京急大師線地下化工事(2019年2月26日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2019年03月03日00:38
京急大師線産業道路第1踏切

来る2019年3月3日(日)より京急大師線東門前~小島新田間の線路が地下化されます。この地下化工事については2012年に調査を実施していますが、地下化直前段階の調査として今週はじめに再度現地を訪れてまいりました。切替準備が進む現地の様子を中心に見てまいりたいと思います。

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京急大師線地下化工事(2012年10月27日取材)(2012年11月24日作成)

■京急大師線東門前~小島新田間地下化工事の概要


 京急大師線は、川崎市の中心に位置する京急川崎駅と臨海部の工業地帯にある小島新田駅を結ぶ全長約4.5kmの私鉄路線です。当路線はその名の通り、川崎大師への参拝客を輸送する目的で現在の京浜急行電鉄の前身である大師電気鉄道が1899(明治32)年1月に開通させたもので、現在の京急電鉄はここから順次路線を延伸して行ったことから、京浜急行電鉄発祥の地として川崎大師駅前に石碑が設置されています。
 京急大師線には終点付近で交差する産業道路(神奈川県道6号東京大師横浜線)をはじめとする15箇所の踏切が存在し、交通渋滞や地域の分断といった問題が生じています。そこで川崎市では、小島新田駅を除く京急大師線のほぼ全線(事業延長5.0km)を地下化することとし、1993年6月に都市計画決定がなされました。その後、特に交通渋滞が激しい産業道路との踏切を早期に立体交差化するため、東門前駅から小島新田駅までの980mの区間を「段階的整備区間」として先行して地下化することになり、2009年頃から本格的な工事が続けられてきました。当初完成は2014年の予定でしたが、一部地権者が用地買収に応じていなかったことから完成を2019年に5年間延期していました。

段階的整備区間の断面図。東門前駅側は将来延長可能な構造となる。
段階的整備区間の断面図。東門前駅側は将来延長可能な構造となる。

 一方、それ以外の区間については様々な事情により工事が進んでおらず、2017年には計画を大幅に縮小することが決定しました。これについては後述します。

■切替準備が進む
 東門前~小島新田間の段階的整備区間についてはその後順調に工事が進んだことから、いよいよ2019年3月3日に地下線への切替が実施されることとなりました。今回は2月26日(火)に調査した切替地点の状況を中心にお伝えします。

●東門前駅側切替地点
東門前駅前の踏切から産業道路駅方向を見る。線路脇には桁を降下させるためのジャッキが設置されている。
東門前駅前の踏切から産業道路駅方向を見る。線路脇には桁を降下させるためのジャッキが設置されている。

 今回の地下化区間はトンネルの深度が浅いことから、全て開削工法で建設されています。このため、工事区間内は2010年頃より線路が仮設桁に作り変えられています。東門前駅先の地下線への接続地点は、今回線路脇に青色のジャッキが準備されており、3月3日の地下切替時は現在線の桁の一部を降下させてそのまま流用する模様です。また、その先については線路脇に空間があるため、クレーンで直接桁を撤去することが考えられます。

東門前駅前の踏切周辺の線路。枕木とレールの間に木片が挿入されており、地下化時にこれを取り去り線路の高さを下げる。 東門前駅前の踏切周辺の線路。枕木とレールの間に木片が挿入されており、地下化時にこれを取り去り線路の高さを下げる。
東門前駅前の踏切周辺の線路。枕木とレールの間に木片が挿入されており、地下化時にこれを取り去り線路の高さを下げる。(2枚とも右側が産業道路駅方向で、右に向かうほど木片が厚くなっている。)

 東門前駅前の踏切付近では事前準備として、枕木とレールの間に木片が挟まれています。木片は地下に入る産業道路駅側に向かって厚くなっており、下段の枕木は地下化後の縦曲線に合わせて敷設されていることがわかります。3月3日の切替時は上段の木片を取り去り、地下に向かって滑らかにレールが繋がるよう高さを調整します。

●産業道路駅
産業道路駅の地上ホーム。2010年頃に仮設化されており、大きな変化はない。
産業道路駅の地上ホーム。2010年頃に仮設化されており、大きな変化はない。

 産業道路駅は、今回の地下化区間の中では着工が早く2010年にはホーム・線路共に仮設化されていました。以後地上からは見えませんが線路下では着々とトンネルの構築が進められてきました。

産業道路駅構内では、地下化後に現在線を横断する通路を設置する準備が進んでいた。
改札口からホームへ向かう通路の途中に準備されている地下ホームへの階段
改札口からホームへ向かう通路の途中に準備されている地下ホームへの階段
左(1):産業道路駅構内では、地下化後に現在線を横断する通路を設置する準備が進んでいた。
右(2・3):改札口からホームへ向かう通路の途中に準備されている地下ホームへの階段

 産業道路駅の地下ホームは現在と同じ対向式2面2線で、駅舎は地上に置かれます。このため、現在の線路跡地が改札口コンコースとなり、地下のホームへ降りる階段は上下線別で設置されます。現在使用中の仮駅舎からホームへ向かう通路の途中には地下のホームへ降りる階段やエレベーターが完成した状態で準備されていました。また、現在の線路上には上下線それぞれの地下ホームの階段どうしを接続する通路を設置するようで、訪問時は列車運行の支障にならない範囲で床板の工事が行われていました。


京急大師線産業道路第1踏切 - YouTube

●小島新田駅側切替地点
小島新田駅側の地下出口に出現した門型鉄枠。地下切替時は現在線の桁を上昇させこの枠に固定する。 小島新田駅側の地下出口に出現した門型鉄枠。地下切替時は現在線の桁を上昇させこの枠に固定する。
小島新田駅側の地下出口に出現した門型鉄枠。地下切替時は現在線の桁を上昇させこの枠に固定する。

 産業道路駅の先の地下線出口では線路の上に門型の鉄骨が組まれていました。弊サイトを昔からご覧になっている皆様ならお気づきでしょう。これは現在線の桁をジャッキアップして固定するためのものであることを。
 小島新田駅側の地下線出口は、線路ギリギリまで民家が迫っており、大型重機が乗り入れるスペースが全くありません。(このため、今回の地下化工事ではこの区間のみ線路が単線化されている。)そこで地下化切替時は、仮設桁化されている現在線の桁を地下線の走行の妨げにならない高さまでジャッキアップして固定し、後日少しずつ解体していく方法が採用されました。これは東急建設が開発した「直接地下切替工法」Shifting Track Right Under Method:STRUM”と呼ばれるもので、東急目黒線不動前~洗足間や京王線調布駅の地下化工事等多数の実績があります。6年前に実施された東急東横線と東京メトロ副都心線相互直通運転開始に伴う代官山駅構内での線路切替工事では、終電から始発の間のわずが3時間半で工事を完遂させ、その高い技術力が評価されたところです。STRUMが採用された京王線調布駅、東急東横線代官山駅の記事は以下から。

▼関連記事
京王線調布駅地下化完成(その2:布田駅・国領駅・駅間・その他)(2012年8月28日作成)
東横線・副都心線直通開始(1)渋谷地上駅最終日・代官山駅工事(2013年4月1日作成)

▼参考
直下地下・直上高架切替工法 STRUM| 技術・サービス | 東急建設株式会社

線路が地上に出る途中の区間では、コンクリート製防音壁の構築中。 小島新田駅直前に新設された折り返し運転用のシーサスクロッシング。
左(1):線路が地上に出る途中の区間では、コンクリート製防音壁の構築中。
右(2):小島新田駅直前に新設された折り返し運転用のシーサスクロッシング。


地下線出口から小島新田駅の間では、線路両側にコンクリート製の防音壁を構築する作業が行われていました。また、今回の地下化後は産業道路駅から小島新田駅までの間全線が複線に戻ることから、折り返し運転に使用しているポイントも小島新田駅近くに移動します。小島新田駅の直前には新しいシーサスクロッシングが準備されていました。


京急線各駅に掲出された大師線運休のお知らせ

 京急大師線は、この地下線切替に伴い2019年3月3日(日)の始発から午前10時頃まで京急川崎~小島新田間の全線が運休となり、バスによる代行輸送が実施されることになっています。地下化に先立つ今年1月下旬には、産業道路駅地下ホームの見学会も開催されました。(筆者も応募しましたが、残念ながら落選でした。)切替地点の様子とあわせ、新しい駅の様子はできるだけ早い時期に調査したいと考えています。

■川崎大師駅以西の地下化は中止
 京急大師線の残る地下化予定区間のうち、川崎大師駅以西については現在線の南側に平行して整備する川崎縦貫道路などへの移設し、新駅も設けることが計画されていました。(冒頭の地図の紫色の線)これは川崎市が計画していた川崎縦貫鉄道との相互直通運転が予定されていたためです。川崎縦貫鉄道は、1960年代より市内を東西に走る市営地下鉄として調査が続けられていたもので、川崎駅から武蔵小杉、宮前平を経由して小田急線の新百合ヶ丘駅を結ぶ計画となっていました。しかし、川崎市は慢性的な財政難状態にあり当面の間鉄道新線の整備は不可能であることから、2013年には縦貫鉄道に関係する予算執行が停止されていました。
 また、京急大師線の移設先である川崎縦貫道路(首都高速6号川崎線延伸部)については、地上の一般道路(国道409号)の整備がようやく本格化している段階であり、地下の高速道路や大師線の鉄道トンネルの整備には当面着手できる状況ではありません。このように京急大師線地下化を取り巻く環境は厳しい状態が続いていることから、2017年11月に開催された川崎市議会まちづくり委員会において、川崎大師駅以西の地下化の中止が決定されました。川崎大師~東門前間の地下化については事業が継続されており、現時点では2024年度の完成が目標となっています。地下化が中止された川崎大師駅以西の区間については、踏切が4箇所残ることからこれらの処理方法を中心とした代替案が今年4月を目処に発表される予定です。
 なお、2013年以降凍結されていた川崎縦貫鉄道の計画本体についても、昨年3月の総合都市交通計画見直しにより正式に中止が決定しました。川崎市では代替案としてJR南武線の長編成化や路線バスの拡充などを進めていく方針としています。
 
▼参考
東門前駅~小島新田駅間を地下化します | 2018年度 | ニュースリリース | 企業情報 | 【KEIKYU WEB】京急電鉄オフィシャルサイト
川崎市:京浜急行大師線連続立体交差事業
川崎市:川崎縦貫鉄道整備推進
川崎市:川崎縦貫道路

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