小田急線地下化・複々線化工事(2016年1月8日取材)

複々線区間をゆく小田急3000形。まもなくここをJR東日本E233系2000番台が走るようになる。

小田急線代々木上原~梅ヶ丘間では、2017年度の完成を目指して複々線化工事が行われています。今年1月にこの工事の状況について再調査をしてまいりました。今回は、地上の本設駅舎が一部完成した世田谷代田駅を中心とした現在の状況に加え、明日3月26日のダイヤ改正についてこの区間の信号設備の面から考察することにします。

▼関連記事
小田急線地下化・複々線化工事2014・2015(1:東北沢駅・下北沢駅)(2015年7月24日作成)
小田急線地下化・複々線化工事2014・2015(2:世田谷代田駅・10両化工事)(2015年7月31日作成)

■小田急線代々木上原~梅ヶ丘間地下化・複々線化の概要
千歳船橋駅付近の複々線区間。 地下化された成城学園前駅。
左(1):千歳船橋駅付近の複々線区間。2008年3月16日撮影
右(2):地下化された成城学園前駅。2008年10月19日撮影


 小田急線の連続立体交差化事業は小田急線代々木上原~向ヶ丘遊園間(約11km)を高架化・地下化し、区間内にある39の踏切を解消するものです。この事業により「開かずの踏切」解消による交通渋滞や地域分断が解消され、沿線の街の発展に寄与することとなります。また、高架化工事と並行して輸送力強化のため線路の複々線化も並行して行われています。この複々線化は、1962(昭和37)年に当時の運輸省内に設置されていた都市交通審議会の第6号答申で示された都市高速鉄道第9号線(現在の東京メトロ千代田線)の建設計画が原型となっているものです。
 事業区間のうち梅ヶ丘~登戸間は騒音公害の悪化を懸念した住民により起こされた訴訟などの影響により、当初計画より大幅に工事が遅延しましたが、2004(平成16)年までに高架化・複々線化ともに完成済みとなっています。また、登戸~向ヶ丘遊園間は複々線化に必要な川崎市の土地区画整理事業が遅れているため、取得済みの用地を利用する形で上り線のみ複線化することになり、2009(平成21)年に完成しています。

小田急線代々木上原~梅ヶ丘間の地下化前後の断面図
小田急線代々木上原~梅ヶ丘間の地下化前後の断面図

 残る代々木上原~梅ヶ丘間についてはこれまでの訴訟などの経験に鑑み、高架化ではなく地下化による立体化が選択され、2004(平成16)年に着工しました。用地買収を最小限にするため、同時に行われる複々線化にあたっては急行線と緩行線の線路を上下に重ね、さらに下層の急行線は地上を切り開かなくて済むシールド工法主体で建設することにより沿線への影響を最小限に抑えることとしました。地下化はシールドマシンの搬入や下北沢駅で交差する京王井の頭線の橋梁の改築の関係上、下層の急行線を先に開通させることになり、2013(平成25)年3月23日に地下線への切替が実施されました。これにより区間内の9箇所の踏切が解消され、代々木上原~和泉多摩川間の踏切39箇所の全廃が実現しました。現在は2018(平成30)年の完成を目標に緩行線のトンネル建設が行われています。完成後は混雑率が着工前の208%(現在は180%)から160%台へ大幅に緩和される見込みです。
 さらに、複々線化完成に合わせて、千代田線の直通運転区間拡大(小田急車・JR車の相互直通)も予定されています。(後述)これにより、都心方向への利便性が飛躍的に高まることが期待されています。
 総事業費は3000億円を超える見込みとなっており、国の連続立体交差事業の財政補助に加え、特定都市鉄道整備事業など各種補助制度を組み合わせながらその調達が行われています。

■地上駅舎・緩行線施設の構築が進む(2016年1月8日取材)

今回は、昨年8月に地上の駅舎が一部使用開始となった世田谷代田駅を中心に工事区間の全個所について調査を行いました。調査日は全て今年1月8日(金)です。

●代々木上原駅~東北沢駅
緩行線の軌道敷設が進む代々木上原駅付近 東北沢駅のホーム端から見た坑口。緩行線の軌道が地上までつながった。
左(1):緩行線の軌道敷設が進む代々木上原駅付近
右(2):東北沢駅のホーム端から見た坑口。緩行線の軌道が地上までつながった。


 代々木上原~東北沢間では、地上時代使用していた線路の跡地に緩行線の線路を敷設する工事が進められています。1月調査時点では、代々木上原駅の小田原寄りにあるシーサスクロッシングの少し先から東北沢駅端の敷設済みの軌道までの敷設が終わっており、営業線とは完全にはつながっていない状況でした。今後は残りの部分の敷設や信号設備の設置が行われることになります。

●東北沢駅
東北沢駅の地下化前後の断面図
東北沢駅の地下化前後の断面図

 地下化前の東北沢駅は、対向式ホーム2面2線の間に通過線が2線挟まるレイアウトでした。地下化工事中は通過線を撤去してそこに仮設の島式ホームを建設し、順次直下にトンネルを建設しました。地下化後の東北沢駅は地上時代とは異なり急行線が外側、緩行線が内側で、緩行線の上下線間に島式ホーム1面が挟まるレイアウトとなります。現時点では外側の急行線のみを使用しているため、緩行線の線路上に仮設の床板を敷き、大きな島式ホームとして運用しています。急行線は下北沢駅のホームが地下3階になるため、駅間の勾配が35パーミルを超えないよう東北沢駅の途中から下り始める縦断線形になっています。このため、仮設ホームは3両分ほど新宿寄りに飛び出して設置されています。

地上時代の仮設改札口跡。仮設の施設は全て解体された。 鮫洲大山線の踏切跡から廃線跡を見る。一部残っていた橋上駅舎も全て解体された。
左(1):地上時代の仮設改札口跡。仮設の施設は全て解体された。(同じ場所の2013年3月31日の様子
右(2):鮫洲大山線の踏切跡から廃線跡を見る。一部残っていた橋上駅舎も全て解体された。(同じ場所の2013年3月31日の様子


 東北沢駅地上では、地下化後もしばらくの間地上時代の仮設橋上駅舎の一部が工事事務所として使用されており残っていましたが、2015年に入ってから撤去が進められ今回はほぼ更地化されていました。昨年5月には本設駅舎の一部が使用開始となっており、仮設駅舎の撤去跡で未完成部分の建設が引き続き行われています。昨年11月28日には、本設駅舎内のトイレ(改札内)が使用開始となっています。

東北沢駅地下のホーム。緩行線線路天井にあった仮設空調ダクトは全て撤去された。 ホーム小田原寄りでは、仮設空調機械室を撤去してホームの内装工事が進められている。
左(1):東北沢駅地下のホーム。緩行線線路天井にあった仮設空調ダクトは全て撤去された。
右(2):ホーム小田原寄りでは、仮設空調機械室を撤去してホームの内装工事が進められている。


 東北沢駅は、地下化当初使用していないホーム小田原寄りの一部に仮設の空調機械室を置き、緩行線の線路天井に設置した仮設ダクトを使って換気を行っていました。昨年夏に地上の線路跡に本設の空調機械室が完成したことから、ホーム小田原寄りの仮設空調機械室と緩行線天井の仮設ダクトが順次撤去されました。ホーム小田原寄りは引き続き仮設のパネルで区切られていますが、内部では内装の仕上げが行われるなど緩行線ホームとして使用するための準備が進められています。

●下北沢駅

※この先画像が23枚(1.10MB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。
下北沢駅の地下化前後の断面図
下北沢駅の地下化前後の断面図

 地下化前の下北沢駅は下り線用の島式ホームと上り線用の片面ホームがある2面2線の配置となっていました。ホーム中央の上部には京王井の頭線が通っており、井の頭線と小田急線の各ホームの間は中間改札が無く、階段を上り下りするだけで行き来できました。地下化後の下北沢駅は、緩行線が地下2階、急行線が地下3階にそれぞれ島式ホームを持つ形態となります。先に使用を開始する急行線は、京王井の頭線の橋梁があるため建設の際地上を大きく切り開くことができず、線路部分をシールド工法で建設し、トンネル内からその間を切り広げてホームを作る工法が採用されました。緩行線の建設の際は、京王井の頭線の橋梁をスパンの長い桁に架け替え、その下に開削工法でトンネルを建設します。現在は、地下3階の急行線ホームと地下2階の緩行線ホームの一部が完成しており、緩行線ホームの完成部分はコンコースとして使用されています。

旧東北沢6号踏切付近から下北沢駅方向を見る。工事は地下へ移行しており地上は片づけられている。 盛土からコンクリート製の高架橋に改築された井の頭線渋谷方。
左(1):旧東北沢6号踏切付近から下北沢駅方向を見る。工事は地下へ移行しており地上は片づけられている。
右(2):盛土からコンクリート製の高架橋に改築された井の頭線渋谷方。


 東北沢~下北沢間のトンネルは2013年の地下化時に緩行線部分も含め完成しており、現在は埋め戻されて工事車両の通路になっています。下北沢駅構内は地上の旧駅施設の撤去が完了した2014年より京王井の頭線の橋梁架け替えと緩行線トンネルの掘削が行われました。京王井の頭線は小田急線の交差部分だけでなく、下北沢~池ノ上間の中央で交差する茶沢通りまでの盛土高架もコンクリート製の高架橋に改築し、線路と並行して道路を通すスペースを確保することになっており、こちらについては高架橋本体の工事がほぼ完了しました。

井の頭線に並行する歩道橋から見た地上の小田急線廃線跡。橋脚の下の白い部分は小田急線トンネルの天井。
井の頭線に並行する歩道橋から見た地上の小田急線廃線跡。橋脚の下の白い部分は小田急線トンネルの天井。

 一方、小田急線交差部分については現在両端の新しい橋台を構築している途中であり、桁はH鋼で組んだ仮設の橋脚により支えられています。橋脚の足元は白いコンクリートに固められましたが、これは小田急線トンネル地下1階の天井に相当する部分(上床版)です。今後この下でトンネルの側壁や中柱を構築し、緩行線のホームが建設されます。その後井の頭線の橋梁が本設の桁に架け替えが行われる予定です。

小田急線下北沢駅地下2階のコンコース。間仕切りがより簡易的なものに変わるなど緩行線ホームに転用するための準備が少しずつ始まっている。 小田急線下北沢駅地下2階のコンコース。緩行線ホームに転用するための準備が少しずつ始まっている。
小田急線下北沢駅地下2階のコンコース。間仕切りがより簡易的なものに変わるなど緩行線ホームに転用するための準備が少しずつ始まっている。

 地下2階のコンコースは緩行線ホームになるため、元々ほとんど内装が取り付けられておらず、コンコース両端の工事中部分との間仕切りも将来の取り外しを考慮した簡易的なものとなっていました。緩行線ホームへの転用が近付いているため、これらの間仕切りが布やガムテープ等を組み合わせたより簡素な作りの物へ順次交換されており、階段付近では通路の形状が一部変化しています。下北沢駅は、例外的に緩行線の軌道予定部分の床もコンクリート製になっていますが、このままでは軌道敷設ができないため順次より簡素な作りの物へ交換されるものとみられます。

●世田谷代田駅
地下化前後の世田谷代田駅の断面図
地下化前後の世田谷代田駅の断面図

 地下化前の世田谷代田駅は、対向式ホーム2面2線で、改札口はホームの小田原寄りの端にありました。地下化後の世田谷代田駅は、地下2階が緩行線用の島式ホーム、地下3階が急行線(通過)となります。世田谷代田駅の先はすぐに地上に出るため急行線は上り勾配となっており、小田原寄りの駅端では急行線のトンネルが緩行線のホーム下に食い込んでいます。一方、新宿寄りは下北沢駅まで続くシールドトンネルの発進・到達立坑になっていたため、幅・高さとも大きくなっています。 現在は地下3階の急行線のみが完成しているため、両側の空間に仮設のホームを設置しています。この仮設ホームは緩行線完成後は廃止されます。

昨年8月より使用を開始した世田谷代田駅本設駅舎 旧世田谷代田1号踏切(環状7号線側)に面した西口
左(1):昨年8月より使用を開始した世田谷代田駅本設駅舎
右(2):旧世田谷代田1号踏切(環状7号線側)に面した西口


 世田谷代田駅も東北沢駅と同様地上時代の仮設駅舎の撤去が続く一方、本設駅舎の工事が進められ、昨年8月29日(土)にその一部が使用開始となりました。これにより、従来地下2階の緩行線ホームにあった仮設改札口は廃止となり、地上に改札口が設けられました。

新宿寄りの歩道橋から地上駅跡を見る。トンネルの埋め戻しはほぼ完了している。 同じ歩道橋から新宿方面を見る。シールドマシンの立坑の上には換気設備の建屋が完成した。奥では緩行線のトンネル建設が続く。
左(1):新宿寄りの歩道橋から地上駅跡を見る。トンネルの埋め戻しはほぼ完了している。
右(2):同じ歩道橋から新宿方面を見る。シールドマシンの立坑の上には換気設備の建屋が完成した。奥では緩行線のトンネル建設が続く。


 旧地上駅跡はトンネルの埋め戻しがほぼ完了しています。一方、新宿方面は緩行線のトンネルの建設が続いており、旧地上駅跡はその工事で使用する重機や資材の通路や仮置きスペースとして機能しています。なお、世田谷代田駅の新宿寄りにあるシールドトンネルの発進・到達立坑はトンネル完成後は換気口・非常口になっています。この開口部は地下化当初はプレハブの建屋となっていましたが、その後グレーのパネルで覆われた本設の建屋が完成しています。

本設駅舎の改札口を入ったところ。手前は2014年に使用開始済みの本設エスカレータ。
エスカレータの奥に完成した本設の階段。段数は仮設階段と同じ106段。 階段を地下2階側から見たところ。
上(1):本設駅舎の改札口を入ったところ。手前は2014年に使用開始済みの本設エスカレータ。
左下(2):エスカレータの奥に完成した本設の階段。段数は仮設階段と同じ106段。
右下(3):階段を地下2階側から見たところ。


 本設駅舎の使用開始に伴い、地下化当初から使用されていた地上と地下2階を結ぶ仮設階段は廃止となり、エスカレータの奥に本設の階段が新設されました。階段の段数は仮設のものと同じ106段となっており、その長さゆえにほとんど使う人はいないようです。地上側は階段の移動に合わせて通路の形状も大きく変更されており、改札口を入ると正面左にエスカレータがあり、その右側の通路を進むと階段、エレベータの順に行けるレイアウトになっています。東北沢駅と異なり、この先新宿寄りに改札口を増設する計画はありません

地下2階のコンコース。駅事務室などは撤去されており、天井は新しい空調ダクトの取り付けが始まっている。
地下2階のコンコース。駅事務室などは撤去されており、天井は新しい空調ダクトの取り付けが始まっている。

 地下2階は仮設改札口の諸設備が撤去されており、仮設備としてはトイレが残るのみとなっています。東北沢駅・下北沢駅と同様ここでも緩行線ホームへの転用に向けた準備が本格化しており、コンコース両端の間仕切りが簡易的な構造のものに取り換えられたり、天井には緩行線のホーム先端に合わせて新しい空調ダクトが敷設されるなどの変化が見られます。

●梅ヶ丘駅付近
世田谷代田駅西口前に完成した代田富士見橋。
世田谷代田駅西口前に完成した代田富士見橋。

 世田谷代田駅西口の先には環状7号線が通っており、アンダーパスの形で既に立体交差化がなされていました。小田急線は環状7号線のさらに下を通る形で地下化されたため、今後も環状7号線が堀割の形で残ることになります。このままでは世田谷代田駅西側と駅の間の通行が不便になるため、環状7号線を跨ぐ生活道路として「代田富士見橋」が建設され、昨年4月28日に開通しました。代田富士見橋の先では、地上の廃線跡に公園や沿線住民のための集会所などが順次建設されています。同様の施設は今後他の廃線跡でも建設される予定です。

上り列車梅ヶ丘→世田谷代田の前面展望。坑口付近は昨年時点で緩行線の軌道敷設が進んでおり大きな変化はない。 上り列車梅ヶ丘→世田谷代田の前面展望。坑口付近は昨年時点で緩行線の軌道敷設が進んでおり大きな変化はない。
上り列車梅ヶ丘→世田谷代田の前面展望。坑口付近は昨年時点で緩行線の軌道敷設が進んでおり大きな変化はない。

 環状7号線を過ぎると北沢川(暗渠)が流れる谷状の地形を利用して線路が地上へ出ます。この坑口付近は、2014年調査時点で急行線の外側で緩行線の軌道敷設がかなり進んでおり、今回大きな変化はありませんでした。敷設済みの軌道はそのまま高架橋上にある梅ヶ丘駅まで延長され、上下線の緩行線に接続されます。

▼参考
複々線化事業|鉄道事業|事業案内|会社案内|企業・IR・採用情報|小田急電鉄
シモチカ ナビ
北沢総合支所管内の街づくり - 世田谷区

■3/26より千代田線直通大幅増便&小田急車・JR車の相互直通開始
昨年秋に試運転のため小田急線に乗り入れたJR東日本E233系2000番台。
昨年秋に試運転のため小田急線に乗り入れたJR東日本E233系2000番台。

 小田急電鉄と、東京メトロ千代田線を経由して接続しているJR東日本(常磐緩行線)は、小田急線の地下化・複々線化に合わせて各事業者の車両が綾瀬駅・代々木上原駅を超えて相互直通運転ができるよう現在車両の改造を進めており、当サイトでも昨年8月と12月の2回に渡りレポートしました。来る3月26日(土)のダイヤ改正より複々線化完成を待たずして小田急線と東京メトロ千代田線の直通列車の毎時1本増発ならびに、小田急・JR両社の車両の相互直通運転が開始されることが決定しました。複線のままで千代田線との直通を増発できた大きな理由には、東北沢駅の駅種別の変更とD-ATS-P化があります。

東北沢駅の地下化前後の信号現示比較。地下化後は全て閉塞信号機になったため、先行列車から1閉塞以上開ける必要が無くなった。
東北沢駅の地下化前後の信号現示比較。地下化後は全て閉塞信号機になったため、先行列車から1閉塞以上開ける必要が無くなった。
東北沢駅の地下化前後の信号現示比較。地下化後は全て閉塞信号機になったため、先行列車から1閉塞以上開ける必要が無くなった。

 地上時代の東北沢駅は、上下線間に通過線がある2面4線の配線だったことは前記した通りです。この通過線の分岐があるため、東北沢駅は「停車場」という駅種別になっており、通過列車に対しては出発信号機が警戒現示以上になったら場内信号機を開通させ、駅構内への進入を許可する信号システムになっていました。このため、列車間隔が特に詰まっている朝ラッシュ時などでは1閉塞以上列車間隔が空いてしまう場合があり、運行本数増加の妨げとなっていました。地下化後の東北沢駅は、急行線・緩行線ともに分岐の無い「停留場」に変更されたため、駅構内にある信号機は全て閉塞信号機となり、原則として信号機ごとに1段階ずつ現示がアップしていくシステムになりました。これにより、必要最小限の間隔で後続列車を駅構内へ進入させることが可能になりました。

D-ATS-P化後の停止位置変更による効果。停止信号に詰めて停車することにより、最後尾が閉塞境界を跨がなくなり、後続列車が1閉塞手前へ進めるようになる。
D-ATS-P化後の停止位置変更による効果。停止信号に詰めて停車することにより、最後尾が閉塞境界を跨がなくなり、後続列車が1閉塞手前へ進めるようになる。
D-ATS-P化後の停止位置変更による効果。停止信号に詰めて停車することにより、最後尾が閉塞境界を跨がなくなり、後続列車が1閉塞手前へ進めるようになる。※図は縮尺を無視して信号機と列車の距離を誇張して描いている。

 さらに、昨年9月には新宿~新百合ヶ丘間で保安装置がOM-ATSから新型のD-ATS-Pに更新されました。D-ATS-Pでは、信号機の現示情報を地上子ではなく、レール(軌道回路)を経由してリアルタイムで車両に伝達するため、停止信号での停止位置はOM-ATSのような地上子の直前ではなく自由な位置に設定することができます。(D-ATS-Pの詳しい機能については「関連記事」も参照)このため、D-ATS-P化後は停止信号の停止位置を信号機手前50mから30mへ詰め、編成最後尾が閉塞境界を跨がないようにし、後続列車を従来より1閉塞先へ進めるようにしました。
 上記のの工夫に加え、地下化工事による徐行(60km/h)が無くなったことから、地下化後の1列車あたりの平均遅延秒数は実に十数秒も短縮され、複線のままで増発できる余裕が生まれました。今回のダイヤ改正では、新宿~梅ヶ丘間で通過運転を行っていた「区間準急」も廃止されます。区間準急も地下化工事に伴い東北沢駅で優等列車の追い抜きができなくなるため、線路の占有時間をできるだけ減らすべくやむを得ず設定されていた種別ですが、上記の信号システム改良によりその必要性が薄れたため廃止されたと見ることができるでしょう。

 現在建設中の緩行線の開通は2017年度中が予定されています。複々線化後は今回改正のダイヤが維持されるのか、再度白紙レベルでダイヤを刷新するのか注目されます。

▼参考
2016年3月26日(土)小田急線ダイヤ改正を実施します~ロマンスカー停車駅の新設および東京メトロ千代田線直通列車の増発~ - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF/367KB)
WebTIDデータの可視化による小田急線地下化前・後の運行状況の比較とその検証 - 第20回鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL.2013)(PDF/949KB)

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【ショートレポート】小田急・JR乗り入れに向けた試運転が本格化(2015年12月3日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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コメント

鉄道立体化
埼京線十条駅付近立体化に関連して鉄道の地下化に関する情報をいろいろ探しています。地下化の工事費用など調べる方法、当たるべき資料をご存じでしたら教えてください。
2016/03/26 16:18 | URL | 投稿者:jjw [編集]
Re: 鉄道立体化
jjw 様

埼京線十条駅の連続立体交差化につきましては、弊サイトでも調査を開始しているところ(すでに着工前の記録として1月に現地も訪問済み)なのですが、なにぶんまだ都市計画決定がされていないこともありまして公になっている資料は少なく、北区ホームページで公開されているパンフレット( https://www.city.kita.tokyo.jp/jujomachi/jutaku/toshikekaku/rennritsu/rennritsu_jujo.html )程度ではないかと思われます。北区の区役所等に伺えばもう少し詳しい情報が出てくるかもしれませんが、前述の通り確定した計画ではないため、工事業者等も未定であり、工費等も恐らくまだ決まっていないものと思われます。
2016/03/29 22:17 | URL | 投稿者:takuya870625(管理人)
鉄道立体化
ありがとうございました。
都と区で押し付けあうようにして役所は詳しい情報が出てきません。
2016/04/01 18:33 | URL | 投稿者:jjw [編集]
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