真木よう子氏コミケ出展中止騒動に思うこと(2/2)

カテゴリ:雑記 | 公開日:2017年08月31日05:17
その1からの続き

■問題が無かった部分(1):クラウドファンディングはただの先払いである
 クラウドファンディングで制作費を募ることに関して「法人による作品になる」「他人のカネで同人誌を作るな」という指摘があった。これについてはクラウドファンディングに対する大きな勘違いが背景にある。クラウドファンディングとは、プロジェクトの立案者に代わってパトロンから支援金を集金し、(所定の手数料を引いたうえで)プロジェクト立案者に横流ししているにすぎない存在である。よって、ファンドの運営会社自体はプロジェクトそのものには何ら金銭的支援は行っておらず、支援者にとってはファンドを経由して同人誌を買う際支払う代金を先払いしているだけということになる。法人がカネを出しているわけではなく、「欲しい」と表明した者がカネを出しているのである。
 クラウドファンディングを利用するにあたり見られた別の指摘として「制作者が途中で制作を放棄して費用だけ持ち逃げするリスクがある」という主張も見られた。だが、クラウドファンディングを利用するにあたってはファンド運営会社による審査があり、実現の見込みが無いものは却下される。また、クラウドファンディング成立によりプロジェクトが実行に移された後、万一プロジェクトが完遂されなかった場合は、パトロンに対しその損失の一部(CAMPFIREの場合最大80%)を補てんする保険も用意されている。かつて同人界隈で多くの禍根を残したといわれる「個人が独自に制作費を募る」原始的な方法と比べれば遥かに信用度は高いはずである。
 なお、クラウドファンディングに関してコミケットアピール等の出展関係書類では現在のところ特に規定が無い。このあたりは参加者の判断に委ねるべきところであるが、本件のような論争が度々起こるようであればガイドラインの策定も必要だろう。

■問題が無かった部分(2):一次創作で黒字を出すということ
 「同人とは利益を出さず慎ましく行うものだ」という主張もかなり多く見られた。確かに、既にあるコミックやアニメのキャラクター設定のみを使用し、オリジナルのストーリーを展開する二次創作であれば、原作者の権利を侵害する法的には限りなくクロに近い行為である以上、制作にかかった実費以上の利益を出すことは許されない。
 しかし、今回の件は真木よう子氏自身が被写体となった完全オリジナルの写真集、一次創作である。100%自身で権利を保有している以上、価格に関して「お伺い」を立てる必要がある人間もいない。ましてや320ページのフルカラー冊子となれば何冊作るかにもよるが印刷費だけで100万円単位が必要となるのは確実であり※2、800万円というクラウドファンディングの数字も決して突拍子もない金額には見えない。このように一次創作の価格設定に関しては制作者の「言い値」で通る部分が多分に存在するのだ。
 一方読者の側もその価格設定をどう受け止めるかについては自由である。内容に比して不当に高いと感じれば買わなくたっていいし、制作者が売れ残った大量の在庫を抱えて身動きが取れなくなろうが、責任は制作者自身が被ればいいだけで誰の迷惑にもならない。これはは同人の強みでもある。
 コミックマーケットの出展規程との整合性はどうだろうか?確かにコミケットアピールには先の通り「過度の営利を追求する活動は慎んでください」とある。一方で同じ項目の中に「同人活動と商業活動の区別は曖昧になりつつある」こと、さらにその先のページに進むと「税金」という項目があり、個人事業として確定申告や記帳の義務があることが記されている。また、あくまで筆者が又聞きした噂であるが、大手の個人サークルではその同人活動のみで生計を立てている者や節税対策としてサークルを法人化している者もいるそうである。(先に述べたとおり法人のサークル出展は違反であるが、経過措置または黙認されているものと思われる。)
 つまり、準備会としても表向きには営利目的での活動は推奨はしていないが、かといってそういった人物・団体を強制的に排除することもしておらず、今回の件についても黒字を出すことだけを理由に出展辞退まで追い込むというのは明らかに行き過ぎだったのではないのか。(実現するかは別として)黒字化して制作費を回収し次回作の原資にできることは、長期的な活動の継続を考えれば全てのサークルにとって有意義なはずである。しかし、そういう考えはどうやら少数派であり、個人に消耗を要求するブラック企業的な思想の方が大多数のようである。

▼脚注
※2:参考までに筆者が80ページのフルカラー冊子を600冊制作した際は40万円を要した


■「あらゆる表現を受け入れる」はずじゃなかったのか
 長くなったが、今回の件で明確に問題があったと言えるのは「作品の内容が一部未定のまま諸手続きを始めてしまった」という点だけであり、他の指摘された問題点に関してはコミックマーケットの規定上完璧とは言い切れないものの、ほとんど問題は無かったと見てよい。「あらゆる表現を受け入れる」はずのコミックマーケットから「オタクへの理解がなっていない」などという漠然とした理由で排除されるにどころか、社会的に抹殺される者が出てきてしまったのは至極残念である。
 また、一次創作に関して利益を出すことに関して嫌悪感を持つ層が相当数いると知れたことも本件の悪い意味での大きな収穫であった。「同人=二次創作=権利者に配慮して黒字を出してはいけない」というコミュニティの掟が独り歩きし、一次創作おいてもそれを盲目的に押し付けてくる者がいるためものとみられる。筆者もブログ・同人(いずれも完全オリジナルである)・商業誌への寄稿を合わせると確定申告が必要な程度の収益は出ており、今後そのような正義感を暴走させた者が度々やってくるようでは安心して活動を続けられない。そのような日が来ないよう今回執拗に攻撃的な発言をしていた者たちには猛省を促したい。
同人という表現活動が限られた、裕福な人間のみに認められた高貴な営みとならないために… このエントリーをはてなブックマークに追加
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テーマ:同人活動 ジャンル:サブカル

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