京急蒲田駅高架化完成(その1:事業概要・京急蒲田駅周辺・改札口の模様)

「高架化完成」に書き換えられた京急蒲田駅の空港線・第一京浜踏切。

2012年10月21日(日)、京急本線平和島~六郷土手間と京急空港線京急蒲田~大鳥居間の下り線が高架化され、同区間の完全高架化が完成を迎えました。2010年5月の上り線高架化時と同様に今回も4記事に渡り高架化された各駅の様子をお伝えいたします。1回目の今回は高架化完成初日に調査した京急蒲田駅の周辺と高架下に統合された改札口の模様についてお伝えいたします。

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下り線高架化まで1カ月!京急蒲田駅高架化工事(2012年9月16日取材)(2012年9月24日作成)

■京急蒲田駅高架化の概要とこれまでのあゆみ

 京浜急行本線及び同空港線(京急蒲田駅付近)連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間約4.7kmと京急空港線京急蒲田~大鳥居間約1.3kmを高架化する事業です。
 着工前は両線とも線路が地上にあり、合計28か所の踏切で道路と平面交差していました。中でも京急蒲田駅付近にある第一京浜(国道15号)と環状8号線(都道311号線)の踏切は東京都内でワースト3に入る激しい交通渋滞が発生する「開かずの踏切」と化しており、立体交差化が急務となっていました。
 一方、着工前の京急蒲田駅は島式ホーム1面+片面ホーム1面の2面3線の構造でしたが、空港線については駅構内が単線かつ本線と平面交差で分岐していたほか、横浜方面と直通できない配線となっていました。羽田空港では2010(平成22)年10月に国際線ターミナルビルと4本目の滑走路(D滑走路)が完成し、来年には航空機の年間発着回数が以前の約1.5倍の44.7万回まで増加する予定となっています。このため、以前の京急蒲田駅の狭小な設備では羽田空港の利用者数増加に追いつかないと判断されました。

地上時代の京急蒲田駅 高架橋建設が進む京急蒲田駅構内 京急蒲田駅前の空港線・第一京浜の踏切
左:地上時代の京急蒲田駅。2006年10月28日撮影
中:高架橋建設が進む京急蒲田駅構内。2007年4月15日撮影
右:京急蒲田駅前の空港線・第一京浜の踏切。2008年8月23日撮影

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 これらの問題を解決するため、2000(平成12)年より高架化工事がスタートしました。今回のような鉄道の高架化では線路脇にあらかじめ確保した空き地に線路を移設し、元の場所に高架橋を建設する「仮線方式」が用いられるのが一般的です。しかし、前記した事情から京急蒲田駅付近では可及的速やかな高架化完成が要求されたため、移動式のクレーンを使用して現在線の真上に高架橋を建設していく「直接高架工法」がほとんどの区間で採用されました。
 この結果、2010年5月に上り線のみ高架化が完成しました。これにより、事業区間内の踏切では遮断時間が4割減少したほか、空港線は京急蒲田駅構内を含め複線化・立体交差化されました。ただし、この時点では空港線は糀谷駅の先まで上下線が地上・高架に分かれたため、京急蒲田~大鳥居間が単線並列となっており、引き続きダイヤ構成上の制約が残りました。このほか、踏切解消の緊急度が特に高かった環状8号線については仮設高架橋が設置されており、2008(平成20)年5月に上り線のみ高架化されました。上り線の完全高架化後の2010年9月からは下り線がこの仮設高架橋を使用しており、環状8号線の踏切は全区間に先駆けて廃止が実現しました。

高架化された京急蒲田駅上りホームに停車中の京急旧1000形。旧1000形は上り線高架化から1ヶ月後に営業運転から退いた。 仮設高架橋により先行して立体交差化が完了した環状8号線の踏切。
左:高架化された京急蒲田駅上りホームに停車中の京急旧1000形。旧1000形は上り線高架化から1ヶ月後に営業運転から退いた。2010年5月16日撮影
右:仮設高架橋により先行して立体交差化が完了した環状8号線の踏切。2008年8月23日撮影

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 上り線高架化完成後は地上の旧上り線の撤去、高架の下り線ホームの整備などが進められ、着工から12年を経た2012年10月21日(日)に下り線の高架線切替が実施され、全区間の完全高架化が完了しました。この切替により、京急蒲田駅は上下線のホームが2層構造となったため(詳しくは後述)、同時に大規模なダイヤ改正も実施され、横浜方面・品川方面とも羽田空港行きの列車が大幅に増便されています。
 なお、この事業は高架化による踏切の解消と京急蒲田駅の改良による羽田空港アクセスの改善という2つの側面を持っています。このため、国からの事業費の補助についても道路整備の一環である「連続立体交差事業」と駅施設の利便性向上を対象としている「駅総合改善事業」の2種類に分けて行われています。総事業費は約1892億円で、国・東京都・大田区・京急電鉄の4者が負担しています。

■下り線も高架化された京急蒲田駅
下り線高架化後の京急蒲田駅の立体図
下り線高架化後の京急蒲田駅の立体図
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 京急蒲田駅は高架橋建設が本格化した2007(平成19)年末以降、線路の西側の地上と地下の仮設通路内の2か所に改札口が設置されていました。今回の下り線高架化に伴い、これらの地上の施設は不要となるため、改札口は駅中央の中2階1ヵ所に集約され、駅構内の通路の配置が大幅に変化しています。2010年に使用開始済みの2階上り線ホームは準備されていた3階の下り線ホームへ向かう階段・エスカレータの使用が開始されれたほか、地上・地下の通路へ通じていた仮設階段は中2階の改札口へ向かう通路に流用された1ヵ所を除いて封鎖されました。また、今年9月の記事でもお伝えした通り、上り線ホーム横浜寄りの切り欠きホーム(5番線)も今回一部を覆っていた仮設の床面が撤去され、京急蒲田始発の普通列車用ホームとして使用を開始しています。切り欠きホームは3階の下り線ホームにも設置されています。(品川~京急蒲田間の区間列車については「その4」の記事で詳しく解説する予定。)

●駅周辺の様子
渋滞が消えた空港線と第一京浜が交差する踏切。
品川方にある多摩堤通りの踏切。線路側に柵が設置された。 横浜方の踏切。同じく線路側に柵が設置された。
上段:渋滞が消えた空港線と第一京浜が交差する踏切。
下段左:品川方にある多摩堤通りの踏切。線路側に柵が設置された。(同じ場所の2008年1月2日の様子
下段右:横浜方の踏切。同じく線路側に柵が設置された。(同じ場所の2008年1月2日の様子

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 下り線高架化により使用されなくなった京急蒲田駅周辺の踏切は、いずれも切替前日の20日(土)終電直後に警報機・遮断機を撤去するもしくはカバーで覆われ、線路側には柵が設置されるなど踏切廃止の措置が取られました。また、冒頭写真の通り第一京浜の踏切の門形警報機の上部には「高架化完成」の横断幕が張られました。この日はまだ切り替え初日ということもあり、無くなってしまった踏切の手前で「いつもの感覚」で一旦停止するドライバーも多数見られましたが、渋滞が消えた2006年の初調査以来6年にわたり京急蒲田駅を見てきた者にとって「渋滞のない第一京浜」の風景は大変新鮮に感じられました。

●駅出入口・改札口
第一京浜側の駅出入口。頭上には2段重ねとなっている空港線の高架橋が横断する。
第一京浜側の通路は地上ホームを分断して設置された。 地上ホーム跡はまだ照明が一部点灯していた。
上段:第一京浜側の駅出入口。頭上には2段重ねとなっている空港線の高架橋が横断する。
下段左:第一京浜側の通路は地上ホームを分断して設置された。
下段右:地上ホーム跡はまだ照明が一部点灯していた。

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 新改札口へつながる地上の駅出入口は第一京浜側(東口)とJR蒲田駅側(西口)の2か所設けられており、双方を結ぶ通路が事実上東西自由通路として機能しています。このうち、第一京浜側の出入口は下り線高架化前日まで使用していた地上ホームの一部を分断して設置されています。通路と重なる部分の軌道は20日(土)終電~21日(日)初電の間に撤去されてアスファルトで埋められており、大きな段差などはありません。分断された地上ホームはまだ照明などの電力供給が継続されていたものの、発車案内板に内蔵されている時計は前日の営業終了時刻である1時26分で止まっており、使われなくなったことを実感させられました。

JR蒲田駅側の出入口。 高架下の改札口入口。エレベータは今立っている場所の背後にある。
左:JR蒲田駅側の出入口。
右:高架下の改札口入口。エレベータは今立っている場所の背後にある。

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JR蒲田駅側の出入口は以前からある横断地下道の脇に設けられました。こちら側は地上の旧駅施設の撤去はほぼ終了しているため、一部で床のタイル張りが完了しているなど完成に近い作りとなっています。なお、東西両側とも今後大規模な再開発と駅前広場の新設が計画されており、合わせてペデストリアンデッキ(歩道橋)の建設が予定されています。このため、中2階のコンコースは壁が一部仮設となっており、ペデストリアンデッキと連結できる構造となっています。

中2階改札口。正面に進むと1・3・4・6番線、右に進むと2・5番線に最短距離で到達できる。
中2階改札口。正面に進むと1・3・4・6番線、右に進むと2・5番線に最短距離で到達できる。
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 高架下のエスカレータ・階段を上がると、正面に今回統合された改札口があります。乗換利用が主体の駅であることから、改札口は比較的コンパクトにまとめられており、自動改札機は7台(うち1台は車いす対応の幅広タイプ)、自動券売機は4台の設置となっています。自動改札機は上階のホームに合わせてL字形に配置されており、改札外側から見て正面に向かうと1・3・4・6番線、右に向かうと切り欠きホームの2・5番線に最短距離で到達できます。また、有人通路は最近主流のガラス張りの密閉型となっています。

改札口を入ってすぐのところにある案内板。 改札口を入ってすぐのところにある発車案内表示器。
左:改札口を入ってすぐのところにある案内板。
右:改札口を入ってすぐのところにある発車案内表示器。

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 下り線高架化により、下り線ホームが3階に移動したことから、駅構内の案内板類も一新されています。案内板では2階上り線ホームを赤、3階下り線ホームを茶色として区別しています。また、改札口周辺にある発車案内板はいずれも3画面のプラズマディスプレイを使用しており、品川方面・横浜方面・羽田空港方面(発着ホーム併記)に分けて表示しています。

改札口正面にあるエスカレータ。左が2階上り線ホーム、右が3階下り線ホームに向かう。 左右のエスカレータの分岐部分。
左:改札口正面にあるエスカレータ。左が2階上り線ホーム、右が3階下り線ホームに向かう。
右:左右のエスカレータの分岐部分。

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 改札口からホームへ上がる設備は現時点ではエスカレータ5機、エレベータ1機、階段1ヵ所となっています。改札口の正面にある2機あるエスカレータは左側が2階の上り線ホーム、右側が3階の下り線ホームに直行するものとなっています。双方のエスカレータは同じ傾斜となっており、2階で分かれる構造となっています。改札口左奥に向かう通路は前日まで地上の駅舎へ向かう通路として使用されていた部分を一部流用したもので、途中にトイレが設置されています。案内板ではホームに通じていることは表現されておらず、実質的には「ホーム→改札口」方向の専用通路となっています。改札口の右側には2・3階双方に向かうエレベータと切り欠きホーム2・5番線に向かうエスカレータがあります。また、エスカレータの奥には工事中で未使用の階段があります。

続く「その2」の記事では下り線高架化に合わせて切り欠きホームの使用が開始された2階上り線ホーム、新規に使用を開始した3階下り線ホームそれぞれの様子と、高架化当日早朝に行われた記念乗車券発売の模様についてお伝えします。

「その2:京急蒲田駅ホーム・記念乗車券について」の記事へ→

▼参考
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業
京急本線・空港線を10月に全線高架化|東京都
京急蒲田駅付近の上下線が全線高架化します! - 京急電鉄ニュースリリース(PDF/911KB)
品川⇔羽田国際線12分! 10月21日(日)ダイヤ改正で,羽田へ都心方面からも さらに速く - 京急電鉄ニュースリリース(PDF/830KB)
京急蒲田駅 - 京急まちWeb

▼関連記事
京急蒲田駅付近連続立体交差化事業(2006年11月3日作成)
京急蒲田駅高架化の状況(2007年4月21日作成)
京急蒲田駅高架化2008年(2008年2月16日作成)
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京急蒲田駅連続立体交差化工事(2010年4月3日取材)とダイヤ改正を巡る混乱(2010年5月8日作成)
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