相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)

相鉄・東急直通線工事のため目黒方面にホームが延伸された日吉駅

神奈川県を走る相模鉄道(相鉄)は、西谷駅から新規に建設される「神奈川東部方面線」を通じて2019年度よりJR湘南新宿ライン、2022年度より東急東横線・目黒線へのそれぞれ直通運転を開始します。今回は前回に引き続き、「相鉄・東急直通線」の新綱島~日吉間の状況をお伝えします。

相鉄・JR直通線については→こちら
相鉄・東急直通線羽沢~新横浜間については→こちら


■全区間で工事が本格化(続き)

●新綱島駅
新綱島駅の断面図
新綱島駅の断面図
新綱島駅の縦断面図。日吉駅寄りの35mは地面を切り開かずに線路階のみを掘削する。

 新綱島駅(仮称)は、鶴見川を渡った直後、東急東横線綱島駅東側の住宅地内に設けられます。ホームは当初対向式ホーム2面2線にすることも考えられていましたが、当駅から日吉駅までのトンネルが単線シールドトンネル2本に決まったことから、トンネル同士の離隔を確保する目的で島式ホーム1面2線に変更されました。トンネルは開削工法を用いた4層構造で、地下4階がホームになります。地上が住宅地であることから、日吉駅寄りの一部は開削部分からトンネル外周に鋼管を打ち込んで内部を掘り広げる工法を使い、地面を切り開かずにホーム階のみを掘削する計画となっています。当初案ではこの非開削工法での建設範囲を日吉駅寄りの65mとしていましたが、その後計画が若干変更となり35mに短縮されています。

鶴見川堤防から見た新綱島駅の予定地。奥が日吉方面。 堤防正面の道路に降りたところ。中央の柵の裏側にCSM工法の掘削機が置かれている。
左(1):鶴見川堤防から見た新綱島駅の予定地。奥が日吉方面。
右(2):堤防正面の道路に降りたところ。中央の柵の裏側にCSM工法の掘削機が置かれている。2015年7月21日撮影


 新綱島駅の工事は昨年春から本格化しています。着工後はまず開削工法でトンネルを建設する部分の外側に周辺が崩れてこないよう抑える土留め壁を打ち込みます。新横浜駅と同様鶴見川がすぐ近くを流れており、地下水位が高く地盤が軟弱であるため、CSM工法を使用して強度の高い鋼製の土留め壁を構築します。

1年前と同じ鶴見川の堤防から新綱島駅の予定地を見る。右手前にあったマンションは取り壊された。 工事車両用ゲートから内部を見る。CSM工法の掘削機が置かれており引き続き土留め壁の工事が行われている。
左(1):1年前と同じ鶴見川の堤防から新綱島駅の予定地を見る。右手前にあったマンションは取り壊された。
右(2):工事車両用ゲートから内部を見る。CSM工法の掘削機が置かれており引き続き土留め壁の工事が行われている。2016年7月3日撮影


 着工から1年が経過した新綱島駅ですが、現在も現場では土留め壁の打ち込みが続いており、さらに追加工事として地盤改良も行われています。新横浜駅よりもさらに鶴見川が近いため、着工前の予想よりも遥かに地盤が軟弱であり、そのままでは地下駅本体の掘削工事に取り掛かれなかったようです、新綱島駅は新横浜駅、日吉駅双方へ向かうシールドトンネルの発進立坑も兼用しており、ある程度掘削が終わらないと駅間の工事に取り掛かれず、スケジュールの遅れが増大します。相鉄・東急直通線の完成予定が3年延期されたのは、この新綱島駅の工事が遅れていることが大きな原因であると見られます。

休業直前の綱島ラジウム温泉東京園。綱島街道に接して立つ煙突は遠くからでも見えるランドマークとなっていた。
東京園の宴会場は数々のイベントが開催され、地域住民の憩いの場となっていた。
東京園の宴会場は数々のイベントが開催され、地域住民の憩いの場となっていた。
左or上(1):休業直前の綱島ラジウム温泉東京園。綱島街道に接して立つ煙突は遠くからでも見えるランドマークとなっていた。
右上or左下・右下(2・3):東京園の宴会場は数々のイベントが開催され、地域住民の憩いの場となっていた。3枚とも2015年5月17日撮影

 新綱島駅の予定地北側には、1946(昭和21)年に創業した銭湯「綱島ラジウム温泉東京園」がありました。綱島は大正時代に温泉が掘り当てられて以後、東京から近い温泉地として賑わっていました。その後新幹線や高速道路網の整備による観光客の志向の変化や、東京のベッドタウンの拡大により住宅地への転換が進み、東京園が綱島地区最後の温泉として残っていました。しかし、今回の相鉄・東急直通線新綱島駅の建設にあたり、東京園もその予定地に含まれたことから、昨年5月19日(火)をもって無期限休業となりました。

休業2か月後の東京園。宴会場のみを解体し、残った部分で仮営業が考えられていた頃。 同じ場所の今年7月3日の様子。残った部分もすべて解体されてしまった。
左(1):休業2か月後の東京園。宴会場のみを解体し、残った部分で仮営業が考えられていた頃。2015年7月21日撮影
右(2):同じ場所の今年7月3日の様子。残った部分もすべて解体されてしまった。


 東京園の建物は大浴場と円形の宴会場の2つの部分により構成されており、地下駅の掘削範囲(開削)に直接重複するのは宴会場の部分のみでした。そのため、休業時点では宴会場部分のみを取り壊し、残った大浴場を使って仮営業することも考えられており、実際に昨年夏には大浴場を残した形で建物が取り壊されていました。しかし、諸般の事情(一説には宴会場を取り壊した際、大浴場の建物も歪んでしまったと言われる)により仮営業は叶わず、今年に入ってから大浴場部分も完全に取り壊されてしまいました。東京園跡地のうち、掘削を行わない部分については現在のところ土がむき出しの更地となっています。
 新綱島駅の周辺は28階建ての高層マンション建設をはじめとする再開発(新綱島駅前地区第一種市街地再開発事業)が予定されており、東京園の敷地もそのエリアに含まれています。東京園については再開発計画の中で「地域資源や歴史的資源の保全・活用」として一応触れられてはいるものの、復活に向けた具体的な動きはありません。再開発では東京園目の前を通る綱島街道の拡幅も予定されており、現在の土地がそのままでは使えなくなることも考慮すると今後の復活は難しいのかもしれません。

●新綱島~日吉間
※この先画像が22枚(1.1MB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。

 新横浜~新綱島間の「新横浜トンネル」は西谷・羽沢トンネルと同じ複線サイズのシールドトンネル、新綱島~日吉間の「綱島トンネル」は単線サイズのシールドトンネル2本で建設される予定です。綱島トンネルは新綱島駅を出ると東急東横線の高架橋まで住宅地の下を真っ直ぐ北上し、その後は上下線がわかれて東横線高架橋両側の側道の地下を進みます。いずれも上記のとおり発進立坑となる新綱島駅の工事が大幅に遅れており、全く着工されていません。

東急東横線日吉~綱島間にある日吉第三架道橋。相鉄・東急直通線綱島トンネルの回転立坑はこの下に設けられる。
東急東横線日吉~綱島間にある日吉第三架道橋。相鉄・東急直通線綱島トンネルの回転立坑はこの下に設けられる。2016年7月3日撮影

 次に工事が始まっているのは、東急東横線日吉~綱島間のほぼ中央にある日吉第三架道橋から先です。日吉第三架道橋の下には、新綱島駅から綱島トンネルのシールドトンネル1本を掘削してきたシールドマシンをUターンさせる回転立坑が設けられます。この立坑から日吉第二架道橋にかけては、東横線の高架橋真下に相鉄・東急直通線の箱型のトンネルが造られます。東横線日吉~綱島間は1990年代に高架化されたもので、将来相鉄・東急直通線が建設されることを考慮した構造にはなっていません。そのため、高架橋直下にトンネルを建設する際は地下に埋まっている基礎杭の一部を撤去し、トンネル天井で高架橋の荷重を支えます。工事の手順は以下の通りです。

日吉第三架道橋付近の高架橋改築手順
日吉第三架道橋付近の高架橋改築手順

①着工前(現状)
②高架下を掘削し、トンネルの天井部分を構築する。
③さらに高架下を掘削してトンネルの床面まで構築した後、内部に残っている高架橋の基礎杭を切断・撤去する。
④トンネル内に直通線の線路を敷設して完成。

日吉第二架道橋~第三架道橋間では掘削に先立ち行われた土留め壁の打ち込み工事。 高架橋側面には変形を検出するためのセンサーが設置された。
左(1):日吉第二架道橋~第三架道橋間では掘削に先立ち行われた土留め壁の打ち込み工事。
右(2):高架橋側面には変形を検出するためのセンサーが設置された。2015年5月17日撮影


 日吉第二架道橋~第三架道橋間では、昨年掘削に必要な土留め壁を打ち込む工事が行われました。営業線のすぐ脇で掘削を行うため、高架橋側面には光を使って沈下や変形を検出するセンサーが柱1本ごとに設置されました。(センサー動作中は「ピッ、ピッ、ピッ…」と音が鳴っていた。)
 今年に入ってからは高架下を掘削して基礎を露出させる作業が行われています。相鉄・東急直通線は日吉第三架道橋に向かって上下線の間隔が広がり、トンネルの幅も大きくなるため、掘削範囲も日吉第三架道橋に向かって広がっていきます。掘削後は、現在の高架橋の柱を取り囲む形で鉄骨の仮支柱を設置する作業が行われています。この仮支柱は地下のトンネルが完成するまでの間高架橋の床を支えるためのものです。

日吉第二架道橋~第三架道橋間では、高架橋の柱周囲にトンネル工事中荷重を受ける鉄骨の支柱が立てられた。 日吉第三架道橋に向かって側道に食い込んでいく掘削範囲。
左(1):日吉第二架道橋~第三架道橋間では、高架橋の柱周囲にトンネル工事中荷重を受ける鉄骨の支柱が立てられた。
右(2):日吉第三架道橋に向かって側道に食い込んでいく掘削範囲。2016年7月3日撮影


 日吉第二架道橋から先も東横線の高架下を走りますが、この付近ではトンネル天井が無くなり掘割の中を走行するようになります。この区間では現在の高架橋の柱が相鉄・東急直通線の線路内に位置してしまうため、高架橋の床から下をすべて取り壊し、高架橋外側に新しい柱を立てます。工事の手順は以下の通りです。

日吉第二架道橋付近の高架橋改築手順
日吉第二架道橋付近の高架橋改築手順

①着工前(現状)
②高架橋外側に新しい橋脚を構築する。
③新しい橋脚の内側にある古い橋脚を取り壊す。
④橋脚内側に直通線の線路を敷設して完成。

なお、直通線が地上に出る区間は住宅が近接していることから、騒音防止のため高架下が防音壁で密閉されることになっています。そのため、この付近では線路の外から直通線の列車が走る様子を見ることはできない模様です。

日吉第二架道橋付近の高架橋。外側に新しい柱を立てている。
日吉第二架道橋付近の高架橋。外側に新しい柱を立てている。2016年7月3日撮影

 日吉第二架道橋の先では、昨年高架橋外側に新しい柱を立てるための杭打ちが行われ、今年に入ってからはその上にコンクリート製の新しい柱を構築する工事が進められています。
 最後の日吉第一架道橋付近からは、東横線の上下線の間に相鉄・東急直通線に加え、日吉駅で折り返す目黒線の引上線が入ってきます。(後述のとおり引上線が現在よりも延長されるため。)そのため、外側に新しい高架橋を建設して東横線を移設し、現在の高架橋はすべて取り壊します。工事の手順は以下の通りです。

日吉第一架道橋付近の高架橋改築手順
日吉第一架道橋付近の高架橋改築手順

①着工前(現状)
②現在の高架橋の外側に1線ずつ新しい高架橋を建設し、東横線をそこに載せ替える。
③既存の高架橋を取り壊す。
④既存の高架橋を取り壊した跡地に外側の高架橋同士をつなぐ形で高架橋を継ぎ足す。
⑤高架下に直通線の線路を敷設し完成。

日吉第二架道橋~第一架道橋では、現在の東横線の外側に新しい高架橋が建設された。 日吉第二架道橋~第一架道橋では、現在の東横線の外側に新しい高架橋が建設された。
日吉第二架道橋~第一架道橋では、現在の東横線の外側に新しい高架橋が建設された。左が建設前(2014年4月5日)、右が建設後(2016年7月3日)。

 日吉第二架道橋~第一架道橋間では、昨年東横線が現在走行している高架橋の両側に新しい高架橋を建設する工事が行われました。工事前、高架下には地上時代に東横線が走っていた路盤の跡が残っていましたが、これも全て切り崩されています。高架橋の本体工事が完了した部分から軌道敷設も開始されており、そう遠くないうちに東横線は新しい線路に切り替えられるものと思われます。

日吉第一架道橋。現在の桁の外側に鉄筋コンクリート製の新しい桁を構築している。 日吉第一架道橋。現在の桁の外側に鉄筋コンクリート製の新しい桁を構築している。
日吉第一架道橋。現在の桁の外側に鉄筋コンクリート製の新しい桁を構築している。2016年7月3日撮影

 日吉第一架道橋の両側でも新しい高架橋の建設が進んでいます。7月訪問時は新しい桁の鉄筋やコンクリートを流し込むための型枠作りが進んでいました。なお、この日吉第一架道橋付近では、相鉄・東急直通線が交差する道路と同じ高さを走行するため、道路を残す場合は付け替えが必要になります。この部分の扱いについては現在のところ発表されていません。

●日吉駅
直通線着工前の配線図(上)
直通線開通後の配線図(下)
日吉駅構内の直通線着工前の配線図(上)と直通線開通後の配線図(下)

 日吉駅は、外側2線を東横線、内側2線を目黒線が使用しており、目黒線は終端側に折り返し運転用の引上線が2線あります。2013(平成25)年に東横線が東京メトロ副都心線と相互直通運転を開始した際、東横線の優等列車の一部が10両化されたため、東横線側のホームが横浜方に2両分延伸されています。相鉄・東急直通線の完成後は、ホームの横浜寄りのすぐのところに東急線と相鉄線の分岐が設けられます。このため、東横線の延伸用ホームは撤去し、代わりに渋谷・目黒寄りにある電気室を撤去して2両分ホームを延伸します。このため、2013年に造られた横浜寄りのホームは鉄パイプや木材を使用した仮設構造になっています。また、目黒線の引上線は現在より本数が1本減る代わりに日吉第一架道橋の先まで長さが延長されます。

渋谷・目黒寄りでは高架下への電気室移転が完了し、ホーム延伸工事が始まった。 昨年夏から新設工事が始まった目黒線ホーム中間のシーサスクロッシング。
左(1):渋谷・目黒寄りでは高架下への電気室移転が完了し、ホーム延伸工事が始まった。
右(2):昨年夏から新設工事が始まった目黒線ホーム中間のシーサスクロッシング。2016年1月21日撮影


 日吉駅では渋谷・目黒寄りでホームを延長するため、予定地にあった電気室を駅から離れた高架下に移転する工事が行われてきました。昨年までに移転工事は完了したことから、今年に入ってから跡地でホームの延伸工事が開始されました。
 同じ頃、目黒線ホームの中間ではシーサスクロッシング(両渡りポイント)を新設する工事が開始されました。これは、現在折り返しに使用している引上線が相鉄・東急直通線の工事に支障となるため、引上線を全体を一時的にホーム側に移動させる必要があるためです。

目黒線引上線の一時移設イメージ。ホーム中間にシーサスクロッシングを置き、引上線全体をホーム側に移動させ、相鉄・東急直通線の工事スペースを確保する。
目黒線引上線の一時移設イメージ。ホーム中間にシーサスクロッシングを置き、引上線全体をホーム側に移動させ、相鉄・東急直通線の工事スペースを確保する。

渋谷・目黒方に延長された日吉駅のホーム。現時点では目黒線側のみ使用。
目黒線側の末端1両分は床板が仮設になっている。
東横線側は2両分の長さがある。
左or上(1):渋谷・目黒方に延長された日吉駅のホーム。現時点では目黒線側のみ使用。
右上or左下(2):目黒線側の末端1両分は床板が仮設になっている。
右下(3):東横線側は2両分の長さがある。3枚とも2016年7月3日撮影

 その後、渋谷・目黒寄りで建設が進められていた延伸用ホームは最低限一般供用可能な状態が整ったことから、7月3日(日)より目黒線側の使用を開始しました。新設ホームは目黒線側が1.7両分、東横線側が2両分あり、目黒線は新設ホーム先端に合わせて停止位置が従来よりおよそ3両分目黒寄りに移動しました。これにより目黒線の終端側は昨年工事が始まったシーサスクロッシングから外れた位置に停車するようになったため、引上線をホーム側に移動させることが可能になりました。なお、新設ホームの目黒線側は、末端の1両分が仮設の床板になっており、相鉄・東急直通線の開通後はシーサスクロッシングを撤去して停止位置を戻すことも考えているようです。(田園調布駅などと同じようなレイアウトになる。)新設ホームの東横線側は7月時点では床の仕上げがまだ一部しか完成しておらず、天井の化粧材も全く取り付けられていない状態でした。今後はこの部分の工事も進められ、東横線も同様に停止位置が移動します。
 一方、ホーム中間に新設されたシーサスクロッシングは現在もまだ使用を開始していません。これはポイントの分岐側を電車が通過する際、車両の端がはみ出す分ホーム先端を削り取る必要があるためです。停止位置の移動後は目黒線側のホームの一部を封鎖して使わなくなったホームドアの撤去やホーム先端を削り取る作業、入換運転用の信号設備移設などが進められています。

ホーム横浜方にあった目黒線と東横線の連絡線。手前も撮影時点で既に駆動用のモーターが取り外されており、その後連絡線自体が撤去された。
ホーム横浜方にあった目黒線と東横線の連絡線。手前も撮影時点で既に駆動用のモーターが取り外されており、その後連絡線自体が撤去された。2016年7月3日撮影

 日吉駅では2007(平成19)年に目黒線延伸のための工事が開始されるまで、東横線の優等列車追い抜きが実施されていました。この名残で日吉駅の前後は東横線から内側2線に進入できる連絡線が残されており、回送や臨時列車の運行に使用されてきました。このうち、横浜寄りにある連絡線は相鉄・東急直通線の工事が本格化したことから、今年に入って使用停止となり5月に上り線の連絡線が撤去されました。7月の停止位置変更取材時には下り線の連絡線も駆動用のモーターが取り外されており、その後連絡線自体が撤去されました。相鉄・東急直通線完成時、この部分は東横線・目黒線双方から相鉄線に向かってY字に分岐する廃線になるため、今後日吉駅では目黒線から東横線横浜方面への行き来できなくなります。(渋谷・目黒方面は連絡線が残されているため引き続き転線可能)

■完成延期、事業費は1.5倍に

 さて、既にお伝えした通り先月26日(金)に鉄道・運輸機構などから「相鉄・JR直通線」は完成時期が2018年度から2019年度下期へ、「相鉄・東急直通線」は完成時期が2019年度から2022年度下期へそれぞれ延期されることが発表されました。これは本レポートでもお伝えした通り、用地買収の難航、昼夜を問わず貨物列車が多数運行されているJR東海道貨物線横浜羽沢駅構内での安全対策、地盤が予想よりも軟弱だった新綱島駅における工事の大幅な遅れなどが原因です。
 一方、東日本大震災以降国内の建設事業者では慢性的な資材・人材不足に陥っており、消費税の5%から8%への増税もあって資材費・人件費が当初計画と比べ大幅に高騰しています。また、着工後の2011(平成23)年には土壌汚染対策法が改正され、新たな調査義務などが課せられたことから費用が嵩んでおり、事業費は「相鉄・JR直通線」が782億円から1114億円に、「相鉄・東急直通線」は1957億円から2908億円に増大し、両路線を合わせた総事業費は2739億円から4022億円へ実に5割も増大することになりました。これにより、費用便益比(B/C)も当初の2.3から1.6程度へ低下するものと予想されています。
 都市鉄道利便増進事業では、開業後鉄道事業者が支払う線路使用料が「新線による受益の範囲内」で設定されるため、今回の事業費増額が直ちに鉄道事業者の経営に深刻な影響を与える可能性は低くなっています。しかし、相鉄線沿線では都心直通を当て込んで系列の不動産会社が住宅開発を盛んに行っており(二俣川駅・南万騎が原駅周辺など)、開業時期の大幅な延期によりその売上に影響が及ぶことは避けられないものとみられます。今後再々延期などという事態が起こらないよう順調に工事が進んでいくことを期待します。

▼関連記事
路線の概要 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(1)(2011年10月3日作成)
現在の工事状況 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(2)(2011年10月14日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月13日作成)

▼参考
相鉄・JR直通線事業および相鉄・東急直通線事業の概要~相模鉄道における都心直通プロジェクト~ - 土木技術2010年10月号18~23ページ(リンク先CiNii)
都心直通プロジェクト - 相鉄グループ
都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線
横浜市 都市整備局 都市交通課 神奈川東部方面線の整備
横浜市 環境創造局 相鉄・東急直通線に係る事後調査計画書の提出について
鉄道3社:直通線、延期 東部方面線事業 用地取得が難航し /神奈川 - 毎日新聞
横浜市 建築局 新綱島駅(仮称)周辺地区における土地区画整理事業の決定等に関する市素案説明会の開催について2 このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサード リンク

カテゴリ:相鉄・JR・東急直通線 の最新記事

相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016年09月10日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016年09月07日作成)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016年08月27日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年05月13日作成)
相鉄・JR直通線建設工事(2013年9月取材)(2014年05月10日作成)
相鉄・JR直通線建設工事(2012年9月8日取材)(2012年09月19日作成)
現在の工事状況 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(2)(2011年10月14日作成)
路線の概要 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(1)(2011年10月03日作成)
その他の記事はこちら

Facebookのコメント

コメント

コメント機能をご利用の際は必ず注意事項のページをご覧ください。
不適切な投稿内容は修正・削除される場合があります。また、内容によっては管理人からのレスが付かない場合がございます。確実に返信が欲しい場合はEメールをご利用ください。

管理者にだけ表示を許可する(管理人からの返信が付きません)


最新記事

首都圏外郭放水路庄和排水機場(2016/10/02)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016/09/10)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016/09/07)
相鉄・JR直通線建設工事(2016年6月取材)(2016/08/27)
茨城県・守谷市のマンホール(2016/08/26)
東京メトロ千代田支線北綾瀬駅ホーム延伸工事(2016年6月4日取材)(2016/08/21)
東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化工事(2016年6月4日取材)(2016/08/14)
次期「書籍化」プロジェクトへの道すじ(2016/08/12)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016/08/06)
東急東横線10両化&関連工事(2015・2016年取材)(2016/08/03)
月別アーカイブ

全記事タイトル一覧

お知らせ

【総武・東京トンネル書籍化プロジェクト】COMIC ZIN様で欠品しておりました「総武・東京トンネル(上・下)」の販売を再開しました。詳しくは→こちら(2016,04,10)
さらに前のお知らせ

おすすめ&スペシャル

「総武・東京トンネル」書籍化プロジェクト 当サイトの前身であるYahoo!ブログから運営通算10周年を記念し、2008年に連載した「建設史から読み解く首都圏の地下鉄道① 総武・東京トンネル」についてほぼ白紙から書き直し、自主制作本(同人誌)にまとめるプロジェクトです。2015年3月のコミケットスペシャル6で総武線区間について取り上げた「上巻」、12月のコミックマーケット89で横須賀線区間について取り上げた「下巻」をそれぞれリリースし、昼過ぎに完売となる大好評となりました。現在書店(COMIC ZIN)様にて絶賛発売中です。

おすすめ記事

@takuya870625 Twitter