中央線高架化工事(2013年7月7日取材)

武蔵境駅に進入する中央線E233系

2010年11月に中央線三鷹~立川間の全線高架化が完成しました。高架化は完成しましたが、引き続き駅舎や高架橋周辺の整備は続いています。7月にその状況について調査をしてまいりましたので、その結果をお伝えします。

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中央線高架化工事(2013年1月5日取材)

■中央線連続立体交差事業の概要とこれまで



 中央線連続立体交差事業は、JR中央線三鷹~国分寺間(6.2km)、西国分寺~立川間(2.8km)、武蔵境駅で接する西武多摩川線(0.8km)を高架化するものです。中央線は平日朝ラッシュ時に日本一過密な最短1分50秒間隔で運行されており、「開かずの踏切」による交通渋滞や街の分断が深刻な問題となっていました。

武蔵小金井駅の旧駅舎。 関東の駅百選にも選ばれていた国立駅旧駅舎。
左:武蔵小金井駅の旧駅舎。2007年9月5日撮影
右:関東の駅百選にも選ばれていた国立駅旧駅舎。2006年10月8日撮影

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 高架化事業に向けた調査は1980(昭和55)年に開始され、20年近くが経った2000年頃より本格的に工事が開始されました。高架橋の建設は元からある線路の脇に敷設した仮の線路(仮線)を使い行われましたが、2003(平成15)年の第1回切替時には、事前に作成されていた計画資料が間違っているなどのミスにより、工事が予定時間内に終わらず交通手段が無くなるなど大混乱となりました。また、仮線切替により踏切の横断距離が長くなったことから渡りきれなくなる人が続出し、マスコミによる攻撃の格好の餌食になる場面も見られました。
 当初はこのように波乱の幕開けとなった高架化工事ですが、2010(平成22)年11月に全区間の高架化が完了しました。高架化に合わせて区間内の各駅では構内配線・ホームの形式・数量の変更なども行われており、多種別・電車主体の運行とマッチングするよう改良が実施されています。各駅の詳しい改良内容は以下の通りです。

高架化前の配線図
高架化完成後の配線図
中央線三鷹~立川間の高架化前の配線図(上)と高架化完成後の配線図(下)
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●武蔵境駅
着工前は対向式ホーム2面2線+中線だった。高架化後は中線を東小金井駅に移設し、対向式ホーム2面2線のみとなった。また、高架化前に中央線下り線とホームを共有していた西武多摩川線も同時に高架化され、独立した島式ホーム1面2線となった。西武多摩川線は西武鉄道の他の路線と独立しているため、駅の西方に車両の定期検査の際車両を搬出入するための連絡線が設けられている。

●東小金井駅
着工前は対向式ホーム2面2線のみの単純な配線となっていた。高架化後は武蔵境駅から移設した中線を加えた対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線とし、中線で乗降と通過待避の両方を可能にした。中線は朝ラッシュ時の交互発着(後述)や緊急時の折り返しに使用されている。

●武蔵小金井駅
着工前の対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線で、駅の西方には留置線(旧武蔵小金井電車区)があった。高架化後は島式ホーム2面4線とし、上下線同時に通過待避を可能にした。西方の留置線は地上に残されており、単線の通路線で駅本体と接続され、4線全てから出入り可能となっている。

●国立駅
着工前は対向式ホーム1面1線+島式ホーム1面2線で、高架化後も同一の形態であるが、待避線と上り本線の位置を入れ替え、中央の線路は上下兼用の中線とした。中線は駅東方にある武蔵野線新小平駅方面へ向かう短絡線(国立支線)に接続しており、国立支線に入る列車は必ず中線を通過する。駅西方で接続していた鉄道総合技術研究所へ向かう引込線は廃止されたため設置されない。

 2010(平成22)年の高架完了後は地上の線路の撤去、駅舎の仕上げ工事、地上の仮線跡地での側道(遊歩道)の整備が進められています。また、高架化に合わせて各駅前では大規模な区画整理や再開発も行われています。
 高架化事業と側道整備は道路整備の一環として東京都が主体となり事業が進められています。総事業費は約1710億円で、国(当初は道路特定財源)・東京都・沿線6市が約1430億円、JR東日本が約280億円を負担しています。

<中央線連続立体交差事業の歴史>
1980年 事業に向けた調査を開始
1994年5月 都市計画決定
1995年11月 事業認可取得
1999年3月 着工
2007年7月 三鷹~国分寺間下り線を高架化
2009年1月 西国分寺~立川間下り線を高架化
2009年12月 三鷹~国分寺間上り線を高架化
2010年11月 西国分寺~立川間上り線を高架化(全区間の高架化完了)
2012年5月 武蔵小金井駅2面4線化完成
2012年12月 国立駅2面3線化完成

■2013年7月7日の状況

●武蔵境駅
高架下の駅舎は北口へ抜ける通路が一旦仮通路に迂回させられている
左:武蔵境駅北口で進む駅施設の建設工事(同じ場所の2012年8月19日の様子
右:高架下の駅舎は北口へ抜ける通路が一旦仮通路に迂回させられている

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 武蔵境駅では2009年の高架化完成後も駅舎の工事が続いています。特に、北口側は地上の旧上り線を撤去する必要があったため、2012年3月まで仮設の橋上駅舎が使用されてきました。高架下の駅舎が完成した後は橋上駅舎が設置されていた高架の上り線のホームの側壁の仕上げ作業が行われています。今年7月訪問時は引き続き側壁の仕上げ作業が続けられており、その外側の駅前広場内でさらに鉄骨でできた謎の構造物の建設が進められていました。工事に関する案内板には「武蔵境駅連続施設(北側)新築工事」と書かれていますが、何のための施設なのかは不明です。この工事のため、昨年4月に一度開通した高架下の南北自由通路の北側の出口は再度閉鎖され、駅舎の外側に迂回させられています。

高架下の商業施設「nonowa」に直結する改札口
高架下の商業施設「nonowa」に直結する改札口

 今年5月29日、武蔵境駅高尾方の高架下に中央線高架化後の跡地利用施設の第1弾としてクイーンズ伊勢丹(食品スーパー)などから成る「nonowa(ののわ)武蔵境」が開業しました。これに先立つ5月9日にこのnonowa武蔵境に直結する改札口「nonowa口」が開設されました。このnonowa口はSuica・PASMOなどICカード乗車券専用となっており、磁気式(紙)のきっぷでは一切利用することができません。ICカード乗車券専用にした主たる理由は自動改札機の可動部分のメンテナンスを減らすためですが、磁気式きっぷの利用者の完全な排除になることから、批判的な見方も存在します。(郊外の駅であり、定期券利用者がほとんどであることから実際の影響は軽微であると思われる。)

●東小金井駅
東小金井駅のホーム
東小金井駅のホーム

 東小金井駅は2009年末に上り線が高架化されて以降、駅構内の施設に大きな変化はありません。駅前は北側・南側とも再開発事業が進行中ですが、用地買収が極めて難航しており、広大な空地が広がる状態が何年も続いています。

●武蔵小金井駅
武蔵小金井駅進入中の下り列車の前面展望。駅前後の上り線もTC型省力化軌道に変わった。 武蔵小金井駅下りホームから高尾方を見る。3・4番線の入換信号機が使用開始になった以外変化は無い。
左:武蔵小金井駅進入中の下り列車の前面展望。駅前後の上り線もTC型省力化軌道に変わった。
右:武蔵小金井駅下りホームから高尾方を見る。3・4番線の入換信号機が使用開始になった以外変化は無い。(同じ場所の2013年1月5日/2012年8月19日/2009年7月11日/2007年9月1日の様子)

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 武蔵小金井駅は3月16日のダイヤ改正より上り線ホーム(3・4番線)と留置線の入出庫線をつなぐポイントが使用開始となり、全ての駅施設が完成しました。また、昨年5月の上り本線(4番線)完成時に線路を移設した駅前後の上り線は今回一般的なバラスト軌道からTC型省力化軌道になり、軌道構造の強化・メンテナンスフリー化がなされています。線路に関しては工事途中の部分は無いことから、今後大きな変化はないものと思われます。

7月末で撤去された武蔵小金井駅北口の歩道橋
7月末で撤去された武蔵小金井駅北口の歩道橋

 武蔵小金井駅北口に長らく放置されていた歩道橋ですが、東京都により撤去がなされることが決定し、今年初めに入札が実施されました。撤去工事は6・7月の2ヵ月間に渡り行われ、ロータリーの中央と東側にある歩道橋2基が完全に撤去されました。北口では今後再開発が検討されていることから、駅前広場は当分の間仮の状態になることが予想されます。

●国立駅
国立駅北口。仮設駅舎は全て撤去された。
駅舎外を通る通路は7月13日を以って閉鎖された 7月14日から使用を開始した駅舎内側の南北自由通路(訪問時は準備中)
上:国立駅北口。仮設駅舎は全て撤去された。(同じ場所の2013年1月5日の様子
左下:駅舎外を通る通路は7月13日を以って閉鎖された
右下:7月14日から使用を開始した駅舎内側の南北自由通路(訪問時は準備中)

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 国立駅は昨年12月に上り本線(3番線)の使用を開始し、線路部分は全て完成しました。引き続き駅舎の工事が行われており、1月13日より駅南北に分かれていた改札口が高架下1箇所に統合されました。改札口の統合により不要となった南北の仮設駅舎は、今回訪問時に既に解体され更地となっており、7月13日(土)よりその跡地に新設された南北自由通路の使用が開始されました。(左下の写真でシャッターになっている部分が新しい自由通路の入口)なお、高架橋の側壁などは12月の上り線高架化時に完成済みとなっており、特に変化はありません。

改札口は高架下1箇所に集約された
改札口は高架下1箇所に集約された

 高架下に集約された改札口は他の3駅と同じく改札口が線路方向に向く配置となっており、改札外側には4月22日(月)にコンビニ「NEWDAYS」と月替わりで洋・和菓子などの店が入る「マンスリースイーツ」がオープンしています。

自動改札機は交通系ICカード全国相互利用のマークが入った最新仕様
自動改札機は交通系ICカード全国相互利用のマークが入った最新仕様

 1月に統合された高架下の新しい改札口では、昨年より首都圏各駅で導入が進められている新型の自動改札機(JR東日本メカトロニクス製EG20)が導入されています。この新型機は従来機と比べて改札機両側のセンサー部分の背が若干高くなっており、メッセージを表示するモニターを取り囲むように大量のLEDが配置されています。きっぷやSuicaが正しく読み取られて通過可能な場合は青、エラーの場合は赤でこれらのLEDが一斉に点滅し、利用者に通過の可否を表示する仕掛けになっています。また、Suica専用機は従来機と異なり筺体側面の一部と上部が緑色となっており、専用機であることがわかりやすくなっています。なお、Suicaの読み取り部分は3月のICカード乗車券の全国共通利用開始に合わせてそのロゴ入りのものに交換されており、読み取り部分周辺の形状も若干変化しています。

下り線ホームにあったタワークレーンは撤去された。
下り線ホームにあったタワークレーンは撤去された。

 国立駅は駅前の工事用の作業スペースが狭かったため、下り線(1番線)ホームを貫通する形でクレーンが設置されていました。一連の工事の終了によりクレーンは不要になったため、本体が撤去されホームの床に開いていた穴も塞がれました。

■2013年3月16日ダイヤ改正後の変化
国分寺駅東京方に出現した「制限速度95」の標識
国分寺駅東京方に出現した「制限速度95」の標識

 1月の記事でお伝えした通り、中央線では新型車両E233系への置き換えや高架化による配線変更などの工事がすべて終了したことから、3月16日(土)ダイヤ改正よりこれらの設備を最大限に活用したダイヤに移行しました。具体的には

●最高速度を95km/hから100km/hにアップし、新宿~八王子間の所要時間を3分短縮
●快速の一部を特別快速(中央特快・青梅特快)に変更


となっており、速達性向上に主眼を置いたダイヤ改正となっています。最高速度のアップに伴い、一部のカーブ区間では上の写真のような「95km/h」の制限標識が追加されています。この最高速度のアップに合わせて、中央快速線を走るE233系の加速性能が設定可能な中で最大の3.0km/h/sに変更されており(青梅・五日市線の編成は対象外)、所要時間の短縮や、快速に後続の特別快速が追いついてしまうことによる「ノロノロ運転」の低減が可能となりました。
 さらに、東小金井・武蔵小金井・国立の3駅の中線・待避線が使用可能になったことから、朝ラッシュ時の上り列車で「交互発着」が開始されました。

中線を使った交互発着のイメージ
中線を使った交互発着のイメージ

 交互発着は、駅構内に2本の線路がある場合に片方の線路から先行の列車が完全に進出しないうちに後続の列車をもう片方の線路に進入させる運行方法です。中央線では線路が複数ある新宿、三鷹、立川などの駅で既に実施されてきました。今回のダイヤ改正で前述の3駅が追加されたことにより、ホーム上の混雑や遅延発生がさらに抑制されることが期待されます。


1999年以来14年間に渡り行われてきた中央線の高架化工事も、今年3月で全ての線路切替が完了し、駅舎・側道整備や高架下の開発など次の段階に移行しています。定期的な調査については今回の記事を以って終了する予定ですが、駅内外の再開発は今後も続くことから、機会があれば取り上げてみたいと思います。

中央線連続立体交差事業
工期:1999(平成11)年~2014(平成26)年
距離:中央線三鷹~立川間13.1km・西武多摩川線武蔵境駅付近0.8km
総工費:約1790億円

▼参考
2013年3月ダイヤ改正について - JR東日本八王子支社(PDF/401KB)
鉄道連続立体交差 |武蔵野市
JR中央本線(三鷹~立川間)他連続立体交差事業の概要 - 小金井市公式WEB
JR中央本線(三鷹駅から立川駅間)ほか連続立体交差事業|国分寺市

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