小田急線複々線・10両化工事(2016年6月取材[1]東北沢駅・世田谷代田駅)

登場から7年、ついに小田急線に足を踏み入れたE233系2000番台。JR線上から定期列車では消滅した「急行」で唐木田へ向かう。

小田急線代々木上原~梅ヶ丘間では、2017年度の完成を目指して複々線化工事が行われています。また、新宿~代々木上原間の各駅では、各駅停車を10両編成に増車するためホームの延伸工事が進められています。既にネットのニュース記事等でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、6月9日(木)に小田急電鉄株式会社様他御協力のもと、建設中の下北沢駅付近のトンネル内を取材することができました。今回は分量が多いため3回構成とし、1回目の今回は普段から調査している東北沢駅・世田谷代田駅の一般立ち入り可能な部分に関する内容を中心にお届けします。(下北沢駅付近の報道公開の模様は3回目の記事でお届けする予定です。)

▼関連記事
小田急線地下化・複々線化工事(2016年1月8日取材)(2016年3月25日作成)

■小田急線代々木上原~梅ヶ丘間地下化・複々線化の概要
複々線区間の途中にある喜多見駅。梅ヶ丘~登戸間は全て内側が急行線、外側が緩行線になっている。 2013年に地下化された世田谷代田駅。現在のホームは急行線上にあるため、2017年度の緩行線開通後は閉鎖される。
左(1):複々線区間の途中にある喜多見駅。梅ヶ丘~登戸間は全て内側が急行線、外側が緩行線になっている。
右(2):2013年に地下化された世田谷代田駅。現在のホームは急行線上にあるため、2017年度の緩行線開通後は閉鎖される。


 小田急線の連続立体交差化事業は、小田急小田原線代々木上原~向ヶ丘遊園間(約11km)を高架化または地下化し、区間内にある39の踏切を解消するものです。この事業により「開かずの踏切」解消による交通渋滞や地域分断が解消され、沿線の街の発展に寄与することとなります。また、高架化工事と並行して、小田急電鉄の負担により輸送力強化のため複々線化も行われています。この複々線化は、1962(昭和37)年に当時の運輸省内に設置されていた都市交通審議会の第6号答申で示された、「東京9号線(現在の東京メトロ千代田線)」の建設計画が原型となっているものです。
 事業区間のうち梅ヶ丘駅から登戸駅手前までは、騒音公害の悪化を懸念した住民により起こされた訴訟などの影響により、当初計画より大幅に工事が遅延しましたが、2004(平成16)年までに高架化・複々線化ともに完成済みとなっています。また、登戸駅構内から向ヶ丘遊園駅までの区間は、複々線化に必要な川崎市の土地区画整理事業が遅れているため、取得済みの用地を利用する形で2009(平成21)年に上り線のみ複線化されています。

小田急線代々木上原~梅ヶ丘間の地下化前後の断面図
小田急線代々木上原~梅ヶ丘間の地下化前後の断面図

 残る代々木上原~梅ヶ丘間についてはこれまでの訴訟などの経験に鑑み、高架化ではなく地下化による立体化が選択され、2004(平成16)年に着工しました。用地買収を最小限にするため、同時に行われる複々線化にあたっては急行線と緩行線の線路を上下に重ね、さらに下層の急行線は地上を切り開かなくて済むシールド工法主体で建設することにより沿線への影響を最小限に抑えることとしました。地下化はシールドマシンの搬入や下北沢駅で交差する京王井の頭線の橋梁の改築の関係上、下層の急行線を先に開通させることになり、2013(平成25)年3月23日に地下線への切替が実施されました。これにより区間内の9箇所の踏切が解消され、代々木上原~和泉多摩川間の踏切39箇所の全廃が実現しました。現在は2017(平成29)年度中の使用開始を目標に緩行線のトンネル建設が行われています。完成後は混雑率が着工前の208%(現在は180%)から160%台へ大幅に緩和される見込みです。
 今年3月26日(土)に実施されたダイヤ改正では、複々線化に先駆けて東京メトロ千代田線との直通運転が概ね1時間に1本ずつ増発されました。代々木上原~梅ヶ丘間の地下化完了とそれに伴う信号システムの改良によるものです。今回の増発に合わせて、小田急線内へのJR東日本車両(E233系2000番台)乗り入れ(冒頭写真)・小田急車両(4000形)のJR常磐緩行線への相互直通運転もそれぞれスタートしました。来年度代々木上原~梅ヶ丘間の複々線化が完了すると更なる増発が可能になるため、千代田線直通列車の再度増発が計画されています。(詳細は最後の記事で解説します。)
 総事業費は小田急電鉄負担分のみで約3100億円にも上ります。このため、国の連続立体交差事業の財政補助に加え、鉄道・運輸機構の民鉄線向け補助制度や特定都市鉄道整備事業など各種補助制度を最大限活用しながらその調達が行われています。

■緩行線の施設が続々と完成

 2013年に地下化された代々木上原~東北沢間では、引き続き緩行線の建設が急ピッチで進められています。このうち、トンネルがすべて完成した東北沢駅・世田谷代田駅では、ホームの内装工事が本格化しており一般立ち入りが可能なエリアからでもその様子が見えるようになりました。今回は6月9日(木)に調査した両駅の様子を中心にお届けします。

●代々木上原駅
代々木上原駅1番線ホームから小田原方面をみる。停車中の列車の左側にあるのが緩行線で、手前の使用中の線路と接続された。
代々木上原駅1番線ホームから小田原方面をみる。停車中の列車の左側にあるのが緩行線で、手前の使用中の線路と接続された。

 代々木上原~東北沢間では、2013年の地下化完了後地上時代使用していた線路を撤去して緩行線の線路を敷設する工事が進められてきました。今年1月の調査時は代々木上原駅側で使用中のシーサスクロッシングとの間に未敷設の部分が残っていましたが、この部分も軌道の敷設が完了し営業線との接続が完了しました。今後は信号機の設置や架線の取り付けが進められます。

●東北沢駅
東北沢駅の現在と完成後の断面図
東北沢駅の現在と完成後の断面図

 東北沢駅は地上に改札口と機械室があり、地下1階は外側2線が急行線、内側2線が緩行線となり、緩行線の上下線間に島式ホームが挟まるレイアウトになっています。現時点では外側の急行線のみが開通しているため、緩行線の線路上に仮設の床板を設置して巨大な島式ホームとして使用しています。また、急行線は窪地になっている隣の下北沢駅が地下3階に位置しているため、勾配の上限の関係から東北沢駅の途中から下り勾配となっており、仮設ホームはこの勾配を避けて新宿寄りにずれて設置されています。

東北沢駅ホーム端から新宿方面を見る。こちらも緩行線の軌道敷設は完了している。 小田原寄りのホーム未使用部分を防護ネット越しに見たところ。内装工事が進んでいる。
左(1):東北沢駅ホーム端から新宿方面を見る。こちらも緩行線の軌道敷設は完了している。
右(2):小田原寄りのホーム未使用部分を防護ネット越しに見たところ。内装工事が進んでいる。


 東北沢駅構内は2013年の地下化当初より緩行線の軌道も敷設済みとなっており、その上に拡幅用の仮設ホームが組み立てられています。代々木上原駅構内と同様こちらも新宿方面で敷設中だった軌道との接続が完了しています。
 一方、小田原寄りは地下化当初地上に置けなかった空調装置などを収めた機械室がありましたが、2015年夏に地上の機械室が完成したことからそれらが撤去され、緩行線ホームとして使用するための内装工事が急ピッチで進んでいます。後述する通り複々線完成時には各駅停車が10両編成に増結されるため、工事中のホームはそれに対応する長さとなっています。(現在新宿方に飛び出して設置されている仮設ホームよりも長い。)工事中のホームは防護パネルで覆われているためほとんど見えませんが、一部ネットになっている部分があり内部を強引に覗いたところ床と案内板以外の内装工事はほぼ完了といった状況でした。

●下北沢駅
5月21日より使用が開始された下北沢駅地上~B3F急行線ホーム直通エスカレータ。曇りガラスの部分はB2Fの緩行線ホーム階。
5月21日より使用が開始された下北沢駅地上~B3F急行線ホーム直通エスカレータ。曇りガラスの部分はB2Fの緩行線ホーム階。

 下北沢駅では、5月21日(土)に地上と地下3階急行線ホームを直結するエスカレータの使用が開始されました。エスカレータは2機設置されており、現時点ではいずれも「上り」で運用されています。このエスカレータ使用開始に伴い、地下2階へ通じていた仮設階段1箇所が閉鎖になっています。
 下北沢駅については、冒頭でおことわりした通り次々回の記事で詳報いたします。今月中には公開する予定ですのでしばらくお待ちください。

●世田谷代田駅
世田谷代田駅の現在(左)と完成後(中)の断面図。右は新宿方のシールドトンネル立坑部分。
世田谷代田駅の現在(左)と完成後(中)の断面図。右は新宿方のシールドトンネル立坑部分。

 世田谷代田駅は地上が改札口、地下1階が機械室、地下2階が緩行線ホーム、地下3階が急行線になっています。世田谷代田駅のすぐ先では、東北沢駅側とは逆に外側が緩行線、内側が急行線の組み合わせで同一の高さになって地上に出るため、世田谷代田駅構内は緩行線が島式ホームとなり急行線はホーム下に食い込むレイアウトになっています。現在は地下3階の急行線のみが開通しているため、急行線ホーム両側の空間に仮設ホームを設置しています。駅中央部のトンネルは暫定的に拡幅して地下2・3階を連絡する階段やエレベータを設置し、地下2階の緩行線ホームを地上へ向かうエスカレータなどへの乗り継ぎ階としています。

世田谷代田駅地下2階のコンコースは緩行線ホームへの転用に向けて内装工事が急速に進んでいる。
世田谷代田駅地下2階のコンコースは緩行線ホームへの転用に向けて内装工事が急速に進んでいる。(同じ場所の2015年1月8日の様子

 世田谷代田駅は、地下化当初地下2階の緩行線ホーム階に仮設の改札口がありましたが、昨年8月に地上への移転が完了しました。仮設改札口として使用している間は内装が最小限にとどめられており、トンネル躯体のコンクリートが剥き出しになっていましたが、その後は急ピッチで緩行線ホームへの転用に向けた仕上げが進められています。1月調査時は空調ダクトの一部が正規の位置に付け替えらら程度でしたが、現在は一般立ち入りが可能なエリアの大半で化粧パネルの取り付けが完了しています。

仮囲いの透明な部分から見た緩行線の軌道敷設
仮囲いの透明な部分から見た緩行線の軌道敷設

 改札口として使用している間は、緩行線の線路予定地の上にホームと同じ高さになるよう鉄板を敷いてコンコースを拡張していました。内装工事の本格が後は地下3階の仮設ホームへ通じる階段・エレベータの入口を除いてこの鉄板が撤去され、緩行線の軌道敷設が進められています。緩行線の線路部分は床から天井まで不透明な防護板で覆われていますが、階段・エレベータの近傍のみ反対側から来た利用客との衝突を防ぐため透明になっており、敷設作業中の軌道を見ることができます。軌道構造は完成済みの急行線と同じくバラストラダー軌道になっているようです。

●世田谷代田~梅ヶ丘間
世田谷代田~梅ヶ丘間の地上廃線跡に完成した賃貸アパート 坑口真上に完成した代田富士356広場。地面に線路を模したタイルが埋め込まれている。奥に梅ヶ丘駅を発車した列車のヘッドライトが見える。
左(1):世田谷代田~梅ヶ丘間の地上廃線跡に完成した賃貸アパート
右(2):坑口真上に完成した代田富士356広場。地面に線路を模したタイルが埋め込まれている。奥に梅ヶ丘駅を発車した列車のヘッドライトが見える。


 世田谷代田~梅ヶ丘間の地上廃線跡は、他の地区に比べて地上の線路設備の撤去が早く終了し跡地利用が開始されています。
 世田谷代田駅側は、今年1月に小田急不動産の賃貸アパートリージア代田テラス」が完成し入居が開始されています。浅い部分にトンネルがあるため、アパートは軽量な鉄骨2階建てになっています。
 梅ヶ丘駅側のトンネル坑口真上は、世田谷区が管理する小規模な公園になっており、「代田富士356みごろ広場」と命名されています。公園内の通路には、廃線跡であることを示すため線路模様にタイルが埋め込まれ、坑口真上はトンネルに出入りする列車が眺めやすいよう目の背の低い植物が植えられています。公園の設計に際しては周辺住民を交えたワークショップなどを開催し、完成後の管理も含めた合意形成が図られています。なお、この付近は地形上廃線跡を境に南北で段差がありますが、階段やスロープなどが設置され南北どちらからでも公園に出入りしやすいよう配慮されています。

次回は1番線(下り緩行線)の工事が開始された登戸駅の状況と各駅停車の10両化のため駅施設の全面改築が始まった代々木八幡駅の状況をお伝えします。

[2]登戸駅・代々木八幡駅の様子はこちら
[3]下北沢駅報道公開の様子はこちら

▼参考
複々線化事業|鉄道事業|事業案内|会社案内|企業・IR・採用情報|小田急電鉄
シモチカ ナビ
北沢総合支所管内の街づくり - 世田谷区

▼関連記事
小田急線複々線・連続立体交差化工事(1・完成区間)(2010年1月30日作成)
小田急線複々線・連続立体交差化工事(2・工事中区間)(2010年2月1日作成)
小田急線複々線・地下化工事(2011年・2012年取材まとめ)(2012年2月1日作成)
小田急線地下化&ホーム延長工事(2012年6月23日取材)(2012年7月3日作成)
小田急線地下化工事(2013年1月27日取材)(2013年3月8日作成)
小田急線地下化完成(その1:概要・代々木上原駅~東北沢駅)(2013年4月29日作成)
小田急線地下化完成(その2:下北沢駅)(2013年5月1日作成)
小田急線地下化完成(その3:世田谷代田駅~梅ヶ丘駅・今後の計画)(2013年5月4日作成)
小田急線地下化・複々線化工事(2013年10月12日取材)(2014年5月31日作成)
小田急線地下化・複々線化工事2014・2015(1:東北沢駅・下北沢駅)(2015年7月24日作成)
小田急線地下化・複々線化工事2014・2015(2:世田谷代田駅・10両化工事)(2015年7月31日作成)
小田急線地下化・複々線化工事(2016年1月8日取材)(2016年3月25日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサード リンク

Facebookのコメント

コメント

報道ステーションSundayで
今現在、報道ステーションSundayで、
相模鉄道(相鉄)とJR・東急の相互乗り換えのための、
地下鉄道部分の紹介が取材されていました。

まだ、一部区間のみの紹介でした。
2016/06/19 17:06 | URL | 投稿者:ノリノリ [編集]
コメント機能をご利用の際は必ず注意事項のページをご覧ください。
不適切な投稿内容は修正・削除される場合があります。また、内容によっては管理人からのレスが付かない場合がございます。確実に返信が欲しい場合はEメールをご利用ください。

管理者にだけ表示を許可する(管理人からの返信が付きません)


最新記事

首都圏外郭放水路庄和排水機場(2016/10/02)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016/09/10)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
月別アーカイブ

全記事タイトル一覧

お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

おすすめ記事

@takuya870625 Twitter