新橋駅改良工事(2013年5月5日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2013年05月24日18:00
新橋駅SL広場

新橋駅では現在高架橋の耐震補強、コンコースの拡張などを中心とした大規模改良工事が進行中です。去る2013年4月21日にこの工事の一環として東海道線ホームの拡幅工事が実施されました。今回はこの拡幅後の東海道線ホームを中心に現在の様子をお伝えします。

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新橋駅改良工事(2012年9月15日取材)(2012年10月28日作成)

■新橋駅改良工事の概要


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 新橋駅は山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線のJR4路線と東京メトロ銀座線、都営浅草線、新交通ゆりかもめの3路線が接続する都内の交通の要衝です。駅の南には2000年代初めに汐留貨物駅跡地を再開発してできた「汐留シオサイト」のオフィスビル群があり、新橋駅の利用者数はJR東日本全体で第7位の243,890人(2011年度)となっています。
 新橋駅の構造物は山手線・京浜東北線が明治時代にできたレンガアーチ高架橋、東海道線が大正時代にできた鉄筋コンクリート高架橋、横須賀線が昭和中期にできた地下駅により構成されています。このうち地上の高架橋は横須賀線地下駅建設時に一部が改築された以外は建設以来大きな改修がなされておらず、バリアフリー化への未対応やコンコースの狭さによる混雑が問題となっています。来る2014年度に予定されている東北縦貫線の開業後はこの問題がさらに深刻化することが懸念されています。
 また、この高架橋は建設以来一度も耐震補強がなされていません。首都圏では今後30年以内に直下型の大地震が70%の確率で発生すると予測されており、JR東日本では昨年3月に観測体制の強化や構造物の耐震補強をメインとした総額520億円の対策を実施することを発表しました。新橋駅もこの中に含まれており、先のバリアフリー・混雑緩和対策と合わせて以下のような改修を実施することになりました。

新橋駅の改修箇所
新橋駅の改修箇所
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1、駅中央の高架橋を改築し、コンコースを一体化
銀座口~烏森口間のレンガアーチ高架橋をスパンの長い鉄筋コンクリート製の高架橋に改築し、駅の南北で別々となっているコンコースを一体化し、混雑緩和を図る。また、SL広場に面した高架橋はレンガアーチのまま残し、文化遺産としての価値を後世に継承する。

2、バリアフリー対応
改築された高架橋部分を利用してエレベータを設置する。また、地下にある横須賀線ホームにも一般利用できるエレベータを設置する。

3、高架橋の耐震補強
現状のまま残す東海道線の高架橋とSL広場に面した京浜東北線のレンガアーチ高架橋は鋼板巻き、一面補強、内面にコンクリート巻き立て等により耐震性を向上する。

4、東海道線ホームの拡幅(一部完成)
東北縦貫線の乗り入れにより新たに東京・上野方面への利用者が発生し、混雑が予想される東海道線上り線のホーム中央110mを最大で0.7m拡幅する。また、東海道線ホームの中央に階段・エスカレータを1か所ずつ増設し、混雑緩和を図る。

このほか、駅東側の地下にある横須賀線ホームについても一般利用可能なエレベータが無いため、地上~地下1階(改札口)と地下1階~ホームのエレベータが整備される予定となっています。工事に必要な作業スペースは駅の外にはほとんど確保できなかったため、高架下の店舗を退去させたほか、線路上空に作業台を設置してその空間をねん出しています。工事のスケジュールはまず2013年度中に南北のコンコース一体化と東海道線の高架橋の耐震補強を完了させ、その後2016年度までに全体の工事を完了させる計画となっています。

■東海道線ホームの拡幅が完了(2013年5月5日取材)
東海道線ホームの拡幅部分。拡幅後間もないため、床は全てゴムマットで覆われている。
東海道線ホームの拡幅部分。拡幅後間もないため、床は全てゴムマットで覆われている。

 2013年4月21日(日)に今回の改良工事のメインの1つである東海道線ホームの拡幅工事が実施されました。当日は初電~18時頃まで東海道線東京~品川間を全面運休とし、品川駅臨時ホームを使用した折り返し運転が行われました。
 東海道線ホーム拡幅工事は上り2番線中央付近約110mの線路を京浜東北線側に移設し、ホームを最大で78cm拡幅するというものでした。78cmという寸法は東京寄りの銀座口上部を通る二葉橋架道橋(外堀通り)と品川寄りの烏森口上部を通る烏森橋架道橋を改修せずに済むギリギリの位置として決定されたものです。
 
東海道線上り2番線の拡幅工事着工前。 同じ場所の拡幅工事完了後。拡幅に伴い屋根の先端の一部が撤去されている。
上の写真の中央をそれぞれ拡大したもの。拡幅後は線路の直線がなくなり連続したS字カーブになっている。
左上:東海道線上り2番線の拡幅工事着工前。2011年3月26日撮影
右上:同じ場所の拡幅工事完了後。拡幅に伴い屋根の先端の一部が撤去されている。
下:上の写真の中央をそれぞれ拡大したもの。拡幅後は線路の直線がなくなり連続したS字カーブになっている。

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 上の写真は東海道線ホーム品川寄りの階段付近から2番線の東京方面を眺めたもので、ホームの拡幅区間は画面中央のS字カーブのつなぎ目から先になります。左の写真が拡幅工事着工前(2011年3月26日)、右の写真が拡幅完了後(2013年5月5日)にそれぞれ撮影したものです。両者を比較すると、拡幅前は反対方向のカーブどうしの間に長い直線区間があったのに対し、拡幅後はホームが左側に張り出した分奥の右カーブが手前側に延長され、直線区間がほとんど無くなっていることがわかります。

拡幅量が最も大きいホーム中央付近。線路が高架橋の端ギリギリに移動している。 東京寄りの階段付近。階段とホーム端の間が以前より広くなっている。
左:拡幅量が最も大きいホーム中央付近。線路が高架橋の端ギリギリに移動している。
右:東京寄りの階段付近。階段とホーム端の間が以前より広くなっている。

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 もっとも拡幅量が大きいのは線路上空に作業台が設置されているホーム中央付近です。ホーム両端付近にある橋梁を改築するのを避けるため、拡幅量は78cmと数字の上ではあまり大きく無いように感じられますが、現地を見ると線路が高架橋の端ギリギリに敷設されており、移設されたことがパッと見でもわかる状態になっています。また、東京寄りの階段付近も以前と比べて階段とホーム端の間の距離が遠くなっており、乗車待ちの列形成が十分可能な空間が生まれたことが確認できます。東北縦貫線開業後はこのホームから東京駅を越えて宇都宮・高崎線方面に向かう列車も発着するようになるため、この空間が真価を発揮することになります。

ホームの拡幅部分は鋼材などで先端を延長しただけとなっている。 ホームの拡幅部分は鋼材などで先端を延長しただけとなっている。
ホームの拡幅部分は鋼材などで先端を延長しただけとなっている。
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 今回ホームが拡幅された部分は、拡幅量がさほど大きくないことから、新たに支柱を立てて床面を置くのではなく、既存のホームの先端に鋼製の梁などを設置して床を延長しただけの簡単な構造となっています。また、今回は移設から時間が経っておらず軌道の調整が完了していなかったため、軌道がずれてホームに列車が接触することの無いよう、ホーム側のレールとホーム下の壁面との間に木材が挟み込まれていました。

東京寄りも床がゴムマットになっている。
東京寄りも床がゴムマットになっている。

 主要な拡幅区間はホーム中央付近ですが、カーブの関係で東京寄りのホーム端でもわずかながら軌道が移設されており、東京寄りのホーム端まで床面がゴムマットで覆われていました。この部分は今後少しずつ床面の仕上げが行われるものと思われます。

移設されたホーム中央付近の階段 移設された階段の高架下側。今後右側の壁には横須賀線地下コンコースに通じるエレベータが設置される。
左:移設されたホーム中央付近の階段
右:移設された階段の高架下側。今後右側の壁には横須賀線地下コンコースに通じるエレベータが設置される。

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 ホーム拡幅に加え、東海道線ホームでは混雑緩和のため階段の移設・増設も予定されています。昨年11月にはその第1回目の工事として烏森口に通じるホーム中央の階段・エスカレータが東京寄りに10mほど移設されました。移設後の階段は以前と同じく階段と上りエスカレータが併設されており、階段全体の幅にも大きな変化はありません。階段の移設により生じた高架下の空間には今後は地下1階横須賀線コンコースに通じるエレベータが設置されます。

東京寄りの階段も今後向きが変更される。奥の囲いの中では新しい階段の増設中。
東京寄りの階段も今後向きが変更される。奥の囲いの中では新しい階段の増設中。

 続いて3月下旬からは移設された階段のすぐ東京寄りに新しい階段を増設する工事が開始されています。駅構内に掲出されているポスターによるとこの階段は今年9月上旬の完成が予定されてます。また、この階段の東京寄りにある銀座口に通じる階段は今後階段の向きが反対方向(東京方面に向かって上る)に入れ替えられる予定となっています。東海道線ホームと銀座口をつなぐルートを残す必要があるため、この階段の改修は増設中の新しい階段が完成する9月以降に開始されるものと思われます。
 なお、駅の南北で分離しているコンコースの連結も2013年度中に予定されています。東海道線の高架橋は山手線・京浜東北線の高架橋と比べ高架下の空間が広く<、階段の改修と同時並行でコンコースを拡張することも予想されることから、今後の進捗が注目されます。

高架橋の改築に向けた準備が進む山手線ホーム。軌道は数mおきに構造が変わっている。 ホームの土台の一部が壊され、内部のきれいなレンガが露出している。
左:高架橋の改築に向けた準備が進む山手線ホーム。軌道は数mおきに構造が変わっている。
右:ホームの土台の一部が壊され、内部のきれいなレンガが露出している。

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 山手線・京浜東北線側の高架橋は引き続き改築に向けた準備が進められています。ホーム中央付近は高架下にコンコースを拡張するため、レンガアーチ高架橋を取り壊してスパンが長いコンクリートの桁橋に改築する予定となっており、現在は高架橋の取り壊しに向けて軌道を直結軌道から仮設の工事桁に作り替える工事が進められています。今回はこれに加えてホーム本体も取り壊しが開始されており、レンガでできた土台がドリルでくり抜かれ、内側に隠れていたレンガの断面が露わになっていました。

銀座口コンコースの中央に新設された柱のような物体。 烏森口コンコースにも同様の物体が新設された。
左:銀座口コンコースの中央に新設された柱のような物体。
右:烏森口コンコースにも同様の物体が新設された。

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 銀座口・烏森口ともにコンコースには以前からある高架橋の支柱に加えて、今回布や板で覆われた新しい柱のような物体が新設されているのを確認しました。設置された場所は高架橋の改築部分とは必ずしも一致しておらず、どのような目的で設置されたのかは不明です。

駅中央の線路上空に設置されている作業台。緑色のネットが懸かっている部分には階段が設置されている。
駅中央の線路上空に設置されている作業台。緑色のネットが掛っている部分には階段が設置されている。

 駅中央付近の線路上空に設置されている作業台は今回位置やサイズに変化はありませんでした。改良工事完成後の新橋駅は駅全体を覆う大屋根が設置される予定となっており、この作業台はその一部に流用される模様です。

▼参考
大川,坂本,山後 - 新橋駅改良計画 - 日本鉄道施設協会誌2011年3月号45~47ページ
東海道線新橋駅改良工事の着手について - JR東日本プレスリリース(PDF)
首都直下地震に備えた耐震補強対策等の着手と地震観測体制の強化について - JR東日本プレスリリース(PDF)

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Facebookのコメント

コメント


こんばんは。
興味深く記事を拝見しました。
明治時代、大正時代の構造物だったとは驚きました。そこに昭和の新幹線の高架橋と横須賀線のトンネルが寄り添っているのですね。
線増などにより時代の異なる構造物が並ぶことはよくあるのだろうと思いますが、都会では設備の追加の規模が大きく、継ぎ足しもダイナミックですね。
地震のリスクを考えての補強は避けて通れないとは思いますが、何もなければ、煉瓦造りは実に強いのですね。毎日、最大に高頻度に列車を通し続けて、100年近くもつこと自体、感心します。
他の記事も楽しませて頂きます。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/?pc
2015/10/24 20:47 | URL | 投稿者:風旅記 [編集]
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