西武鉄道100周年記念・5号蒸気機関車修復完成披露会(2012年11月25日)



今年、西武鉄道は前身である武蔵野鉄道の創立あら100周年を迎えました。これを記念して同社では車両基地の公開、保存車両の復元・整備、臨時列車の運行など多数のイベントが開催されています。今回はその中から去る11月25日(日)に開催された旧保谷車両基地の公開イベント「西武鉄道100年アニバーサリーイベント n保谷 ~SL5号蒸気機関車修復完成記念披露会~」に行ってまいりましたのでその模様をお伝えします。

■西武鉄道の概要と歴史
石神井公園駅の天井には100周年記念ロゴと5号蒸気機関車のイラストが描かれた幕が設置された。 西武といえば「黄色い電車」を思い浮かべる方も多いはず。左の301系は今月初めのイベントを最後に池袋線・新宿線系統から引退した。
左:石神井公園駅の天井には100周年記念ロゴと5号蒸気機関車のイラストが描かれた幕が設置された。2012年6月23日撮影
右:西武といえば「黄色い電車」を思い浮かべる方も多いはず。左の301系は今月初めのイベントを最後に池袋線・新宿線系統から引退した。2007年5月4日、小平駅で撮影

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 西武鉄道は東京都心にある池袋から埼玉県の吾野に至る「池袋線」と新宿から本川越に至る「新宿線」、さらにこの2路線から枝分かれする複数の支線群、そしてこれらの路線からは独立した「多摩川線」により構成される民鉄線です。西武鉄道は池袋線系統を建設した「武蔵野鉄道」と新宿線系統を建設した「(初代)西武鉄道」が合併することにより誕生しました。
 武蔵野鉄道は1912(明治45)年に会社が設立され、その3年後の1915(大正4)年に現在の池袋線の池袋~飯能間を一挙に開業させます。開業から数年後には早くも電化・複線化に着手したほか、西所沢から分岐する狭山線や吾野までの延長も行いました。また、1940(昭和15)年には多摩湖鉄道(現在の多摩湖線)を合併しました。
 一方、初代西武鉄道の前身である川越鉄道は武蔵野鉄道設立から遡ること20年前の1892(明治25)年に会社が設立されており、手始めとして現在の国分寺線と新宿線の東村山以北を開業させます。この時点では現在のJR中央線を建設した甲武鉄道に委託管理を行っていました。1920(大正9)年には川越鉄道が当時川越電気鉄道(西武大宮線、廃線済)を運営していた武蔵水電に吸収合併され、2年後には社名を「西武鉄道」に改称します。5年後の1927(昭和2)年には東村山~高田馬場間の複線開業と東村山~本川越間電化と、のちに多摩川線となる多摩鉄道の買収を行いました。
 太平洋戦争の混乱期を挟み、終戦直後の1945(昭和20)年9月に武蔵野鉄道と初代西武鉄道は合併し、「西武農業鉄道」と改称されたのち、1946(昭和21)年に社名を再度「西武鉄道」に変更し現在に至ります。戦後は主要幹線の複線化を次々と進めたほか、1963(昭和38)年には民鉄では初となる通勤車両の10両編成での運転を開始し、高度経済成長により激増する利用者への対応を続けました。

西武グループのリゾート開発の象徴だった赤坂プリンスホテル。末期は東日本大震災の被災者受け入れ施設となり、話題となった。現在は解体工事が進行中。
西武グループのリゾート開発の象徴だった赤坂プリンスホテル。末期は東日本大震災の被災者受け入れ施設となり、話題となった。現在は解体工事が進行中。2012年4月21日撮影
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 西武グループの特徴の1つとしては鉄道以外の事業への積極的な参入があげられます。これは創業者である堤家(堤康次郎・堤義明)の方針によるもので、沿線の不動産開発のみならず、東京・埼玉から遠く離れた全国各地のホテルやリゾート地の経営も手掛けていました。中でも「プリンスホテル」は特に有名です。
 しかし、堤家一族による急激な事業拡大はやがて会社経営の私物化を招き、2004(平成16)年から相次いで明らかとなった総会屋への利益供与や親会社であったコクドによる有価証券報告書虚偽記載などの不正事件へつながってしまいます。この事件を契機に西武鉄道は株式上場廃止となり、鉄道以外の事業の一部は他社へ売却されるなど巨大化したグループの縮小・解体が進められました。
 一連のグループ再編の完了後は新たなグループビジョンやシンボルマークなどが制定されました。この頃には戦後すぐから続いてきた複線化などの輸送力向上に向けた設備増強がおおむね完了したことから、以後は老朽化した駅舎の改良や商業施設の新設など本業である鉄道事業の質的向上に経営の主眼が置かれるようになっています。

■100周年を記念して修復された5号蒸気機関車とE11形電気機関車
修復された保谷車両基地の5号蒸気機関車とE11形電気機関車。
修復された保谷車両基地の5号蒸気機関車とE11形電気機関車。
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 今年2012年は西武鉄道の前身である武蔵野鉄道が設立されて100年目となります。また、2年後の2014(平成26)年には川越鉄道として開業した国分寺線国分寺~東村山間、2015(平成27)年には川越鉄道全線(新宿線東村山~本川越間)がそれぞれ開業120周年を迎え、同じ2015年には池袋線池袋~飯能間が開業100周年を相次いで迎えます。これを記念し、西武鉄道では今年度から4年間にわたり、様々なイベントが開催される予定となっています。その第一陣となったのが旧保谷車両基地に保存されている5号蒸気機関車とE11形電気機関車の修復でした。このうち、E11形電気機関車は今年春に先行して修復が完了しており、5月13日(日)に披露イベントが開催されています。保谷車両基地が一般に公開されるのはこれが初めてのことです。続いてE11形の隣に保存されている5号蒸気機関車についても修復が行われ、11月25日(日)に同様のイベントが開催されました。

●5号蒸気機関車
5号蒸気機関車
側面 後部側面に取り付けられている製造会社のプレート
5号蒸気機関車。左下は側面、右下は後部側面に取り付けられている製造会社のプレート。
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 5号蒸気機関車は西武新宿線の前身である川越鉄道が1896(明治29)年に輸入したものです。製造はイギリス・マンチェスターにあったナスミス・ウィルソン社で、川越鉄道の管理を受託していた甲武鉄道のK1形と同型となっており、当初の形式は「K2形3号機」となっていました。西武鉄道への合併後は所有していた機関車の一斉改番により「5号機」となり、多摩川線で1957(昭和32)年まで使用されました。その後は八高線の丹荘駅から分岐していた日本ニッケル鉄道(上武鉄道、廃線済)に移った後。1965(昭和40)年に西武鉄道に返還され、今日まで保谷車両基地で保存されてきました。
 保谷での保存期間中は最低限の清掃などは行われていましたが、屋根のない屋外での保存であったことから塗装の劣化などが進んでいました。今回、これら車両内外の劣化した部分は徹底的に再塗装が行われており、博物館などの保存車両と比べても遜色のない美しい姿に蘇っています。

●E12(E11形)電気機関車
E11形電気機関車12号機
側面 後部の様子。運転台は右側にある。
E11形電気機関車12号機。左下は側面、右下は後部の様子。運転台は右側にある。
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 E11形電気機関車は西武池袋線の前身である武蔵野鉄道が所沢~池袋間を電化するのに合わせ、1923(大正12)年にアメリカのウェスチングハウス社より3両が輸入されました。保谷車両基地に保存されているのはこのうちの1両である「12」です。
外観は2代のボギー台車の上に運転席の前後にボンネットが付いた「凸型」の車体が載るという、この時代の電気機関車としては典型的なものとなっています。同型の電気機関車としては珍しく運転台は右側にあり、車体と台車の間は通常の締結機構のほかに脱線時の分離防止対策で太い鎖で結ばれるなど特異な構造もいくつか見受けられます。
 戦前は形式名が「デキカ10形」(電気機関車の略)となっており、西武鉄道合併後に「11形」に改称された後、1961(昭和36)年からは電気機関車(Electric Locomotive)ということで「E11形」となりました。この頃に「11」が越後交通(廃線済)に、「13」が弘南鉄道にそれぞれ譲渡されており、弘南鉄道では現在も「ED33形」として使用されています。一方、西武鉄道に残った「12」はその後新型の電気機関車が次々と導入されたこともあり、1973(昭和42)年に廃車となり、保谷車両基地で教材として保存されてきました。

 今回のイベントでは2両とも運転室も公開されていたのですが、見学までの待ち時間が1時間近くになっていたため、時間の都合上今回はパスすることにいたしました。内部の様子は参考にしたネコ・パブリッシングの公式ブログ「編集長敬白」にて公開されていますのでそちらをご覧ください。

▼参考
編集長敬白: 修復なった西武鉄道5号機。(上)
編集長敬白: 修復なった西武鉄道5号機。(下)
編集長敬白: 西武鉄道100年 E12修復完成記念披露会。(上)
編集長敬白: 西武鉄道100年 E12修復完成記念披露会。(中)
編集長敬白: 西武鉄道100年 E12修復完成記念披露会。(下)

■その他展示・実演
留置線に展示された軌道検測車 同じく展示された工事用モーターカー
左:留置線に展示された軌道検測車
右:同じく展示された工事用モーターカー

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ポイントの手動転換の実演 展示された軌道用バイク
左:ポイントの手動転換の実演
右:展示された軌道用バイク

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 このほか、車両基地内の留置線や駐車場などの空間を利用して保線用機材の展示や動作実演も行われました。また、軽食類や西武鉄道関係のグッズの販売も行われており、こちらも盛況となっていたようです。

▼参考
西武鉄道 100年アニバーサリー:西武鉄道Webサイト
会社要覧:西武鉄道Webサイト

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