小田急線地下化&ホーム延長工事(2012年6月23日取材)

小田急線下北沢駅の上をまたぐ京王井の頭線

小田急線代々木上原~梅ヶ丘間では現在複々線化・地下化工事が進められています。来年の地下化完成に向けて工事は大詰めを迎えており、下北沢駅では京王井の頭線ホーム側でも工事が開始されるなど進展がありました。今回は代々木上原駅・下北沢駅の現在の状況に加え、地下化後に予定されている各駅停車の10両編成化に向けてホーム延長工事が行われている南新宿駅・参宮橋駅の状況についてもお伝えします。

▼関連記事
小田急線複々線・地下化工事(2011年・2012年取材まとめ)(2012年2月1日作成)

■小田急線複々線化・地下化工事の概要

複々線化・地下化区間の断面図
複々線化・地下化区間の断面図

 小田急線複々線化・連続立体交差事業は小田急線代々木上原~登戸間(全長約11km)を高架化・地下化するとともに緩行線・急行線の分離による複々線化を行うものです。この事業が完成すると全線で39か所あった踏切が解消され、線路による交通渋滞や地域分断が解消されるほか、種別ごとの走行線路の分離が図られ、列車増発、所要時間短縮による混雑緩和が期待されます。対象の区間のうち、梅ヶ丘~和泉多摩川間については途中沿線住民が起こした反対訴訟により大幅な事業の遅延があったものの、2004(平成16)年までに高架化・複々線化ともに完成しました。また、和泉多摩川~登戸間については登戸駅構内の4線化で必要となる川崎市の区画整理事業が遅れているため、長らく事業が停滞していましたが、取得済みの用地を最大限に利用する形で暫定的に3線(上り2線・下り1線)化されることになり、2009(平成21)年に工事が完了しています。
 残る代々木上原~梅ヶ丘間(2.2km)についてはこれまでの反対運動の教訓や新たな用地取得を最小限にする観点から、緩行線・急行線ともに地下化する方針とされ、2004(平成16)年に都市計画決定がなされ着工しました。急行線のみを利用した暫定地下化は2013(平成25)年を予定しており、続いて建設される緩行線が完成した暁には複々線化の効果が最大限に発揮され、混雑率は着工前の208%から160%前後に大幅に緩和される見込みです。既完成区間を含めた総事業費は約3千億円以上に上る見込まれており、このうち連続立体交差事業(踏切解消と側道整備)に関するものが小田急電鉄と東京都の共同支出、複々線化に関するものが小田急電鉄の全額支出となる予定です。

■現在の状況(2012年6月23日取材)

●代々木上原駅
代々木上原駅のホーム端から小田原方面を見る(下り線側)。残存していた分岐がすべて撤去され、新たにシーサスクロッシングの敷設が始まった。 同上り線側。こちらもシーサスの敷設が始まっている。
左:代々木上原駅のホーム端から小田原方面を見る(下り線側)。残存していた分岐がすべて撤去され、新たにシーサスクロッシングの敷設が始まった。
右:同上り線側。こちらもシーサスの敷設が始まっている。
(同じ場所の以前の様子:2008年10月19日(記事未掲載)2010年1月1日2011年1月15日(記事未掲載)2012年1月28日

※クリックで拡大

 代々木上原~東北沢間は地下化工事着工前より外側が緩行線、内側が急行線の形で複々線となっており、代々木上原駅寄りではそのさらに内側に千代田線の折り返し線が2線入る配線となっていました。また、代々木上原駅ホーム端の緩行線・急行線の分岐部分は千代田線(2・3番線)・小田急線(1・2番線)双方から分岐した線路がY字に合流して急行線となる配線となっており、その先に千代田線から外側の緩行線に移れるよう片渡り線が設けられていました。(ただし、東北沢駅は8両編成までの対応だったためこの渡り線はほとんど使われることは無かった。)下の配線図は赤い線が急行線青い線が緩行線緑の線が千代田線関係の線路をそれぞれ示しています。

代々木上原駅構内の配線の変遷

代々木上原駅構内の配線の変遷

 地下化工事着工後は急行線の使用を停止し、工事の進捗に合わせて線路を左右に移動させながら路盤の掘り下げや地下へ入るU字型よう壁の構築が進められました。今年1月取材時はかつて急行線だった線路が本線として使用されており、地下化完成後は旧来の配線がそのまま再現されるようにも思われました。ところが、今回ホーム直近に残されていた分岐器がすべて撤去されており、その先に新たに急行線・緩行線を連絡するシーサスクロッシング(両渡り分岐器)の敷設が開始されているのを確認しました。また、下り線で敷設中のシーサスは代々木上原駅の千代田線ホームに通じる方向のみ未敷設となっており、この部分は完成時に分岐器を入れ替えて緩行線・急行線どちらからも直接進入できるような配線にする模様です。

代々木上原→東北沢の前面展望。地下へ向かう軌道の敷設が続く。
左:代々木上原→東北沢の前面展望。地下へ向かう軌道の敷設が続く。
右:さらに先に進んだところ。1月時点では波打っていたレールがきれいに整正され、いつでも列車が走行できる状態となった。(同じ場所の以前の様子:2011年1月15日(記事未掲載)2012年1月28日

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 代々木上原駅の先では前回と同様地下へ入る線路の軌道敷設が続いており、前回は「レールを置いただけ」の状態で波打った状態だった軌道が平らに整正され、信号機用の絶縁継目が設置されるなど使用開始に向けた本格的な準備に移りつつあります。なお、地下化後は以前とは異なり、外側が急行線、内側が緩行線となりますが、来年予定されている暫定地下化では急行線のみを使用した運行となる予定です。緩行線の軌道は現在地上を走っている線路を撤去し、その跡地に敷設されます。

●下北沢駅
下北沢駅の小田急線下り線ホーム。ホームの新宿寄りを京王井の頭線がオーバークロスする。
下北沢駅の小田急線下りホーム。ホームの新宿寄りを京王井の頭線がオーバークロスする。

 下北沢駅は下り線専用の島式ホーム1面と上り線専用の片面ホーム1面があり(JR山手線渋谷駅と同形態)、ほぼ中央を京王井の頭線がオーバークロスしています。京王井の頭線のホームは小田急線の上り線ホームに隣接しており、2面ある小田急線ホームとの間には改札口はなく、T字形の連絡通路(階段)で直接接続されています。また、乗り換え客が多い小田急線上りホームはもう1つ独立した階段が設置されています。

▼参考
各駅のご案内:下北沢駅|路線図・各駅のご案内|小田急電鉄
下北沢駅|京王グループ

小田急線上りホームと京王井の頭線ホームの連絡階段。正面の階段を上り、左に曲がると京王井の頭線ホームに出る。階段を上って正面に進むと小田急の改札口に出る。ここには写っていないが、左側にももう1つ連絡階段がある。 小田急線下りホームと京王井の頭線ホームの連絡階段。1段高くなっている部分から左に曲がると京王井の頭線ホーム渋谷方の端に出る。
左:小田急線上りホームと京王井の頭線ホームの連絡階段。正面の階段を上り、左に曲がると京王井の頭線ホームに出る。階段を上って正面に進むと小田急の改札口に出る。ここには写っていないが、左側にももう1つ連絡階段がある。
右:小田急線下りホームと京王井の頭線ホームの連絡階段。1段高くなっている部分から左に曲がると京王井の頭線ホーム渋谷方の端に出る。

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 いずれの連絡階段も開業当時から存在する古いもので、幅も狭く、迷路のように入り組んでいるため非常に混雑しています。また、通路内は細かな段差も多いく、バリアフリー化は困難となっています。(車いすで小田急~京王を乗り換える場合、小田急線ホームの新宿寄りにある橋上駅舎を経由する必要がある。)

地下化前後の下北沢駅の構造
地下化前後の下北沢駅の構造

 地下化後の小田急線下北沢駅は緩行線・急行線ともに島式ホームで、緩行線が地下2階、急行線が地下3階の2層構造となります。地下3階の急行線は上下線2本のシールドトンネルの間を切り開いてホームが設置されており、ホームの位置は急行線側が若干小田原寄りにずれた配置となっており、双方のホームで階段・エスカレータを分離され、混雑が緩和される見込みです。また、小田急線の上をまたぐ京王井の頭線の橋梁は現在とは異なり長い1スパンの橋梁に架け替えられ、その下を利用して小田急・京王の改札口・乗り換え通路が1か所に集約されることになっています。これにより両路線間は地上1階に設けられる大きなT字形の1本通路で連絡されることになり、現在よりも乗り換えに必要なルートがわかりやすくなります。

京王井の頭線ホーム。左奥にある階段は小田急線下りホームへ向かう乗り換え通路で、今後廃止される。 京王井の頭線ホーム脇の作業台。作業台の背後にあるコンクリート打ちっ放し状態の物体は小田急線の地下駅に関連する物(換気塔?)であると思われる。
左:京王井の頭線ホーム。左奥にある階段は小田急線下りホームへ向かう乗り換え通路で、今後廃止される。
右:京王井の頭線ホーム脇の作業台。作業台の背後にあるコンクリート打ちっ放し状態の物体は小田急線の地下駅に関連する物(換気塔?)であると思われる。

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来年使用開始となる小田急線の急行線ホームは今年春にシールド間の切り開きが完了し、現在は軌道敷設、内装、地上と接続する階段・エスカレータなどの設置作業が進められています。また、これまで京王井の頭線ホーム側は一切動きがありませんでしたが、今年春以降線路脇に作業台が設置されたほか、ホームの一部が仮設構造に変わるなど、小田急線をまたぐ橋梁を架け替えるための準備と思われる工事が始まりつつあります。地下化後の京王井の頭線ホームは現在小田急線下り線ホームへつながっている渋谷方の端の階段が廃止され、代わりに地上1階に新設される乗り換え通路へ降りるエレベータが設置される予定となっています。

■南新宿駅・参宮橋駅・代々木八幡駅の10両化

新宿方へ2両分のホーム延長が完了した南新宿駅 小田原方でホーム延長工事が始まった参宮橋駅
左:新宿方へ2両分のホーム延長が完了した南新宿駅
右:小田原方でホーム延長工事が始まった参宮橋駅

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 現在、新宿駅を発着する小田急線の各駅停車は8両編成での運行となっています。これは新宿~梅ヶ丘間にある各駅停車のみが停車する駅、具体的には南新宿・参宮橋・代々木八幡・東北沢・世田谷代田の5駅のホームが8両までしか対応していないためです。地下化完成後は東北沢・世田谷代田の2駅のホームが10両対応になることから、残る3駅についてもホームを2両分延長し、各駅停車を10両編成に増車することが計画されました。
 このうち、南新宿駅では昨年ホームを新宿方に2両分延長する工事が行われ、今年初めに完成しました。また、参宮橋駅については4月に発表された2012年度設備投資計画の中でホーム延長工事の着手が発表されており、今回小田原方の線路上に木材が敷き詰められ、線路脇で作業が行われているのが確認されたことから、ホーム延長工事が始まった模様です。代々木八幡駅についてはホーム両端に踏切があることから現在のところ特に動きはありませんが、小田原方は踏切を山手通りの陸橋下に移設できることから、今後はこちら側にホームを延長するものと思われます。


今回は時間の関係で取材できませんでしたが、世田谷代田~梅ヶ丘間では地下に入る線路を敷設するため、6月8日に上り線が北側に移設されています。来年の地下化に向けて工事大詰めを迎えている小田急線の工事について今後も追ってまいりたいと思います。

▼参考
複々線化事業|鉄道事業|事業案内|会社案内|企業・IR・採用情報|小田急電鉄
シモチカ ナビ
2012年度の鉄道事業設備投資計画 - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF)

▼関連記事
小田急線複々線・連続立体交差化工事(1・完成区間)(2010年1月30日作成)
小田急線複々線・連続立体交差化工事(2・工事中区間)(2010年2月1日作成)
小田急線複々線・地下化工事(2011年・2012年取材まとめ)(2012年2月1日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント


代々木八幡駅ですが、どうやら単純にホームを延長するのではなく、現在の相対式ホームを廃止したうえで島式1面2線化する計画のようです。
2012/07/04 18:55 | URL | 投稿者:後藤一彦 [編集]
とても興味深い記事でした
小田急沿線に住むものとして、とても楽しく拝見させていただきました。
着工した当時は、完成なんてずっと先だ。なんて悲観的にみておりましたが、
いよいよ地下化が間近に迫っており、楽しみです。

PS:某エヴァンゲリオン劇場版より楽しみにしています。
2012/11/21 19:37 | URL | 投稿者:まっつん [編集]
島式
代々木八幡1号踏切から千代田線が顔を出す所までは、どの位ですか?
2014/05/13 15:41 | URL | 投稿者:岩倉OB [編集]
Re: 島式
岩倉OB様

現地は正確に調べたことがありませんが、Googleマップの距離測定ツールによると踏切から千代田線の坑口までは約140mほどのようです。ただし、それより手前でトンネルの天井部分が地表に盛り上がってしまっており、ホームの延伸用地や踏切の移設用地として使えるのは踏切から5,60mほどとなってしまいそうです。
なお、代々木八幡駅のホーム延伸工事は理由は不明ですが周辺住民からの反対に遭っており、現在計画がストップしています。
2014/05/13 18:31 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
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