相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)

新横浜駅ビル

神奈川県を走る相模鉄道(相鉄)は、西谷駅から新規に建設される「神奈川東部方面線」を通じて2019年度よりJR湘南新宿ライン、2022年度より東急東横線・目黒線へのそれぞれ直通運転を開始します。前回お伝えした「相鉄・JR直通線」に続き、2013年からは羽沢駅(仮称)から分岐して新横浜を経由し日吉駅に至る「相鉄・東急直通線」の工事が本格化しています。今年6月に「相鉄・JR直通線」に加えてこの「相鉄・東急直通線」についても再調査を行いました。今回はこれに加えて未掲載となっていた昨年の調査内容とも比べながら、現在の状況をお伝えします。

▼関連記事
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016年8月27日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月13日作成)

■相鉄・東急直通線の概要
「神奈川東部方面線」については前回の記事もご覧ください。

相鉄・東急直通線全体の横断面図
羽沢~新横浜・新横浜~新綱島のシールドトンネル 新横浜駅 新綱島駅
新綱島~日吉の単線シールド 2層高架 日吉駅構内のアプローチ部分
相鉄・東急直通線の断面図
上段(1):相鉄・東急直通線全体の横断面図
中段(2~4):左から羽沢~新横浜・新横浜~新綱島のシールドトンネル、新横浜駅、新綱島駅
下段(5~7):左から新綱島~日吉の単線シールド、同2層高架、日吉駅構内のアプローチ部分


 前回お伝えした相鉄・JR直通線羽沢駅(仮称)から分岐して日吉駅に至る相鉄・東急直通線は、全長約9980mで日吉駅手前の東急線接続部分を除き地下になっています。羽沢駅(仮称)から東急東横線大倉山駅付近までは環状2号線(横浜市道)の地下を通り、途中通過する新横浜駅北口の地下には島式ホーム2面3線の地下駅が設置されます。大倉山駅付近から鶴見川手前までは東急東横線の真下を通り、東横線から外れて鶴見川と交差した直後の地点には島式ホーム1面2線の地下駅「新綱島駅(仮称)」が設置されます。新綱島駅から先は上下線が独立したシールドトンネルになり、再び東急東横線の下を進んで日吉駅の手前で地上に出て東急線と合流します。
 工事は2013(平成25)年10月から開始され、当初は2019(平成31)年4月の完成が予定されていました。しかし、次回お伝えする通り新綱島駅を中心に工事が非常に遅れており、先月26日に「相鉄・JR直通線」と同様開業時期が2022(平成34)年度下期へ再延期することが発表されました。

■全区間で工事が本格化

 相鉄・東急直通線については今年6月19日(日)と7月3日(日)の2回に渡り調査を行いました。今回は諸般の事情により未掲載となっていた昨年5月・7月に調査した内容も合わせながら現地の状況をお届けします。なお、全区間に渡り工事が本格化し、内容が多いため羽沢~新横浜間新綱島~日吉間で記事を分割します。新綱島~日吉間については次回お届けします。

●羽沢駅付近
横浜羽沢駅西側の直通線予定地。昨年の段階では家屋が撤去され更地になった段階だった。 同じ場所の今年6月19日の様子(前回の「相鉄・JR直通線」の記事でも掲載)。トンネル掘削が行われている。
左(1):横浜羽沢駅西側の直通線予定地。昨年の段階では家屋が撤去され更地になった段階だった。2015年5月11日撮影
右(2):同じ場所の今年6月19日の様子(前回の「相鉄・JR直通線」の記事でも掲載)。トンネル掘削が行われている。


 相鉄・東急直通線は羽沢駅を出てすぐの地点で相鉄・JR直通線と分岐します。JR直通線は分岐後横を通るJR東海道貨物線横浜羽沢駅構内に入り、同線と合流します。東急直通線は横浜羽沢駅と環状2号線の間の敷地をそのまま直進しながら地下深部へ降下します。この部分は元々民家などが建っていましたが、昨年までに買収が完了して家屋は撤去されました。跡地では用地買収と並行して埋設されていた水路の移設工事が行われ、今年に入ってからはそれらの工事も完了したことからトンネルの掘削が本格化しています。

羽沢トンネル発進立坑の掘削工事。 羽沢トンネル発進立坑の掘削工事。
同じ場所の立坑完成後。掘削に必要なプラント類は西谷トンネルと同様建物に収納されている。 同じ場所の立坑完成後。掘削に必要なプラント類は西谷トンネルと同様建物に収納されている。
上(1・2):羽沢トンネル発進立坑の掘削工事。2015年5月11日撮影
下(3・4):同じ場所の立坑完成後。掘削に必要なプラント類は西谷トンネルと同様建物に収納されている。2016年6月19日撮影


 横浜羽沢駅の北端で相鉄・東急直通線は環状2号線の下に入ります。道路下に入る地点から新横浜駅までの約3.3kmは「羽沢トンネル」という名称で、相鉄・JR直通線西谷トンネルと同様「SENS工法」で建設されます。掘削用のシールドマシンは西谷トンネルで使用したものを整備の上リユースしており、SENS工法の採用と合わせ20億円のコストダウンが図られています。
 シールドマシンの発進に必要な立坑の掘削は2014年春から1年ほどかけて行われました。昨年5月の訪問時点では、掘削作業はおおむね完了しており地下で立坑壁面の仕上げなどが行われていたようです。その後はシールドマシンが地下に搬入され、今年春より掘進を開始しました。鉄道・運輸機構のサイトによると、8月現在では立坑から130mの地点まで掘進が進んでいるとのことです。周辺は住宅地であることから、西谷トンネルと同様シールドトンネルの工事に必要なプラント類は立坑上部に設置された建物内に収納されており、騒音が外に漏れないようになっています。

羽沢トンネル発進立坑付近に掲出されている工事予定表。6月訪問時は一旦掘進を停止し、機材の一部を地下に移動させる作業が行われていた。 建物は環状2号線に近接しているため、シャッターが開いている場合道路上から内部が見える。
左(1):羽沢トンネル発進立坑付近に掲出されている工事予定表。6月訪問時は一旦掘進を停止し、機材の一部を地下に移動させる作業が行われていた。
右(2):建物は環状2号線に近接しているため、シャッターが開いている場合道路上から内部が見える。2016年6月19日撮影


シールドトンネルのプラントを収納した建物は、西谷トンネルと異なり環状2号線に接して建っています。資材搬入口のシャッターが開いている場合、写真の通り道路上から内部が見えることがあります。

環状2号線三枚町バス停付近に設置されている観測機器。
環状2号線三枚町バス停付近に設置されている観測機器。2016年6月19日撮影

 発進立坑から先は新横浜駅まで環状2号線の下を進みます。この区間は地面を切り開かずにトンネルを建設するため、地上で大規模な作業は行われていません。ただし、シールドマシンの進行により地盤沈下が生じていないか常時観測する必要があるため、道路上には所々そのための機器が設置されているのが確認できます。(観測機器には羽沢トンネルの施工者である「大成・東急・大本・土志田JV」と書かれた紙が貼られているため、この工事に関係するものであることが容易にわかるようになっている。)

●新横浜駅
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新横浜駅北口で進む相鉄・東急直通線新横浜駅の掘削工事。 地中連続壁には最近流行のCSM工法が採用された。<br />
左(1):新横浜駅北口で進む相鉄・東急直通線新横浜駅の掘削工事。
右(2):地中連続壁には最近流行のCSM工法が採用された。2015年7月21日撮影


 新横浜駅から新綱島駅にかけての相鉄・東急直通線は、鶴見川により形成された沖積平野の中を通過します。新横浜駅周辺は、地表から15mの深さまで地下水を多量に含む軟弱な粘土が堆積しており、昭和50年代に市営地下鉄の工事が行われた際には、地下水を抜いたことにより駅南側の篠原町地区を中心に25cmもの地盤沈下が発生し、沿線の家屋が変形するなどの被害が出ました。このため、相鉄・東急直通線の建設に当たっては外部の有識者を招いた検討委員会を組織し、地盤沈下を防止するための工法等について助言を得ながら工事を進めています。
 相鉄・東急直通線の新横浜駅は地下4層構造で、地下4階のホームは島式ホーム2面3線になります。中央は両方向から進入可能な線路となっており、2008(平成20)年に開催された事業説明会によるとこの線路は東急線方面からの折り返し運転(4本/h)に使うことが考えられています。(次回説明とおり、日吉駅の折り返し線が現在より1本減るため事実上その代替になる。)
 新横浜駅は相鉄・東急直通線の中では最も着工が早く、2013(平成25)年秋より工事が開始されました。着工後は、最大9車線ある環状2号線の車道を2~3車線規制して地下の掘削が進められています。昨年は掘削に先立ち、周囲の土砂が崩れてこないようにする土留め壁の構築が行われました。土留め壁の構築には、東京メトロ有楽町線小竹向原~千川間連絡線新設工事や渋谷駅再開発事業でも採用された「CSM工法」が使用され、前述のとおり地盤が軟弱であるため、土留め壁本体は強度の高い鋼製とされています。

同じ場所の2016年6月19日の様子。工事は地下に移ったため、地上の機材は少なくなった。
同じ場所の2016年6月19日の様子。工事は地下に移ったため、地上の機材は少なくなった。

 今年に入ってからも引き続き環状2号線は車線規制が実施されていますが、工事はほとんどが地下に移行しており、路上での作業は少なくなっています。現在は地下1~2階部分の掘削が進められており、時折土砂を搬出する様子を見ることができます。

新横浜駅北口の横浜アリーナ側にある円形歩道橋。この交差点の下で相鉄・東急直通線は横浜市営地下鉄ブルーラインと交差する。
新横浜駅北口の横浜アリーナ側にある円形歩道橋。この交差点の下で相鉄・東急直通線は横浜市営地下鉄ブルーラインと交差する。2016年6月19日撮影

 環状2号線の新横浜駅入口交差点(新横浜駅北口の横浜アリーナ側)の下で相鉄・東急直通線は横浜市営地下鉄3号線(ブルーライン)と交差します。この交差部分前後を含む76.5mの区間は市営地下鉄の地上出入口移設が必要になるなど、市営地下鉄の運行に大きく影響するため横浜市交通局に委託して工事が進められています。

市営地下鉄交差部分の施工方法
A-A'断面
B-B'断面
市営地下鉄交差部分の施工方法

 市営地下鉄の駅は地下2層構造で、地下1階が改札口とコンコース、地下2階がホームになっており、トンネルのサイズは高さ11.8m、幅18.3mとなっています。相鉄・東急直通線の新横浜駅は、市営地下鉄と直交する形で2層(高さ14.5m、幅28.7m)建設されます。交差部分は市営地下鉄のトンネルを下から支えながら床下を掘削する必要がありますが、市営地下鉄のトンネルは相鉄・東急直通線との交差は想定した設計にはなっておらず、柱や床の強度に余裕がありません。そのため、仮受用の杭は市営地下鉄の柱の真下へ正確に位置を合わせて打ち込み、上からの荷重を真っ直ぐ杭へ伝達する必要があります。そこで、交差点外側に買収した土地から市営地下鉄の下に向けて作業用の小トンネル(導坑)を6本掘り、その中から柱の位置に合わせて杭を打つ方法がとられました。
 小トンネルを掘削する際、地下水を引き込むと前述の通り周辺の地盤沈下を起こす危険性が極めて高いため、予め掘削範囲の外側に地盤改良(薬剤注入)を行い、地下水の流入を阻止する必要があります。通常トンネル下に地盤改良を行う場合、躯体への穴開けをできるだけ避けるため、トンネル外側から水平や斜めにボーリングをして薬剤を注入することが多いですが、その場合地盤全体へ薬剤が行き渡らず改良しきれない部分が残る可能性があります。新横浜駅付近は地下水の水圧が高く、未注入部が残るとそこから地下水が流入する可能性が高いため、万全を期すべく市営地下鉄のトンネル床に穴を開け、円柱を並べるように連続して地盤改良を行うこととしました。注入用の機材は線路階に搬入すると毎晩片付ける手間が生じるため、上層階に機材を置き線路階を貫通して注入を行います。

小トンネル用の立坑は新横浜駅入口交差点の西側にある。坑内が酸欠にならないよう、空気を送り込む巨大な送風機が設置されている。 円形歩道橋内に掲出されている工事進捗状況の案内板。
左(1):小トンネル用の立坑は新横浜駅入口交差点の西側にある。坑内が酸欠にならないよう、空気を送り込む巨大な送風機が設置されている。
右(2):円形歩道橋内に掲出されている工事進捗状況の案内板。


 8月現在、市営地下鉄下の作業用小トンネルは6本中2本の掘削が完了しています。交差点脇の小トンネル用立坑には地下のトンネル内が酸欠にならないよう空気を送り込む巨大な送風機が2台設置されているのが確認できます。円形歩道橋内には、この工事の進捗状況の案内板が設置されており、内容が随時更新されています。
 なお、この立坑の用地は当初環状2号線上にあった市営地下鉄新横浜駅第5出入口の移設先として確保されていたものでした。立坑の設置に土地が使い果たされてしまったことから、出入口の移設工事は2014年9月以降中断という扱いになっています。

次回は新綱島駅日吉駅の状況をお伝えします。

▼関連記事
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相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月13日作成)

▼参考
相鉄・JR直通線事業および相鉄・東急直通線事業の概要~相模鉄道における都心直通プロジェクト~ - 土木技術2010年10月号18~23ページ(リンク先CiNii)
新駅建設に伴う大規模な地下駅アンダーピニング計画 : 相鉄・東急直通線 新横浜駅: - トンネルと地下2015年7月号23~29ページ(リンク先CiNii)
都心直通プロジェクト - 相鉄グループ
都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線
横浜市 都市整備局 都市交通課 神奈川東部方面線の整備
横浜市交通局 新横浜駅での工事のお知らせ このエントリーをはてなブックマークに追加
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