下り線高架化まで1カ月!京急蒲田駅高架化工事(2012年9月16日取材)

本線ホームの停止位置が変更された京急蒲田駅上り線ホーム

東京都大田区にある京急蒲田駅付近では現在高架化工事が進められています。来月の下り線高架化完成を目前に控え、各所で仕上げの工事が急ピッチで進められています。今回は京急本線の各駅の状況についてお伝えいたします。

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京急蒲田駅連続立体交差化工事(2012年5月19日取材)

■京急蒲田駅付近の高架化工事の概要



 京急蒲田駅付近連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間4.7kmと京急空港線京急蒲田~大鳥居間1.3kmを高架化するものです。京急蒲田駅付近には第一京浜(国道15号)と環状8号線の踏切があり、いずれも都内ではワースト3に入る深刻な交通渋滞が問題となっていました。また、高架化着工前の京急蒲田駅は島式ホーム1面+片面ホーム1面の2面3線でしたが、空港線については駅構内が単線であるなど極めて狭小な設備となっていました。羽田空港では2010年10月に国際線ターミナルビルと新しい滑走路(D滑走路)の供用が開始され、2013(平成25)年度には航空機の年間発着回数が以前の約1.5倍の44.7万回まで増える予定となっています。このため、旧来の京急蒲田駅の設備では、羽田空港の拡張に伴う空港線の利用者数の増加に追い付かない事態が予想されました。
 この区間が高架化されると区間内にある28か所の踏切が廃止され、交通渋滞の解消、安全性向上、地域分断解消などが実現します。また、高架化後の京急蒲田駅はホームが2層構造となり、上下線が完全に分離されます。これにより空港線は複線化され、列車本数を増加させることが可能となります。また、本線側には6両分の切り欠きホームが新設され、優等列車の追い抜きが可能となり、以前と比べて余裕のあるダイヤ構成が可能となります。
 工事は2000(平成12)年から開始され、用地買収を待たずに現在線の真上に高架橋を建設する「直接高架工法」を最大限に活用した結果、2010(平成22)年5月に上り線のみ高架化が完了しました。この高架化により区間内にある踏切の遮断時間が4割減少したほか、環状8号線については高架化前に上り線が使用していた仮設高架橋を活用することにより、先行して踏切の完全廃止が実現しました。そして、今年7月17日に京急電鉄より10月21日(日)に下り線の高架線切替を行うことが発表されました。着工から12年の歳月を経て、京急蒲田駅の高架化工事がついに完成します。
 なお、この京急蒲田駅付近連続立体交差事業は「高架化による踏切の解消」と「駅設備の拡張による羽田空港アクセスの改善」という2つの側面を持っています。このため、国・自治体からの補助についても道路整備である「連続立体交差事業」(ガソリン税・自動車重量税が財源)と鉄道整備の一環である「駅総合改善事業」の2種類の対象事業として扱われています。総事業費は約1892億円となっており、国、東京都、大田区、京急電鉄が負担することとなっています。(総事業費は当初1650億円の予定だったが、増額された模様。)

■京急本線各駅の2012年9月16日の状況

 ここからは9月16日(日)に調査した京急本線の各駅(雑色・京急蒲田・梅屋敷・大森町)の状況についてみてまいります。なお、今回は時間の都合上空港線の糀谷駅の調査はできませんでした。こちらについては10月21日(日)の下り線高架化完成後に改めて調査する予定ですので、ご了承ください。

●雑色駅
雑色駅の高架ホーム左が10月より使用を開始する新下り線ホーム。 雑色駅の地上にある現下り線ホーム。高架ホームに通じるエレベータと階段は完成済み。
左:雑色駅の高架ホーム左が10月より使用を開始する新下り線ホーム。(同じ場所の2011年10月29日の様子
右:雑色駅の地上にある現下り線ホーム。高架ホームに通じるエレベータと階段は完成済み。(同じ場所の2011年10月29日の様子

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 雑色駅は未着工だった高架下り線ホームの階段・エレベータの設置が完了しました。ホーム品川寄りのエスカレータは未完成でホームのエスカレータ予定地も工事用の柵で覆われたままとなっており、高架下から見てもエスカレータ本体を設置している様子は見受けられませんでした。雑色駅は地上のホームが狭いため、2010年5月の上り線高架化時も当初はエスカレータを設置せず、地上のホームの撤去が完了した同年12月に遅れてエスカレータの使用を開始しており、下り線ホームについても同様の方法がとられるものと思われます。

雑色駅のホーム端から横浜方面を見る。左が下り線で、架線・信号機の設置も完了している。
雑色駅のホーム端から横浜方面を見る。左が下り線で、架線・信号機の設置も完了している。

雑色駅付近に限らず、駅間については架線・信号設備の設置がほぼ完了しており、ホーム上についても一部の案内板を除きほとんどの設備の設置が完了しています。

●京急蒲田駅
完成した京急蒲田駅上り線ホームの切り欠きホーム。
完成した京急蒲田駅上り線ホームの切り欠きホーム。(2010年5月16日の同じ場所の様子

 2010年5月の高架化時に使用を開始した京急蒲田駅の高架ホームは、12両編成分の長さを持つ島式ホーム(4・6番線)の横浜方に6両編成分の切り欠きホーム(5番線)がある特殊な形状となっています。現行ダイヤでは切り欠きホームを用いた優等列車の追い抜きをしないため、5番線の一部を仮設の床面で覆い、階段に近いホーム中央付近に列車を停車させてきました。来る10月21日の下り線高架化時に行われるダイヤ改正後はこの切り欠きホームも使用する模様で、7月29日(日)より6番線の停止位置が品川方面に2両分程度移動しました。停止位置の移動後は仮設の床面の撤去、車止め用緩衝器・出発信号機の設置が行われ、現在はいつでも使用が開始できる状態となっています。

12両編成の列車はホーム品川方の端に詰めて停車するため、最前部は階段からかなり距離がある。 ホーム品川方端の12両編成用停止位置。
左:12両編成の列車はホーム品川方の端に詰めて停車するため、最前部は階段からかなり距離がある。
右:ホーム品川方端の12両編成用停止位置。

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 下階の改札口や来月使用開始となる上階の下り線ホームへ向かう階段・エスカレータ・エレベータはホーム幅の関係でホーム中央付近に集中的に配置されています。12両編成の列車は品川方のホーム端まで目一杯使って停車するため、先頭車両から階段まではかなりの距離があります。12両編成の列車が入線するのは6番線(京急本線)側のみであるため、4番線(空港線)側は品川方の一部に柵が設置されています。

上り線ホーム中央にある下り線ホームへ向かう階段・エスカレータは完成済み。 下り線ホームへ向かう階段を見上げる。下り線ホームは中央が膜屋根となっている。
左:上り線ホーム中央にある下り線ホームへ向かう階段・エスカレータは完成済み。
右:下り線ホームへ向かう階段を見上げる。下り線ホームは中央が膜屋根となっている。

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 上り線ホーム上階の下り線ホームは2010年5月の上り線高架化時にほとんどの部分が完成しており、今回は上り線ホームとの間にある階段・エスカレータ・エレベータの仕上げが行われました。下り線ホームは屋根の一部が膜屋根となっている模様です。

中2階では駅舎の構築が始まった。
中2階では駅舎の構築が始まった。

 2010年の上り線高架化以降、上り線ホーム(2階)と地上(1階)の間には中2階の床面の建設が続いていました。今回は完成した駅中央付近の中2階の床面上に新しい駅舎と思しき構造物が出来上がりつつあるのを確認できました。これと対応する上り線ホーム上にもこの駅舎へ通じると思われる階段の設置工事が進められており、下り線高架化後に使用を開始するものと思われます。

●梅屋敷駅
仮設ホームの撤去が完了した梅屋敷駅
仮設ホームの撤去が完了した梅屋敷駅(2012年5月19日の同じ場所の様子

 梅屋敷駅の高架ホームは2010年5月の上り線高架化当初は下り線の線路上に仮設の床面を設置し、下り線ホームを暫定的に上り線ホームとして使用していました。その後、地上の旧上り線ホームの撤去と階段・エスカレータ・エレベータの設置が完了したことから、今年5月13日より本来の上り線ホームを使用しています。上り線ホームの移設完了後は下り線の線路上に設置していた仮設ホームの撤去や架線の設置が行われ、今回訪問時はほぼ完成した状態となっていました。下り線ホームの階段・エスカレータ・エレベータは依然上り線ホームとして使用していたこともあり、すべて完成済みとなっており、いつでも使用が開始できる状態となっています。

●大森町駅
大森町駅の高架ホーム。左が下り線の新ホーム。 地上の下り線ホームから工事中の高架の下り線ホームへ向かう階段・エスカレータを見る。
左:大森町駅の高架ホーム。左が下り線の新ホーム。(同じ場所の2011年10月29日の様子
右:地上の下り線ホームから工事中の高架の下り線ホームへ向かう階段・エスカレータを見る。(同じ場所の2012年5月19日の様子

※クリックで拡大

大森町駅も雑色駅と同様、高架の下り線ホームの階段・エスカレータ・エレベータの設置が完了しました。大森町駅は地上の下り線ホームを上り線側に移設することにより、高架ホームへ上る設備を設置するスペースを確保できたため、エスカレータも含め全ての設備が完成しています。

■下り線高架化に合わせてダイヤ改正
10月21日以降の京急線の列車種別と停車駅
10月21日以降の京急線の列車種別と停車駅

 京急蒲田駅付近の下り線高架化が完成により、京急蒲田駅周辺では工事区間の徐行の解消や、空港線の単線並列区間が短縮されるなど設備が大幅に変化します。これに合わせて京急線と直通運転を行う都営浅草線・京成線・北総線ではダイヤ改正が予定されています。今回のダイヤ改正のポイントは以下の通りです。

(1)日中時間帯の都心~羽田空港間の「快特」を倍増
現在、日中時間帯の都営線・品川~羽田空港間の列車は「エアポート急行」と品川~羽田空港間ノンストップの「エアポート快特」がそれぞれ20分間隔で運行されている。改正後は「エアポート急行」を「快特」に格上げし、「エアポート快特」は一部を「快特」に格下げし、40分間隔に減便する。また、品川~羽田空港国内線ターミナル間の所要時間は現在より1分短縮の15分とする。これに合わせて誤乗を防止するため、「エアポート快特」の種別色を現行のからに変更する。

(2)日中・夕方時間帯の横浜方面~羽田空港間の「エアポート急行」を倍増
現在、日中時間帯に20分間隔で運行している横浜方面~羽田空港の「エアポート急行」を3本増発する。また、夕方ラッシュ時についても横浜方面行きの「エアポート急行」を6本新設し、日中~夕方にかけて「エアポート急行」は毎時10本の運行とする。また、日中の横浜→羽田空港の所要時間は現在より3分短縮の26分とする。

(3)朝ラッシュ時の羽田空港方面の列車を増発
平日朝ラッシュ時は品川方面→羽田空港間で「快特」を3本増発し、現在の「エアポート急行」6本と合わせて9本に増発。横浜方面→羽田空港間は「特急」を3本増発し、現在の「特急」3本と合わせて6本に増発する。土休日朝ラッシュ時は平日日中と同じ横浜方面→羽田空港のく「エアポート急行」を3本増発した、10分間隔での運行とし、所要時間も現在より4分短縮の26分とする。また、夜間帯に羽田空港→品川方面で運行されている「エアポート快特」「エアポート急行」を全て「快特」に変更し、所要時間・停車駅の統一を図る。

(4)品川~京急蒲田間の「普通」を増発
日中時間帯の品川~京急蒲田間の「エアポート急行」が「快特」に格上げされるのに伴い、通過となる駅を救済するため、品川~京急蒲田間で「普通」を1時間当たり3本増発する。

このほか、現在品川止まりになっている一部の上り列車の泉岳寺・都営線方面への延長、羽田空港~成田空港間で運行されている「エアポート快特・アクセス特急」の大幅な所要時間短縮などが代表的な変更点となっています。現行の「エアポート快特・アクセス特急」は京成成田スカイアクセス線のうち、単線となる成田湯川~空港第2ビル間でダイヤにかなりの余裕が盛られており(特に新根古屋信号場での行き違いでは最大10分程度停車している)、この部分を削減することにより大幅な所要時間短縮が実現するものと思われます。
 京急蒲田駅の高架化工事は大田区が事業費のうち200億円を負担していることから、2010年5月のダイヤ改正時に京急蒲田駅を通過する「エアポート快特」が新設された際、区長・区議会・区民代表が連名で抗議声明を発表するなど大きな混乱が発生しました。今回のダイヤ改正では京急蒲田駅を通過する「エアポート快特」は40分間隔まで減便されることとなり、この問題は完全ではないものの一応の解決を見たことになります。

来る10月21日の京急蒲田駅の下り線高架完成により、京急本線は新馬場~京急川崎間の約10kmに渡り踏切がゼロになります。軌道時代の名残で民家の数メートル先を12両編成の電車が120km/hで走り抜けるスリリング(?)な光景が展開されることで有名だった大田区内の京急本線ですが、いよいよ来月には大都市の鉄道としてふさわしい姿へ完全に生まれ変わることいなります。

▼参考
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業
京急蒲田駅付近の上下線が全線高架化します! - 京急電鉄ニュースリリース(PDF/911KB)
品川⇔羽田国際線12分! 10月21日(日)ダイヤ改正で,羽田へ都心方面からも さらに速く - 京急電鉄ニュースリリース(PDF/830KB)
京急本線・空港線を10月に全線高架化|東京都

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京急蒲田駅連続立体交差化工事(2012年5月19日取材) このエントリーをはてなブックマークに追加
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