京成押上線高架化工事(2013年5月5日取材)

京成曳舟前、明治通りの踏切

京成押上線では現在押上~青砥間のほぼ全線を高架化する事業が進められています。先日、京成電鉄より来る8月24日(土)に押上~八広間の上り線を高架線に切り替えることが発表されれました。5月初めにこの付近の状況を調査してまいりましたので、その様子をお伝えいたします。

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■京成押上線連続立体交差事業の概要

 京成押上線は東京スカイツリー直下の押上駅から京成本線と接する青砥駅までの全長5.7kmを結ぶ私鉄路線です。押上駅から先は都営地下鉄浅草線・京急線と相互直通運転を行っており、2010年7月に開業した成田スカイアクセス線とともに成田空港~羽田空港を直結する重要なルートの一部となっています。このため、運行本数は昼夜を問わず多く、朝ラッシュ時は最短で2分間隔となっています。
 京成押上線は押上駅が地下、荒川を渡る前後の八広駅・四ツ木駅と終点の青砥駅が高架、京成曳舟駅と京成立石駅が地上を走っています。このうち、地上を走行している京成曳舟駅付近では明治通り(環状4号線・都道306号線)、京成立石駅付近では平和橋通り〈都道308号線〉とそれぞれ踏切で交差しており、前述の過密ダイヤと相まって激しい交通渋滞が発生しています。このため、東京都・墨田区・葛飾区と京成電鉄ではこの地上区間の高架化を行うこととし、1990年代後半から準備が進められてきました。


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 このうち墨田区側の事業区間は押上~八広間の1.5kmで、高架化後は明治通りをはじめとする8箇所の踏切が解消されます。この区間は1998(平成10)年2月に都市計画決定、2000(平成12)年11月には事業認可を取得しており、2008(平成20)年夏より本格的な工事が開始されています。総事業費は約310億円で、国が43%、東京都が30.1%、墨田区が12.9%、京成電鉄が14%をそれぞれ負担することとなっています。
 この事業に合わせて、高架化される京成曳舟駅周辺では大規模な再開発も行われています。京成曳舟駅周辺に広がる京島地区は、太平洋戦争で大きな被害を免れ、戦前からの古い街並みが保存されていることで有名となっています。しかし、その古さ故に建物の強度が弱いことや、道路が狭く緊急車両が入れないなど防災面の問題を抱えており、近い将来発生が予想される首都直下地震の際も大きな被害が発生することが予想されています。再開発は細かく区切られている民家を高層の建物に集約するもので、京成曳舟駅周辺の約5.7ha(上の地図左下の黄緑色の部分)を6つのエリアに分割して行われており、現在までに3つのエリアが完成、2つのエリアが事業中となっています。
 

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 一方、葛飾区側の事業区間は四ツ木~青砥間の2.2kmで、高架化後は平和橋通りをはじめとする11箇所の踏切が解消されます。この区間は2001(平成13)年1月に都市計画決定、2003(平成15)年2月に事業認可を取得しており、現在は事業に向けた用地買収が続けられています。総事業費は約475億円となる予定です。また、京成曳舟駅付近と同様に駅周辺の再開発やアクセス道路の新設も予定されていますが、後述する通り用地買収が難航しており計画が変更される可能性があります。

■押上~八広間(墨田区内)の現状
京成曳舟駅北側の仮線敷設中の様子 下り線の仮線切替後の京成曳舟駅ホーム
左:京成曳舟駅北側の仮線敷設中の様子。2009年5月4日撮影
右:下り線の仮線切替後の京成曳舟駅ホーム。2010年2月6日撮影

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 押上~八広間の高架化工事は上下線を1線ずつ北側の仮の線路に移設し、元の線路があった場所に1線ずつ高架橋を建設することにより行われています。下り線の仮線切替は2009(平成21)年8月、上り線の仮線切替は2010(平成22)年8月にそれぞれ完了しており、2011(平成23)年以降は旧上り線跡地で上り線の高架橋建設が進められてきました。そして、その高架橋も完成を迎えたことから、来る2013年8月24日より上り線が高架線に切り替えられることが発表されました。

八広駅に停車中の上り列車から上り線の新旧接続地点を見る。正面に見える白い軌道が新上り線。
八広駅に停車中の上り列車から上り線の新旧接続地点を見る。正面に見える白い軌道が新上り線。

 高架橋となっている八広駅から京成曳舟駅へ向かう新しい高架橋への擦り付け区間は、地上へ降りる線路を北側の仮設の高架橋に迂回させ、元々あった高架橋を取り壊し・かさ上げすることにより建設されています。5月の調査時には高架橋の建設は完了して軌道敷設が進行中となっており、八広駅に停車中の上り列車からは正面に真新しい高架橋と線路を見ることができました。

京成曳舟駅前にある京成曳舟1号踏切〈明治通り〉から青砥方を見る 京成曳舟駅前にある京成曳舟1号踏切〈明治通り〉から押上方を見る。中央には東京スカイツリー。
京成曳舟駅前にある京成曳舟1号踏切〈明治通り〉から青砥方(左)、押上方(右)を見る。右写真中央には東京スカイツリーが見える。(同じ場所の2009年5月4日の様子
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 京成曳舟駅前で交差する明治通りは現在京成押上線と地上で交差している道路の中で最も交通量が多く、昼夜を問わず激しい渋滞が発生しています。来る8月の上り線高架化により、この踏切を含む押上~八広間の6か所の踏切で遮断時間が約4割減少する見込みとなっています。

京成曳舟駅押上方の踏切前から建設中の高架ホームを見る。
同じ踏切から京成曳舟駅のホームと建設中の高架橋を見る。 同じ踏切から押上方面を見る。
上:京成曳舟駅押上方の踏切前から建設中の高架ホームを見る。
下左:同じ踏切から京成曳舟駅のホームと建設中の高架橋を見る。
下右:同じ踏切から押上方面を見る。

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 高架化工事着工前の京成曳舟駅は上下線で駅舎が完全に独立した対向式ホーム2面2線となっており、仮線に移行した現在も同様の形態となっています。高架化後もホーム自体は同じ形状となりますが、ホームの設置位置は高架化により交差する道路による制約を受けなくなることや、駅の南側で進められている再開発に合わせて交通広場〈駅前ロータリー〉を新設する計画があるため、それに合わせて80m程度押上寄りに移動する予定となっています。
 高架橋は5月の調査時点でほとんどが完成済みとなっており、使用開始に向けてエレベータや照明などの関連機器の設置作業が進められていました。高架橋は2層構造になっており、線路下の階層には駅の関連施設(改札口など)が設置されるものと思われます。

押上~京成曳舟間の新旧接続地点。盛土をかさ上げし、高架線と現在線を接続する。
押上~京成曳舟間の新旧接続地点。盛土をかさ上げし、高架線と現在線を接続する。

 京成押上線は京成曳舟駅の先で東武亀戸線の上を交差するため盛土高架となっており、高架化に際してはこの部分をかさ上げし、現在線との擦り付け区間として利用しています。この付近も5月調査時点で軌道敷設がおおむね完了しており、引き続き架線や信号設備などの機器類の設置が進められています。
 なお、押上~京成曳舟間にあった押上2号踏切・押上3号踏切は前記した京島地区の再開発に伴い接続する道路が封鎖されたため、今年4月27日(土)を以って閉鎖・廃止されました。

■四ツ木~青砥間(葛飾区内)の現状
京成立石駅の駅舎とホーム 京成立石駅前の立石駅通り商店街。線路を挟み、150mほどの長さがある。
左:京成立石駅の駅舎とホーム
右:京成立石駅前の立石駅通り商店街。線路を挟み、150mほどの長さがある。

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 荒川対岸の四ツ木~青砥間についても押上~八広間と同様の高架化が予定されています。この区間内では葛飾区の南北を結ぶ主要交通路である平和橋通りと交差しており、京成曳舟駅前の明治通りと同様踏切による激しい交通渋滞が発生しています。また、途中にある京成立石駅は駅北側に葛飾区役所があり、駅を挟んで南北に約150mに渡る「立石駅通り商店街」を有するなど、葛飾区の生活・商業の集積地となっており、地上を走る京成押上線による地域の分断が課題となっています。

京成立石駅から青砥方に100mほど進んだ場所で進む用地買収。急カーブの改良を見込んで大きな幅が確保されている。 ほぼ同じ場所から京成立石駅方向を見る。右側は仮線用地だが、買収はあまり進んでいない。
左:京成立石駅から青砥方に100mほど進んだ場所で進む用地買収。急カーブの改良を見込んで大きな幅が確保されている。
右:ほぼ同じ場所から京成立石駅方向を見る。右側は仮線用地だが、買収はあまり進んでいない。

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 葛飾区側の高架化区間では2003年の事業認可取得以後工事に必要な用地買収が続けられており、2012年3月時点での取得率は92%と完了まであと一歩のところまで進んでいます。工事用地は墨田区側と同様線路北側に設けられており、駅間を中心に線路に並行して土地が確保されていることが確認できます。また、京成立石駅のすぐ先の線路は現在半径300mの急カーブとなっていますが、この付近の工事用地はカーブ内側に複線分以上の幅で確保されています。このことから、高架化に合わせて線路をカーブ内側に移設してカーブ区間を延長し、半径を大きくすることにより列車の通過速度を向上する計画があるものと考えられます。
 一方、京成立石駅に隣接する部分は高架化に合わせて再開発も予定されていますが、商店が密集しており土地の利用価値が高いことから、用地買収はほとんど進んでいません。高架化後の京成立石駅は現在と同じ対向式ホーム2面2線の形態で、高架下に駅舎が収容されることになっています。

■今後は・・・
京成曳舟駅前に掲出されている高架化完成後の予想図
京成曳舟駅前に掲出されている高架化完成後の予想図

 京成押上線高架化工事のうち、墨田区側は来る8月24日に上り線が高架化されることになっており、最終的な完成は当初計画より5年遅れの2016(平成28)年度の予定となっています。一方、葛飾区側は当初墨田区側と同様の2012(平成24)年度末の完成が予定されていましたが、前記した通り京成立石駅付近で用地買収が難航しており着工のめどが立たないことから、完成予定時期が2022年度に10年間延期されました。用地買収に関する協議の進捗状況が不明であるため正確な着工予定時期は不明ですが、現地の状況を見る限りでは直近1、2年で大きく状況が変化することは無いと思われます。

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▼参考
京成電鉄押上線(押上駅―八広駅間)連続立体交差事業 墨田区公式ウェブサイト
京島・東向島地域〈再開発について〉 墨田区公式ウェブサイト
京成押上線(京成曳舟駅付近)の上り線を8月24日(土)から高架化します! - 京成電鉄ニュースリリース(PDF/1.35MB)
京成押上線(京成曳舟駅付近)の上り線を8月に高架化|東京都
京成押上線連続立体交差事業|葛飾区
京成押上線四ツ木~青砥間の高架化、事業期間を10年延長 | レスポンス
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