東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2015年5月・2016年4月取材)

東京メトロ05系・東葉高速鉄道2000系

東京メトロ東西線南砂町駅では、現在混雑緩和のためホーム増設を中心とする大規模な改良工事が進められています。2014年にその工事の状況についてお伝えしましたが、その後も複数回調査を行ってまいりました。今回は昨年5月と今年4月に調査した内容をお届けいたします。

▼関連記事
東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2014年5月2日取材)(2014年8月30日作成)

■東京メトロ東西線の激しい混雑とその対策
2010年より導入が進められているワイドドア車15000系。今年度はさらに3編成の増備が予定されている。 茅場町駅は西船橋方の階段を移設してホームを40m延長する予定。
左(1):2010年より導入が進められているワイドドア車15000系。今年度はさらに3編成の増備が予定されている。
右(2):茅場町駅は西船橋方の階段を移設してホームを40m延長する予定。


 東京メトロ東西線は東京都のJR中央線中野駅から都心部を貫通し、千葉県のJR総武線西船橋まで至る全長 30.8kmの地下鉄路線です。中野駅からはJR中央線の三鷹駅まで、西船橋駅からはJR総武線の津田沼駅(平日朝夕のみ)と東葉高速鉄道の東葉勝田台駅までそれぞれ相互直通運転を行っています。
 東西線は、元々中央線・総武線の混雑緩和のためのバイパス路線として建設されましたが、千葉県内の区間(浦安・市川・船橋の各市)では、東西線開通により利便性が向上したことから沿線で宅地開発が急速に進むことになりました。その結果、朝ラッシュ時の混雑率は最新のデータである2014(平成26)年現在の数値で国内最高となる200%(木場→門前仲町7:50~8:50)となっており、総武線を上回る激しい混雑となっています。この混雑の激しさにより、東西線では朝ラッシュ時に各駅での乗降に時間がかかり、列車の遅延が常態化しています。そのため、民営化前の営団地下鉄時代より

●全列車の10両編成化
●浦安以西各駅停車の「通勤快速」の新設(列車ごとの混雑を平準化)
●ワイドドア車の導入
●CS-ATC化による運転間隔の短縮(最短2分)

を行ってきました。2000年代に入ると、東京都心での再開発ブームにより、これらの対策も限界が見え始めたため、新たなメニューとして

(1)ワイドドア車(15000系)の増導入:ノーマルドア車置き換え・増発(2016年度3編成増備予定)
(2)門前仲町駅のホーム拡幅(2013年完了)
(3)南砂町駅の2面3線化:線路容量の増大(2021年度完成予定)
(4)茅場町駅のホーム拡張:東西線ホームを延長・階段増設・停車位置変更・日比谷線ホーム拡幅(2020年度完成予定)
(5)木場駅のホーム拡幅:ホーム上の混雑解消(2021年度完成予定)→別の記事で解説予定
(6)九段下駅折り返し機能向上:引上線の平面交差解消(2020年度完成予定)


が立案され、各計画とも鋭意工事が進められています。この東西線混雑緩和対策にかかる総投資額は530億円にのぼり、来る2020年の東京オリンピックに向けた準備の目玉ともいえるプロジェクトとなっています。

■南砂町駅改良工事の概要
1989年の南砂町駅付近の航空写真
1989年の南砂町駅付近の航空写真
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データより抜粋


 南砂町駅は1969(昭和44)年の営団地下鉄東西線東陽町~西船橋間延伸時に開業しました。開業当時駅の真上には、洲崎川という運河があったため、地上で造ったトンネル筺体の下を掘削して徐々に埋めていくケーソン工法により建設され、出入口はホーム両端のみというコンパクトな設備となっていました。
 開業時は工場ばかりだった南砂町駅周辺も、都内のその他の地域と同様1990年代以降再開発により高層マンションが多く立ち並ぶようになり、2014(平成26)年度の乗降客数は約6万2千人と10年前と比べて約1.5倍に増加しています。このため、東西線全体の混雑緩和も兼ねてもう1面ホームを増設し、2面3線化する大規模改良決定されました。

南砂町駅の改良前の構内図 南砂町駅の改良後の構内図
南砂町駅の改良前(左)と改良後(右)の構内図(実際は直線ではなくカーブしている)

 南砂町駅の2面3線化は、駅前後の区間を含む440mについて現在のトンネルの大半を取り壊して外側に拡大し、南側にもう1面島式ホームを増設します。これにより、現在の2番線(中野方面行き)は線路の両側にホームが付く上下線兼用ホームになります。これにより、朝ラッシュ時は先行列車が駅を出ないうちにもう1本ある線路に後続列車を進入させる「交互発着」が可能となり、遅延の抑制が実現できます。また、東西線は荒川や江戸川といった長大橋梁があるため、荒天時は強風による速度規制・運転見合わせがしばしば発生します。現状では地上区間が運転見合わせになった場合、東陽町駅で折り返す必要がありますが、南砂町駅が2面3線化されると当駅で折り返しが可能となるため、運転区間を1駅延長できるようになり利用者への影響が低減されます。
 なお、トンネルの改築は列車を運行しながら行うため、現在のトンネル躯体を包むように新しいトンネルの躯体を構築します。このため、1番線(西船橋方面行き)についても線路を外側に移設できるため、現ホームについても幅が6mから9mに拡張されます。また、駅の両端はポイントがあるためトンネル内に中柱を設けられず、トンネル天井が厚くなります。南砂町駅は荒川・中川の橋梁に近く深度が浅いため、トンネル天井が厚くなると地下1階の階高を十分確保することができません。そこで、現在ホーム両端にある改札口はどちらも廃止し、新たに駅中央の線路上部に改札口を集約します。この際階段やエスカレータもホーム全体に分散するよう再配置し、懸案となっていた混雑の緩和も合わせて実現されます。

■トンネル掘削が進行中(2016年4月10日・2015年5月31日取材)

 南砂町駅改良工事は2013(平成25)年夏に着工し、現在はトンネルの掘削工事が進められています。総事業費は約340億円で、完成は当初2020(平成32)年度以降とあいまいな表現がされていましたが、東京メトロなどから発表されている最新の情報では、ホームの供用開始が2021(平成33)年度、全体の工事終了は2022(平成34)年度となっています。
 今回は今年4月10日(日)の現地の様子に加えて、諸般の事情により掲載できていなかった昨年5月31日(日)の現地の様子を合わせてお届けします。

2015年5月31日取材時の西船橋方(新砂あゆみ公園内)の様子。大型重機を使い、大規模に地中連続壁の構築が行われている。 2015年5月31日取材時の西船橋方(新砂あゆみ公園内)の様子。大型重機を使い、大規模に地中連続壁の構築が行われている。
2015年5月31日取材時の西船橋方(新砂あゆみ公園内)の様子。大型重機を使い、大規模に地中連続壁の構築が行われている。(同じ場所の2012年2月18日の様子

 営団5000系電車のカット車体があった西船橋方の新砂あゆみ公園内は、2014年から2015年にかけて地下の掘削に向けた支障物撤去や地中連続壁※1の構築が行われました。工事エリア北側には、丸八通りへ通じる2車線の生活道路が通っていましたが、この道路は沿道の住宅の出入りに必要な部分を除いて通行止めになっています。

▼脚注
※1 地中連続壁:トンネルを掘削する際、周囲の土砂が崩れてこないよう両脇に最初に打ち込む壁(土留め壁)


新砂あゆみ公園南側に設けられた濁水処理プラント 3番出入口前は濁水処理プラントへのパイプを通すため、地面が溝状に掘削され蓋が設置された。
左(1):新砂あゆみ公園南側に設けられた濁水処理プラント
右(2):3番出入口前は濁水処理プラントへのパイプを通すため、地面が溝状に掘削され蓋が設置された。2枚とも2015年5月31日撮影


 地下の掘削の際生じる濁水の処理プラントや作業員の詰所は、新砂あゆみ公園南側の空き地に設けられています。地下掘削現場とプラントの間には南砂町駅の3番出入口があるため、地面を溝状に掘削して蓋をし、その中に配管などを収納しています。

新砂あゆみ公園内の2016年4月10日の様子。工事は地下に移り、重機の数は少なくなった。
新砂あゆみ公園内の2016年4月10日の様子。工事は地下に移り、重機の数は少なくなった。

 今年に入ると地上での作業はほぼ終わり、公園内の掘削部分は鉄板で覆われました。今後はこの下で線路分岐部分のトンネルの掘削・構築が進められることになります。

※この先画像が15枚(812KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。

南砂町駅前ロータリーの2015年5月31日の様子。ロータリーは以前の半分程度に縮小されている。
同じ場所の2016年4月10日の様子。筒状の掘削機により地面を円形に掘り抜く工事が行われている。
フェンスの隙間からみた旧駅前ロータリー。地面は一面板で覆われている。
上(1):南砂町駅前ロータリーの2015年5月31日の様子。ロータリーは以前の半分程度に縮小されている。(同じ場所の2014年5月2日の様子
右上or左下(2):同じ場所の2016年4月10日の様子。筒状の掘削機により地面を円形に掘り抜く工事が行われている。
右下:フェンスの隙間からみた旧駅前ロータリー。地面は一面板で覆われている。

 南砂町駅中央にある駅前広場は路線バスのバス停がありましたが、2014年7月に丸八通り上に移設されロータリーの北半分が閉鎖されました。閉鎖された部分では地下の掘削に向けた支障物撤去や地中連続壁の打ち込みが行われました。3枚目の写真では、地面に敷き詰められた鉄板に白い2本の線が描かれていますが、これが地中連続壁の打ち込み部分(掘削エリアの一番外側)に当たります。丸八通り内も両方向1車線ずつに交通規制を行ったうえで順次掘削準備が進められています。

丸八通りから西側の生活道路は自動車通行止めになっている。 丸八通りから西側の生活道路は自動車通行止めになっている。
丸八通りから西側の生活道路は自動車通行止めになっている。2枚とも2015年5月31日撮影

 丸八通りから中野方でも掘削が本格化しています。こちら側にも1車線一方通行の生活道路がありましたが、工事の本格化に伴い自動車は全面通行止めになり、工事中の部分を避ける形で歩行者用の通路が設けられています。

丸八通り西側の工事エリア中央付近から中野方面を見る。右側の砂町第三中学校の防球ネットが掘削エリアに合わせて移設されている。
工事エリア内を通過する歩行者用通路
通路のすぐ脇に置かれている工事用資材
上(1):丸八通り西側の工事エリア中央付近から中野方面を見る。右側の砂町第三中学校の防球ネットが掘削エリアに合わせて移設されている。(防球ネット移設直後の様子
右上or左下(2):工事エリア内を通過する歩行者用通路
右下(3):通路のすぐ脇に置かれている工事用資材。3枚とも2016年4月10日撮影

  南砂町駅の中野方は、建設当時地上に存在したの建物などを避けるため北側に一旦カーブした後南へカーブして永代通りの下へ入る線形となっています。2面3線化後もこの線系は維持されるため、掘削エリアもそれに合わせてカーブしています。
 このカーブになっている部分の地上には江東区立砂町第三中学校があり、掘削開始に先立ち校庭の防球ネットが掘削エリアの形状に合わせて仮移設されました。その後この防球ネットの脇では地中連続壁の構築が行われており、4月訪問時には掘削機のガイドとなるコンクリートの溝が残っていました。また、歩行者用通路の脇には地中連続壁の芯材になるH鋼なども置かれていました。新設されるトンネルは、砂町第三中学校の体育館の下にわずかに食い込む予定ですが、現在のところ体育館の建物には特に手を加えた形跡はありません。

砂町第三中学校体育館と1番出入口。新設トンネルの一部は体育館の下に食い込む予定。
砂町第三中学校体育館と1番出入口。新設トンネルの一部は体育館の下に食い込む予定。。2016年4月10日撮影

1番出入口付近の掘削工事の様子 掘削機現場搬入直後の様子
左(1):1番出入口付近の掘削工事の様子。2016年4月10日撮影
右or下(2):掘削機現場搬入直後の様子。2015年5月31日撮影


 1番出入口の先では、引き続き地中連続壁の構築が行われています。使われている重機は、先端にショベルカーのバケットのようなものが向かい合わせで装着されており、これを地中に降ろして土砂を掴み取るようにして掘削します。

トンネル内線路側の壁面に設置されたケーソン変位観測装置 掘削によるケーソン浮き上がりのイメージ
左(1):トンネル内線路側の壁面に設置されたケーソン変位観測装置
右(2):掘削によるケーソン浮き上がりのイメージ


 地下のホームは周囲の掘削が本格化した2014年春(前回記事作成)の時点では全く変化はありませんでしたが、その直後に線路側の壁面の数か所で化粧材のコンクリートが切り取られ、計測機器が設置されました。計測機器設置部分のトンネル天井を見ると帯状に色が違う部分があることから、これはトンネル継ぎ目の段差量を観測する機器であるとみられます。
 南砂町駅のトンネルは、地上で造ったトンネル筺体を徐々に埋めていく「ケーソン工法」でつくられたことは冒頭で説明しました。ケーソン工法では一度に造れるトンネルの長さが短いため、いくつかに分割して埋設設作業を行っており※2完成後のトンネル内にはいくつも継ぎ目ができることになります。一方、南砂町駅一帯は低地であるため地下水位が高く、トンネル底面には常時強い浮力が作用しています。この状態で一部区間だけ土砂を除去した場合、継ぎ目を境にして土砂を除去した(=トンネル上部の重量が軽くなった)側のトンネルが浮き上がり、段差ができてしまう恐れがあります。トンネル内は列車の営業運転が続いているため、万一急激な浮き上がりにより大きな段差が生じた場合、列車の異常な揺れや最悪の場合脱線などの重大事故を起こしてしまう恐れがあります。このため、観測機器を設置して浮き上がりの予兆を早期に検出できるようにしたものとみられます。

▼脚注
※2 南砂町駅の場合、駅全体を13個のトンネルに分割して埋め込んだ。


2016年4月10日訪問時には軌道の左右移動を防止する棒が追加された ホーム上には数か所仮囲いが設置された
左(1):2016年4月10日訪問時には軌道の左右移動を防止する棒が追加された
右(2):ホーム上には数か所仮囲いが設置された


 その後南砂町駅の地下トンネル内では、軌道の左右移動を防止するストッパーが設置されました。また、昨年夏以降はホーム上にも数か所仮囲いが設置され、何らかの作業が行われています。

冒頭でもお伝えした通り、東京メトロ東西線ではこの南砂町駅以外にも複数の駅で混雑緩和のための大規模改良工事が始まっています。次回は、工事が本格化している木場駅のホーム拡幅工事についてお伝えします。

▼参考
事業計画|東京メトロ
中期経営計画「東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~」|東京メトロ
平成28年度(第13期)事業計画(参考を含む) - 東京メトロ(PDF/452KB)
南砂町駅の改良工事を分かりやすくご紹介します 「メトロ・スナチカ(工事インフォメーションセンター)」 平成26年3月25日(火)オープン - 東京メトロ(PDF/483KB)
列車遅延解消のための地下鉄駅2面3線化計画-東京メトロ東西線南砂町駅- - トンネルと地下2012年8月号27~32ページ
東西線南砂町駅2面3線化改良計画について - 土木学会地下空間シンポジウム論文・報告集第18巻119~122ページ

▼関連記事
東京メトロ東西線15000系(2011年8月13日作成)
新砂あゆみ公園の営団5000系の現状(2012年2月18日取材)(2012年2月23日作成)
東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2012年2月18日取材)(2012年2月25日作成)
東京メトロ東西線南砂町駅改良工事(2014年5月2日取材)(2014年8月30日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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