馬喰町駅(概説・現地写真(地上)) - 総武・東京トンネル(5)


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■馬喰町トンネル:2km342m18~2km018m98(L=323m20)
▼参考
工事誌(総武線)456・457・566・567・596・597・834~837ページ

●概説
馬喰町トンネル」は総武トンネルのうち、馬喰町駅の駅部分を構成する地下5層、全長約320mの区間で江戸通りの直下に位置する。東京方へ向けて3.0パーミルの上り勾配となっており、最下部は地表面から31.1mの深さで開業当時は国鉄で一番深い駅としてその名を全国に轟かせていた。ここまで駅を深くしたのには理由がある。それは当駅の千葉方の地表面下20mの部分を地下鉄8号線(現在の有楽町線に相当する)が通ることになっていたからである。だが、ご承知の通りこの路線は実際には建設されていない。地下鉄道では後で交差する路線ができたからといって簡単に線路の構造を変えたり位置をずらしたりすることはできないため、このような「無駄」が生じることになっても計画されている構造物は全て避けておく必要があるのだ。


馬喰町駅断面図

馬喰町トンネルは両端部(計157m)を地下5層目まで全面開削工法で建設しており、この部分に改札口からホームまでのエスカレータ・階段、そしてトンネル換気用の送風機と空調機械を置いている。また、東京方は地下3階部分に都営新宿線(1978(昭和53)年)開業)が通るため、建設時にこの部分のトンネルも同時に施工している。一方、中央部(166m)は5層全てを開削で建設すると無駄なスペースが多くなるため、改札外コンコースとなる地下1階と換気ダクトとなる地下2階のみを開削で建設し、残りの地下5階のホームは単線シールド2本で建設している。このシールドトンネルは両側の開削部分を発進・到達立坑とし、距離が短いためほかの区間と違い止水のための薬液注入のみを行い、圧気工法は用いずに建設している。


馬喰町トンネル平面図
(C)国土交通省 国土情報ウェブマッピングシステムカラー空中写真データ(昭和54年)に筆者が加筆

地上への出入口は全部で10箇所あり、千葉方の5箇所は既存の地下道に接続する形とし、残りの5箇所はすべて江戸通り沿いのビルと一体的に建設されている。また、送風機による強制換気を行う都合上路上に換気口を設置できないため、地上出入口に隣接して換気塔を3本設置している。(実際の換気塔に名称はついていないが、この記事では説明をわかりやすくするため千葉方からA、B、Cと記号をふってある。)
なお、総武トンネルの建設開始時にはまだ江戸通り上を都電が走っており、線路の仮受け・移設などが行われた。この航空写真の撮影時、都電はすでに廃止となっている。

●現地写真(地上)

靖国通りにあるC1出入口

C1~C5出入口は既存の「浅草橋地下道」と兼用している。古い地下道であるため、エレベータやエスカレータ、空調設備などは設置されていない。
ちなみに、馬喰町界隈は日本最大級の繊維問屋街である。小売店への卸商(一般への販売はしない店)がほとんどであるが、中には常時一般向けにも販売している店や普段は卸商専業である店が在庫処分品に限り破格の安さで一般向けに放出しているケースも散見される。うまく使うと思わぬ品を安く手に入れられることもあるだろう。


5番出入口が入る「早川ビル」(左)と換気塔の構造を示した図(右)

馬喰町駅本体の一番千葉方にある5番出入口は「早川ビル」と一体になっており、このビルの後ろに換気塔Aがある。(写真の矢印で示した物体)換気塔は給気・排気の2本が並んだ構造で、江戸通りから見て手前側が給気口、奥側が排気口となっている。換気塔からのダクトは出入口の下を通過した後、給気側が地下2階、排気側が地下3階へそれぞれ通じている。この構成は残る2本についてもほぼ同様である。

4番出入口が入る「長坂ビル」(左)とその裏手の換気塔B(右)


1番出入口が入る「吉野家馬喰町ビル」。この裏に換気塔Cがあるが、道路からは見えない。


▼参考:3つの換気塔の航空写真(Yahoo!地図情報)
換気塔A
換気塔B
換気塔C
※いずれも航空写真左上の「」マークをクリックするとポインタを消すことができます。

●現地写真(地下)
1記事に収まらないため次の記事に回します。


<2009年7月26日追記>
補足:地下鉄8号線は現在の有楽町線に相当する。1962(昭和37)年6月8日に発表された都市交通審議会(現在の運輸政策審議会の前身)の第6号答申によれば8号線は西武池袋線の中村橋から総武線の錦糸町を結ぶ路線とされており、馬喰町駅の北側にそのルートが想定されていたものと思われる。
なお、8号線の西側は西武有楽町線を経由する形で当初の計画通り建設されているが、東側は豊洲を経由し、住吉から11号線(半蔵門線)に乗り入れる形に変更された。この豊洲~住吉間は2000(平成12)年に発表された運輸政策審議会第18号答申で「2015年までに整備すべき」と位置づけられている。しかし、東京メトロは株式上場を最優先することから「副都心線を以って新線建設を終了する」との方針を示しており、建設の目処は立っていない。

▼参考:2009年追記分の出典
東京地下鉄道副都心線建設史 - 東京地下鉄株式会社 2009年3月

▼関連記事
半蔵門線と有楽町線の微妙な関係(2006年7月11日)
→豊洲・住吉の両駅は8号線の延伸区間が分岐・合流できる形で建設されている。

(つづく) このエントリーをはてなブックマークに追加
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