馬喰町駅(概説・現地写真(地上)) - 総武・東京トンネル(5)

最終更新日:2020年5月10日
総武・東京トンネル~大深度地下鉄道のパイオニア~(クリックすると目次を表示します)
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■馬喰町駅:2km342m18~2km018m98(L=323m20)

●概説
馬喰町駅と関連施設の位置
馬喰町駅と関連施設の位置
国土地理院Webサイト地理院地図より抜粋


 馬喰町ばくろちょうは、江戸通りと清杉通りが交差する浅草橋交差点から、清洲橋通りと交差する馬喰町交差点にかけての地下にある全長323mの地下駅である。工事誌においては「馬喰町トンネル」とも呼称されている。トンネルは地下5層構造で、最下層の線路階は東京方面へ向けて3.0‰の上り勾配となっており、その深さは開業当時の国鉄では最も深い地表面下32mとなった。ここまで深くなってしまったのは、当駅の東京寄りの地下15m付近に都営新宿線(10号線)、両国寄りの地下20mに地下鉄8号線(未成線)※1がそれぞれ計画されていたためである。地下の構造物は簡単に作り直しができないため、このように無駄が生じることになっても先に計画された構造物は全て避けておく必要がある。一方、都営新宿線については近接して馬喰横山駅の建設が決定し工事も開始されていた。そのため、馬喰町駅の内部に新宿線のトンネルを同時に建設したほか、地下1・4階で同駅への接続準備を済ませておくこととした。
 地上出入口は馬喰町駅単独のものが5箇所に加え、浅草橋交差点地下に建設省(現国土交通省)が建設する地下道に接続する。5箇所ある単独出入口は全てオフィスビルと一体構造である。また、総武トンネルは送風機による集中換気であることから、煙突状の換気口をこれらのビルと一体で作ることとなった。

▼脚注
※1:地下鉄8号線は、1962(昭和37)年に都市交通審議会(その後運輸政策審議会を経て現在は交通政策審議会と称される組織となっている)が発表した第6号答申において、中村橋(西武池袋線)から飯田橋を経て錦糸町に至る路線として盛り込た。このうち西側の中村橋~飯田橋間は有楽町線の一部として開業したが、残りの区間については豊洲、新木場へ経由地が変更された。錦糸町を通る地下鉄は半蔵門線(11号線)に変更されており、両路線を結ぶ豊洲~住吉の路線の建設が現在計画されている。このため、馬喰町駅付近を通るルートは完全な未成線となった。


馬喰町駅開削部分の建設方法。一旦地下1階まで掘り下げた後、地下に作業スペースを移しを工事継続した。 馬喰町駅開削部分の建設方法。一旦地下1階まで掘り下げた後、地下に作業スペースを移しを工事継続した。
馬喰町駅開削部分の建設方法。一旦地下1階まで掘り下げた後、地下に作業スペースを移しを工事継続した。

 深さ30m規模の地下駅を通常の開削工法で建設しようとした場合掘削量は膨大なものとなり、コストや完成後の余剰スペースの大幅な増加が見込まれた。そこで、地下5階の線路階については階段を設ける両端部分のみ開削工法で建設し、それ以外の部分をシールド工法で建設する手法がとられた。
 馬喰町駅の着工時、江戸通り上にはまだ都電(室町線)が走行していた。そのため、長期間道路上に大型の機械を展開することができず、大急ぎで地下1階までを掘削した後、そこに機械類を移設して下層階の掘削を続けることとした。下層階の掘削にあたっては、浅い地層からの地下水流入を抑える目的で地中連続壁を構築した。これは地面を長方形状に掘削し、そこに鉄筋コンクリートでできた壁を埋め込むことで連続的に土留め壁を構築していくものである。土留め壁構築後は、中間柱となる鋼管を深礎工法※2により建て込み、それを支えにして通常の開削工法と同様の手順でトンネルを構築した。

▼脚注
※2:古来の井戸掘りと同じく小型の機械や人力で細い穴を掘る方法。


馬喰町駅で採用された単線シールドトンネル2本+連絡通路によるホーム建設方法 東京メトロ千代田線国会議事度前駅のホーム。単線サイズのシールドトンネルを2本並行させ、双方をいくつかの連絡通路で接続している。
左(1):馬喰町駅で採用された単線シールドトンネル2本+連絡通路によるホーム建設方法
右(2):東京メトロ千代田線国会議事度前駅のホーム。単線サイズのシールドトンネルを2本並行させ、双方をいくつかの連絡通路で接続している。


 一方、シールド工法でのホーム建設については当時前例が少なかったことからいくつかの案が検討された。その結果、同時期に建設が進んでいた営団地下鉄千代田線国会議事堂前駅を参考に、線路・ホームをシールド工法で建設し、トンネル間を複数の通路で接続する方式を採用した。
 シールドトンネルが位置する地下30m付近は、本来であればかなり高い水圧の地下水が存在するはずであったが、当時は地下水汲み上げにより完全に枯渇していた。そのため、地下水に関しては浅い地下水の浸透のみを考慮すればよかった。馬喰町駅では、シールドトンネル上部に並行して通路や換気ダクトとなる細いトンネルが建設されることから、そこから浅い帯水層の下に向けて薬液注入を行い、浸透防止を図ることとした。これによりシールドトンネル自体は圧気工法を併用せずに掘削している。シールドトンネル完成後は、2本のトンネルどうしを結ぶ連絡通路を山岳トンネル工法により建設した。連絡通路建設の際はシールドトンネルのセグメントが一部取り外され不安定になるため、トンネルが変形しないよう事前にセグメント内部に補強用の鋼棒を埋め込んでいる。また、完成後のシールドトンネルは完成当初より二次覆工※3を行っている。

▼脚注
※3:シールドトンネル内面に補強・防水・美観等のためもう1枚壁を作ること


●現地写真(地上)
馬喰町問屋街の記念碑
馬喰町問屋街の記念碑

 馬喰町の「馬喰」とは、牛馬の売買を斡旋する商売人のことである。江戸時代、この地にはそういった関連の商売が繁盛していたことから、地名に残されているのである。現在はアパレル関連の問屋が軒を連ねている。通常は卸専門であり一般向けの販売はしていないが、毎年7月と12月に開催される大江戸問屋祭りでは卸価格そのままで一般販売が実施され、毎回多くの買い物客で賑わう。また、近年の傾向として東京都心へのアクセスに優れることからビジネス・観光客向けのホテルが多く建設されるようになっている。

浅草橋交差点内にあるC1~C5出口。浅草橋交差点横断地下歩道として国土交通省が管理している。 地下道内は通路両側に大量のコーンが並ぶ異様な光景が広がる。
左(1):浅草橋交差点内にあるC1~C5出口。浅草橋交差点横断地下歩道として国土交通省が管理している。
右(2):地下道内は通路両側に大量のコーンが並ぶ異様な光景が広がる。


 両国寄りの浅草橋交差店内にあるC1~C5出口は、国土交通省が浅草橋交差点横断地下歩道として管理しているもので、案内板の形式もJR東日本標準のものとは異なっている。この地下道があるため、浅草橋交差点では横断歩道が一部省略されている。地下道は幅3mほどであるが、通行区分とホームレス対策のためかパイプ柵とおびただしい数のカラーコーンが並べられ、なんともいえない威圧感を覚える。地下道自体は建設後大きなリニューアルはされていないようであるが、照明は十分に完備されており駅構内と同等の明るさは確保されている。

出口5がある早川ビル。ビル後ろに見えるくすんだ四角い物体が換気塔。
出口5がある早川ビル。ビル後ろに見えるくすんだ四角い物体が換気塔。

 馬喰町駅本体の一番両国寄りの端にある出口5は江戸通り南側の早川ビルに併設されている。早川ビルの裏手には換気塔も併設されており、ビルの下を回り込んで馬喰町駅の地下2・3階に接続されている。換気塔は江戸通りから見て手前側が給気(地下への吸い込み)、奥が排気となっている。(換気塔を上から見た様子はGoogleマップの航空写真から確認できる。

琲韻豆馬喰町ビル併設の出口3 出口4がある長坂ビル。
長坂ビルは2016年にリニューアルされ「トレインホステル北斗星」となった。 長坂ビルと裏にある換気塔。(2017年頃に隣接ビルが解体された際撮影)
左上(1):琲韻豆馬喰町ビル併設の出口3
右上(2):出口4がある長坂ビル。
左下(2):長坂ビルは2016年にリニューアルされ「トレインホステル北斗星」となった。
右下(4):長坂ビルと裏にある換気塔。(2017年頃に隣接ビルが解体された際撮影)


 駅中央付近には出口3・4がある。出口3は琲韻豆馬喰町ビル(2020年現在の1階テナントは「麺屋よし」)に併設されている。出口4は江戸通りを挟んでその反対側にある長坂ビルに併設されている。ビル裏手には換気塔が併設されているが、こちらは敷地の都合上薄型となっている。
 なお、長坂ビルは2016年にJR東日本子会社のジェイアール東日本都市開発が取得し、同年12月にトレインホステル北斗星をオープンさせた。これは近年急増している訪日外国人をメインターゲットとしたホテルで、2015年に運行を終了した寝台列車北斗星で使用されていたベッドや内装品を使用している。ベッドは大半が開放B寝台を流用したものであるため、カプセルホテルなどと同じ簡易宿泊所として分類される。内部には簡易キッチンを併設したラウンジもあり、そこでも食堂車「グランシャリオ」のパーツが使用されるなど細部までこだわったデザインとなっている。
(内部の様子については取材が完了次第掲載予定)


出口1がある吉野家馬喰町ビル。裏には換気塔もあるが見えない。 マンション1階にある出口2
左(1):出口1がある吉野家馬喰町ビル。裏には換気塔もあるが見えない。
右(2):マンション1階にある出口2


 馬喰町交差点先の東京寄り駅端には出口1・2がある。出口1は吉野家馬喰町ビルに併設されている。ビル裏には換気塔もあるが、周辺含めビル自体の高さがそれなりにあるため地上の道路上からは確認できない。江戸通り反対側の出口2は元々オフィスビルに併設されていたが、近年建て替えられ上部はマンションとなっている。

(つづく)

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