京急大師線地下化工事(2012年10月27日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2012年11月24日11:21
東門前駅前の踏切から産業道路駅方向を見る。

京急大師線東門前~小島新田間では現在線路の地下化工事が行われています。2010年にこの工事について取材しましたが、それから2年が経過したため先月再取材をしてまいりました。今回も工事区間全体の状況を順にお伝えします。

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京急大師線地下化工事(2010年4月3日取材)(2010年5月14日作成)

■京急大師線地下化工事の概要



 京急大師線は、川崎市の中心に位置する京急川崎駅と臨海部の工業地帯にある小島新田駅を結ぶ全長約4.5kmの民鉄線です。当路線はその名の通り、川崎大師への参拝客を輸送する目的で現在の京浜急行電鉄の前身である大師電気鉄道が1899(明治32)年1月に開通させたもので、現在の京急電鉄はここから順次路線を延伸して行ったことから、京浜急行電鉄発祥の地として川崎大師駅前に石碑が設置されています。
 京急大師線には終点付近で交差する産業道路(神奈川県道6号東京大師横浜線)をはじめとする15箇所の踏切が存在し、交通渋滞や地域の分断といった問題が生じています。そこで川崎市では、小島新田駅を除く京急大師線のほぼ全線(事業延長5.0km)を地下化することとし、1993(平成5)年6月に都市計画決定がなされました。その後、特に交通渋滞が激しい産業道路との踏切を早期に立体交差化するため、東門前駅から小島新田駅までの980mの区間を「段階的整備区間」として先行して地下化することになり、2006(平成18)年に地元説明会が行われ、2009(平成21)年頃から本格的な工事が開始されました。この工事が完成すると産業道路を含む3箇所の踏切が解消される予定です。段階的整備区間の総事業費は約462億円となっており、当初計画では2014(平成26)年度の完成予定とされました。(その後、完成予定は2019(平成31)年度に延期された。詳細後述)
 一方、東門前駅から西側の区間については、京急川崎駅で川崎市が現在計画している川崎縦貫高速鉄道と直通するため、線路を移設したうえで地下化する予定となっています。移設後のルートは、川崎大師駅から港町駅にかけて並行する国道409号線(川崎縦貫道路・首都高速川崎縦貫線と一体的な整備)の地下を通り、港町駅から西側については国道15号線(第1京浜)などを利用して京急川崎駅に至るものとなっています。京急川崎駅前に建つ商業ビル「DICE」の地下には、大師線のトンネルを通すスペースが確保されていると言われています。また、京急川崎~港町間には新駅(仮称:宮前)の新設が検討されています。(ただし、後述する通り川崎大師駅以西は当面事業化が困難であるとされている。)

段階的整備区間の断面図。東門前駅側は将来延長可能な構造となる。
段階的整備区間の断面図。東門前駅側は将来延長可能な構造となる。

 前記した段階的整備区間の西端は将来の地下区間延長が可能な構造で建設中となっており、完成時は本来地下に埋まっているトンネルの天井を切り開き、そこに仮設のけたを載せて地上と接続する計画となっています。

■各地点の状況(2012年10月27日取材)
東門前駅のホームにある工事進捗状況の案内板
東門前駅のホームにある工事進捗状況の案内板
※クリックで拡大(800*600px/95.4KB)

段階的整備区間は東門前駅側から4つの工区に分かれており、京急川崎側から「第1工区(225m)」「第2工区(238.5m)」「第3工区(183.5m)」「第4工区(333m)」の合計980mとなっています。いずれの工区も線路下の掘削が進行中となっており、一部はトンネル本体の構築に入っています。工事の進捗状況は京急川崎駅大師線ホームや工事区間各所に設置されている情報板で確認することができます。

●東門前駅
東門前駅の小島新田方にある踏切からホームを見る。 まもなく取り壊される東門前駅の駅舎。
左:東門前駅の小島新田方にある踏切からホームを見る。
右:まもなく取り壊される東門前駅の駅舎。

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 東門前駅は対向式ホーム2面2線の構造で、駅舎は線路北側(下り線側)にあり、反対側のホームとは構内踏切で接続されています。当駅は現在行われている段階的整備では地下化されません。しかし、将来の京急川崎駅までの地下区間延長に備えて、駅構内の途中まで線路の下にトンネルを建設しておくことになっています。
 東門前駅の敷地は狭いため、現状のままでは工事に必要な作業ヤードが置けません。このため、北側の駅舎を縮小してその用地をねん出することになっており、現在は旧来からある木造駅舎の半分を取り壊して仮設駅舎を建設する工事が進められています。現在建設中の仮設駅舎は2013(平成25)年2月中旬に完成予定となっており、これが完成した後現在の駅舎を取り壊し、その跡地にサイズの小さい2個目の仮設駅舎を建設し、1個目の仮設駅舎を解体して作業用地に充てる計画となっています。

上と同じ踏切から小島新田方を望む。軌道が鋼材を用いた仮設構造となっている
上と同じ踏切から小島新田方を望む。軌道が鋼材を用いた仮設構造となっている。(同じ場所の2010年4月3日の状況

 東門前駅の先は線路両脇に幅数メートルの作業ヤードが確保されており、線路を鋼材で支えながら地下の掘削作業が行われています。架線柱は資材の搬出入の邪魔にならないよう、下り線側からの片持ち構造となっています。

●産業道路駅
ホーム間を結ぶ構内踏切から産業道路駅構内を見る。 下り線ホームから小島新田方を見る。産業道路の踏切は暫定的に単線となっている。
左:ホーム間を結ぶ構内踏切から産業道路駅構内を見る。
右:下り線ホームから小島新田方を見る。産業道路の踏切は暫定的に単線となっている。

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 産業道路駅もホーム・駅舎は東門前駅と同じ位置関係となっています。当駅付近は着工が早く、2010年の調査時にはすでに駅構内の軌道がすべて仮設構造に変更され、線路下の掘削が開始されていました。今回も地上部分には大きな変化はなく、引き続き地下で掘削が続けられています。工事の作業ヤードは駅の南側に設けられており、ところどころ覆工板が取り外され、地下に資材を出し入れしているのが確認できます。
 なお、地下化工事着工前は小島新田駅構内のみ単線となっており、複線から単線への合流点は小島新田駅の直前に置かれていました。着工後はこの合流点が産業道路駅構内に移設され、複線区間が短縮されています。これは産業道路~小島新田間で線路際ぎりぎりに家屋が建っている箇所があり、作業スペースが確保できず上り線の線路を撤去してそのスペースをねん出したためです。

産業道路の踏切から駅構内を見る。線路の周囲は作業スペース。 産業道路に面して設置されている産業道路駅の駅舎。屋上に信号機器箱が設置されている。
左:産業道路の踏切から駅構内を見る。線路の周囲は作業スペース。
右:産業道路に面して設置されている産業道路駅の駅舎。屋上に信号機器箱が設置されている。

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 産業道路駅の駅舎は元々プレハブに近い構造で、現在も基本構造に大きな変化はありませんが、線路脇に作業スペースを確保するため、駅舎の真上に台を設置しそこに信号機器箱を移設しています。また、駅舎とホームの間には若干距離があり、この間の通路はこの作業スペースを避けるように若干曲がりくねった構造となっています。

産業道路の踏切。頭上を通るのは首都高速1号横羽線。 踏切の先はカーブしている。
左:産業道路の踏切。頭上を通るのは首都高速1号横羽線。
右:踏切の先はカーブしている。

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 産業道路駅の先には地下化の理由となった産業道路(神奈川県道6号東京大師横浜線)の踏切があります。踏切内の路面は工事のため覆工板になっており、通過する自動車は軽くバウンドしながら走行しています。
 この産業道路は東京都大田区の大森警察署前で第一京浜(国道15号)から分岐し、川崎・鶴見の工業地帯を貫いて生麦付近で再び第一京浜に合流しており、いわば京浜工業地帯の大動脈と呼べる存在です。このため、昼夜を問わず交通量は非常に多く、大型のトラックやトレーラーも頻繁に通過しています。このことからも踏切解消の緊急度が特に高かったことがうかがえます。

●小島新田駅
カーブを過ぎると線路は再び複線になる。下り列車の前面展望。 複線に戻って間もなく工事区間は終了となり、通常のバラスト軌道に戻る。
左:カーブを過ぎると線路は再び複線になる。下り列車の前面展望。
右:複線に戻って間もなく工事区間は終了となり、通常のバラスト軌道に戻る。

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 産業道路駅を出てカーブを曲がりきると線路は再び複線に戻ります。複線に戻って100mほど走ると工事区間は終了となり、バラスト軌道に変化します。以前はこの付近で複線から単線に合流していました。

島式ホーム化された小島新田駅。ホームの構造物はすべて仮設。 駅舎が京急川崎方に移転した小島新田駅。
左:島式ホーム化された小島新田駅。ホームの構造物はすべて仮設。
右:駅舎が京急川崎方に移転した小島新田駅。(同じ場所の2010年4月3日の様子

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 小島新田駅はかつて現在地よりも300m東側にあり、国鉄塩浜操車場(現・JR川崎貨物駅)建設に伴い1964(昭和39)年に現在地に移設されました。移転後は長らく駅構内が単線となっており、ホームは1面のみという簡素な構造となっていました。当駅は東門前駅と同じく地下化はされませんが、事業に合わせて施設の拡張が行われており、前回調査直前の2010年3月末にはホームが京急川崎方に延長されるとともに南側にも線路が新設され、ホームが島式化されました。ホームの拡張と同時に列車の停止位置も40m京急川崎方に移動しています。その後は停止位置が移動した分ホームが短縮され、駅舎も京急川崎寄りに移設されており、旧来の木造駅舎は取り壊し済みとなっています。 このように駅全体が京急川崎方に移動した小島新田駅ですが、現状の設備はいずれも仮設と思われる簡素なつくりとなっており、地下化工事完成までに本格的なものに作り替えられることが予想されます。

■用地買収難航により工期が5年延長に

このように順調に工事が進んでいるように見える京急大師線地下化工事ですが、一部箇所で地権者が用地買収に応じず、掘削に必要な杭の打ち込みなどができない状態が続いています。これにより、当初予定されていた2014(平成26)年度の完成が難しくなったため、今年8月にこれを5年延期し2019(平成31)年とすることが発表されました。また、川崎大師駅以西の地下化についても導入空間となる川崎縦貫道路や、京急川崎駅で接続する川崎縦貫高速鉄道の整備の目途が立たないことから、当面の間着工は困難であるとの判断がなされています。川崎市では現在線の用地を利用した鈴木町駅までの仮地下化の可能性を模索していますが、一方で港町駅では老朽化した橋上駅舎の改築に着手しているなど、全線地下化の望みはかなり薄れつつあります。

▼参考
川崎市:連続立体交差事業大師線
川崎市:京浜急行大師線連続立体交差事業段階的整備区間の工期延伸について
京急大師線の地下化で市、事業期間延長を検討 「15年度の完成困難」/川崎:ローカルニュース : ニュース : カナロコ -- 神奈川新聞社
April 2012:特集「都市と鉄道の昨日,今日,そして明日」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
【神奈川】京浜急行大師線立体化2期 整備手法検討開始 - 地方建設専門紙の会

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