千葉モノレール「URBAN FLYER 0-type」(1:概要・車外編)

【クリックで拡大】千葉市役所脇を行く「URBAN FLYER 0-type」

2012年7月8日、千葉モノレールで新型車両「URBAN FLYER 0-type(アーバン・フライヤー・ゼロタイプ)」の営業運転が開始されました。今回は2記事に渡りこの「URBAN FLYER 0-type」の特徴や営業運転初日に実施されたデビュー記念イベントの模様などをお伝えしてまいります。1記事目の今回は千葉都市モノレールと「URBAN FLYER 0-type」の概要、車両外部の特徴について眺めます。

■千葉モノレールの概要
市役所前~千葉間(そごう千葉店屋上)を行く千葉都市モノレール。 モノレール本社にあるギネス登録の証書。
左:市役所前~千葉間(そごう千葉店屋上)を行く千葉都市モノレール。2007年4月29日撮影
右:モノレール本社にあるギネス登録の証書。2006年10月21日撮影(モノレール車両基地公開イベント)

※クリックで拡大

 千葉都市モノレール(以下、「千葉モノレール」)は千葉みなと駅を起点に千葉駅を経由して県庁前駅へ向かう「1号線」(全長3.2km)と、千葉駅から千葉市内陸部を大きく迂回し、都賀(つが)駅を経由して千城台(ちしろだい)駅へ向かう「2号線」(全長12.0km))の2路線からなる、第三セクターの鉄道路線です。モノレールはその名の通り、1本のレールで車体を支える鉄道で、大きく分けてレールに車体が跨る「跨座式」とレールに車体が吊り下げられた「懸垂式」があります。千葉モノレールで採用されたのは後者の「懸垂式」で、15.2kmという路線延長は懸垂式モノレールとしては世界一のが長さを誇っており、2001(平成13)年にはギネス・ワールドレコーズ(ギネスブック)に登録されています。
 千葉モノレールの整備計画は昭和40年代中頃に立案されました。当時の千葉市は首都圏のベッドタウンとして臨海部・内陸部で大規模な宅地開発が次々と進んでおり、1971(昭和46)年には全市の人口が50万人を突破し、その後も1年に数万人ずつ増加を続けていました。しかし、当時市内にあった鉄道路線は国鉄総武線、成田線、内房・外房線と京成千葉線のみであり、京葉線はまだ貨物専用線として建設が進められている段階、京成千葉線は千葉中央駅(当時の名称は「京成千葉駅」)が終点でした。このため、新規に建設された住宅郡へのアクセスは専ら路線バスや自家用車に頼ることとなり、排気ガスによる大気汚染、騒音、交通渋滞などが深刻な問題となっていました。
 このままの人口増加のペースが続けば、十数年後には市の人口が100万人を超えることは自明であり、千葉市ではその交通需要に対応できる新しい交通機関の導入について検討を行いました。当初は地下鉄とモノレールの双方が検討されましたが、地下鉄は建設費が高額であり整備に長い期間を要することから、神奈川県を走る湘南モノレールを参に、懸垂式モノレールを整備することが決定されました。当面の整備区間は東幸町(現・千葉みなと駅)~星久喜(青葉の森公園)・穴川・都賀・千城台とされ、将来計画として東幸町から海浜ニュータウン(現在の稲毛海岸駅~海浜幕張駅付近)を経由して西幕張(現・幕張本郷駅)に至るルート、穴川から分岐して海浜ニュータウンに至るルート、千城台と星久喜を接続する3つのルートが提示されました。


より大きな地図で 千葉都市モノレール整備計画 を表示
※「将来計画」は当時の新聞記事の図と道路の位置から大雑把に描いたものであり、正確なものではない。

 第1次開業区間となるスポーツセンター~千城台間は1988(昭和63)年3月28日に開業し、以後順次路線の延長を続け、1999(平成11)年には千葉~県庁前間が開業して整備は一段落となりました。一方、将来計画として立案されていた海浜ニュータウンへ至るルートや千城台~星久喜を結ぶルートは京葉線が旅客線化されたこと、千葉急行電鉄(現・京成千原線)が建設されたこと、1990年代初頭にバブル経済が崩壊し、市内の開発のスピードが鈍化したことなどから実際に建設されることはありませんでした。また、当初予定された整備区間のうち唯一未着工となっている県庁前~星久喜(市立青葉病院)間についても、2記事目で解説する経営状態の悪化から、現在建設が凍結されています。

■新型車両「URBAN FLYER 0-type」の概要

千葉みなと駅に停車中のURBAN FLYER 0-typeと1000形
千葉みなと駅に停車中の「URBAN FLYER 0-type」(右)と1000形(左)。2012年7月16日撮影

 千葉モノレールではこれまで開業当時から増備を重ねてきた1000形車両を使用してきましたが、初期の車両は製造から20年以上が経過し、老朽化が進んでいます。このため、2007(平成19)年より新型車両への置き換えの検討に入りました。新型車両の設計に当たっては千葉都市モノレール株式会社と学識経験者による「千葉都市モノレール新型車両デザイン検討委員会」を組織し、単なる通勤輸送にとどまらず、「乗ること自体が目的になる」といった観光資源としても活用できる車両とすることを目標にデザインが検討されました。また、詳細なデザインは広島県の新交通システム「アストラムライン」や大阪~京都を走る京阪電気鉄道の新しいボディーカラーを手がけたデザイン総研広島(DSH)に依頼されました。その結果できあがった新型車両のデザインの特徴は以下のとおりとなっています。




●「空中飛行鉄道」を強調するシャープなデザイン
車体外面はこれまでのアルミ合金の地肌のままであった無機質なデザインから脱却し、「空中飛行鉄道」を強調するため全体を鮮やかなスカイブルーに塗装し、先頭部側面は大胆に斜めにカットしたラインを描くことで、先進性と空への上昇感を表現している。

●窓を拡大し、眼下に広がるアーバンビューを体感
運転室と客室の仕切りはガラス部分を大幅に拡大し、運転室床面中央をガラス化した。また、側面は乗降ドアも窓ガラスを床面近くまで拡大した。これにより眼下に広がる千葉の街並みを一望できる。

●車両のネーミングとロゴ
新型車両の形式は「0形」で「URBAN FLYER 0-type(アーバン・フライヤー・ゼロタイプ)」の愛称が与えられた。これに合わせて、車体の各所には千葉氏の家紋である月星をベースに、空中を軽やかに浮遊するモノレールをイメージしたロゴが描かれた。

また、これらのデザインに加え、環境対策、安全性、バリアフリー化のレベルアップを図るため以下のような新技術が取り入れられています。

●VVVFインバータ制御・回生ブレーキ
駆動装置は従来の抵抗制御・直流モーターから、最新の技術であるVVVFインバータ制御・交流モーターに変更し、騒音低減・メンテナンスフリー化を実現した。また、定速運転機能と回生ブレーキの採用により乗り心地向上と消費電力の大幅削減を実現した。

●運転状況記録装置搭載・列車無線の高機能化
2005(平成17)年に発生したJR福知山線脱線事故とそれに伴う省令改正※1により運転操作の状況を記録する装置の搭載が義務付けられた。新型車両では運転台に運転状況記録装置を内蔵した高機能なモニター(TIS)を搭載し、省令に対応するとともに運転士への負担軽減を図った。また、今後千葉モノレールでは列車無線のデジタル化が予定されており、それに対応した装置を搭載した。これにあわせて停電時の防護無線動作用バッテリー搭載、デッドマン装置※2動作時の列車無線非常発報機能、客室非常通報装置と列車無線の連携機能※3を追加した。このほか、空調ダクトの不燃化、ATCの二重化、車両間貫通路の走行中の施錠機能の追加も行われている。

●バリアフリー対策
各車両の運転室後部は座席を設置せず、展望スペース兼車椅子スペースとした。また、各乗降ドア上部には開閉時に鳴動するチャイムと3色LEDを用いた案内表示器を設置し、次駅名の案内などを行う。さらに車両間の連結部分には転落防止幌を設置し、ホームからの転落事故を防止する。

▼脚注
※1:2005(平成17)年の福知山線脱線事故発生後に鉄道の技術上の基準を定める省令が改正され、「1、曲線・行き止まりなどの危険箇所に自動的に速度を制限する装置(ATC/ATS)を設置すること」「2、運転士の体調に異変が生じた際自動的に列車を停止させる装置(デッドマン/EB装置)を設置すること」「3、万一の事故発生の際の原因究明のため運転操作の履歴を記録する装置を設置すること」の3点が義務付けられた。
※2 デッドマン装置:マスコンハンドルに押しスイッチを内蔵し、運転士がハンドルから手を離すと自動的ブレーキがかかる仕組み
※3:客室非常通報装置が扱われた際、一定時間運転士が反応しなかった場合に列車無線を通じて指令所と通話ができる仕組み

■車両外部の特徴
千葉みなと駅に停車中の「URBAN FLYER 0-type」
千葉みなと駅に停車中の「URBAN FLYER 0-type」。2012年7月16日撮影
※クリックで拡大(900*675px/113KB)

 「URBAN FLYER 0-type」は先頭部がブラック、車体底面・側面は空をイメージしたブルーとなっており、側面の窓下と底面には飛行機雲をイメージした白いラインが入っています。このブルーは国鉄の電車などで「スカイブルー」と呼ばれていた色よりもさらに濃く、より空の色に近いブルーとなっています。先頭部の側面にあるブラックとブルーの境目はブルーのラインが大きく斜めに横切っており、窓ガラスものこラインに合わせた形状となっています。
 なお、先頭部は左右の上下にシールドビームのヘッドライトが2個ずつ、下部にLEDを用いたテールライトが3個ずつ設置されており、ヘッドライトは通常左右1個ずつ点灯して走行します。(昼間は節電のため消灯している場合が多い。)また、今回製造された2編成は1000形の1次車の置き換えが目的であるため、現時点では電気連結器は設置されておらず、2編成併結での運転はできません。ただし、連結器上部の覆いは切り込みが入っており、将来的には覆いを取り外して電気連結器の追加も可能な構造になっているものと思われます。

各乗降ドア上部に描かれたURBAN FLYERのロゴ 運転室入口脇の車番表記
左:各乗降ドア上部に描かれたURBAN FLYERのロゴ
右:運転室入口脇の車番表記。2枚とも2012年7月16日撮影

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 前面貫通扉、各乗降ドア上部、運転室入口脇、車体底面には「URBAN FLYER」のロゴマークが描かれています。(運転室脇は車番も併記。)URBAN FLYERのロゴマークはかつて千葉県全域を支配下に置いていた豪族、千葉氏の家紋である月星紋※4をもとにしたものです。URBAN FLYERのロゴマークはこの月星紋を分解したもので、アルファベットの下にあるU字形の黄色いラインが三日月、アルファベットの間にある黄色い丸が星をそれぞれ表しています。同様の模様は千葉市の市章でも見ることができます。

▼脚注
※4 千葉氏の月星紋:先祖である平良文(たいらのよしふみ)が戦で窮地に陥ったところ、天から星が降ってきて窮地から救われたという伝承にから来ている。千葉氏ではこの月星紋の他に複数の星が環状に並ぶ「九曜紋」や「十曜紋」を使用していた時期もあるが、いずれも北極星や北斗七星を神格化した「妙見菩薩」に通じるものであり、千葉氏の信仰の強さを物語っている。

▼参考
千葉市:稲毛の歴史
→千葉氏の家紋について

「URBAN FLYER 0-type」の連結部分。段違いタイプの転落防止幌が付く。 連結面近くの窓上部に設置された行先表示器。
左:「URBAN FLYER 0-type」の連結部分。段違いタイプの転落防止幌が付く。
右:連結面近くの窓上部に設置された行先表示器。2枚とも2012年7月16日撮影

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 車両間の連結面にはホームから利用者が転落するのを防止する転落防止幌が千葉モノレールでは初めて設置されています。転落防止幌は関西の民鉄各社で多く見られる、双方の車両に小さなゴム製の板を交互に取り付けて壁を作るタイプとなっています。これは道路上に線路が敷設されたため、直角に曲がるような急カーブが多く、車両間の大きな偏倚(へんい)に対応させる必要があるためと考えられます。
 このほか、車両連結面付近の窓上部には1000形(3次車以降)と同じく行先表示器が設置されています。行先表示器はLEDを使用したもので、現在のところ表示内容は漢字+英語で固定されています。


「その2:車内・デビュー記念イベント編」に続く→


▼参考
千葉モノレール(公式Web)
アーバンフライヤーとモノちゃん号時刻表
Urban Flyer 0-type(facebookページ)
千葉市:都市モノレールのページ
編集長敬白: 千葉都市モノレール0形登場。
【レポート】千葉モノレール新型車両"URBAN FLYER"披露、パノラマデッキで眺望を楽しむ | 旅行 | マイナビニュース

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→上2つは千葉モノレール萩台車両基地公開イベントについて
千葉都市モノレール(2007年5月1日作成)

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