延伸計画・その他 - りんかい線東臨トンネル(35)

東京臨海高速鉄道りんかい線東臨トンネル ~時代に翻弄されたもうひとつの京葉線~
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東海道貨物線のレポートに移行する前に、6月以来更新が止まってしまっていた「りんかい線東臨トンネル」のレポートを締めくくっておくこととしたい。今回はりんかい線の横浜方面への延伸計画の現状と今後の可能性、その他こまごまとした話題をお送りする。

■りんかい線の羽田・横浜方面延伸と東海道貨物線旅客化計画
▼参考
臨海副都心線工事誌 - 日本鉄道建設公団東京支社2003年9月 343ページ


より大きな地図で 東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称) を表示

 国鉄時代に計画された京葉線は川崎市の塩浜操車場(現・川崎貨物駅)を起点としており、このルートに含まれるりんかい線の新木場~八潮車両基地間の構造物は、将来の横浜方面延伸やそれに伴い想定される貨物列車の走行が可能な設計となっている。JR貨物の完全民営化に向けた議論の中でもこのことは言及されており、「京葉線・臨海副都心線の利用による貨物輸送の短縮ルート化、臨海副都心を経由した湾岸ルートの開設」と謳われているほか、同社自身も「将来的には大阪方面から東京貨物ターミナル~新木場~西船橋~武蔵野線~仙台、新潟方面として湾岸ルートを活用したい」と表明している。
 この構想は実際に建設された八潮車両基地の入出庫線にも反映されている。具体的には入出庫線は地上に出たところで大汐線(東海道貨物線)下り線と近接させており、将来横浜方面へ延伸する場合は両線路間に連絡用のポイントを設置し直通させることが意図されている。また、工事誌等の資料に記述はないが、東京貨物ターミナル駅汐留方の旧京葉線下り線の坑口は、コンクリートではなく取り壊しが容易な発泡スチロールを詰めることにより閉塞されており、これも将来の延伸時に再利用する可能性を残したものであると思えなくもない。
 さらに、このりんかい線の横浜方面延伸に関しては、2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会第18号答申においても「東京臨海高速鉄道臨海副都心線の建設及び羽田アクセス新線(仮称)の新設」というタイトルで触れられている。具体的には品川駅を起点として大汐線に接続する新線を建設し、東京貨物ターミナル駅構内で新木場方面から来るりんかい線と合流し、以南は根岸線の桜木町駅まで既存の東海道貨物線や高島線などの貨物線を旅客線に転用するという内容となっている。また、東京貨物ターミナル駅~川崎貨物駅間の東海道貨物線のトンネル(羽田トンネル)は羽田空港の西側をかすめていることから、この部分に駅を追加して空港アクセスに供することも盛り込まれた。
 上記のような政策的な動きを受けて、沿線自治体でも旅客化を求める陳情活動が活発化した。神奈川県・川崎市・横浜市の3者により組織された「京浜臨海部再編整備協議会」では、1996(平成8)年の発足翌年からほぼ2005(平成17)年にかけて運輸・国土交通大臣に対して東海道貨物線の貨物・旅客併用線化の要望書を提出しているほか、沿線住民を対象とした試乗会を開催し、旅客線化に向けたPRを行っている。また、1998(平成10)年からはより踏み込んだ対応として、神奈川県・横浜市・川崎市・東京都・大田区・品川区の6者で「東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会」が組織され、沿線住民や企業へのアンケート等の各種調査を通じて東海道貨物線旅客化の必要性や実現に向けた課題の洗い出しなどを続けている。

東海道貨物線羽田トンネル坑口 川崎貨物駅
京急大師線小島新田駅前の陸橋から東海道貨物線羽田トンネル坑口(左)と川崎貨物駅(右)を見る。ここからりんかい線に直通できるようになる日はもう来ないのだろうか?(写真は2枚とも2010年4月3日撮影)
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 このように一度は実現の兆しが見えたりんかい線の横浜方面延伸や東海道貨物線の旅客線化であるが、一時期毎年のように実施されていた試乗会もここ数年は開催された形跡が無くなるなど、イマイチ盛り上がりに欠けるようになった。背景には少子高齢化・経済のグローバル化の進展により、京浜工業地帯の発展が鈍化し、旅客化への必要性が以前よりは薄くなったことに加え、2002(平成14)年にJR東日本が東京モノレールの経営権を取得し、羽田空港アクセスとしての必要性がほぼ消滅してしまったことが大きいと言われる。加えて、東海道貨物線の羽田トンネルは常時多数の貨物列車が走行する首都圏の貨物輸送の要であり、埋立地故の工事の難易度の高さも考えれば駅の追加は容易ではない。(同じ理由から、武蔵野南線の旅客線化は断念された経緯がある。)さらに、2009(平成21)年には前原国土交通大臣が東海道新幹線大井車両基地から羽田空港までの新線建設を提案するなど、政権交代や以降の政治の混乱の余波を受けて、東海道貨物線の旅客化を推進してきた国の政策にもブレが生じている。
 直通自体は前記した通り莫大な投資をせずに可能であるが、政治・経済や各鉄道事業者の利害関係が複雑に絡み合っており、早期の実現は困難な状況といえよう。

▼参考
東海道貨物支線の貨客併用化に向けた動き - 京浜臨海部再編整備協議会
東海道貨物支線貨客併用化整備検討協議会
【連載】鉄道トリビア (30) 羽田空港の地下に、JR在来線の線路がある | 旅行 | マイナビニュース

■第1期区間開業15周年・全線開業10周年と今後
第1期区間開業15周年を記念して運行されたラッピング電車。
新木場方先頭車は「ガチャピン」がモチーフ。りんかい線のキャラクター「りんかる」と並んで描かれる。 大崎方先頭車は「ムック」がモチーフ。
第1期区間開業15周年を記念して運行されたラッピング電車。両先頭車に沿線にあるフジテレビの番組「ポンキッキーズ」のキャラクター「ガチャピン」「ムック」が描かれた。3枚とも2012年1月28日、大崎駅で撮影
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 昨年、りんかい線は第一期区間開業10周年を迎え、年末~今年初めにかけてはそれを記念したラッピング電車が運行された。また、続く今年は2002(平成14)年の第二期区間開業(全線開業)から10周年を迎えており、これを記念して東京臨海高速鉄道では公式のFacebookページを開設し、開業前後の工事の模様やイベントの模様を記録した貴重な写真の数々が公開されている。また、記念ロゴマークも制作されており、今後電車に装着しての運行なども期待される。
 近年の臨海副都心(お台場地区)は、りんかい線開業当初からあるフジテレビや東京ビッグサイトに加え、大江戸温泉物語、ダイバーシティ東京、日本科学未来館など商業・娯楽・学術など様々な施設が集積するようになった。これにより、りんかい線利用者数も順調に増加を続けているが、全線で合計約4千億円に上る建設費用の負担は経営に致命的な打撃を与えており、経常損益は赤字の状態が続いている。これは1990年代に建設された第三セクター鉄道ではどこも似た傾向があり、首都圏では千葉県の東葉高速鉄道や神奈川県の横浜高速鉄道みなとみらい線などがある。幸いなことにりんかい線では上記のような沿線開発の進行もあって赤字額は年々減少しており、2006(平成18)年度以降は営業黒字を維持し続け、2011(平成23)年度は赤字額がついに10億円を切るなど黒字転換は目前であると思われる。一方でりんかい線の構造物は、海から至近もしくは海底にあることから、劣化が早く進行することも予想される。特に京葉線時代から引き継いだ構造物は建設からまもなく40年を経過することから、これらの維持管理が今後経営の足枷にならないかは不安が残るところである。

レインボーブリッジ(夜景) フジテレビ
東京ビッグサイト ダイバーシティ東京
臨海副都心を象徴する施設の数々。左上から時計回りにレインボーブリッジ(夜景)、フジテレビ、東京ビッグサイト、ダイバーシティ東京。
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 臨海副都心で一度に数千人規模の大量輸送ができる公共機関は現在のところりんかい線しか存在せず、その重要度は極めて高い。2008年のリーマンショック以降、臨海副都心開発の先行きは不透明な状態が続いているが、観光の一大スポットであることはもはや不動の地位であり、今後もそのアクセスルートとして活躍と発展を続けることを期待したい。 このエントリーをはてなブックマークに追加
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