東武野田線高架化工事(2014年11月29日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2015年01月18日17:11
高架橋の柱が立ち始めた清水公園~愛宕間

東武野田線(東武アーバンパークライン)清水公園~梅郷間では現在高架化工事が行われています。2012年の調査から2年が経過し、現地では仮線への切り替えや高架橋本体の建設工事が始まりました。昨年11月末に現地の様子を再調査してまいりましたので、その模様をお伝えします。

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東武野田線高架化工事(2012年7月28日取材)(2012年8月10日作成)

■東武野田線と清水公園~梅郷間連続立体交差事業の概要
柏駅は頭端式ホームとなっており、船橋方面・大宮方面が同一平面上で乗り換えできる。 2013年6月より導入が進められている60000系。
左(1):柏駅は頭端式ホームとなっており、船橋方面・大宮方面が同一平面上で乗り換えできる。2007年6月3日撮影
右(2):2013年6月より導入が進められている60000系。


 東武野田線は埼玉県さいたま市の大宮駅を起点とし、春日部、野田、流山、柏、鎌ヶ谷の各市を経由して千葉県船橋市の船橋駅に至る全長62.7kmの民鉄線です。2014年4月1日より、イメージアップを目的に「東武アーバンパークライン」の愛称名が導入されています。首都圏外延部のベッドタウンを半環状に結ぶ路線であることから、朝夕の通勤需要は大きく、1日の乗降人員はほとんどの駅で1万人を超えています。運行系統は柏駅がスイッチバック形の配線となっていることから、一部の入出庫列車を除き「大宮~柏間」と「柏~船橋間」で完全に分断されています。
 野田線の近代化は首都圏の他の路線と比べると遅れており、現在も単線区間が多く残っています。車両についても2004(平成16)年まで釣り掛け式駆動の5000系が残り、以後も主要路線で使い古された8000系(写真のみが走る状態が10年近く続いてきました。しかし、2012(平成24)年に東武鉄道が東京スカイツリーという超優良資産を手に入れたことから、翌2013(平成25)年6月より新型車両60000系が「直接」投入されるなど、前例の無い大規模なテコ入れが開始されています。さらに、地上設備についても大規模な改修が進められており、大宮~春日部間で2016年春に急行運転が開始されるのに加え、船橋駅と柏駅へのホームドア(可動式ホーム柵)設置、六実~逆井間の複線化が計画されています。


 上記の改良に加え、2008(平成20)年からは清水公園~梅郷間で千葉県が主体となった連続立体交差事業(高架化)がスタートしました。この事業は野田線の清水公園駅南側から野田市~梅郷間にある都市計画道路中根山崎線(陸橋)までの約2.9kmを高架化するものです。これにより、渋滞が激しい主要地方道つくば野田線(愛宕駅付近)や主要地方道野田牛久線(野田市駅付近)をはじめとする11か所の踏切が解消されます。また、老朽化した愛宕駅と野田市駅も高架化されるため、バリアフリー対応などが同時に実現します。総事業費は約353億円の予定で、国・千葉県・野田市・東武鉄道の各団体が負担します。完成予定は2017(平成29)年度です。

■仮線切替・高架橋本体工事が開始(2014年11月29日取材)

●清水公園~愛宕間
駅間・地上アプローチ区間の高架化前後の断面図 駅間・地上アプローチ区間の高架化前後の断面図
駅間・地上アプローチ区間の高架化前後の断面図

 高架化区間は清水公園駅を出発してすぐの地点から始まります。今回の高架化では複線化は同時には行われないため、現在の線路の脇に単線分の用地を新たに確保してそこに高架橋を建設する手法がとられます。複線化については制度上鉄道事業者がコストを負担しなければならないため、すぐの実現は困難とみられます。

清水公園駅のホームは盛土式から桁式への改修が進められている。
清水公園駅のホームは盛土式から桁式への改修が進められている。

 清水公園駅は高架化はされませんが、現在関連工事として3番線を使用停止にしたうえでホームを盛土式から桁式に改築する工事が進められています。駅構内に掲出されている完成予想図によると、ホームの屋根も白い膜屋根に改築されることになっています。

清水公園駅の柏方は線形が変わるようで、新しい分岐器が搬入されていた。 同じ場所から柏方面を見たところ。重機が乗り入れられるよう鉄板が敷かれている。
左(1):清水公園駅の柏方は線形が変わるようで、新しい分岐器が搬入されていた。
右(2):同じ場所から柏方面を見たところ。重機が乗り入れられるよう鉄板が敷かれている。


 清水公園駅の柏寄りでは、高架橋の建設工事が開始されており、現在は重機が乗り入れられるよう地面に鉄板を敷きつめたり、地面を平らに整地する作業が行われています。また、駅構内の複線区間から単線区間に収束する分岐器(ポイント)は今後線形が変わるため、11月訪問時には新しい分岐器が搬入されていました。新しい分岐器は2番線側もカーブした振分分岐器となっています。

清水公園~愛宕間の中央では斜面を削って高架橋の建設スペースを作っている。 その先で立ち始めた高架橋の柱。
左(1):清水公園~愛宕間の中央では斜面を削って高架橋の建設スペースを作っている。
右(2):その先で立ち始めた高架橋の柱。


 清水公園~愛宕間の線路脇は片側がなだらかな斜面になっていたことから、この斜面を垂直に削ることにより高架橋の建設スペースを捻出する工事が進められています。斜面の削り取りが終わった場所から高架橋の基礎・本体の工事が開始されており、一部では柱が立ち始めたことが確認できました。高架橋の柱は比較的細く、2列ずつ立っていることからも、現時点では高架化と同時の複線化は考慮されていないことがわかります。

愛宕駅手前のカーブ付近は今のところ工事は行われていない。 さらに進むと愛宕駅構内。
左(1):愛宕駅手前のカーブ付近は今のところ工事は行われていない。
右(2):さらに進むと愛宕駅構内。


 愛宕駅の手前についてはかなり前から高架化に必要な用地の確保は済んでいますが、現在のところ関連した工事はなにも行われていません。この付近は次に説明する愛宕駅付近の仮線化工事完了後に着工するものとみられます。

●愛宕駅

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愛宕駅の高架化前後の断面図。高架化後も対向式ホーム2面2線となる。
愛宕駅の高架化前後の断面図。高架化後も対向式ホーム2面2線となる。

 愛宕駅は高架化前後ともに対向式ホーム2面2線となります。愛宕駅では東側で高架化に合わせて土地区画整理事業が進められていることから、そこを工事中の間の仮駅用地として使用し、上下線を片側ずつ高架化する方法が採用されます。

愛宕駅の駅舎。近い将来取り壊されるが、看板類の取り換えなどは一応行われている。
愛宕駅の駅舎。近い将来取り壊されるが、看板類の取り換えなどは一応行われている。

 上り線(大宮方面)ホームの先端にある駅舎は高架化に伴い廃止となるため、メンテナンスは必要最低限に留められていますが、東武鉄道各駅で進められている新CIデザインの案内板への交換は行われています。

下り線ホーム裏手で行われている旧水路の埋め立て作業。 下り線ホームから旧水路(手前)と新水路(奥)を見る。
左(1):下り線ホーム裏手で行われている旧水路の埋め立て作業。
右(2):下り線ホームから旧水路(手前)と新水路(奥)を見る。


 下り線(柏方面)ホーム東側の仮線予定地にはコンクリート製の用水路があり、そのままでは仮線を敷設することができませんでした。そのため、まず水路をさらに東側に迂回させる工事が行われ、昨年秋に完成しました。水路の完成に伴って真上にあった駐輪場が11月1日より新水路の上に移設され、旧水路は土砂で埋め立てる作業が行われています。今後は旧水路の跡地に下り線の仮線・仮ホームが設置される模様です。

●野田市駅
野田市駅の高架化前後の断面図。高架化後は島式ホーム2面4線(+保守用側線1線)となる。
野田市駅の高架化前後の断面図。高架化後は島式ホーム2面4線(+保守用側線1線)となる。

 野田市駅はかつて駅周辺に存在する醤油メーカーキッコーマン野田工場の貨物輸送があったことから、多数の側線を持つ広い構内となっていました。高架化後は側線は1本を除いて廃止されますが、代わりにホームを2面とも島式化し、現在よりも1線多い2面4線の形態になります。

野田市駅の着工前の配線
2014年9月28日以降の配線(下)
野田市駅の着工前の配線(上)と2014年9月28日以降の配線(下)

 野田市駅構内は次に説明する野田市~梅郷間の仮線切替にわせ、昨年9月28日に大規模な構内配線の変更工事が実施されました。これに伴い、駅舎に面した1番線(上り・大宮方面)の線路が撤去され、代わりに2番線(旧下り・柏方面))が上り線に、3番線(旧上下兼用線)が下り線に変更されました。また、側線についても大幅に統廃合され、本線との接続部分は3番線大宮寄りの1箇所のみとなりました。

1番線(右のホーム)の線路が撤去された野田市駅
1番線(右のホーム)の線路が撤去された野田市駅(同じ場所の2012年7月28日の様子

 野田市駅は9月28日の配線変更により駅前後を中心に線路の形状が大幅に変化しましたが、ホーム・駅舎等については現在のところ大きな変化はありません。今後は7月を目途にに1番線ホームから2・3番線ホームに通じている地下道を駅前広場側に延長してその先に仮設駅舎を建設し、高架橋本体の工事に支障となる現在の駅舎を取り壊す計画になっている模様です。

1番線ホームは通路も兼ねているため、線路側に柵を設置したのみでそのまま使用されている。 使用頻度が少なかった3番線は軌道が劣化していたため、下り線への転用前に軌道部品の全面更新が行われた。
左(1):1番線ホームは通路も兼ねているため、線路側に柵を設置したのみでそのまま使用されている。(同じ場所の2012年7月28日の様子
右(2):使用頻度が少なかった3番線は軌道が劣化していたため、下り線への転用前に軌道部品の全面更新が行われた。


 1番線ホームは駅舎(改札口)やトイレなどが設置されているため、線路側に柵を設置したのみで以前と同様に使用されています。また、上下線兼用の折り返し線から下り本線に転用された3番線は、これまで使用頻度が少なく、木製のまくらぎが使用されるなど軌道の状態が良くなかったため、2013年にレールの重量化・PCまくらぎへの全面更新などの改良工事が行われました。3番線に隣接している保守機材用側線は一部架線が残存していましたが、この改良工事の際架線が全て撤去され、柏方面に進出可能なポイントも撤去されました。

野田市駅大宮寄りにある踏切から大宮方面を見る。角度の大きい両開き分岐器に交換された。 同じ踏切から駅構内を見る。左の保守機材用側線の分岐器は横取り装置になった。
左(1):野田市駅大宮寄りにある踏切から大宮方面を見る。角度の大きい両開き分岐器に交換された。
右(2):同じ踏切から駅構内を見る。左の保守機材用側線の分岐器は横取り装置になった。


野田市駅柏寄りにある踏切から駅構内を見る。こちらも角度の大きい片開き分岐器に交換された。 同じ踏切から柏方面を見る。こちら側にあった行き止まりの側線は廃止された。
左(1):野田市駅柏寄りにある踏切から駅構内を見る。こちらも角度の大きい片開き分岐器に交換された。
右(2):同じ踏切から柏方面を見る。こちら側にあった行き止まりの側線は廃止された。

 本線と3番線が接続部分は、以前制限速度が30km/h前後の分岐角度が非常に急な分岐器が使用されていました。このままでは従来の運行ダイヤが維持できなくなってしまうため、3番線の全面改修時に分岐角度が大きい新しい分岐器に交換され、大宮方面・柏方面ともに60km/hで進入可能となりました。さらに出発信号機も増設されたため、2番線・3番線ともに両方向に進入・進出が可能となっています。(従来2番線は大宮方面へは進出不可だった。)

●野田市~梅郷間
梅郷→野田市の前面展望。左側が旧本線。 さらに梅郷駅に向かった地点陸橋手前から仮線区間。
左(1):梅郷→野田市の前面展望。左側が旧本線。
右(2):さらに梅郷駅に向かった地点陸橋手前から仮線区間。


 野田市駅の配線変更と同じ日に野田市~梅郷間(駅間にある都市計画道路中根山崎線の陸橋付近まで)の仮線切り替えも実施されました。仮線は旧線の北隣に敷設されており、移転前の旧線路の跡地に今後高架橋が建設されます。11月訪問時に旧線路の撤去は完了しており、今後は準備ができた場所から高架橋本体の工事に移るものと思われます。


東武鉄道ではこの他にも竹ノ塚駅の高架化を進めており、高架橋本体の工事が本格化しています。こちらについても12月に調査済みですので、追って記事を作成する予定です。また、東上線では来る1月31日より川越市~小川町間で新型保安装置「T-DATC」の使用を開始する予定となっており、今週末を以ってATC搭載の対象外となった8000系が池袋~小川町間から引退しました。東武鉄道のその他の路線についても、今後ATSの更新が計画されており、「私鉄の103系」と呼ばれた東武8000系電車の活躍の場もどんどん狭まって行くことが予想されます。東京スカイツリーの好調な集客の基、東武鉄道が今後どのような設備投資を行っていくのか注目してまいりたいと思います。

▼参考
鉄道高架事業について - 野田市
設備投資計画は総額322億円 - 東武鉄道ニュースリリース(PDF/1.44MB)
→今年度は特に野田線関連の投資が前面に押し出されている。

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