書店委託販売実施中!詳細は▼▼▼から
東急新玉川線書籍化プロジェクト
「京葉線新東京トンネル」も引き続き販売中です。詳細は→こちら

更新通知専用Twitterアカウント
@Rf_notify

あなたの街の桜、大丈夫ですか?…桜の老齢化問題

2018年04月02日21:42  花・植物 写真あり

東中野の桜並木の脇を走る中央線E233系電車

今年も全国各地で桜の花が満開となりました。多くの人たちを楽しませてくれる美しい桜の花ですが、現在この桜の木が危機を迎えています。今回は中央線東中野駅西口の桜並木などを例にしながらこの桜の危機について考えたいと思います。

■各地で桜が次々と伐採!
東中野駅西口前から中野駅方面に向かって続く桜並木 桜並木の前にある植樹の経緯に関する説明板
左(1):東中野駅西口前から中野駅方面に向かって続く桜並木
右(2):桜並木の前にある植樹の経緯に関する説明板


 JR中央線東中野駅西口から中野駅方面に向かう線路沿いには約30本のソメイヨシノが植えられていました。このソメイヨシノは1954(昭和29)年に地元住民が苗木を購入して植えたもので、以来60年以上に渡り住民や鉄道ファンを楽しませてきました。Yahoo!ブログ時代から当サイトを熱心にご覧頂いている読者の皆様なら覚えていらっしゃるでしょうか?筆者も2007年にこの東中野の桜並木を開花時期に訪れて撮影しており、その写真が数年後東京ウォーカー(角川書店)に掲載されました。筆者が商業誌に写真を寄稿したのはこの時が初めてです。

最近伐採されたと思われる切り株 桜並木沿いのフェンスには周辺住民により伐採に反対するアピールが掲出されている
左(1):最近伐採されたと思われる切り株
右(2):桜並木沿いのフェンスには周辺住民により伐採に反対するアピールが掲出されている


 このように多くの人々を魅了してきた東中野の桜並木ですが、ここ数年老齢化顕著になってきています。2013年には強風により折れた枝が中央線の線路脇に落下したことから、中野区では樹木診断を実施し不健全と判定された木を伐採することを決定しました。これを聞きつけた周辺住民では伐採に反対する署名活動を開始し、合計約1万人の署名を集めることに成功しました。しかし、鉄道運行の安全が最優先であることもあり、決定は覆らず今年2月までに合計16本が伐採されてしまいました。

▼参考
東中野西口の桜の不健全樹木について | 中野区公式ホームページ
東中野さくら通信

2014年に全ての桜が伐採された東急池上線洗足池駅付近。跡地では新たな桜の植樹が行われており、十数年後には桜並木が再生することが期待される。
2014年に全ての桜が伐採された東急池上線洗足池駅付近。跡地では新たな桜の植樹が行われており、十数年後には桜並木が再生することが期待される。2014年4月5日撮影

 このように鉄道沿線の桜並木が伐採されたのは東中野が初めてではありません。2014年には長らく桜の撮影地として知られてきた東急池上線洗足池~石川台間の桜並木が老齢化を理由に全数伐採されてしまいました。また、同様に道路の街路樹や公園にある桜においても老齢化が深刻になっており、伐採される例が相次いでいます。

■ソメイヨシノの寿命は60年程度
 ソメイヨシノという桜の品種は江戸時代末期に染井村(現在の駒込付近)にあった植木職人が作り出したものといわれています。開発から200年ほどしか経っていない歴史の浅い品種であるため、生態や寿命については未解明な部分も残っています。青森県弘前市にある弘前公園では、同県特産であるリンゴの栽培手法を取り入れ、ソメイヨシノでは一般的にタブーとされてきた枝の剪定を積極的に行うことでソメイヨシノを樹齢100年以上まで延命させることに成功しています。

▼参考
未来への挑戦特集インタビュー「樹の命をつなぐ」 - TOHKnet 東北インテリジェント通信 広報誌 JointT vol.12

 ただし、このように延命できるのは手間ひまかけられるからこそ可能なことであり、これまでの多くの実績から街中にある一般的な環境でのソメイヨシノの寿命は60年程度といわれています。これは人工的に選び抜かれた苗木を接ぎ木により増殖させていったため、全国各地にあるソメイヨシノが全て同じ遺伝子でできたクローンであり病気や環境の変化に弱いためといわれています。

■植え替え資金調達のための新しい方法
 先の東中野の例では、桜並木の直下に非常に高頻度で列車が運行される鉄道があったことから、万一倒木が発生すると列車の脱線など重大事故に至る恐れがあるため、やむを得ず老齢化した木から伐採せざるを得ないということになりました。署名運動では「伐採がやむを得ないなら植え替えを」という陳情も行われていますが、現在にところ中野区は植え替えについて消極的な姿勢を貫いています。これは植え替え自体に1本あたり数十万円とも見込まれる費用がかかること、鉄道の線路に近接しているため剪定作業の際はJR東日本の許可が必要となり、なおかつ1日の作業時間が列車が運行していない深夜の2時間ほどしか取れずきめ細かな管理ができないこと、前述のソメイヨシノの寿命の短さから数十年後にまた植え替えが必要になってしまうことなどが理由とみられます。

目黒川の桜。近年はInstagramなどでの写真のシェア流行などもあり人気が急上昇している。 植え替えが進む目黒川沿いの桜。手前の4本が新しい木。(写真は品川区内のもの)
左(1):目黒川の桜。近年はInstagramなどでの写真のシェア流行などもあり人気が急上昇している。
右(2):植え替えが進む目黒川沿いの桜。手前の4本が新しい木。(写真は品川区内のもの)


 このように維持コストの高さから、ソメイヨシノを管理の簡単な別の樹木に植え替える自治体がある一方、目黒川沿いの桜並木で知られる目黒区ではふるさと納税制度を活用して全国から桜の植え替えに必要な資金を募る試みも行われています。同様の試みは八尾市(大阪府)、上越市(新潟県)でも行われています。また、鳥取県琴浦町では最近注目されているクラウドファンディング形式での資金調達が行われています。クラウンドファンディングは最初にプロジェクトで必要となる金額を目標として設定し、賛同者から出資を募ります。出資額が目標金額を上回った場合プロジェクトは成立となり実行に移されます。逆に目標金額を下回った場合プロジェクトは不成立となり出資者が支払った出資金は全額返金されます。このように目的意識を持って市民が桜の植え替えに必要な費用を出資できる仕組みができつつあることから、今後はこれらを活用して桜の植え替えが進められることが期待されます。

▼参考
「目黒のサクラ基金」のサクラ寄付金を受け付けています 目黒区
万本桜公園の桜を復活させる|ふるさと納税のガバメントクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」

 折りしも東京都ではこのふるさと納税により住民税の流出が深刻さを増していることが報道されています。通常このようなふるさと納税による税収の減少分は、国から地方交付税により75%が補填されることになっています。しかし、東京23区などは地方交付税不交付団体であるため、ふるさと納税による他県への税収流出が丸々減収として働いてしまいます。少子高齢化や高度経済成長期に整備したインフラが一斉に改修時期を迎えて各自治体の財政が厳しさを増す中、どうしても街路樹など市民生活に直結しない部分については整備を後回しにせざるを得ない面があります。豪華な返礼品に目が行きがちなふるさと納税制度ですが、普段住んでいる地域にとってそれが本当に相応しいことなのかどうか今一度考え直す必要もあるのではないでしょうか?

このエントリーをはてなブックマークに追加


スポンサード リンク
前の記事 次の記事