東急大井町線戸越公園駅ホーム延長工事(2012・2013年取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2013年04月23日20:00
東急大井町線戸越公園駅

東急大井町線戸越公園駅はこれまでホームが短いため、停車時に一部車両のドアの締め切り(ドアカット)が行われてきました。去る2013年2月24日(日)にドア締め切りを解消するためのホーム延長工事が完了し、全車両のドアが開くようになりました。今回は工事着工・完了後の様子を比較しながらホーム延長工事の詳細を見てまいます。

■ドア締め切り時代の様子(2012年4月21日取材)



 戸越公園駅は東急大井町線の起点である大井町駅から2駅目(大井町起点1.5km地点)にある地上駅です。ホームは対向式ホーム2面2線で、駅舎は西側(二子玉川方)のホーム端にあり、上下線各ホームを結ぶ通路は設置されておらず双方のホームは完全に独立しています。駅周辺は閑静な住宅街となっており、駅舎の前を通るとごし公園通りは個人商店が立ち並ぶ商店街となっています。

ホーム延長工事着工前の戸越公園駅は大井町寄りの2両のドアが開かなかった。
ホーム延長工事着工前の戸越公園駅は大井町寄りの2両のドアが開かなかった。

 戸越公園駅のホームはこれまで18m車4両分の長さ(約70m)しかなく、両側を踏切に挟まれているためホームを延長することが困難でした。このため、1974(昭和49)年4月より導入された20m車4両編成の8000系では、戸越公園駅停車時にホームからはみ出す大井町方1両のドアを締め切るようになりました。ほどなくして編成が5両に増車されると、ドアを締め切る車両は2両に増え、車両が変化した2013年に至るまでその状況が続いてきました。戸越公園駅を通る下り(二子玉川方面行き)列車は始発となる大井町駅の構造上大井町方の車両に乗客が集中するため、二子玉川方3両からしか乗降ができない戸越公園駅の構造は不便極まりないものであり、混雑時はドアが締め切りとなる車両から前の車両までの移動が間に合わずに降り損ねるという光景も散見されました。

大井町方の踏切を塞いで停車中の上り列車 下り線側は車掌の監視用の短いホームが設置されていた。線路上にはドア締め切りを制御する地上子が設置されていた。
左:大井町方の踏切を塞いで停車中の上り列車
右:下り線側は車掌の監視用の短いホームが設置されていた。線路上にはドア締め切りを制御する地上子が設置されていた。

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 東急大井町線には戸越公園駅に加え、九品仏駅もホームが短いため二子玉川方の1両のドアを締め切りとしており、ドア開閉時の誤操作を防止するため両駅ともドアの締め切り操作は自動化されていました。大井町方の先頭車が停車する地点の線路上には10m程度の間隔で細長い地上子(ATO/TASC導入路線で見られるものと同等品)が2個設置されており、車上子がこの地上子の間に停まっている間のみ運転台でブザーが鳴動するとともにホームからはみ出している車両のドアが締め切られる仕組みとなっていました。2008(平成20)年の大井町線ATC化以前は地上子の代わりにループコイル(環状の導線)が設置されていました。(→九品仏駅のループコイル地上子の写真

■ホーム延長工事の概要
戸越公園駅ホーム延長工事の概要図
戸越公園駅ホーム延長工事の概要図
背景の航空写真は国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和63年)より抜粋 (C)国土交通省


 このように特殊で不便な構造となっていた戸越公園駅ですが、最近になりホーム延長に必要な用地の取得が進んだことから、2012年春よりホームを5両分に延長する工事が開始されました。ホーム延長工事は大井町方にある下神明2号踏切を閉鎖し、その跡に長さ約30mの桁式のホーム床面を新設するというものです。閉鎖した下神明2号踏切は延長後のホーム先端付近に移設し、北側の民有地を買収したうえでL字型の迂回路が設置します。

■ホーム延長工事完了後(2013年3月10日取材)
ホーム延長が完了し、5両全車のドアが開くようになった戸越公園駅。
ホーム延長部分。手前のまくらぎが白い部分が移設前の踏切跡。 移設された下神明2号踏切から戸越公園駅構内を見る。地上子はATC用の小型のものに交換された。
上:ホーム延長が完了し、5両全車のドアが開くようになった戸越公園駅。
下左:ホーム延長部分。手前のまくらぎが白い部分が移設前の踏切跡。
下右:移設された下神明2号踏切から戸越公園駅構内を見る。地上子はATC用の小型のものに交換された。

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 昨年春から約1年かけて行われたホーム延長工事が完了し、2月24日(日)より延長部分の使用が開始されました。これにより戸越公園駅では約40年ぶりに編成全車両(5両)のドアが開くようになりました。
 延長部分のホームは用地の関係で上り線側全体と下り線側の先端10mほどは幅が狭くなっており、黄色の点状ブロックと側壁との間は50cm程度しかありません。また、上り線側は住宅に近接しており、プライバシー確保のため2mほどの高さがある金属板で完全に覆われています。ドアの締め切りが解消されたことから、大井町方の先頭車停止位置の線路上にあったドア締め切り制御用の地上子は撤去され、代わりにATC用の小型の地上子が2個ずつ設置されました。この地上子は大井町線の非連動駅(分岐が無い駅)で見られるもので、いずれも車上子の停止位置の直後に設置されていることから、オーバーランを検出するために設置されているものと思われます。
 なお、ホーム延長に合わせて上下線とも停止位置が二子玉川方に数メートルずつ移動しており、二子玉川方はホーム端ギリギリに先頭車が停車するようになっています。

延長されたホームを迂回する形で付け替えられた区道と下神明2号踏切。 移設された下神明2号踏切。線路に対して斜めに交差している。
左:延長されたホームを迂回する形で付け替えられた区道と下神明2号踏切。
右:移設された下神明2号踏切。線路に対して斜めに交差している。

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 移設後の下神明2号踏切は延長後のホーム先端付近に設置されています。踏切移設に伴い付け替えられた区道は移設前と同じく自動車は南から北へ向かう一方通行で、踏切のすぐ北側でほぼ直角にカーブして既存の道路に接続しています。道路の幅は移設前より若干広くなっており、両側には歩行者の通行帯を区分するための白線が引かれています。また、既存の道路との接続部分は出会い頭の衝突事故を防止するため、角(隅切り)が斜めに大きく切り取られています。

移設前の踏切跡は工事用の柵で塞がれている。 移設前の踏切跡は工事用の柵で塞がれている。
移設前の踏切跡は工事用の柵で塞がれている。
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 閉鎖された移設前の踏切跡は今回調査時は工事用のバリケードで塞いだうえで線路内の路面板が撤去されており、接続する道路上のペイントも若干書き換えられました。仮設のバリケード部分には今後本格的な柵が設置されるものと思われます。


かつては東横線の菊名駅や目蒲線(現・多摩川線)の鵜の木駅など数多く存在した東急線のドア締め切り実施駅ですが、今回の戸越公園駅のホーム延長により残るは大井町線の九品仏駅のみとなりました。また、都内全体で見てもホームが短いことを理由にドア締め切りを実施している駅は、東武伊勢崎線浅草駅のみとなっており、都市の成熟化とともに風前の灯とも呼べる存在となっています。

▼参考
戸越公園駅ホーム延伸工事 - 東急線の取り組み
東急大井町線戸越公園駅、ホーム延伸-約40年ぶりにドアカット解消 - 品川経済新聞

▼関連記事
東急大井町線九品仏駅の扉締切り(2007年10月11日作成)
→戸越公園駅と同じ東急大井町線のもう一つのドア締め切り駅
東武浅草駅のネタ風景「『狭い!』そして『広い!』」(2007年2月22日作成)
→東京都台東区にある東武伊勢崎線浅草駅。ホーム先端が狭く、急カーブになっており電車とホームの間が広く開き危険なため1・2番線の先頭2両はドアが締め切りとなる。(記事作成当時、2番線はまだドア締め切りが行われていなかったが、安全性向上の観点から2011年より先頭2両のドアを締め切りにした上でその部分のホームが閉鎖された。)
トンネルに突っ込んで停車する田浦駅(2007年3月8日作成)
→神奈川県横須賀市にある横須賀線田浦駅のドア締め切り
京急蒲田駅周辺連続立体交差化事業(2008年9月3日作成)
→東京都大田区にある京急本線の梅屋敷駅のドア締め切り。2012年の高架化完成により解消。 このエントリーをはてなブックマークに追加
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