc'
70-01070-01170-01270-01770-01870-019
70-02070-02170-02270-02770-02870-029
70-03070-03170-03270-03770-03870-039
70-04070-04170-04270-04770-04870-049
70-05070-05170-05270-05770-05870-059

表3 全線開業後の10両編成(赤字は全線開業時に増備した車両)
TcM1M2TM1M2TM1M2Tc'
70-06070-06170-06270-06370-06470-06570-06670-06770-06870-069
70-07070-07270-07270-07370-07470-07570-07670-07770-07870-079
70-08070-08270-08270-08370-08470-08570-08670-08770-08870-089
70-09070-09170-09270-09370-09470-09570-09670-09770-09870-099
70-10070-10170-10270-10370-10470-10570-10670-10770-10870-109

なお、4両・6両・10両ではそれぞれMT比が異なるが、VVVF制御装置内のスイッチを切り替えることにより全ての編成が同一の走行性能とされた。

1996年の部分開業時に新製された車両はドアの窓ガラスが金属押さえになっている。 全線開業時に新製された車両はドアの窓ガラスが209系と同じボンディング(接着)方式となっている。
左:1996年の部分開業時に新製された車両はドアの窓ガラスが金属押さえになっている。
右:全線開業時に新製された車両はドアの窓ガラスが209系と同じボンディング(接着)方式となっている。2枚とも2011年7月18日撮影

※クリックで拡大

 全線開業時に増備された車両は既存編成と一部の仕様が異なっており、乗降ドアの窓ガラスは金属押さえから209系と同じ接着(ボンディング)方式に変更された。また、前面・側面の行き先表示器は幕式だった既存編成も含め全てLED式に改められており、りんかい線内では路線名と行き先を交互表示する。さらに、前面・側面に描かれている社名のロゴには「りんかい線」の文字が追加された。(既存編成はそのまま)
 なお、編成の組み替え後は電動車が2ユニット以上になることから既存編成はM1車のパンタグラフ1基が撤去された。

●一部をJR東日本に譲渡
八高線・川越線の209系3100番台。
八高線・川越線の209系3100番台。2006年11月19日、拝島駅で撮影

 りんかい線開業後の2004(平成16)年10月のダイヤ改正で、りんかい線の線内列車も10両化されることになり、再度編成の組み替えが行われた。組み替えは6両編成のうち2編成をバラし、残りの3編成に新製した中間車(付随車)とともに組み込むことにより行われた。この際、一部車両で車両番号の改番を実施している。この結果、バラされた編成の先頭車4両と中間車2両が不要となったため、JR東日本に譲渡された。譲渡された車両はJR東日本が新たに製造した中間車2両と組み合わせた4両編成2本に組成され、ドアの半自動対応化などの改造を行ったうえで209系3100番台として八高線・川越線で使用されている。組み替え前後の編成表は以下のとおり。(斜体で書かれた数字は改番前の番号

70-000形の10両化とJR東日本への譲渡後の編成表
70-000形の10両化とJR東日本への譲渡後の編成表
※クリックで拡大

▼参考
新型車両プロフィールガイド「東京臨海高速鉄道70-000形車両」 - 運転協会誌1996年2月号
東京臨海高速鉄道70-000形電車 - 車両技術1996年10月号
東京臨海高速鉄道70-000形増備車 - 交友社「鉄道ファン」2002年12月号
209系3100番台 - 交友社「鉄道ファン」」2005年6月号

■JR東日本205系
埼京線205系。
埼京線205系。2007年12月1日、新木場駅で撮影

 205系は1985年に山手線に導入されたのを皮切りに、1990年代中盤まで首都圏や大阪の通勤路線向けに約1400両が製造された。制御方式は抵抗制御の発展型である界磁添加励磁制御で、軽量ステンレス車体、電気指令ブレーキ、ボルスタレス台車など国鉄改革の世論の後押しもあり、最新鋭の技術がふんだんに盛り込まれている。埼京線向けの205系は他線から転属してきた1編成を除き全て民営化後(1988~1990年)に製造された車両で、製造は全て川崎重工が担当している。これは国鉄時代は公共企業体の名の下、車両メーカー各社に公平に製造を担当していたが、民営化によりその必要性が無くなり、入札制度が導入された結果によるものである。川崎重工では埼京線以外にも京葉線、南武線など多数の205系電車の製造を受注したことから、当時は工場内に205系専用の製造ラインが開設されていた。

205系の車内(一般車両) 205系の車内(6ドア車両)
左:205系の車内(一般車両)
右;205系の車内(6ドア車両)。2枚とも2011年7月18日撮影

※クリックで拡大

 埼京線205系の大きな特徴としては大宮寄りに6ドア車が2両組み込まれていることと大宮方先頭車(1号車)の車内天井に防犯カメラが設置されていることである。いずれも渋谷・新宿の両駅でホームの大宮方に階段が設置されており、その近傍の車両が非常に混雑するため行われた措置である。
 6ドア車(サハ204形)は1991(平成3)年から山手線に導入された車両で、2002(平成14)年から始まった同線へのE231系導入に伴い、埼京線に転属してきたものである。6ドア車の特徴としては座席が折りたたみ式となっていることである。この折りたたみ式の座席は平日の初電から朝10時までは収納された状態で運用されており、その間は立席のみの利用となる。10時以降は座席のロックが解除され、乗客が引き出して使用する。引き出し後は安全のため手動では収納できないシステムとなっており、車両基地到着後運転台からの操作によりガスダンパの力で自動収納される仕組みとなっている。このほか、車内は座席収納時の安全確保のため吊革が多く設置されていること、暖房機は座席下のみでは容量が不足するため、床暖房が併設されていること、ドアが多いためエアコンの能力維持を目的としてエアカーテンが設置されていること、荷物棚は立席定員確保のため通常より高い190cmの位置に設置されているなどの特徴がある。これら6ドア車の仕様は製造前に大井工場(現・東京総合車両センター)内に実物大のモックアップを製作した上で決定された。
 山手線から埼京線への転属時は車体に大きな加工を加えるような改造は行われていないが、行先が多様化することから窓の一部を塞いで行先表示器が設置されたほか、車内の文字放送用の液晶ディスプレイが廃止されている。
 また、1号車の防犯カメラは2010(平成22)年6月より設置されたものである。これは前記した激しい混雑に加え、埼京線の痴漢発生件数が首都圏の通勤路線で突出して多いことによる。埼京線ではこの他、新木場方先頭車(10号車)を平日朝夕に女性専用車両に指定しており、痴漢件数が半減するなど大きな効果を発揮している。

 なお、埼京線については先日JR東日本よりE233系の導入が発表された。導入時期は2013年度からで現在使用されている205系の全車両を置き換える計画となっている。埼京線では老朽化したATCの更新として先日仙石線に導入されたATACSを導入することも検討されており、どのような車両となるのか楽しみなところである。

▼参考
特集「205系通勤型直流電車」 - 交友社「鉄道ファン」1992年1月号
JR車両ファイル2012 - 交友社「鉄道ファン」2012年7月号
埼京線における車内防犯カメラの設置について - JR東日本(PDF)
秋田新幹線用車両と埼京線・横浜線用車両の新造について - JR東日本(PDF)

▼関連記事
埼京線205系・りんかい線70-000形(2006年5月29日作成)
八高線205系・209系(2006年11月25日作成)
鉄道各社でつり革交換進行中(2007年12月12日作成)
仙石線で導入される新しい信号システム「ATACS」(2010年9月5日作成)

▼おすすめ商品(by Amazon.co.jp)
Nゲージ 車両セット 205系 埼京線色「KATO TRAIN」 (10両) [特別企画品] #10-481Nゲージ 車両セット 205系 埼京線色「KATO TRAIN」 (10両) [特別企画品] #10-481
()
カトー

商品詳細を見る
Bトレインショーティー 205系埼京線Bトレインショーティー 205系埼京線
(2008/09/27)
バンダイ

商品詳細を見る
川越線・埼京線・りんかい線直通快速 川越~大崎~新木場(Blu-ray Disc)川越線・埼京線・りんかい線直通快速 川越~大崎~新木場(Blu-ray Disc)
(2012/05/21)
ビコムブルーレイ展望

商品詳細を見る
鉄道整備と沿線都市の発展―りんかい線・みなとみらい線・つくばエクスプレスの事例鉄道整備と沿線都市の発展―りんかい線・みなとみらい線・つくばエクスプレスの事例
(2008/06)
高津 俊司

商品詳細を見る
このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサード リンク

Facebookのコメント

コメント

コメント機能をご利用の際は必ず注意事項のページをご覧ください。
不適切な投稿内容は修正・削除される場合があります。また、内容によっては管理人からのレスが付かない場合がございます。確実に返信が欲しい場合はEメールをご利用ください。

管理者にだけ表示を許可する(管理人からの返信が付きません)


最新記事

首都圏外郭放水路庄和排水機場(2016/10/02)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016/09/10)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
月別アーカイブ

全記事タイトル一覧

お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

おすすめ記事

@takuya870625 Twitter