南武支線小田栄駅(開業後)

カテゴリ:鉄道:駅・施設・風景 | 公開日:2016年07月07日19:38


今年1月に建設中の状況をお伝えした神奈川県川崎市のJR南武支線小田栄駅ですが、予定通り3月26日のダイヤ改正で開業を迎えました。5月に開業後の様子を調査してまいりましたので、現地の様子をお届けします。

▼関連記事
南武支線小田栄駅新設工事(2016年1月3日取材)(2016年1月27日作成)

■南武線の概要と小田栄駅新設の経緯
左が南武支線の205系1000番台電車、右が南武線本線のE233系8000番台電車。
左が南武支線の205系1000番台電車、右が南武線本線のE233系8000番台電車。

 JR南武線は、神奈川県川崎市の川崎駅と東京都立川市の立川駅を結ぶ35.5㎞の「本線」と途中の尻手駅から分岐して臨海部の工業地帯にある浜川崎駅へ向かう4.1㎞の「支線」の2線で構成されています。「本線」は6両編成の電車が数分間隔で運行され、主要駅のみ停車する快速列車も設定されている一方、「支線」は京浜工業地帯と全国を結ぶ貨物列車を優先したダイヤとなっており、2両編成のワンマン電車が数十分間隔で運行されるローカル線と化していました。

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小田栄地区の航空写真の比較。左は1989年、右は現在で工場跡地がマンションに変化したことがわかる。
※左の航空写真は国土地理院地図・空中写真閲覧サービスを使用

 川崎市内の南武線沿線は1990年代までほとんどが工場となっており、利用者もそこへの通勤客が主体となっていました。しかし、産業構造の変化などから2000年代以降一部の地域で工場の統廃合などが行われ、跡地が住宅・商業施設に転用されるようになりました。2010年に横須賀線の新駅が設置された武蔵小杉駅周辺や、今回新駅が設けられた小田栄地区もその1つです。
 小田栄地区には昭和電線の工場がありましたが、1990年代末に閉鎖され、跡地には1500戸のマンション、特別養護老人ホーム、イトーヨーカ堂川崎店、などの商業施設が建設されました。この結果、2005年はわずか5世帯10人だった小田栄地区の人口は2014年に1686世帯4706人と実に470倍へ飛躍的に増加しました。小田栄地区はこれまで川崎駅とバスで接続されていましたが、人口増加によりピーク時は2~3分間核の運行になるなど増発も限界に達し、住民より交通機関の充実を求める要望が出ていました。これを受けて川崎市では2015年1月29日にJR東日本との間で南武線のブランド向上に向けた包括連携協定を締結し、その中に南武支線川崎新町~浜川崎間への新駅設置を盛り込みました。
 新駅の名称は、昨年8月に川崎市が実施した投票の結果、地名と同一の小田栄おださかえ(得票数889票)に決定しました。工事は11月から開始され、3月26日(土)に実施されたダイヤ改正で開業を迎えました。

■開業した小田栄駅の様子
小田栄駅の設置位置
小田栄駅の設置位置

 小田栄駅は川崎新町駅から700m浜川崎駅方向に進んだ小田踏切付近に設置されました。利用者数は1日当たり3500人と予想されており、「短工期」「低コスト」で整備することを目的に無人駅とし、ホームは2両編成ギリギリの長さ・幅で路面電車の電停のように踏切を挟んだ対角線上に設置されました。また、近い将来消費税の10%への増税が予定されていることから、運賃計算システムを頻繁に改修することによるコスト増大を避ける目的で、当面の間システム上は間川崎新町駅と同じ駅として扱われることになっています。これは旧国鉄時代北海道のローカル線に多数存在した「仮乗降場」とも似た考え方で、SuicaなどICカード決済の導入などによりシステムが複雑化した今、それが形を変えて復活したと見ることもできます。

小田栄駅尻手方面行きホーム入口。右側の駐輪場も今回の新駅開業に合わせて新設されたもの。
小田栄駅尻手方面行きホーム入口。右側の駐輪場も今回の新駅開業に合わせて新設されたもの。

 小田栄駅のホームは上下線とも階段と車椅子用のスロープで公道と接続されています。階段の床材は遊具の床に用いられるような滑り止め突起の付いた鉄板(縞鋼板)、屋根は住宅のカーポートと同じポリカーボネート製となっており、既製品を多用することで可能な限りコストダウンを図っていることがうかがえます。
 駅の入口は無人駅であることから、ICカードの入場・出場用リーダ・ライタと乗車駅証明書発行機のみの設置となっています。ICカードと同様、紙のきっぷでも運賃計算は川崎新町駅と同駅という扱いになっており、乗車駅証明書発行機で出てくる紙に印字される駅名も「川崎新町駅」となっています。(恐らく当駅には営業キロ自体が設定されていないものと思われる。)

浜川崎方面行きホーム 尻手方面行きホーム
左(1):浜川崎方面行きホーム
右(2):尻手方面行きホーム


 尻手方面行きホームは周囲の土地に若干余裕があり、ホーム自体も道路から少し離れて設置されています。ホーム裏には新駅開業に合わせて駐輪場が設けられています。

車椅子様子ロープは各ホーム後方に通じている。 小田栄駅の駅名板。最近主流のLEDバックライトタイプ。 スピーカーは周辺への騒音防止のため狭指向性タイプを採用。
左(1):車椅子様子ロープは各ホーム後方に通じている。
中(2):小田栄駅の駅名板。最近主流のLEDバックライトタイプ。
右(3):スピーカーは周辺への騒音防止のため狭指向性タイプを採用。


 車椅子用のスロープはホーム裏を直線状に進み、ホーム奥にに通じています。ホーム上の照明・案内板類はLEDを使用した最新仕様となっており、省エネルギー化が図られています。ホーム上にはこの他に運転見合わせ等の異常時に遠隔操作で案内放送ができるようスピーカーが設置されています。周辺が住宅地であることから、スピーカーは駅の外に音が漏れないよう狭指向性型のもの(UNI-PEX製ラインアレイスピーカーLAS-10JR)を採用しています。

▼脚注
※市販品のカタログには存在しない特注品。これに限らず鉄道用の製品は耐振動性・防水性など条件が厳しいため、特注品が多く存在する。


新駅開業に合わせて、踏切周りもカラー舗装化されるなど改修された。
新駅開業に合わせて、踏切周りもカラー舗装化されるなど改修された。

 新駅開業により小田踏切は通行者が増えることから、路面舗装の敷き直し(カラー舗装化)や踏切遮断機の移設などの安全対策が実施されました。また、踏切南側にある川崎鶴見臨港バスの小田踏切バス停も車道と段差の付いた待機スペースが整備されています。

■205系1000番台のプチリニューアル
南武支線205系1000番台電車。
側面のラインカラーには南武支線を象徴する波状の五線譜と5羽のカモメが描かれた。 張り替えられた座席モケット。音楽と海をイメージしたデザインとなっている。 抗菌タイプに交換されたつり革とLED照明。
上(1):南武支線205系1000番台電車。
下左(2):側面のラインカラーには南武支線を象徴する波状の五線譜と5羽のカモメが描かれた。
下中(3):張り替えられた座席モケット。音楽と海をイメージしたデザインとなっている。
下右(4):抗菌タイプに交換されたつり革とLED照明。


 小田栄駅の開業に合わせて、南武支線を走る205系1000番台の小規模なリニューアルが実施されました。内容は以下の通りです。

①車体ラインカラー・車内座席モケットのデザイン変更
各車両運転台側の側面腰部に配されているラインカラーを絵柄の入った物に張り替えました。絵柄には川崎市を象徴する「音楽と海」をイメージした波状の五線譜南武支線の5つの駅を表す5羽のカモメが描かれています。車内の座席モケットも「音楽と海」をイメージした濃い青色のものに交換されています。

②つり革の抗菌タイプへの交換・LED照明化
車内のつり革がE233系などで採用された黒色の抗菌タイプに交換されました。また、蛍光灯だった客室照明がLED照明に全面的に交換されました。

開業日から5月のゴールデンウィークまで装着されたヘッドマーク(浜川崎方面) 開業日から5月のゴールデンウィークまで装着されたヘッドマーク(尻手方面)
開業日から5月のゴールデンウィークまで装着されたヘッドマーク。左が浜川崎方面、右が尻手方面の先頭車。

 小田栄駅開業を記念して、開業1週間前の3月19日(土)から5月8日(日)の間、南武支線の205系1000番台ワ4編成にヘッドマークが装着されました。ヘッドマークは前後で異なるデザインになっており、沿線にある県立川崎高校美術部と市立川崎総合科学高校デザイン科の生徒が製作を担当しました。

 今回調査に出かけたのは新駅開業から既に1カ月以上たっていましたが、駅周辺の住民とみられる利用客がかなり多くみられました。南武支線は今後この地区の重要な交通手段として発展していくことでしょう。

▼参考
川崎市:JR東日本との取組

▼関連記事
南武支線(2007年10月9日作成)
南武支線小田栄駅新設工事(2016年1月3日取材)(2016年1月27日作成) このエントリーをはてなブックマークに追加
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