京急蒲田駅高架化工事(2015・2016年取材その1:大森町・梅屋敷)

京急蒲田駅に進入する京急800形

2012年10月、京急電鉄の京急蒲田駅周辺が高架化されました。その後も工事区間内の各駅では、駅舎の工事や駅前広場の整備が進められてきました。昨年7月に各地点の状況を調査しましたが、それから時間が経ってしまったため、今年1月、5月にも追加の再調査を行いました。今回は2006年より約10年間にわたりお届けしてきた京急蒲田駅高架化工事レポートの最終回として完成した各地点の様子を2回に分けてお伝えします。1回目の今回は平和島駅から梅屋敷駅にかけてです。
(なお、昨年7月取材の際カメラを家に忘れるという失態を犯したため、スマートフォンのカメラで代用しました。そのため一部画像で画質が悪くなっております。ご了承ください。)

▼関連記事
京急蒲田駅連続立体交差化工事(2014年1・6月取材)(2014年6月29日作成)

■京急蒲田駅高架化の概要
高架化前の京急蒲田駅。
高架化前の京急蒲田駅。2006年10月28日撮影

 京浜急行本線及び同空港線(京急蒲田駅付近)連続立体交差事業は京急本線平和島~六郷土手間約4.7kmと空港線京急蒲田~大鳥居間約1.3kmを高架化する事業です。 着工前は両線とも線路が地上にあり、合計28箇所の踏切で道路と平面交差していました。中でも京急蒲田駅付近にある第一京浜(国道15号)と環状8号線(都道311号線)の踏切は東京都内でワースト3に入る「開かずの踏切」と化しており、深刻な交通渋滞が社会問題となっていました。
 一方、京急蒲田駅は島式ホーム1面+片面ホーム1面の2面3線の構造でしたが、空港線については駅構内が単線かつ本線と平面交差で分岐していたほか、横浜方面と直通できない配線となっていました。90年代末期に設定された横浜方面から羽田空港方面に直通する列車は、品川方の本線上で折り返して空港線に入るという曲芸的な運行方法が採られていましたが、本線を長時間占有することから増発が困難でした。羽田空港では2010(平成22)年に国際線ターミナルビルと4本目の滑走路(D滑走路)の供用が開始され、航空機の年間発着回数は約1.5倍の44.7万回まで増加すると見込まれました。京急蒲田駅の狭小な設備では、この空港拡張に伴う利用者の増加に耐えられないと判断されました。

直接高架工法により高架橋を建設中の大森町駅付近 都内屈指の渋滞個所だった空港線第一京浜踏切
左(1):直接高架工法により高架橋を建設中の大森町駅付近
右(2):都内屈指の渋滞個所だった空港線第一京浜踏切。2枚とも2008年8月23日撮影


 これらの問題を解決するため、2000(平成12)年より高架化工事がスタートしました。通常、鉄道の高架化は線路脇に沿線への日照確保のため側道用地を確保し、そこに仮の線路を建設して元の場所に高架橋を建設する「仮線方式」が用いられます。しかし、この京急蒲田駅の高架化は空港拡張までの完成が至上命題であったため、側道用地の買収完了を待たずに工事に着手できるよう、移動式のクレーンを使用して線路の真上に高架橋を建設していく「直接高架工法」が採用されました。

高架化が完成した京急蒲田駅 京急蒲田駅横浜方には普通列車専用の切欠きホームが作られた。
左(1):高架化が完成した京急蒲田駅
右(2):京急蒲田駅横浜方には普通列車専用の切欠きホームが作られた。2枚とも2012年10月27日撮影


 上記の工夫により、着工から約10年後の2010年5月には上り線の高架化が完成し、さらにその2年後の2012(平成24)年10月には下り線も高架化が完成し、踏切の解消と京急蒲田駅の改良が完了しました。完成後の京急蒲田駅は上下線のホームが2層構造となり、空港線の線路が複線化され、横浜方面への直通運転も可能となりました。また、本線側には普通列車が待避可能な切り欠きホームが追加され、従来よりも余裕のあるダイヤ構成が可能となりました。完成と同時に行われたダイヤ改正では、品川方面・横浜方面双方から羽田空港に直通する優等列車が大幅に増発されています。

■駅舎が完成・駅前広場の整備が進む

●平和島~大森町(新旧接続部)
下り列車平和島→大森町間の前面展望。上下線とも正規の位置に線路が移設された。
下り列車平和島→大森町間の前面展望。上下線とも正規の位置に線路が移設された。

 平和島~大森町間の新旧接続部は、上り線の外側に仮設の高架橋を設置して高架橋どうしを接続していました。この仮設高架橋は設置スペースが限られていたため、S字の急カーブを2つ使って強引に双方の区間を接続しており、90km/hの速度制限がありました。下り線高架化後は、地上へ降りていた線路跡地を塞ぐ形で双方の高架橋をつなぐ高架橋の建設が行われ、2014年9~10月にかけて下り線、上り線の順に正規の位置(高架化工事着工前の位置)に線路を戻す工事が行われました。これにより、着工前と同様この区間は最高速度(120km/h)での走行が可能となっています。(ただし、平和島駅構内には従来通り115km/hの速度制限がある。)
 昨年7月訪問時は、上り線の隣にあった仮設高架橋の解体もほぼ終わっており、高架橋高欄を取り付ける最終段階の作業が進められていました。現在はこの作業も完了し、工事は完成しています。

●大森町駅
※この先画像が7枚(350KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。

大森町駅の駅舎。2014年訪問時には完成しており、変化はない。
大森町駅の駅舎。2014年訪問時には完成しており、変化はない。

 大森町駅の駅舎は2013年末に完成しており、大きな変化はありません。
 大森町~梅屋敷間では、線路西側に東京都・大田区が整備している付属街路(側道)が順次開通しています。冒頭に述べたとおり、この事業は側道用地の取得完了を待たずに高架橋建設を進めたため、昨年7月訪問時点では梅屋敷駅の手前のように解体されていない建物により側道が途切れている個所もありました。

大森町~梅屋敷間では西側に側道が完成した。 2015年7月時点では、側道用地にある建物の解体が一部終わっておらず道路が途切れているところがあった。
左(1):大森町~梅屋敷間では西側に側道が完成した。
右(2):2015年7月時点では、側道用地にある建物の解体が一部終わっておらず道路が途切れているところがあった。


●梅屋敷駅
梅屋敷駅の駅舎。(外観全体は側道未完成のためまだ見られなかった。) 2014年11月に完成した梅屋敷駅の新改札口
左(1):梅屋敷駅の駅舎。(外観全体は側道未完成のためまだ見られなかった。)
右(2):2014年11月に完成した梅屋敷駅の新改札口

 梅屋敷駅は、前回訪問直後の2014年6月29日(日)に旧線路敷へ新設された新しい改札口と中2階通路へ通じる階段・エスカレータの使用を開始しました。続いて、11月15日(土)には駅事務室が旧上りホーム側へ移設され、全ての施設が完成しました。

拡張された梅屋敷駅中2階通路
拡張された梅屋敷駅中2階通路

 中2階の通路は2013年5月の上下線改札口統合の際使用を開始していますが、新改札口とエスカレータ・階段の使用開始に伴い通路の幅がさらに拡大されました。通路内の内装の基本的なデザインはすでに完成している他の駅とほぼ同様になっています。

更地化された梅屋敷駅前の工事基地
更地化された梅屋敷駅前の工事基地

 梅屋敷駅東側の工事基地は借地により整備されていたため、高架化完了に伴い更地に戻す工事が行われました。梅屋敷駅前は駅前広場の整備予定はないため、今後この跡地がどのように使用されるのかは不明です。

次の「その2」の記事では、高架下の商業施設や駅前広場が完成した京急蒲田駅、改札口の移設が完了した雑色駅・糀谷駅の様子などお届けします。

「その2:京急蒲田・糀谷・雑色」の記事へ→

▼参考
大田区ホームページ:京浜急行線の連続立体交差事業と関連する街路事業

▼関連記事
京急蒲田駅付近連続立体交差化事業(2006年11月3日作成)
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京急蒲田駅高架化完成(その4:切替地点の模様・走行経路図解)(2012年11月8日作成)
京急蒲田駅連続立体交差化工事(2014年1・6月取材)(2014年6月29日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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