東横線10両化工事(2013・2014年取材・元住吉~菊名)

菊名駅で並ぶ東急5050系と東京メトロ7000系

2013年3月に開始された東急東横線と東京メトロ副都心線の直通運転に伴う、東横線・みなとみらい線内の10両編成対応化工事の続きです。2回目の今回は元住吉駅・日吉駅・綱島駅・大倉山駅・菊名駅のホームの工事と菊名駅の本線折り返し設備の詳細ついてお伝えします。

※写真は特に記載の無い限り2013年8月29日・9月7日に撮影

■東横線・副都心線直通に伴う東横線の10両編成対応化(概要)
■各駅の状況
●中目黒駅・学芸大学駅・都立大学駅・自由が丘駅
1回目の記事へ


●田園調布駅・多摩川駅・新丸子駅・武蔵小杉駅
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●元住吉駅
元住吉駅横浜方の優等列車対応通路。
元住吉駅横浜方の優等列車対応通路。(設置前の写真

 元住吉駅は副都心線直通開始直後より横浜方に2両分優等列車対応通路(10両用非常ホーム)を設置する工事が行われました。元住吉駅はホームのさらに外側に優等列車の通過線がありますが、通過線の分岐・合流位置は将来の10両化に備えてホームから大きく離れた位置にあったため、線形変更不要であり、若干の信号設備の移設が行われたにとどまっています。

●日吉駅
日吉駅のホーム延伸部分。10両編成の東急5050系4000番台が停車中。 相鉄・東急直通線の工事に備えてホームの構造物は仮設になっている。
左(1):日吉駅のホーム延伸部分。10両編成の東急5050系4000番台が停車中。
右(2):相鉄・東急直通線の工事に備えてホームの構造物は仮設になっている。


 日吉駅は渋谷方のホーム端に機械室があったため、横浜方に2両ホームを延長しました。日吉駅の横浜方は2019年に開業する予定の相鉄・東急直通線(神奈川東部方面線)の分岐部となるため、延長部分のホームは工事の際取り壊しがしやすいよう木材などを使用した仮設構造となっています。この仮設構造ゆえに既存ホームとの接続部分はホームが非常に狭くなっており、使用開始当初は常時警備員が監視を行っていました。
 なお、相鉄・東急直通線に関しては3月20日に公式ホームページにおいて、路線全体および日吉駅付近の工事計画に関するパンフレットが公開されました。それによりますと、日吉駅構内は渋谷方のホーム端にある機械室をさらに先の高架下に移設した上で、跡地に10両編成用のホームを2両分建設する計画とされています。相鉄・東急直通線についてはこれ以外にも新横浜駅付近でも工事が開始されています。それらの調査結果も踏まえ、近日中に別途記事を作成する予定ですのでしばらくお待ちください。

▼参考
都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線|日吉駅付近工事

その後既存部分には固定式の転落防止柵が設置された。
その後既存部分には固定式の転落防止柵が設置された。2014年4月5日撮影

 日吉駅ではその後、既存部分・延長部分ともにドア間に相当する部分に金属製の転落防止柵が増設されました。前回・前々回の記事でもお伝えしたとおり、東横線は今後各駅へのホームドア設置が計画されており、今回設置された転落防止柵はホームドア設置までの「つなぎ」であるものと思われます。

●綱島駅
綱島駅のホーム延伸部分。幅は狭い。 住宅に近接しているため、放送用スピーカーは狭指向性仕様を採用。
左(1):綱島駅のホーム延伸部分。幅は狭い。
右(2):住宅に近接しているため、放送用スピーカーは狭指向性仕様を採用。


 綱島駅は横浜方のホーム端に駅舎やビルがあるため、渋谷方に2両分ホームを延長しました。新たな用地買収をせずにホームを延長したため、延長部分のホームは幅が2mほどしかありませんこの延長部分は住宅に近接していることから、線路対向の壁は不透明なガラス板となっており、日照とプライバシー確保を両立しています。また、放送用のスピーカーについても音漏れを極力防ぐ観点から、最近JR東日本の各駅でも導入が進んでいる狭指向性スピーカー(JVCケンウッド製全天候型ラインアレイスピーカー・PS-S103B)を採用しています。
 なお、ホーム延長にあわせて従来は4両分程度しかなかったホーム屋根が8両分をカバーするよう拡大されました。副都心線直通開始後は、さらに既存の屋根についても耐震性を向上する改良工事が実施されています。

▼参考
全天候ラインアレイスピーカーPS-S103B製品情報 | JVC

●大倉山駅
大倉山駅渋谷方で建設中の優等列車対応通路。 大倉山駅渋谷方で建設中の優等列車対応通路。
大倉山駅渋谷方で建設中の優等列車対応通路。

 大倉山駅は昨年夏頃より渋谷方に2両分優等列車対応通路を建設する工事が開始されました。昨年8月の調査時は通路支柱の基礎となるコンクリートを線路脇に埋め込む作業が行われていました。その後工事は順調に進み、今月5日の最長さじにはほぼ完成しているのを確認しました。通路の構造は新丸子駅や元住吉駅とほぼ同様です。

完成した大倉山駅の優等列車対応通路。
完成した大倉山駅の優等列車対応通路。2014年4月5日撮影

●菊名駅
渋谷方に延長された菊名駅のホーム。床面の天井ブロックは例のごとく接着式。
渋谷方に延長された菊名駅のホーム。床面の天井ブロックは例のごとく接着式。

 菊名駅は横浜方のホーム端に橋上駅舎に向かう階段やエスカレータが設置されているため、渋谷方に2両分ホームを延長しました。渋谷方は1990年代に踏切によるドア締め切りを解消するため高架化された部分で、高架化と同時に将来の10両化を見据えた線形への改良も行っていたことから、線路の移設などは行われていません。
 延長部分のホームは幅はそれほど広くはありませんが、全長をカバーするよう屋根が設置されています。床面は既存部分とは異なりアスファルト舗装となっており、点状ブロックは接着式となっていることから、将来的にはホームドアの設置を考慮している模様です。

今後改札口の完全分離が予定されている菊名駅のJR・東急乗換改札口 今後改札口の完全分離が予定されている菊名駅のJR・東急乗換改札口
今後改札口の完全分離が予定されている菊名駅のJR・東急乗換改札口

 東横線の10両化工事とは無関係の話題ですが、今後菊名駅ではJR横浜線への乗換通路の大規模改良が予定されています。
 JR横浜線菊名駅は現在東神奈川方のホーム端1箇所のみに階段が設置されており、エスカレータやエレベータなどのバリアフリー設備が未設置となっています。また、東横線との乗換通路は専用改札口を経由して改札内同士が直接接続されていますが、この通路は建設が古いため幅が狭く、横浜線沿線にある日産スタジアムや横浜アリーナでのイベント開催時は激しい混雑が発生していました。
 改良工事ではJR横浜線ホームの東神奈川寄りの上部に橋上駅舎を新設し、そこにJR専用の改札口を新設します。これにより、JRと東急の改札口は完全に分離されます。合わせて現在乗換専用改札口があるフロアは東急の改札口と同レベルまでかさ上げし、新設のJR改札口へ向かう階段にエスカレータ・エレベータを設置してバリアフリー化を図る計画です。
 改良工事は今春に着工し、3年後の2017年度の完成が予定されています。

▼参考
横浜市 道路局 企画課 交通計画 駅舎の改良

●菊名駅渋谷方の折り返し設備
武蔵小杉駅に停車中の東京メトロ日比谷線03系。日比谷線と東横線の直通は副都心線直通開始と同時に廃止となった。
武蔵小杉駅に停車中の東京メトロ日比谷線03系。日比谷線と東横線の直通は副都心線直通開始と同時に廃止となった。2013年1月12日撮影

 菊名駅の横浜方には、副都心線直通開始前主に日比谷線からの直通列車(上写真)が折り返しに使用していた引上線(信号システム上はホームからの続き番号で「7番線」となっている)があります。この線路は最大8両編成(20m車)の有効長しかなく、終端のすぐ先に菊名1号踏切があるため延長も不可能であり、新たに運行を開始した10両編成の折り返しには使用できません。このままでは事故発生時に10両編成の折り返しができず、ダイヤ混乱に拍車をかけることになるため、副都心線直通開始に合わせて大倉山~菊名間に両渡り線(シーサスクロッシング)を新設し、ホーム上で直接折り返し運転ができるよう改良されました。
 この折り返し設備はホーム上での折り返しだけではなく、シーサスから大倉山駅方向の本線を引上線代わりとした横浜方面への折り返し運転も可能となっていることが特徴です。この設備の新設に伴い、大倉山~菊名間は大幅に信号設備に変化しましたので、それについて見ていきたいと思います。

東横線菊名駅の配線・信号機器配置(調査不足のため一部省略・不正確な箇所あり)
東横線菊名駅の配線・信号機器配置(調査不足のため一部省略・不正確な箇所あり)

 菊名駅は島式ホーム2面4線となっており、優等列車が先行の各駅停車の追い抜く運行が多数実施されています。優等列車は各駅停車のすぐ後ろを追跡する運転となるため、少しでも列車同士の間隔を詰められるよう大倉山~菊名間は下り線側の方が閉塞数が多くなっています。(下り大倉山→菊名:12閉塞、上り菊名→大倉山:9閉塞)駅間へのシーサス新設後はシーサスから大倉山の3~4閉塞分が本線兼横浜方面への折り返し列車の引上線(図中のピンク色で示した部分)とされました。シーサスの設置位置は、後述するとおり菊名駅から離れた地点とされたため、菊名駅構内として扱われる範囲が従来と比べ大幅に広がりました。
 ここから先は大倉山→菊名の下り列車の前面展望を使いながら解説していきます。

A:大倉山駅のホーム横浜方の端に新設された進路予告器。 B:大倉山~菊名間にある下り線の場内標識。ここからシーサスまでは引上線を兼用している。
左(1) A:大倉山駅のホーム横浜方の端に新設された進路予告器。
右(2) B:大倉山~菊名間にある下り線の場内標識。ここからシーサスまでは引上線を兼用している。


 シーサスが菊名駅から離れた場所に新設された結果、下り列車が最初に差し掛かる線路の分岐箇所が大きく手前に移動したため、どの方向に進むのかを予告する進路予告器が大倉山駅の横浜方のホーム端に新設されました(図中のA地点)。進路予告器は2個のランプが横に並んでおり、両方点灯の場合は直進、つまり菊名駅下り線ホームへの到着、右側のみ点灯の場合は右へ分岐、つまり菊名駅上り線ホームへの到着を示します。
 大倉山駅を出発し、東海道新幹線の下を斜めに交差すると、直後に菊名駅の場内(第1場内)標識が現れます。(図中のB地点)ここから先駅間に新設されたシーサスまでの間は本線兼引上線となります。引上線は下り線側が「8番線」、上り線側が「9番線」となっています。上り列車から見るとこの付近の線路沿いには、引上線として使用する際に必要となる車両停止標識※1や停車目標などが設置されているのが確認できます。
 なお、正面の上り坂の途中には以前から使用していた進路予告器がもう1つあり、副都心線直通開始後もしばらく動作していました。しかし、後述する通りシーサス付近に数字式の進路表示器が設置されており、過剰設備であることから現在は撤去されています。

▼脚注
※1 車両停止標識=黒地に白の十文字が描かれた標識で、引上線としての線路終端、折り返し作業中の車両が入線してよい限界を示す。特に8番線は下り本線に逆走して進入するため、規定の停止位置を大幅に通り過ぎてしまった場合、正面衝突する恐れがあることから、この標識は重要な意味を持つ。


C:シーサス直前に設置されている信号機器。下に付いている数字ランプの数に注目。 C:シーサスは直進側のクロッシング部分が全て可動式になっている。
左(1) C:シーサス直前に設置されている信号機器。下に付いている数字ランプの数に注目。
右(2) C:シーサスは直進側のクロッシング部分が全て可動式になっている。2013年2月24日撮影

※クリックで拡大(左の写真は1200×900px/198KB)

 環状2号線の新菊名橋(陸橋)をくぐり、上り勾配の頂上まで行くと今回新設されたシーサスが見えてきます。(図中のC地点)シーサスの直前には下り線の到着番線を数字で表示する進路表示器や、折り返し作業時に使用する入換信号機が設置されています。入換信号機は白い「入換」と書かれた標識の下に付いている黒い長方形の物体で、その下には進入可能番線を数字で示すランプが取り付けられています。この進入可能番線のランプは右の9番線用が3~6全て設置されているのに対し、左の8番線用は3・4のみ設置されています。よって、8番線からは下り線ホームにしか進入できないことになります。あくまで緊急時の折り返し設備ということで、設備を簡略化しているようです。
 なお、シーサスの設置場所を駅から遠く離れたこの場所に設定したのは、写真を見てもわかる通り菊名駅に近い場所で直線かつ平らになっているのがここしかなかったためのようです。駅から離れた場所で直進側はかなりの高速通過となることから、防音壁のかさ上げに加え、分岐器自体も直進側のレールの隙間を完全に埋めることが可能なノーズ可動式分岐器が採用されており、騒音・振動が極力発生しない構造とされています。この結果、分岐器周辺には合計8台もの転轍機が並ぶ重厚な設備となっています。

D:菊名駅ホームの渋谷方端にある出発・入換信号機。右の3・4番線は今回新設されたもの。 D:5・6番線から渋谷方の本線で折り返す際使用する進入番線表示器。8・9の数字が見える。
左(1) D:菊名駅ホームの渋谷方端にある出発・入換信号機。右の3・4番線は今回新設されたもの。
右(2) D:5・6番線から渋谷方の本線で折り返す際使用する進入番線表示器。8・9の数字が見える。


 10両編成対応に延長された菊名駅の渋谷方のホーム端には、3~6番線全てに列車種別表示機や入換信号機が設置され、下りホームからも渋谷方面に出発が可能となりました。下り線はこの他に横浜方のホーム端に渋谷方面へ発車する際車掌が安全確認をするためのモニターも増設されています。また、入換信号機に注目すると、上りホーム5・6番線のものは8番線・9番線どちらに進入するのかを示すランプが設置されているのに対し、下りホーム3・4番線のものはそれがありません。下りホームからわざわざ来た方向に戻る必要がある本線の折り返し設備を使用することは稀であるため、この部分も設備を簡略化したものと思われます。
 実際の使用状況としては、菊名駅から元町・中華街方面で事故が発生した場合は7番線およびホーム上での直接折り返し、武蔵小杉~菊名間で事故が発生した場合は8・9番線を使用した本線上での折り返しが用いられることが多いようです。また、ダイヤが大幅に乱れた場合全列車を各駅停車として運行する場合がありますが、その場合優等列車通過駅のホーム有効長の関係で10両編成は使用できないため、運行中の10両編成の列車は回送として自由が丘や菊名の待避線に封じ込めたり※2、元住吉検車区に臨時入庫※3させる場合もあります。

▼脚注
※2:一例として、去る2月15日未明に発生した元住吉駅での列車追突事故による長時間運休の際は3・6番線に10両編成を待合室を兼ねて止めておき、5番線を横浜方面から来た列車の降車専用ホーム、4番線を横浜方面へ向かう列車の乗車専用ホームとした本線上での折り返し運転が実施された。
※3:その場合目黒線の線路を入庫線として一時的に塞ぐため、目黒線にも若干遅延が発生することがある。


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