JR御茶ノ水駅改良工事(2016年1月14日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2016年07月15日23:14
聖橋から見たJR御茶ノ水駅

JR中央線御茶ノ水駅では、バリアフリー化のための改良工事が進められています。今年1月にこの工事について再調査を実施しました。少々時間が経ってしまいましたが、今回はその調査を中心に昨年から断片的に調査してきた内容をプラスして工事の進捗状況をお伝えします。

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JR御茶ノ水駅改良工事(2014年3月16日取材)(2014年7月12日作成)

■JR御茶ノ水駅の概要と改良工事の経緯


 JR御茶ノ水駅は文京区と千代田区の区界を流れる神田川の渓谷の中に位置し、中央線(快速・緩行)と総武線(緩行)が分岐する拠点駅となっています。中央線では当駅のみ方向別ホームとなっており、快速と各駅停車が同一ホームで乗り換え可能です。新宿方は快速線と緩行線の相互に乗り入れや引上線としての使用がが可能な配線になっており、中央線と総武線を直通する特急「あずさ」「新宿わかしお」や早朝・深夜の千葉方面への各駅停車の折り返しに使用されています。また、周辺には東京メトロ丸ノ内線・千代田線の駅があり、徒歩数分で乗り換え可能です。
 御茶ノ水駅が開業したのは、今から110年前の1904(明治37)年に中央線の前身である甲武鉄道の飯田町~御茶ノ水間が開業した時のことです。開業当初は現在よりも水道橋駅寄りに駅がありましたが、この駅舎は1923(大正12)年の関東大震災で倒壊し、その後の駅周辺を含めた復興事業の一環で1932(昭和7)年に現在の場所に移転しました。移転に際しては、高頻度で列車が運行されることを前提にホームやコンコースなどの施設が最小限のサイズで建設されており、実際にその条件に近い形で列車が運行されています。これにより、移転から80年が経過した現在も御茶ノ水駅は混雑はしつつも大規模な改良をせずに機能を維持してきましたが、この間に駅周辺には大規模な医療施設が建設され、バリアフリーへの非対応が問題視されるようになりました。JR御茶ノ水駅はその立地と極端に効率化された構造ゆえに設備の追加が容易ではなく、1980年代末にもJR東日本主催のデザインコンペにより改良案が示されたものの、技術的に困難であるという理由から撤回されてしまいました。

2013年4月にJR御茶ノ水駅聖橋口前に完成した「御茶ノ水ソラシティ」。
2013年4月にJR御茶ノ水駅聖橋口前に完成した「御茶ノ水ソラシティ」。

 しかし、それから二十数年の時がたち、小型の建設機械や地盤強化技術が著しく向上した結果、狭隘かつ高頻度で列車が運行される大都市の鉄道駅でもバリアフリー化に必要な建物の増築が可能となりました。折しも、JR御茶ノ水駅南側では2006年に丸の内に移転した日立製作所本社跡地を再開発した御茶ノ水ソラシティが完成し、駅の利用者数が増加することが見込まれました。この混雑への対応も必要であることから、JR東日本は2010年度より大規模改良工事に着手しました。
 JR御茶ノ水駅の改良工事は、1990年代の計画とほぼ同等の内容になっており、線路の上空に2~3階建ての橋上駅舎を建設します。同時に聖橋口の位置を変更し、改札口の前に駅前広場を設置します。工事は2段階に分けて実施される計画となっており、以下のような手順となっています。

●Step1:西側半分の橋上駅舎を建設し、聖橋口を仮設改札口に移転する
御茶ノ水駅改良工事第1段階では橋上駅舎の西半分を建設する。
御茶ノ水駅改良工事第1段階では橋上駅舎の西半分を建設する。

第1段階は御茶ノ水橋口に接続する橋上駅舎を建設し、エレベータ・エスカレータを設置します。橋上駅舎の東端には線路南側の茗渓通り沿いで買収した土地を利用し、現行の聖橋口の代替となる仮設の改札口を設置します。聖橋口の改札口と橋上駅舎は閉鎖し解体します。

●Step2:東側半分の橋上駅舎を建設し、駅前広場を新設する
御茶ノ水駅改良工事第2段階では橋上駅舎を東側に拡張し、駅前広場を新設する。
御茶ノ水駅改良工事第2段階では橋上駅舎を東側に拡張し、駅前広場を新設する。
御茶ノ水駅改良工事第2段階では橋上駅舎を東側に拡張し、駅前広場を新設する。
※クリックで拡大(PNG形式/1200×400px)

第2段階は橋上駅舎を旧聖橋口の跡地まで拡張します。仮設となっていた聖橋口側の改札口を聖橋に面した位置に再度移転し、合わせて改札口の前に駅前広場を新設します。また、橋上駅舎の拡張部分にはホームに通じる階段を1箇所ずつ設置します。

 この他、橋上駅舎の建設にあたっては足元となる地盤の安定化が不可欠であるため、同時に神田川に面した護岸や南側の崖に杭を打ち込んで固定する補強工事も行われます。工事はいずれも神田川の上に仮設の桟橋や移動式の台を設置し、対岸から橋を架けてそこから資材の搬入や橋上駅舎本体の建設を行う計画となっています。なお、御茶ノ水駅周辺は文京区の風致地区に指定されていることから、新駅舎や補強後の擁壁は景観に十分に配慮したデザインが採用されることになっています。第1段階の橋上駅舎西半分の建設と暫定的なバリアフリー化は2018(平成30)年度、全ての工事完成は東京オリンピックが開催される2020(平成32)年度の予定です。

■ホームの仮設化が進む
今回は、今年1月14日(木)に調査した内容をメインに、一部2014年、2015年に調査した内容を加えてお送りします。写真jの撮影日は特に記載のない限り今年1月14日です。

桁式ホームへの改築のため、ホーム床下に穴が掘られた状態。 ホーム床を支える梁が完成した状態。
左(1):桁式ホームへの改築のため、ホーム床下に穴が掘られた状態。2014年10月12日撮影
右(2):ホーム床を支える梁が完成した状態。


 御茶ノ水駅のホームは2013年の本格着工後橋上駅舎の基礎をホーム下に埋め込むため、ホームを盛土構造から桁式に改築する工事が行われました。工事は盛土構造のホームを等間隔で帯状に取り壊し、取り壊した部分に穴を掘って新しいホーム床面を支える鋼製桁を埋め込みます。現在はほぼ改築対象区間の全長に渡り桁の埋め込みが完了しており、ホーム床は木板の上にゴムマットを敷いた仮設構造になっています。今後はこの下で橋上駅舎の基礎を作る必要があるため、しばらく仮設状態が続くものと思われます。

御茶ノ水駅ホームの全景。手前半分は線路上空に渡されていた梁が古レールから型鋼に変わっている。 順次撤去されている古レール製のホーム屋根。
左(1):御茶ノ水駅ホームの全景。手前半分は線路上空に渡されていた梁が古レールから型鋼に変わっている。
右(2):順次撤去されている古レール製のホーム屋根。


 改築はホーム床面だけでなく屋根などに対しても行われています。御茶ノ水駅の屋根は骨組みが古レールを曲げたもので構成されていましたが、着工後はこれが順次撤去され一般的なI型・H型の鋼材を使用した平面的な屋根に作り替えられています。

御茶ノ水橋口の階段は下半分が古レールから型鋼を組んだものに取り換えられた。
御茶ノ水橋口の階段は下半分が古レールから型鋼を組んだものに取り換えられた。

 ホーム新宿寄りの端にある御茶ノ水橋口へ通じる階段は、階段を支える柱はホーム屋根と同様古レールを曲げたものとなっていました。これは現行の耐震基準に合致しておらず地震の際倒壊の危険性もあったことから、下半分が撤去されてH鋼をトラス状に組んだ強固な構造に改築されました。
 なお、中央快速線は2020年度を目標にE233系にグリーン車2両を組み込み、12両編成への増車が実施される予定となっています。このため、御茶ノ水駅でもホームの延伸が必要になりますが、現時点では東京方面、新宿方面どちらにどの程度ホームを伸ばすのかは不明です。ホーム延伸計画次第では階段の改築・移設等が行われる可能性もあります。

御茶ノ水橋から新宿寄りの擁壁補強。着工後に移動式の台を追加導入している。 御茶ノ水橋から東京寄りの擁壁補強。アンカーの打ち込みが終わり、鉄筋を格子状に組んでいるところ。
左(1):御茶ノ水橋から新宿寄りの擁壁補強。着工後に移動式の台を追加導入している。
右(2):御茶ノ水橋から東京寄りの擁壁補強。アンカーの打ち込みが終わり、鉄筋を格子状に組んでいるところ。


 今回の改良工事では神田川の斜面ギリギリの場所に橋上駅舎を建設することから、地震の際地盤が崩壊しないよう川に面した擁壁にアースアンカー(杭)を打って補強する工事も行われています。工事は新宿寄りから始まり、当初は川幅に余裕があったことから川の上にに若干張り出す形で固定式の台を設置してアンカーの打ち込みを行っていました。一方、御茶ノ水橋付近は川幅に余裕が無く、擁壁も垂直になっていることから、壁面に鉄製のレールを設置して台を可動式にする改良が実施されています。擁壁が石組みになっている部分は、アンカーの打ち込み後上から格子状の鉄筋コンクリートを設置し、擁壁全体を強固に固定します。
 このアースアンカーによる斜面の耐震補強はその後首都圏各線に拡大しており、山手線高田馬場~目白間や総武線の亀戸~新小岩間などでも工事が行われているのを確認できます。

今後解体される聖橋口駅舎。 聖橋口からホームへ降りる階段は木造となっている。
左(1):今後解体される聖橋口駅舎。
右(2):聖橋口からホームへ降りる階段は木造となっている。


 聖橋口側は改良工事に伴い駅前広場が整備されるため、現在の駅舎は解体される予定です。改築期間中は、現在よりも西側に小規模な仮設改札口が設置されることになっており、予定地は現在現場事務所のプレハブが建っています。聖橋口改札とホームをつなぐ通路は木造の跨線橋となっていますが、これも間もなく姿を消すことになります。

春から始まった聖橋長寿命化工事
春から始まった聖橋長寿命化工事。2016年6月11日撮影

 JR御茶ノ水駅の改良工事とは関係ありませんが、駅前の神田川に架かる聖橋は、今年春より長寿命化工事が行われています。工事は、アーチ表面を覆っている保護コンクリートを剥がして亀裂を埋め、新しい保護コンクリートで覆うというもので、夜間のライトアップに使用している照明設備も新調されます。写真は6月中旬に撮影したもので、現在はアーチ全体が防音壁で完全に覆われています。聖橋の長寿命化工事は来年2月まで行われる予定です。

▼参考
JR中央線御茶ノ水駅バリアフリー整備について - JR東日本(2010年3月26日発表)
JR中央線御茶ノ水駅バリアフリー整備等の本体工事着手について - JR東日本(2013年9月3日発表)(PDF/354KB)
中央線御茶ノ水駅付近耐震補強工事の着手について - JR東日本(2013年7月2日発表)(PDF/448KB)
土木部門 施工 御茶ノ水駅改良工事の概要 - 日本鉄道施設協会誌2013年12月号(リンク先CiNii)

▼関連記事
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JR御茶ノ水駅改良工事(2014年3月16日取材)(2014年7月12日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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