東急東横線祐天寺駅通過線新設工事(2014年4月5日取材)

改良工事が始まった祐天寺駅

東急東横線祐天寺駅では現在優等列車の通過線新設工事と駅施設のリニューアル工事が行われています。今月初めにこの工事の様子について現地を調査してまいりましたので、工事の概要とともにお届けいたします。

■祐天寺駅通過線新設工事の概要


 東急東横線祐天寺(ゆうてんじ)駅は、渋谷駅から3つ目(渋谷起点3.2km地点)にあり、各駅停車のみが停車します。祐天寺駅周辺の線路は昭和40年代に高架化されており、駅は対向式ホーム2面2線、改札口などの駅施設は高架下に収容されています。
 さて、東横線は「各駅停車のみが停車します」と前記した通り、特急通勤特急(平日朝夕ラッシュ時)・急行各駅停車という4つの列車種別が運行されています。東横線内で優等列車が各駅停車を追い越せる駅は、現在渋谷、自由が丘、元住吉、菊名の4つです。このうち、渋谷~自由が丘間は7.0kmと他の区間よりも追い越し可能な駅同士の間隔が離れており、列車本数・利用者数の多さ(特に中目黒駅)も相まって、優等列車が前を走る各駅停車に追い付いて※1しまい、ノロノロ運転となることが常態化しています。
 東横線は2013年3月より東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始し、首都圏広域にまたがる鉄道ネットワークとして速達性向上は重要なテーマとなっています。さらに、来る2019年には日吉から現在建設中の相鉄・東急直通線(神奈川東部方面線)と接続され、東横線は列車本数・利用者数ともにより増加することが見込まれています。このような情勢を受け、東急電鉄では祐天寺駅を大規模に改良し、優等列車の通過線を新設することを決定しました。

▼脚注
※1:これに加えて、渋谷駅に引上線が無いため、1時間に数本設定されている渋谷折り返し列車はホーム上で直接折り返しをせざるを得ず、折り返し列車が占有している間は優等列車の追い抜きに制約が生じることもそれに拍車をかけている。この傾向は渋谷折り返し列車が大量に設定されている朝夕のラッシュ時に特に顕著。


改良工事完成後の祐天寺駅の構造
改良工事完成後の祐天寺駅の構造

 祐天寺駅の通過線は現在の上下線の線路をそれぞれ高架橋外側に移設し、それにより生み出された空間に1本新設されます。通過線は現在発表されている図面によると上り線から直線(減速無し)で進入できる線形となっており、上り列車主体で利用されることが予想されますが、駅の両端には下り線側からも進入可能なポイントが設けられており、場合によっては下り列車も追い抜きができるようになる模様です。
 線路の移設は高架橋東側に駅と一体化したビル(図中の黄色)が建っているため、西側を走る上り線をメインに行われます。上り線ホームの中央付近は下り線ホームの同じ部分とに比べて2倍近い幅があるため、上り線のホーム幅を縮小し、現状の用地内で新しい上り線の敷設スペースを捻出します。(これだけではスペースが足りないため、下り線側も同様にホーム先端を若干削り、線路を移設する。)渋谷寄りは西側の民有地を買収し、並行する道路を移設して上り線用の新しい高架橋を建設します。一方、横浜寄りは西側・東側ともに住宅や道路が高架橋に密着しており、ホームを外側に移設するスペースが無いことから、この部分のホームは撤去し、代わりに渋谷方にホームを延長して、停止位置を渋谷方面に移動させることになっています。
 なお、通過線の設置に合わせて老朽化した駅施設のリニューアルも予定されており、各ホームへの上下エスカレータの新設や、高架下の横浜寄りへの改札口新設も実施されることになっています。
 祐天寺駅通過線新設工事の手順は以下のとおりです。

祐天寺駅改良工事の手順
祐天寺駅改良工事の手順

●Step1:線路部分の高架橋の拡幅
現在のホーム下で線路部分の高架橋を2線分から3線分に拡幅する。この際、現在の高架橋へ単に継ぎ足しするだけでは強度が不足するため、梁や柱のコンクリートの増し打ちや基礎杭の増設を行う。

●Step2:線路を高架橋外側に移設
上下線のホーム先端を削り、線路をそれぞれ拡幅した高架橋の外側に移設する。この際、線路を覆っている屋根の高さが不足するため、新しいアーチ型の屋根に作り替える。

●Step3:通過線敷設・完成
空いた上下線の空間に通過線を敷設する。並行してホームへのエスカレータ設置や高架下への改札口増設を行い、工事は完成。

通過線新設にあたっては高架橋の拡幅を行うため、梁や柱のコンクリートの厚みを増やす工事も行われます。これにより、当駅付近の高架橋は耐震補強も同時に完了する副次的な効果も得られ、安全性がより向上します。
 なお、本事業は副都心線直通開始に伴う渋谷~代官山間地下化や東横線全線の10両編成対応化工事と同様「特定都市鉄道整備事業」の対象となっています。これは2005年3月以降最大10年間に渡り運賃収入の2%を事業費として積み立て、その後の支払いに充当するものです。

■(参考)着工前の様子(2013年5月6日)

 祐天寺駅については着工前の昨年5月に事前調査として各所を記録していますので、まず「着工前の様子」として特徴を見てまいります。

祐天寺駅ホーム横浜方。今立っている場所が将来の上り線の予定地である。
祐天寺駅ホーム横浜方。今立っている場所が将来の上り線の予定地である。

 祐天寺駅の主要な駅施設は渋谷方に偏って設置されており、ホームも渋谷方の方が幅が広く、屋根もその部分のみ設置されています。横浜方は上下線ともホームは2m前後ほどの幅しかなく、屋根も設置されていませんでした。
 上り線ホームの横浜方は現在ホームがある場所が丸々新しい上り線の線路敷になるため、高架橋外側に新しいホームを建設し、現在のホームは撤去します。しかし、ホーム端付近はすぐ脇に民家が建っており、用地買収を最小限に抑える観点からホーム端の部分は外側に新しいホームを造らず、代わりに土地に余裕のある渋谷方面にホームを延長することになっています。一方、下り線は線路に面したホーム先端を数十cm削るだけであるため、基本的には現在のホームをそのまま使用します。ただし、横浜方のホーム端は道路に阻まれて現状でも十分な幅が確保されておらず、これ以上ホーム幅を狭くすると危険なため、上り線と同様この部分は撤去し、代わりに渋谷方面にホームを延長する予定です。

上り線ホームの中央付近。今後はホーム先端を3mほど削り、写真中央付近にはエスカレータを新設する。
上り線ホームの中央付近。今後はホーム先端を削って通過線のスペースを捻出し、ホーム上にはエスカレータを新設する。

 上り線ホーム中心は、過去に線路を地上から高架に上げる過程でこのようになったのかは不明ですが、対向式ホームとしては異例とも言える広さ(目測では8mほど)となっています。通過線設置にあたっては上り線ホームの先端数mと下り線ホームの先端1mほどをそれぞれ削り、現行の用地内で通過線の敷設スペースを捻出することになっています。また、ホームを覆う屋根は両側から斜めの鉄骨で支える構造となっており、線路を外側に移設すると高さが不足するため、アーチ型の新しい屋根が設置されることになっています。(イメージとしては田園都市線高津駅に近い?)
 また、現在の祐天寺駅は高架下の改札口からホームの間にエレベータと階段しかありませんが、改良工事に合わせて上下のエスカレータを新設し、隣の中目黒駅と同様にフルスペックでのバリアフリー化を完了させる予定です。

高架下の改札口。(改札内側)高架化完成時から大きな改変が加えられておらず、古さが目立つ。 高架下の改札口。(改札外側)高架化完成時から大きな改変が加えられておらず、古さが目立つ。
高架下の改札口。(左は改札内側、右は改札外側から見た様子。)高架化完成時から大きな改変が加えられておらず、古さが目立つ。

 改札口は渋谷方の高架下に1箇所設置されています。高架下の駅施設は高架化以降大きなリニューアルは行われていないようで、天井は蛍光灯の数が少ないため薄暗く、床は分厚いコンクリートのブロック張りで凹凸が多いなど、昭和中期にできた駅と言う雰囲気を色濃く残しています。
 通過線新設にあたっては、高架橋の補強と合わせて老朽化したこれらの駅施設も一新される予定となっています。また、エスカレータ新設に合わせてコンコースを横浜方面にも拡大し、その先に改札口がもう1箇所設置されることになっており、利便性が向上します。

祐天寺駅西口。すぐ前が住宅地であるため、独立した駅舎などは存在しない。 祐天寺駅東口。こちらはビルが併設され、バスターミナルもあるなどメインの出入口となっている。
左:祐天寺駅西口。すぐ前が住宅地であるため、独立した駅舎などは存在しない。
右:祐天寺駅東口。こちらはビルが併設され、バスターミナルもあるなどメインの出入口となっている。


 駅の出入口は西口と東口で大きく様子が異なっています。西口は上り線ホームの真下にあり、細い道路を挟んだ向かいはすぐに住宅地となっているため、独立した駅ビルなどは存在しません。一方、東口は駅と一体になった3階建てのビルが建っており、その前にはバスが発着するロータリーがあるなどこちらが駅の表玄関という趣きになっています。なお、祐天寺駅横浜寄りの高架下にはスーパー「東急ストア」がありましたが、高架橋の工事に伴い元の場所が使用不可能になったため、現在は改札口前および東口のビル1階に設けた仮設店舗で営業中です。

西口前から渋谷方面の高架橋を見る。左の樹木の部分に新しい上り線の高架橋が建設される。 西口前の道路を横浜方面に進んだところ。ここには東急ストアの搬入口があった。
左:西口前から渋谷方面の高架橋を見る。左の樹木の部分に新しい上り線の高架橋が建設される。
右:西口前の道路を横浜方面に進んだところ。ここには東急ストアの搬入口があった。


 渋谷方の高架橋西側は幅2mほどの歩行者専用道路を挟んで民有地になっていますが、高架橋に面した部分は植樹帯となっており建物はありません。新しい上り線の高架橋はこの樹木を伐採して細い道路を民有地内に付け替え、空いたスペースに建設されます。上り線は渋谷方面にホームが大きく延長されるため、左の写真の橋梁の上までホームが張り出してくることになります。なお、渋谷方の高架下には本屋がありましたが、昨年5月の訪問時はすでに着工準備のため閉店していました。
 横浜方は高架下にある東急ストアの商品搬入口などがありましたが、この時は既に仮設店舗への移転が済んでおり、使用されていませんでした。搬入口のさらに先には高架橋に密着して駐車場や民家が数軒ありましたが、こちらもすでに取り壊しが完了しており、着工に向けた準備が整っていました。

駅構内に掲出されていた祐天寺駅改良工事の詳細計画 駅構内に掲出されていた祐天寺駅改良工事の詳細計画
駅構内に掲出されていた祐天寺駅改良工事の詳細計画
※クリックで拡大(1000×750px/100KB)

 改札口をはいって突き当たりの壁には祐天寺駅通過線新設・駅施設のリニューアルに関する詳細な計画が掲出されていました。この計画図は着工した現在もほぼ同じ場所に掲出されていますので、通りかかった際はご覧になってはいかがでしょうか?

■2014年4月5日の様子
着工から1年が経った祐天寺駅のホーム。ホーム上は壁材を撤去するため多数の囲いが設置されている。
着工から1年が経った祐天寺駅のホーム。ホーム上は壁材を撤去するため多数の囲いが設置されている。

 前回の調査から約1年が経過した今月5日に、再び現地の様子を見てまいりました。
 ホーム上では外側の壁材の撤去作業が開始されており、上下線ともホーム外側に工事用の囲いが多数設置されました。壁材の撤去は主に列車が走らない夜間に行われており、昼間ホーム上では特に作業が行われている様子はありません。

上り線渋谷方のホーム端から高架下で行われている工事の様子を見る。この先は中目黒駅に向かって35パーミルの下り勾配になっている。 同じ部分を高架下から見る。先ほどの「西口前から渋谷方面の高架橋を見る」とキャプションを付けた写真と同じ位置。
左:上り線渋谷方のホーム端から高架下で行われている工事の様子を見る。この先は中目黒駅に向かって35パーミルの下り勾配になっている。
右:同じ部分を高架下から見る。先ほどの「西口前から渋谷方面の高架橋を見る」とキャプションを付けた写真と同じ位置。


 渋谷方は民有地内の樹木を伐採して道路が付け替えられ、高架橋に並行した空間で工事が本格化していました。現在は高架橋の拡幅に先立ち、既存の高架橋を補強する作業が行われており、高架下では柱のコンクリートの増し打ちや追加の杭の打ち込みなどが進んでいます。また、高架橋の上を通る線路でも軌道の移設を可能にするため、まくらぎをコンクリートから木材に入れ替えたり、レールを細かく取り外し可能な構造に変更しています。
 なお、祐天寺駅の渋谷方はホームを出るとすぐに中目黒駅に向かって35パーミルの下り勾配になっています。計画図によると、新上り線と通過線の合流地点は勾配の入口もしくは途中に設置されることになっていますが、このような急勾配区間に分岐器(ポイント)を設置することは、走行安定性などの問題からほとんど例がありません※2。実際に通過線を設置するにあたって縦断線形を若干変更するのか、それとも線路に何か特別な細工を施して、現状の縦断線形のままにするのかに関しては今後注目したいと思います。

▼脚注
※2:省令でも分岐器設置区間の勾配は25パーミル以下にすることが定められている。


上り線横浜方のホーム端。右下の高架橋と民有地のわずかな空間で工事が行われている。 上り線ホームを駅の外から見たところ。壁を撤去するためネットで覆われている。
左:上り線横浜方のホーム端。右下の高架橋と民有地のわずかな空間で工事が行われている。
右:上り線ホームを駅の外から見たところ。壁を撤去するためネットで覆われている。


 横浜方も高架下で既存の高架橋の補強工事が行われています。上り線のホーム端から見ると高架下の作業スペースは駅に近付くにつれて外側に広がっており、この線に沿って上り線側の高架橋を拡幅することが予想できます。駅中央付近も、壁材を撤去するため高架橋全体がネットで覆われています。

高架下の改札口。突き当たりの壁が工事用の囲いに変わっている。
高架下の改札口。突き当たりの壁が工事用の囲いに変わっている。

 高架下の改札口やコンコースのレイアウトは現在のところ大きな変更はありませんが、改札口を入って突き当たりの壁はコンクリートから工事用の板材に変更されています。この壁の裏は以前東急ストアがあった場所で、高架橋の補強工事のため間仕切りを撤去したようです。

駅の外に掲出されていた4月の工事予定表
駅の外に掲出されていた4月の工事予定表
※クリックで拡大(1200×900px/169KB)

 この祐天寺駅通過線新設工事は、東横線で副都心線直通に向けた改良工事が始まった初期の段階から話自体は存在しましたが、着工はおろか東急電鉄から正式な発表すらなかなかされず、真偽が不明となっていました。(当時は目黒区議会議員の個人ブログが唯一の情報源だった。)その後、副都心線直通を開始して2カ月が経った昨年5月に東急電鉄から発表された2013年度事業計画において、ようやくこの通過線設置が正式に盛り込まれ、一般に広く知れ渡るところとなりました。
 この間に地元への事業説明や用地買収に向けた準備は完了しており、事業計画発表とほぼ同時に着工しています。完成は2018年度の予定となっており、用地買収も完了していることから、トラブルが無ければ事業は予定通りに進捗するものと思われます。

▼参考
2013年度の鉄軌道事業設備投資計画駅・高架橋の耐震補強やホームドア設置など、総額488億円 - 東急電鉄ニュースリリース(PDF/52KB)
→4月21日(月)に東急電鉄ホームページがリニューアルされました。これに伴い、当ブログの記事からリンクしている同社ニュースリリース文書が全てリンク切れとなっています。現在も公開されているものについては今後順次リンクを修正してまいります。
祐天寺と祐天寺駅周辺情報 土日祭日を除き毎日更新しています、祐天寺の今日
→地元有志による商店街や街の情報
395号 中目黒駅改良工事 森美彦・モリモリ区政報告]
→祐天寺駅通過線新設に関して初めて言及したWebサイト

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Facebookのコメント

コメント

誰かの先見の明か?
計画図の断面を見る限りでは、始めからいずれは線増可能な設計で、これまでが本設構造の仮ホーム幅だったのかもしれませんね。
2014/08/03 18:13 | URL | 投稿者:ushin
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