小竹向原~千川間連絡線新設工事(2016年5月15日取材)

2月に完成した和光市方面行き連絡線へ吸い込まれていく東武9050系

東京メトロ有楽町線・副都心線小竹向原~千川間では2011年より平面交差となっている両路線の分岐部分を立体交差化する工事が行われ、今年春に上下線とも立体交差化が完了しました。5月中旬に完成したB線側の連絡線を中心に調査してまいりましたので、現地の状況をお伝えします。

▼関連記事
小竹向原~千川間連絡線新設工事(2015年6月20日取材)(2015年8月25日作成)

■小竹向原駅立体交差化工事の概要
小竹向原駅4番出入口。 小竹向原駅のホーム。
左(1):小竹向原駅4番出入口。2008年6月14日撮影
右(2):小竹向原駅のホーム。2011年1月9日撮影


 小竹向原駅は東京メトロ有楽町線・副都心線と両路線と直通運転を行っている西武有楽町線が乗り入れる、島式ホーム2面4線の地下駅です。有楽町線・副都心線の小竹向原~池袋間は全線に渡り要町通り(都道441号池袋谷原線)の地下を通っており、地下鉄建設と同時並行で用地買収・道路建設が行われました。
 小竹向原駅が開業したのは1983(昭和58)年の有楽町線池袋~営団成増(現・地下鉄成増)間と西武有楽町線小竹向原~新桜台間が開業した時のことです。以後、各方面とも延伸開業を続け、有楽町線は和光市駅で東武東上線に、西武有楽町線は練馬駅で西武池袋線と直通運転を行うようになりました。さらに、1994(平成6)年には有楽町線と同時に建設されていた13号線(現在の副都心線)の小竹向原~池袋間を先行供用する形で有楽町新線が開業し、現在の線路の形態が完成しました。

小竹向原駅東側の有楽町線と副都心線の平面交差のイメージ
小竹向原駅東側の有楽町線と副都心線の平面交差のイメージ

 有楽町線と副都心線が分岐・合流する小竹向原駅の東側(池袋方)は上下線がそれぞれ3線になっています。この6線区間を走る列車のうち、小竹向原駅の外側2線から有楽町線に出入りする場合と内側2線から副都心線に出入りする場合、必ず双方のルートが平面交差する配線となっていました。有楽町新線の開業時点は新線側の列車本数が極端に少なかったため、この平面交差が問題になることはありませんでしたが、2008(平成20)年に副都心線が池袋~渋谷間が全線開業し列車本数が大幅に増加すると、交差待ちによる列車の停車が多発するようになり、日々の定時運行すらままならない事態となりました。

東急東横線菊名駅で並んだ東急5050系と東京メトロ7000系。
東急東横線菊名駅で並んだ東急5050系と東京メトロ7000系。2013年8月29日撮影

 副都心線は全線開業から約5年後の2013(平成25)年3月16日より、渋谷から東急東横線への相互直通運転を開始しました。小竹向原駅を改良することなく、この直通運転を開始した場合、平面交差による列車遅延がさらに深刻化することが危惧されました。そこで、東京メトロでは小竹向原駅の平面交差部分に関して以下のような検討を行いました。

1案:平面交差が発生する運行(和光市~有楽町線・西武有楽町線~副都心線)を削減する。
2案:小竹向原駅西側(練馬方)に有楽町線専用トンネルを増築し、立体交差化する。
3案:小竹向原駅東側(池袋方)に有楽町線専用トンネルを増築し、立体交差化する。

詳細な検討の結果、1案は利用者数に偏りが発生し、混雑悪化が懸念されること、2案は地上が住宅地であり、小竹向原駅本体の大規模な改良や用地買収が発生し、コストや工期が増大することが判明したため、既存の道路用地内で工事が完結する3案で改良を進めていく方針とされました。

連絡線の建設位置とトンネルの構造 小竹向原~千川間の連絡線新設のイメージ
左(1):連絡線の建設位置とトンネルの構造 ※クリックで拡大
右(2):小竹向原~千川間の連絡線新設のイメージ


 小竹向原駅の立体交差化工事は、小竹向原駅東側の6線区間のさらに外側に有楽町線専用の連絡線を掘り、千川駅直前の地点で地下2階を通る有楽町線ホームに合流させます。連絡線が建設される小竹向原~千川間のうち、小竹向原駅寄りの一部は地上の道路がトンネルになっているため、連絡線の建設区間はこれを避けた千川駅寄りの全長410mの区間とされました。連絡線の中央付近は既存のトンネルの外側に単線のトンネルを建設しますが、地上から掘り下げる開削工法や、一般的な正円形のシールド工法では道路内に収まらないため、縦長の特殊なシールド工法(シールドマシンの模型写真を使って建設されています。また、小竹向原駅側・千川駅側の連絡線の取り付け区間は、既存のトンネルの側壁を取り壊してトンネルを拡幅します。この連絡線建設により6線区間の一番外側の線路は有楽町線のみに接続する配線になり、連絡線の新規建設区間から副都心線との合流部分までの線路は廃止され、跡地には柱が立てられます
 工事は地上のスペースの問題などからA線(新木場方面行き)・B線(和光市方面行き)同時に行うのは難しいため、朝ラッシュ時の混雑が問題となるA線側を先に建設することとなりました。A線側の工事は2010(平成22)年春に着工され、昼夜兼行の突貫工事を続けた結果、東横線との直通運転の直前である2013年2月9日に連絡線への切り替えが完了しました。その後B線側の工事が続けられてきましたが、今年2月14日(日)にB線側の連絡線も使用を開始し、上下各線の完全立体交差化が完了しました。

▼脚注
※既存のトンネル側壁に穴を開けて連絡線を接続したため、柱を立てないとトンネル天井が片持ち状態となり支え切れない。


■和光市方面行き連絡線が完成!
 今回は5月15日(日)に千川駅ホーム端から見える連絡線分岐部分と工事区間の地上の様子を中心にお届けします。2月に開通したB線側の連絡線内部については、後述する通り当日の大幅なダイヤ乱れにより列車の行先・着線変更が多数生じ、列車内からの調査ができなかったため、後日改めて別の記事でお届けする予定です。ご了承ください。

●千川駅(地上・地下)
千川駅ホーム端から見た連絡線の分岐部。カーブ内側に分岐していくのが今回開通した連絡線。
千川駅ホーム端から見た連絡線の分岐部。カーブ内側に分岐していくのが今回開通した連絡線。

 B線の連絡線もA線と同様千川駅のホームのすぐ先が分岐地点となっています。A線と異なり、こちらはカーブの内側へ分岐するため、ポイントが「内方分岐」と呼ばれる特殊な形状になっており、ポイントのトングレール先端には横圧(車輪とレールの間にかかる横方向の力)が急激に変化することによるレールの異常摩耗や脱線を防止する「ポイントガード」と呼ばれる板状のカバーが設置されています。
 またA線と同様、連絡線の開通により千川駅はB線も信号システム上小竹向原駅の一部として扱われるようになり、ATCの標識も閉塞番号のみが書かれた丸い板から、黄色い四角形の場内標識へ交換されました。千川駅ホーム先端に設置されているのは「4場」(第4場内)でこの先相当な数の場内標識が設置されていることが伺えます。

ホーム上階の改札外コンコース。現在も連絡線接続部分の上で工事が続く。 コンコース内に設置された仮設の冷房機。
左(1):ホーム上階の改札外コンコース。現在も連絡線接続部分の上で工事が続く。
右(2):コンコース内に設置された仮設の冷房機。


 ホーム上階の改札外コンコースは、引き続き連絡線の接続部の真上を中心に工事が行われています。この接続部は元々空調機械室だった部分で、工事に使われてしまったことにより現在も千川駅構内は空調が一部使用できない状態が続いています。2012年夏の記事でもお伝えした通り、毎年夏になると列車からの排熱などにより駅構内が灼熱地獄と化してしまっており、東京メトロ本社にも相当な数苦情が寄せられたのか、今年からコンコース内の天井数か所に大型の冷房機が設置されました。冷房機は工場に設置されるような可動式の吹き出し口が3つ並んだタイプで、元の天井高さよりもかなり低い位置に取り付けられていることや、結露水が床の端にある排水溝に直接排水される構造であるため、あくまで工事が終了するまでの一時使用を目的に設置されたものと思われます。

千川駅地上の状況。トンネルの埋め戻しが進んでおり作業帯は順次縮小されている。
千川駅地上の状況。トンネルの埋め戻しが進んでおり作業帯は順次縮小されている。

 千川駅地上は、引き続きB線側の作業帯が残されています。A線側は地面に板が敷かれているものの、そのすぐ下まで埋め戻しが完了しており、間もなく通常の舗装に戻されるものと思われます。B線側もトンネルが完成しているため、今後は埋め戻しが進められるものと思われます。

●小竹向原~千川駅間(地上)
小竹向原~千川駅間の地上。B線側はこれからトンネル内に柱を立てるため、鉄筋などの材料が置かれている。 小竹向原~千川駅間の地上。B線側はこれからトンネル内に柱を立てるため、鉄筋などの材料が置かれている。
小竹向原~千川駅間の地上。B線側はこれからトンネル内に柱を立てるため、鉄筋などの材料が置かれている。

 小竹向原~千川間の駅間部分はトンネル本体は完成しましたが、今後切り替え前の線路跡に柱を立てる作業が残っています。(柱を立てる理由は2014年4月作成の記事を参照)地上の作業帯には柱の材料となる鉄筋などの資材が準備されています。地上が元の状態に戻るのは今年度末の予定で、あと1年弱地上はこのような状態が続くことになります。

■千川折り返しをさらに増発?
副都心線千川駅折り返しの手順。6線区間の内側2線を折り返し線として使う。折り返し作業中有楽町線は外側の連絡線を経由するため、交差することは無い。
副都心線千川駅折り返しの手順。6線区間の内側2線を折り返し線として使う。折り返し作業中有楽町線は外側の連絡線を経由するため、交差することは無い。

 本工事のもう1つの目玉として「副都心線千川駅の折り返し設備新設」があります。
 小竹向原駅の池袋方(東側)で上下線(上3線と下3線)を相互に行き来できる部分は、当初小竹向原駅直前のシーサスクロッシング1か所のみとなっていました。このため、小竹向原駅で池袋方面に折り返す場合、内側2線(2・3番線)を使う必要がありました。一方、小竹向原駅から西武有楽町線に通じる線路も同じ2・3番線しかありません。副都心線や直通先のダイヤが大幅に乱れた場合、一部の列車を途中駅で折り返し運転させることがありますが、小竹向原駅では西武線に通じる線路と折り返し可能な線路が同じであるため、無理に折り返し運転を行おうとすると西武線から来た列車が小竹向原駅に入れず、西武線のダイヤにも影響を及ぼしてしまいます。そのため、途中で折り返し運転を行う場合池袋駅で運転を打ち切ることが通例となっていました。しかし、池袋駅では有楽町線と副都心線のホームが離れた場所(改札外乗換)にあり、サービス上好ましくありませんでした。
 そこで、今回の連絡線工事に合わせて、6線区間の千川寄りにもう1か所シーサスクロッシングを増設しました。これにより、副都心線から来た列車が駅間の本線上で折り返すことが可能になり、有楽町線と副都心線のホームが上下に重なっている千川駅まで運行区間を延長することができるようになりました。

今回取材中に偶然見ることができた「千川行き」。発車案内板の「回送」は池袋駅で営業運転を打ち切った急行の折り返し便。 今回取材中に偶然見ることができた「千川行き」。発車案内板の「回送」は池袋駅で営業運転を打ち切った急行の折り返し便。
今回取材中に偶然見ることができた「千川行き」。発車案内板の「回送」は池袋駅で営業運転を打ち切った急行の折り返し便。

 千川駅の折り返し設備は、東横線直通開始直前の2013年1月に発生した和光市駅での車両トラブルの際“初披露”され、以後副都心線におけるダイヤ混乱の早期収束に威力を発揮しています。今回の取材日もちょうど西武池袋線内でトラブルがあり、この折り返し設備を活用した「千川行き」の列車が多数運行されました。副都心線の急行は千川駅を通過するため、千川行きとなるのは各駅停車のみであり、急行は池袋駅で営業を打ち切り池袋~小竹向原間を回送で往復して折り返しを行っていました。(千川駅には運転停車し、乗務員が交代した。)
 この千川駅折り返しは現在のところ通常ダイヤでは平日朝ラッシュ時に2本、しかも営業運転は池袋方面の片方のみという限定的な使用にとどまっています。しかし、今年3月に東京メトロから発表された中期経営計画『東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~』において、副都心線のサービス向上策として日中時間帯新宿三丁目駅で折り返している東急東横線からの直通列車を池袋駅まで延長することが新たに盛り込まれました。副都心線の池袋駅は引上線が無いため、延長運転ではこの千川駅の折り返し設備が活用されるものとみられます。

 今年3月のダイヤ改正からは副都心線と他社線を直通する速達系列車に「Fライナー」の愛称が付与され、東武東上線内での直通列車の急行運転も始まりました。さらに、来年春からは西武鉄道の新型車両40000系を使用した有料の座席指定列車が運行される予定です。今後もこの直通運転は様々な変化が見られそうです。

▼参考
東京メトロ:小竹向原駅~千川駅間(有楽町線)連絡線設置工事のご案内
→東京メトロによる連絡線工事の解説。トンネル内での工事の写真なども。
東京メトロ有楽町線・副都心線の安定運行を目的とした線路交差解消の連絡線を計画 - 日本鉄道施設協会誌2010年12月号
東京メトロ有楽町線(小竹向原駅~千川駅)連絡線設置工事について(現地配布のパンフレット)
[現場ルポ]東京メトロ有楽町線小竹向原駅~千川駅間連絡線設置工事 - DOBOKU技士会東京第52号(PDF)
有楽町線小竹向原駅~千川駅間連絡線設置工事完成! 2016年ニュースリリース|東京メトロ
中期経営計画「東京メトロプラン2018~「安心の提供」と「成長への挑戦」~」|東京メトロ(PDF/11.26MB)

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