小田急線複々線・10両化工事(2016年6月取材[3]下北沢駅報道公開)

小田急線複々線化工事下北沢駅周辺報道公開 presented by Rf未来へのレポート

(本日20代最後の1年に突入いたしました筆者でございます。)

それはさておきまして、小田急線複々線・10両化工事のレポートの続きです。
去る6月9日(木)、小田急線下北沢駅周辺で複々線化工事の報道公開が実施されました。今回、小田急電鉄株式会社様ほか皆様のご配慮によりまして、特別に弊サイトがこの報道公開に参加する許可を得られました。順番が前後しましたが、3回目の今回はこの報道公開で見学させて頂いた下北沢駅の工事中の駅舎や緩行線トンネル内の様子を中心に詳しくお伝えしてまいります。

[1]東北沢駅・世田谷代田駅の様子はこちら
[2]登戸駅・代々木八幡駅の様子はこちら


【重要なご注意】大変申し訳ございませんが、今回の記事の内容につきましては画像・文章とも転載禁止(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスでのご利用も不可とさせていただきます。
筆者の自サイトのみで公開することが取材の条件とされました。写真には報道公開以外で撮影したものを含め、転載防止のためロゴを入れております。万一報道公開で撮影した写真が当サイト以外に転載されていることを発見した場合、サイト所有者に事情をお伺いする場合があります。ご了承ください。

もくじ
■下北沢駅付近の工事手順
■建設中の駅舎・緩行線トンネルへ潜入!
①下北沢駅駅舎
②緩行線トンネル
③地上線路跡地
■今後の展望

■下北沢駅付近の工事手順
小田急線地上時代の下北沢駅構内図。特に上りホーム側は狭い通路が入り組んでおり混雑が激しかった。
地上時代の小田急線下北沢駅ホーム。上下線が別々のホームになっていた。左の5000形は2012年で引退した。
小田急線ホーム新宿寄りの上空を通る京王井の頭線。井の頭線の橋脚があるため、小田急線ホームは一部非常に狭くなっていた。
左or上(1):小田急線地上時代の下北沢駅構内図。特に上りホーム側は狭い通路が入り組んでおり混雑が激しかった。
右上or左下(2):地上時代の小田急線下北沢駅ホーム。上下線が別々のホームになっていた。左の5000形は2012年で引退した。2010年1月10日撮影
右下(3):小田急線ホーム新宿寄りの上空を通る京王井の頭線。井の頭線の橋脚があるため、小田急線ホームは一部非常に狭くなっていた。2012年6月23日撮影
 
 報道公開の様子に入る前に、小田急線下北沢駅の地下化・複々線化の手順についておさらいしておきましょう。
 地上時代の小田急線下北沢駅は、下り線用の島式ホーム1面と上り線用の片面ホーム1面のレイアウトでした。ホームの新宿寄りでは上空を京王井の頭線が斜めに交差しており、井の頭線ホームと小田急線ホームの間は階段のみ設置された狭いT字型の連絡通路で接続されていました。

2013年3月の小田急線地下化イメージ。B2Fの緩行線ホーム予定地を階段の中継スペースとした。
B3F小田急線急行線ホーム。線路部分をシールド工法で建設し、トンネル間を切広げてホームを形成した。
B2Fは緩行線の予定地で、床には将来の線路の位置が大きくペイントされていた。
左or上(1):2013年3月の小田急線地下化イメージ。B2Fの緩行線ホーム予定地を階段の中継スペースとした。
右上or左下(2):B3F小田急線急行線ホーム。線路部分をシールド工法で建設し、トンネル間を切広げてホームを形成した。
右下(3):B2Fは緩行線の予定地で、床には将来の線路の位置が大きくペイントされていた。2枚とも2013年3月30日撮影

 地下化後の小田急線下北沢駅は、地下1階が機械室、地下2階が緩行線ホーム、地下3階が急行線ホームになります。2013(平成25)年3月の小田急線地下化では、井の頭線の高架橋を改築せずに地下線への切り替えを行うため、地上を切り開かずに掘削できるシールド工法を使って下層の急行線を先に建設しました。急行線は、上下線が独立したシールドトンネルになっており、ホームは井の頭線の交差部分に重ならない小田原寄りにシールドトンネル間を切広げて建設しました。一方、地上と地下のホームを結ぶ階段やエスカレータは、地上の線路を撤去しないと本来の直線的な位置に設置できません。そこで、将来緩行線ホームになる地下2階を暫定的に「中継コンコース」として扱い、北側にトンネルを拡張して「地上~地下2階」「地下2階~地下3階」の2群に分けて配置しました。

京王井の頭線橋梁の架け替え工事。
京王井の頭線橋梁の架け替え工事。2014年12月6日撮影

 2013年の地下化後は、地上の旧駅施設の撤去が急ピッチで進められ、いよいよ本事業最難関である井の頭線の橋梁架け替えと緩行線のトンネル建設に着手しました。井の頭線の橋梁は、複数のスパンの短い橋脚・橋桁で構成されていました。緩行線のトンネルは開削工法により建設されること、橋梁下は完成時に小田急線下北沢駅のコンコース・改札口(東口)になること、狭小だった京王井の頭線と小田急線の乗り換えコンコースを拡張する必要があることから、井の頭線の高架橋は橋梁前後を含め全面的に改築することとしました。小田急線の交差部分は線路跡を1スパンで跨ぐ長い桁橋とし、前後の区間についても盛土高架からコンクリート製の高架橋に改築して高架下を有効利用できるようになります。架け替えの詳しい手順については後ほど説明します。

下北沢駅小田原方のトンネル地下1階部分の構築作業。 5月21日より使用が開始された地上~急行線ホーム直行エスカレータ。頭上では駅舎の建設が進む。
左(1):下北沢駅小田原方のトンネル地下1階部分の構築作業。2014年12月6日撮影
右(2):5月21日より使用が開始された地上~急行線ホーム直行エスカレータ。頭上では駅舎の建設が進む。


 一方井の頭線交差部分の小田原寄りでは、地上の線路設備を撤去した後、未完成だったトンネル地下1階の構築、本来の位置に地上と地下のホームを接続するエスカレータを設置する工事、駅舎の建設などが進められます。これらの工事の一環として5月21日(土)に地上と急行線ホーム(地下3階)を直結するエスカレータの使用が開始されたのは、1回目の記事で触れた通りです。
 駅舎は2階建てで、1階は改札内コンコース、2階は東西自由通路兼店舗になります。1階は駅周辺の回遊性向上のため、小田原寄りにも新しい改札口を設置します。また、現在は小田急線と京王線のホームが同一の改札内になっていますが、完成後は乗り換えコンコース上に改札口を2箇所設置し、双方の事業者で改札口が分離されます。これは、現在小田急線北側の地上階がこの乗り換えコンコース通路により分断されており、駅の東西で行き来できなくなっているためです。(分離後は双方の事業者の改札口の間が東西自由通路の一部となる。)

■建設中の駅舎・緩行線トンネルへ潜入!

 復習はこのあたりにして、ここからは皆様お待ちかねの6月9日(木)に行われた報道公開の内容をお届けします。この日の報道公開はまず駅近くにある現場事務所に集まり、小田急電鉄社員の方々により地下化・複々線化工事の概要や今後見込まれる効果についてPower Pointを使ってご説明頂きました。Power Pointのデータは一部追加情報があるものの、4月28日(金)に小田急電鉄公式Web上で公開された「複々線完成による効果について」というPDF文書と基本的に同一の内容ですので、皆様も以下のリンクよりご覧ください。

▼参考
複々線完成による効果について - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF/2.0MB)


小田急線下北沢駅周辺の工事中区間の縦断面図
小田急線下北沢駅周辺の工事中区間の縦断面図

 2013年の地下化後に続けられている工事は、

(a)東北沢駅駅舎
(b)下北沢駅手前(急行線シールド回転立坑)~京王井の頭線交差部下までの緩行線トンネル
(c)京王井の頭線橋梁架け替え
(d)下北沢駅駅舎
(e)下北沢駅のトンネル地下1階
(f)下北沢駅の本設エスカレータ・エレベータ・階段
(g)下北沢~世田谷代田駅間の緩行線トンネル
(h)世田谷代田駅駅舎・緩行線ホーム・エスカレータなど
(i)地上線路跡地利用(世田谷区管轄)

となっています。今回見学するのはこのうちの赤文字で示した部分です。完成後の効果については最後の節で説明することにしまして、いよいよ現場の様子について見ていきます。(見学順に掲載していますので、上記と順番が入れ替わっています。少々わかりづらい点ご了承ください。)

①下北沢駅駅舎
下北沢駅小田原寄りの地上廃線跡から見た建設中の駅舎。1階には新しい改札口ができる。
駅舎2階。中央が吹き抜けになり、その周囲に店舗ができる。
駅舎の屋根はソーラーパネルになっている。
左or上(1):下北沢駅小田原寄りの地上廃線跡から見た建設中の駅舎。1階には新しい改札口ができる。ここは一般通行可能な通路から見える部分。
右上or左下(2):駅舎2階。中央が吹き抜けになり、その周囲に店舗ができる。
右下(3):駅舎の屋根はソーラーパネルになっている。

 まず見学したのは小田原寄りで建設中の駅舎です。前述の通り駅舎は2階建てで、1階が改札内コンコース、2階が東西自由通路および店舗スペースになります。1階は、前述の通り小田原寄りにも新たに改札口(南西口)を設置し、駅西側への回遊性を向上します。2階は中央部が巨大な吹き抜けになっており、その周囲を店舗が取り囲むようなレイアウトになっています。入居する店舗の具体的な業種については現在検討中とのことで、様々な文化が交錯する街なだけに今後の発表が注目されます。
 駅舎の屋根は透明なガラス板になっており、日中は駅構内に太陽光が降り注ぎます。屋根板の一部は太陽光発電パネルになっており、駅構内で使用する電力の一部を賄います。

駅舎2階から小田原方面を見る。将来この先には立体緑地ができる。
駅舎2階から小田原方面を見る。将来この先には立体緑地ができる。

 駅舎から小田原方面は緩行線のトンネル工事が続いており、完成しているのは換気塔のみです。この先は、完成後人工地盤が建設され、1階は小田急電鉄が整備する700台収容の駐輪場、2階は世田谷区が管理する緑地(公園)になります。急行線と緩行線を2段に重ねて地下化したことにより、地上廃線跡は複線幅しかないため、このように跡地利用についても立体的にレイアウトすることで限られたスペースを有効利用しています。

駅舎2階から将来改札内コンコースとなる1階を見下ろす。下に見えるエスカレータは地上と緩行線ホームを結ぶもので、7月から使用開始予定。
駅舎2階から将来改札内コンコースとなる1階を見下ろす。下に見えるエスカレータは地上と緩行線ホームを結ぶもので、7月から使用開始予定。

 駅舎1階では、緩行線の開通に向けてコンコースの仕上げ作業が続いています。写真は来月使用開始予定の地上~緩行線ホーム(地下2階)を結ぶエスカレータです。小田急下北沢駅では、地下化当初5機のエスカレータが設置されていましたが、今秋までに10機に増強される予定になっています。(最終完成時にはさらに新設および仮設エスカレータを廃止し、11機になる予定。)この増設分のうち2機が1回目の記事でも紹介した地上~急行線ホーム(地下3階)直結エスカレータで、高さが22m、全長が45mと長大なものとなっています。これは鉄道駅では日本一の長さを誇る、りんかい線大井町駅A1出入口に設置されているエスカレータとほぼ同サイズです。
 現場を案内していただいた小田急電鉄社員の方によると、このような長大エスカレータでは転倒などにより大事故至るのではないかと危惧しているとのことでした。東京消防庁の調査によると、エスカレータ事故の原因の多くは

●加齢による身体機能の低下(事故の約5割は65歳以上の高齢者)
●手すりにつかまらずに乗っていた(つまずき等の事故を起こした人の約8割)


だったという結果が出ています。手すりにつかまらない理由は「(多くの人が触っているため)汚いから」とよく言われています。下北沢駅のエスカレータでは、この対策として手すりベルトに抗菌剤を練り込んだ材料を使用しました。エスカレータ事故の原因はこの他に数は多くないものの、「歩いて/走って登る」「その最中に他の人と衝突する」というものも見られ、昨年夏には日本民営鉄道協会や日本エレベータ協会などの共同で立ち止まって手すりにつかまるよう呼び掛けるキャンペーンも展開されました。
 実は、筆者も幼い頃近所のスーパーのエスカレータで手すりにつかまらず駆け上がっている最中に転倒し、額を数針縫うという大怪我を負ったことがあります。その時の傷は二十数年経った現在もはっきりと残っています。このように、エスカレータは便利な反面、使い方を誤ると一生傷跡を残す危険な道具にもなってしまうのです。本稿をお読みの皆様はぜひ、筆者の二の舞にならないようエスカレータは安全にご利用されるようお願いいたします。 

②緩行線トンネル
※この先画像が18枚(782KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。

下北沢駅新宿方のトンネル開口部。急行線建設時にシールドマシンを回転させた。
開口部を下から見たところ。完成後個の開口部は閉鎖される。
重機の向こうに見えるの2つの穴が東北沢駅へ向かう緩行線のトンネル。
左or上(1):下北沢駅新宿方のトンネル開口部。急行線建設時にシールドマシンを回転させた。
右上or左下(2):開口部を下から見たところ。完成後個の開口部は閉鎖される。
右下(3):重機の向こうに見えるの2つの穴が東北沢駅へ向かう緩行線のトンネル。

 続いて、下北沢駅の新宿方に移動して地下で建設中の緩行線トンネルを見学します。地下への入口となっていたのは下層の急行線建設時にシールドマシンをUターンさせた立坑(回転立坑)です。急行線のシールドトンネルは、世田谷代田駅新宿寄りの端にある立坑からシールドマシンを発進させ、上り線のトンネルを掘削してこの立坑に到達しました。到達後はマシンを立坑内へ抜き取り、金属の球が入った台に載せて180度回転させ、再発進して世田谷代田駅までの下り線のトンネルを掘削しました。(→シールドマシン回転に関する解説パネル
 急行線の営業運転が開始されている現在は、急行線階の上にコンクリートの床面が設置されており、上層の緩行線階のみに出入りが可能となっています。緩行線の完成後この開口部は完全に埋められる予定ですが、元の用途ゆえに線路の左右に大きな空間が残るため、緊急時に列車から降車させた乗客の一時退避スペースとしての活用が考えられているとのことです。

回転立坑から東北沢駅の間は軌道敷設も終了している。奥に見える白い光が東北沢駅のホーム。
回転立坑から東北沢駅の間は軌道敷設も終了している。奥に見える白い光が東北沢駅のホーム。

 東北沢駅から回転立坑までの間の緩行線トンネルは、2013年の急行線開通時にほとんど完成しており、現在は軌道敷設も完了しています。軌道は他の区間と同じバラストラダー軌道です。写真奥に見える白い光が東北沢駅のホームです。
 ちなみに、冒頭の写真はおわかりの通りこの場所で軌道に寝そべるようにして撮ったものです。通常では有り得ない低いアングルで撮れるのもこういった特別な公開の醍醐味です(笑)

回転立坑から駅方向に進んだところ。この先は京王井の頭線の橋梁下で現在も掘削中。
回転立坑から駅方向に進んだところ。この先は京王井の頭線の橋梁下で現在も掘削中。
※クリックで拡大(2500×974px/385KB 巨大画像注意)


 次にトンネルを反対方向に進みました。先に公開されたニュース記事に寄せたコメントの通り、下北沢駅構内は工事エリアをかなり細分化して掘削可能になった部分から即着手するという方法をとっており、京王井の頭線の橋梁下については現在も掘削作業が続いています。そのため、完成済みの部分とは仮設の壁のようなもので仕切られています。ここから先は緩行線のホームになるため、上下線の間がコンクリートの壁ではなく金属製の円柱に変ります。ホームの床はこの写真を撮った場所よりも若干高い場所にできるとのことです。完成後はぜひ同じ場所に立って比較してみたいと思います。

トンネル内は掘削中に地上の構造物を支えていた中間杭が一部残存していた。 トンネル側壁に設置されている機器設置・列車待避用の窪み。
左(1):トンネル内は掘削中に地上の構造物を支えていた中間杭が一部残存していた。
右(2):トンネル側壁に設置されている機器設置・列車待避用の窪み。


 開削トンネルでは、初めに地面に鉄骨などでできた杭を打ち、地上構造物をそれらで支えながら地下を掘ってトンネルを作り上げていきます。今回見学したエリアには完成してから間もないため、一部の杭がトンネル内を遮る形で残っていました。このままでは列車が走れないため、今後は天井や床から飛び出している部分を切断して撤去することになります。(このため、完成後のトンネルは天井や床にH型の鉄骨を切断した跡が随所に残ることになる。)
 2枚目は本題とは関係のない「おまけ」ですが、これはトンネル側壁に設けられている窪みです。信号機器設置や列車運行中にトンネル内に入って作業をする際作業員が待避する空間として設けられます。

緩行線掘削エリア真下の急行線トンネルは線路に沿って軌道の変形を観測する機器が取り付けられている。 急行線上りホーム先端に設置された徐行信号機と思われる物体。
左(1):緩行線掘削エリア真下の急行線トンネルは線路に沿って軌道の変形を観測する機器が取り付けられている。
右(2):急行線上りホーム先端に設置された徐行信号機と思われる物体。


 ここで報道公開の内容から外れますが、現在緩行線トンネル掘削中エリア真下の急行線トンネルには、軌道の変形を計測するためと思われる機器が設置されています。また、上り線のホーム先端には徐行信号機と思われる円板と長方形の板が上下に並んだ物体が準備されており、6月11日(土)の調査時点では黒いビニールに覆われた状態となっていました。これらは別の日の個人的な調査中に偶然見つけたものであるため詳細を知ることができませんでしたが、緩行線のトンネル掘削や現在も未完成となっている急行線ホーム新宿寄りの換気口の工事に関係しているものとみられます。

③地上線路跡地
京王井の頭線橋梁の架け替え手順を示したパネル。背後がその現場。
京王井の頭線橋梁の架け替え手順を示したパネル。背後がその現場。ここも一般通行可能な通路から見える部分。

 最後は地上へ戻り、旧下北沢6号踏切で京王井の頭線の橋梁架け替えや駅前広場の整備計画について説明していただきました。
 前述の通り、井の頭線の橋梁は前後の区間も含めて架け替えが進められており、渋谷方については3月作成の記事でお伝えした通りコンクリート製の高架橋がほぼ完成しています。今後は高架下の空間を利用して線路に並行した道路が建設される予定です。
 一方、小田急線交差部分は前述の通り線路跡を1スパンで跨ぐ長い橋梁に架け替えが進められています。工事の手順は以下の通りです。

①在来線地下化
①在来線地下化
シールド工法で急行線のトンネルを建設し、地上を走っていた在来線を地下化する。(2013年完了)
②井の頭線仮橋化
②井の頭線仮橋化
井の頭線の橋梁の上下に鋼材で組んだ仮の橋桁や橋脚に作り替え、既存の橋梁を撤去する。(2014年完了)
③緩行線掘削準備
③緩行線掘削準備
緩行線のトンネル掘削に向けて、土留め壁や中間杭を打ち込む。(2015年完了)
④緩行線トンネル掘削・構築
④緩行線トンネル掘削・構築
緩行線のトンネルを浅い部分(B1F天井)から順に掘削・構築する。(現在も進行中)
⑤緩行線開通・井の頭線橋梁本設化
⑤緩行線開通・井の頭線橋梁本設化
緩行線が開通。井の頭線の仮橋周囲で本設の橋脚・橋桁を構築し、仮橋と交換する。(2017年度末完了予定)
⑥駅舎建設(完成)
⑥駅舎建設(完成)
地上の線路跡に駅舎を建設して完成。(2018年度完了予定)

これらの工事はすべて小田急線・井の頭線ともに通常運行を継続しながら行われます。
 ステップ⑤で架設される井の頭線の新しい橋桁は単体で600トンもの重量があります。そのため、大型クレーンを使った直接設置はできず、井の頭線の線路脇に台を設置して桁の組み立てを行い、完成後横にスライドさせて現在の仮設桁と取り替えられます。井の頭線の橋梁架け替えは2017年度の緩行線開通後も続き、完成は2018年度中になる予定です。なお、この井の頭線の橋梁架け替えは原因が小田急線の地下化・複々線化にあるため、京王電鉄側の費用負担は無いとのことでした。

駅前広場と補助54号線(左側の斜めに横切る道路)の整備計画
駅前広場と補助54号線(左側の斜めに横切る道路)の整備計画

 井の頭線の架け替え完了後は、橋梁周辺で小田急下北沢駅の駅舎建設(増築)が行われます。また、改札口前には、バスやタクシーなどへの交通結節機能を高めるため世田谷区により駅前広場が整備される予定です。この駅前広場は、東北沢~下北沢駅間で交差が予定されている都市計画道路補助第54号線およびこの補助54号線と駅前広場をつなぐ世田谷区画街路10号線と一体的に整備するものです。
 補助54号線は渋谷区富ヶ谷(山手通り)から西へ進み、環状8号線を越えた世田谷区上祖師谷5丁目に至る全長約9kmの道路で、終戦間もない頃から都市計画に存在していました。このうち、下北沢駅近傍(茶沢通りから西へ265m)の区間が第1期事業として2006(平成18)年に事業認可を受け、用地買収が開始されています。しかし、「下北沢の文化が破壊される」として住民らにより事業差し止めを求める訴訟が起こされたほか、2011(平成23)年4月には補助54号線や再開発計画の見直しを公約に掲げた保坂展人氏が世田谷区の区長に就任したことから、事業は遅々として進んでいません。このため、今年3月には完成予定が2021(平成33)年度へ6年延期されています。下北沢駅周辺は道路が非常に狭く、大型車両の乗り入れが容易ではないため、駅前広場が整備されても本来の機能を発揮できるまでにはしばらく時間を要すると思われます。

▼脚注
※ただし、今年3月に東京都が策定した都市計画道路の整備方針で、第1期区間の前後が優先整備区間から外されるなど計画の縮小が決まったことから、一定の成果を得たものとして和解(原告の提訴取り下げ)となった。


■今後の展望
今年3月からJR・小田急車の直通運転が拡大された東京メトロ千代田線。小田急4000形の我孫子行きやE233系2000番台の本厚木行きなどが見られるようになった。
今年3月からJR・小田急車の直通運転が拡大された東京メトロ千代田線。小田急4000形の我孫子行きやE233系2000番台の本厚木行きなどが見られるようになった。

 代々木上原~梅ヶ丘間の緩行線開通は2017(平成29)年度末(2018年春)が予定されています。現在トンネルを建設中の下北沢駅手前の区間は掘削が8割完了したところであり、下北沢~世田谷代田駅間については掘削が終了し、トンネル本体の構築も8割完了していることから、今後大きなトラブルが無ければ2017年度末の緩行線開通は確実であると考えられます。
 この区間が完成すると、東京メトロ千代田線との分岐駅である代々木上原駅から登戸駅までの11km全線が複々線になります。これにより、複々線化区間入口にあった文字通り「ボトルネック」が解消し、既に完成している区間も含めてその効果を最大限発揮することが可能になります。複々線全線完成による効果は以下のように見込まれています。

●列車の大幅増発
 代々木上原駅から東京メトロ千代田線へ直通する列車本数は、現在線路容量の関係から1時間当たり最大5本となっていますが、複々線完成後はこれを12本へ2.4倍に大幅増発します。千代田線沿線では、近年の再開発ブームにより大規模なオフィスやショッピングモールが次々と完成しており、これらの施設への利便性が一層高まることが期待されます。一方、小田急線新宿方面についても1時間当たり最大24本へ2本増発され、双方を合わせた1時間当たりの最大運行本数は36本になります。

●混雑率を160%へ大幅に緩和
 上記の列車増発に加え、各駅停車の10両編成化(詳細は前回の記事を参照)などの効果により、ラッシュ時の混雑率は着工前の約200%(現在は約190%)から160%程度へ大幅に緩和されます。160%という数字は、立席客が出るものの各乗客どうしが十分余裕を持ちながら立つことができるというレベルです。これにより、長年に渡り利用者の間に定着していた「小田急線は混んでいる」というイメージを払拭します。

●都心方面の所要時間を最大10分短縮
 現在複線となっている代々木上原~梅ヶ丘間には追い抜きのための線路がありません。このため、前を走る各駅停車に後から来た急行などの優等列車が追い付いてしまい、駅以外の場所で速度を落としたり停車してしまう場合があり、所要時間が延びる原因となっています。複々線化が完成すると、各駅停車と優等列車の線路が分離され、走行しながら追い抜きができるようになります。この結果、ラッシュ時に都心方面へ優等列車で向かう場合の所要時間は5~10分程度短縮されます。(一例として町田→新宿は現行48分から38分に、海老名→新宿は現行60分から51分に短縮される見通し。)また、各駅停車についても複々線区間出入口駅での優等列車の追い抜き待ちによる長時間停車がなくなるため、所要時間が幾分短縮されます。
 現在、東京都心から神奈川県方面に路線を持つ民鉄各線(小田急・京王・東急)でラッシュ時40分以内に都心のターミナル駅に到着できる距離は20km台となっています。複々線完成後の小田急線はこれが30km台へ拡大します。

これらの効果により並行する各鉄道事業者との競争力がアップし、新たな人口流入も見込まれることから、小田急電鉄では2020(平成32)年度の運輸収入を現行の1140億円前後から50億円程度増収を図ることを目標としています。

*      *     *

 筆者は生まれてから数年間神奈川県に在住していた関係上、神奈川県内に親類が多く在住していますが、その方たちに小田急線について尋ねると決まって返ってくる言葉が「とにかく混んでいる」という悪評でした。複々線計画立案から半世紀、その汚名を返上できる日はもうすぐそこまで来ています。
 最後になりましたが、今回弊サイトに報道公開への参加を許可していただいた小田急電鉄株式会社様ほか関係者の皆様に深く御礼申し上げます。

▼参考
複々線化事業|鉄道事業|事業案内|会社案内|企業・IR・採用情報|小田急電鉄
複々線完成による効果について - 小田急電鉄ニュースリリース(PDF/2.0MB)
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都市計画道路補助第54号線(下北沢1期)及び世田谷区画街路第10号線 | 世田谷区

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Facebookのコメント

コメント

誕生日おめでとうございます
初めてコメントさせていただきます。

お誕生日おめでとうございます。いつも濃い内容の記事を楽しみにしておりますが、まさか20代とは思いもしませんでした…(笑)
同じ20代として、これ程の記事が出来ることを尊敬します。

これからも楽しみにしておりますので、更新頑張ってください。応援してます。
2016/06/25 22:25 | URL | 投稿者:堀本 昂弥
びっくり
いつも楽しく拝見してます。
しかし…20代だったなんてかなり驚き!
これからも期待しています。
2016/06/27 11:20 | URL | 投稿者:相鉄君 [編集]
気になる開口部
いつもレポートお疲れ様です。
楽しく拝見させていただいております。

公開されている下北沢駅の図面を見ていてふと疑問がわいたのですが、
今回記事の緩行線トンネル下北沢駅部の大きな横長の写真について、
天井の開口部はエスカレータのものなのでしょうか??
であるとすると、この部分が井の頭線交差部直下ぐらいに
なるような気もするのですがいかがでしょうか、、
2016/07/31 02:58 | URL | 投稿者:さべし
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相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
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お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

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