東急田園都市線複々線化・大井町線溝の口駅延伸(2010年1月10日取材)



2006年からお伝えしてきた東急大井町の線溝の口駅延伸ですが、いよいよ工事が完成し去る2009(平成21)年7月11日より新しい線路を使用して延長運転が開始されました。今回は昨年4月と今年1月に取材した内容を合わせてお伝えしたいと思います。

■事業の概要とこれまでの進行状況

左:6ドア車両を組み込んだ東急5000系。2008年1月1日、あざみ野駅にて撮影
右:急行運転に向けて拡張された大井町線大井町駅。2008年3月16日撮影

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神奈川県大和市の中央林間駅から東京都渋谷区の渋谷駅を結ぶ東急田園都市線は、朝ラッシュ時の混雑率が198%(2007年、池尻大橋→渋谷の最混雑1時間の値)と国内の全私鉄の中で1、2位を争う混雑率となっています。この激しい混雑により列車の遅れが深刻化しており、東急電鉄ではこれまで信号システムの改良により運行間隔を最短2分5秒まで短縮しているほか、特に混雑する朝ラッシュ時の列車に1編成あたり3両の6ドア車を連結した新型車両5000系を大量導入するなど対策を続けています。そして、この混雑の抜本的な解消策として計画されたのが今回の記事で取り上げる大井町線の溝の口駅延伸です。この事業は田園都市線二子玉川~溝の口間を複々線化し、二子玉川駅止まりとなっていた大井町線を溝の口駅まで延長し、大井町線内で急行運転を行うことで主に東京都心の東側へ向かう通勤客を分散させることを目的としています。改良工事は1990年代初めから開始され、これまで以下のような工事が完成しています。

1、大井町線の信号システムの改良
ATS(地上信号)からCS-ATC(車内信号)に更新し、1時間の運行間隔を18本から20本に短縮(2008年完成)

2、急行運転に対応するため各駅を改良
大井町駅→りんかい線建設にあわせ、ホームを拡幅・6両分に延長(2002年完成)
旗の台駅→ホームを6両分に延長し、追い抜き設備を新設(2面2線→2面4線)(2008年完成)
大岡山駅→目黒線改良にあわせて駅全体を地下化し、ホームを延長(1997年完成)
自由が丘駅→ホームを6両分に延長・東横線との乗り換え設備改良(2008年完成)
上野毛駅→上り線の通過線を新設(2008年完成)
※当初は等々力駅を地下化して上下線の急行通過線を設置する計画だったが、近隣に存在する等々力渓谷へ流れる地下水に影響を及ぼすという指摘が住民から出たため現在も調査が行われており着工していない。

3、二子玉川駅の改良
大井町線が外側、田園都市線が内側だった線路配置を逆に入れ替え(1999年完成)

4、田園都市線梶が谷駅に留置線を新設
自由が丘駅の留置線3本が廃止された(2009年に1本復活した)ため、代替として田園都市線梶が谷駅の西側に留置線4本を新設。この留置線は田園都市線上りホーム(4番線)の途中に接続しており、梶が谷駅に直接入線することはできない。(2008年完成)

▼関連記事:大井町線急行運転開始に向けた改良工事についての記事一覧
等々力駅地下化とその問題(2006年12月14日作成)
東急大井町線・急行運転に向けた改良工事(2008年1月11日作成)
東急大井町線・急行運転に向けた改良工事(補遺)+6000系(2008年3月21日作成)
東急大井町線急行と6000系電車の概要(2008年8月18日作成)

これらの改良工事が完成した2008(平成20)年3月28日より大井町線の急行運転が先行して開始され、以後は田園都市線の複々線化工事が続けられました。

■2009年4月の状況と2010年1月の状況
田園都市線の複々線化工事は2000年代初めころから本格的に開始されました。Yahoo!ブログ版でレポートを開始した2006(平成18)年から2007(平成19)年にかけては主に二子新地・高津の2駅で田園都市線の線路を複々線化用地の外側に移設し、将来大井町線の線路となる内側2線を構築する工事が行われ、二子新地駅については2008(平成20)年にほぼ完成しました。また、溝の口駅については中央林間方の線路脇の斜面を切り崩して折り返し線を造る工事が行われました。2006年から2008年の工事については以下の以前作成した記事でご覧いただくこととして、この項では大井町線の延伸直前の2009(平成21)年4月18日と延伸後の2010(平成22)年1月10日に取材した内容をお伝えします。

▼関連記事:田園都市線複々線化工事についての記事一覧
東急田園都市線複々線化(その0)(2007年1月4日作成)
東急田園都市線複々線化(その1)二子玉川駅(2007年1月5日作成)
東急田園都市線複々線化(その2)二子新地駅(2007年1月7日作成)
東急田園都市線複々線化(その3)高津駅(2007年1月8日作成)
東急田園都市線複々線化(その4)溝の口駅(2007年1月8日作成)
東急田園都市線複々線化2008年(2008年1月9日作成)
東急田園都市線複々線化工事(2008年9月)(2008年10月24日作成)

●二子新地駅(2010年1月10日取材のみ)

夕刻の二子新地駅を通過する大井町線8590系「“各駅停車”溝の口行き」。2010年1月10日撮影

二子新地駅の複々線化は2008年にほぼ完成しており、将来大井町線の線路となる内側2線は途中に砂利で築いた車止めを置いて二子玉川駅から続く大井町線の折り返し線として機能していました。大井町線の急行運転が開始される直前の2008年3月中旬には試運転中の新型車両6000系が留置されており、鉄道ファンのみならず一般の利用客からも注目されていました。大井町線の溝の口延伸後の2010年1月には当然のことながら車止めは撤去され、大井町線の電車が数分おきに通過していきます。

●高津駅(2009年4月18日取材のみ)

左:軌道敷設がほぼ完了した高津駅構内。用地の関係で上下線のホームが若干ずれている。
右:ホーム端から溝の口方面をみる。手前のポイントは大井町線各駅停車の転線用。2枚とも2009年4月18日撮影

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高津駅は2009年4月訪問時に軌道敷設までほぼ完成しており、使用開始に向けた微調整を行っている状況でした。高津駅の中央林間方には内側線と外側線を接続する片渡り分岐器(ポイント)が設置されており、大井町線の溝の口延伸後は高津・二子新地に停車する大井町線各駅停車の一部が使用しています。(後述)

●溝の口駅(2009年4月18日・2010年1月10日取材)

2番線の軌道を改修中の溝の口駅。2009年4月18日撮影


左:上り線の線路を切り替えるのみとなった溝の口駅中央林間方の折り返し線。2009年4月18日撮影
右:大井町線延伸後の同地点。暗くて見づらいが、手前の線路の接続が変わっているのがわかる。2010年1月10日撮影

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大井町線延伸前の溝の口駅は上り線のみが2線となっていました。これは列車本数が激増する朝ラッシュ時に交互発着(片方の線路から電車が発車する前にもう片方の線路に次の電車を入線させる)を行い、少しでも列車間隔を詰めるための工夫です。この運用に支障をきたさないため、大井町線関連の工事も下り線から開始され、上り線の線路切り替えは延伸開業直前まで先延ばしされてきました。2009年4月訪問時溝の口駅のホーム使用形態は以下の通りです。

1番線:田園都市線下り線
2番線:工事中(大井町線下り線)
3番線:田園都市線上り線
4番線:田園都市線上り待避線

この時点では中央林間方の折り返し線も完成しており、残る工事は3番線・4番線に分岐している田園都市線上り線を4番線に1本化するだけとなっていました。この切り替え工事は大井町線延伸開業直前の2009年6月15日に行われ、以後は外側2線が田園都市線、内側2線が大井町線という使用形態となっています。なお、4番線の線路はこれまで使用頻度が低いため50kgレールとなっていましたが、今回の切り替えに際して両側の区間に合わせて60kgレールに交換されました。

■大井町線溝の口駅延伸後の運行パターン

二子新地・高津を通過する大井町線各停は種別がグリーンで表示される。2010年1月10日、二子玉川駅で撮影

大井町線の溝の口駅延長運行は2009年7月11日より開始され、溝の口~大井町間の所要時間は31分から21分へ大幅な短縮が実現しました。この延長運行開始により、二子玉川~溝の口間には「田園都市線急行(準急を含む)」「田園都市線各停」「大井町線急行」「大井町線各停」の4種類の列車が走ることになりますが、このうち「大井町線各停」については走行する線路の違いから二子新地・高津に停車する列車と通過する列車の2パターンが生じることになりました。この対策として、駅の発車案内や列車の前面・側面の種別表示の背景色を変えることで停車する駅の違いが一目でわかるよう区別しています。以下に列車種別と走行する線路の関係を図で示します。 (列車種別部分の色は実際に駅や車両で表示されている色にあわせています。)

●田園都市線急行準急を含む)

全区間で外側線を走行。

●田園都市線各停

全区間で外側線を走行。

●大井町線急行

全区間で内側線を走行。

●大井町線各停(二子新地・高津停車)

二子玉川駅を出た直後に外側線に転線。以後高津駅先のポイントまで外側線を走行。高津駅を出た直後に再度内側線に転線し、以後は溝の口駅まで内側線を走行。

●大井町線各停(二子新地・高津通過)

全区間内側線を走行。したがってホームがない二子新地・高津の2駅は通過する。

日中の大井町線は基本的に青の各停→緑の各停→急行のサイクルを15分間隔で繰り返すダイヤとなっています。このように運行系統が複雑化してしまいましたが、限られた用地・コストで平面交差による支障を避けつつさまざまな速度の列車を運行する以上これは仕方がないのではないかと思われます。

■むすび
今回の大井町線溝の口駅延伸を以って、当初計画されていた田園都市線の混雑緩和対策は一応の完成を見たことになります。しかし、この事業の完成よる田園都市線への混雑緩和の効果はわずかなものと見積もられており、2000(平成12)年に当時の運輸省内に設置された運輸政策審議会(国土交通省への改組に伴い現在は交通政策審議会に改名)より発表された第18号答申では「鷺沼までの複々線化を検討すべき」とされています。現在は溝の口駅先のトンネル手前で止まっている大井町線の折り返し線が鷺沼まで延長される日もそう遠くないのかもしれません。田園都市線の1日も早い混雑緩和の実現を期待したいところです。

東急大井町線改良工事および田園都市線複々線化工事
工期:1993(平成5)年10月~2010(平成22)年3月
距離:14.5km(大井町線大井町~二子玉川間10.4km、田園都市線二子玉川~溝の口間2.1km)
総工費:約1500億円
※なお、本事業は国土交通省の「特定都市鉄道整備積立金制度」対象事業です。これは鉄道路線の大規模改良に必要な資金を事前に加算運賃を利用して積み立てて調達するものです。

▼参考
東急電鉄-大井町線が溝の口駅まで延伸!
東急線の取り組み - 大井町線改良・田園都市線複々線化工事
<東急電鉄>TOKYU NEWS 2009/2/5 2009年7月11日(土)、東急大井町線が溝の口駅まで延伸します
<東急電鉄>TOKYU NEWS 2009/3/10 2009年4月、田園都市線に6ドア・座席格納車両を追加導入します。同車両を1編成2両から3両にすることで、遅延抑制と混雑感の軽減をさらに進めます

(おわり) このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

大井町線急行の当初計画
大井町線の急行は当初計画では8両編成で運転する予定でしたが、なぜ6両編成での運転に変更されたのでしょうか?
2015/03/03 00:46 | URL | 投稿者:のるるんファン
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