首都高速大橋JCT見学会「山手トンネルウォーク」(その2)

カテゴリ:道路 | 公開日:2010年03月17日23:00


3月7日(日)の首都高速中央環状線大橋JCT見学会「山手トンネルウォーク」の続きです。

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首都高速大橋JCT見学会「山手トンネルウォーク」(その1)(2010年3月13日作成)

■ループトンネル内では様々な展示

左・右:ループトンネル中央で行われていたイルミネーション
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ループトンネルの中央では走行レーン両脇の天井にある照明を消してイルミネーションが行われていました。また、床にプロジェクタを置いて天井にも流れ星をイメージしたイルミネーションが行われており、天井があるトンネルならではの演出も見ることができました。



左上:山手トンネルの特徴をアピールした各種パネル展。
右上:は大橋JCTの再開発完成予想模型。
左下:トンネル内で使用する各種車両の展示
右下:ドライブシミュレータで大橋JCT内の走行を再現

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ループトンネル内では全長にわたり中央環状新宿線のこれまでの歴史や工法上の特徴などを示したパネル展や、開通後にトンネル内で使用する緊急用の自動車の展示が行われていました。また、大橋ジャンクションの建設に際して並行して行われている再開発やドライブシミュレータを用いて山手トンネルから3号渋谷線までの運転を体験できるスペースも設けられていました。
なお、右上の写真の通り大橋ジャンクションのループトンネル屋上は公園として利用される予定となっており、ループに隣接して建設されるマンション2棟とデッキで直結されることになっています。大橋ジャンクションを含むこれら再開発地区は「O-Path(オーパス)目黒大橋」と名付けられており、2012(平成24)年の事業完成が予定されています。

■シールドトンネルへ

ループとシールドトンネルの接続地点。右の仮設壁の裏では中央環状品川線のトンネルを建設中。

ループをちょうど2周降り切るとトンネルの天井が少し高くなった後、断面が円形のシールドトンネルとなります。ここから先、神山町換気所付近までは今回見学した中央環状新宿線→3号渋谷線のトンネルが上層、3号渋谷線→中央環状新宿線のトンネルが下層の2層構造で地下を進みます。実際の工事では神山町換気所と大橋ジャンクションのほぼ中央に設けられた松見坂立坑からシールドマシンが発進し、今回見学した上層(中央環状新宿線→3号渋谷線)のトンネルを掘削してこの大橋ジャンクションの立坑に到達した後、シールドマシンをエレベータで降ろしてUターンさせ下層(3号渋谷線→中央環状新宿線)のトンネルを掘削するという手順がとられました。シールドマシンの直径は13m、重量は2000トンもあり、この規模のシールドマシンをUターンさせてトンネルを建設するのは世界でも初めての試みです。
なお、シールドトンネルに入ってから数十mの間は写真の通り右側に不自然な壁が設置されています。これはこの場所に3年後に開通予定の中央環状品川線のランプが合流してくるためで、この壁は供用中の部分と工事中の部分を分離する目的で設置されているものです。この仮設壁の裏側ではシールドトンネルの一部を取り壊して地上から掘り下げた別のトンネルを合流させる計画で、トンネルの反対側には取り壊しに伴うトンネルの変形を観測するためのセンサーが設置されています。


左へカーブすると山手通りの下に入る。このような低いアングルで撮影できるのも開通前のイベントならではの醍醐味だろう。

シールドトンネルに入って100mほどでトンネルは左へ大きくカーブします。ここから先は山手通りの下に入ります。ちなみに、この場所に立っていると数分おきに頭上から「ドドドドド…」と振動が伝わってきますが、これはトンネルの真上に東急田園都市線のトンネルが通っているためです。(このトンネルは大橋ジャンクションから国道246号線の下へ斜めに入り込んでいるため、この付近ではすでに国道246号線の真下となっている。)

■トンネル内の換気・防災設備

左は大橋JCTループトンネル、右はシールドトンネル。青く囲んだ部分が給気口、赤く囲んだ部分が排気口。
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工事中のループトンネルの断面。左の大きい空間が走行レーンで、その右側の2段に分かれた細い空間が換気ダクトである。(上が排気、下が給気)2009年4月5日撮影
※クリックで元の画像を表示

最後に、トンネルの換気・防災設備について解説したいと思います。
トンネルの換気はトンネルに並行してダクトを設け、トンネル各所で換気を行う「横流換気式」が採用されています。今回見学した大橋ジャンクションのループトンネルでは走行レーンに並行する形でダクトを設置し、壁面に給気口、天井に排気口を設置しています。また、シールドトンネルでは路面の下をダクトとし、床面近くに給気口、天井に排気口を設置しています。トンネル内の風速は交通量の多寡により常時変化するため、壁面に設置された風速計のデータをもとに換気所のファンの稼働率を変化させ、トンネル内の空気を常にクリーンな状態に保つようになっており、火災時はエリアを区切って給気や排気を一時的に停止することで煙の拡散を防止することも可能なシステムにもなっています。この換気システムはすでに稼働しており、壁面の給気口に手を当てるとわずかながら風が出ているのがわかりました。

▼脚注
※:これに対し、立坑などでまとめて換気を行う方式は「縦流換気式」と呼ばれる。この方式は換気ダクトの設置スペースがない山岳部の道路トンネルや換気量が少ない鉄道トンネルで採用されることが多い。



左上:25m間隔で設置されている火災検知器
右上:200m間隔で設置されている緊急用のスピーカー。指向性を高めるカバーがついている。
左下:50m間隔で設置されている泡消火栓
右下:トンネル天井のスプリンクラー

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次にトンネルの防災設備です。トンネル内にはテレビカメラのほか、写真左上の火災検知器(赤外線式)を25m間隔で設置しており事故発生を早期に検知できるよう監視が行われています。ここでもし事故の発生が検出された場合、トンネル入口の電光掲示板や写真右上の緊急用スピーカーでドライバーに事故発生を繰り返し伝達します。この緊急用スピーカーは音声がトンネル壁面で反響しあって聞き取りづらくなるのを防止するため、スピーカーごとに音声の発出に時間差をつける「時間遅延技術」が採用されています。また、複雑なカーブとなっている大橋ジャンクションのループトンネルではスピーカーに格子状のカバーを取り付けることで音に指向性を持たせ、さらに聞き取りやすいよう考慮されています。これらの技術は首都高速道路株式会社と東京大学が共同で研究・開発したものです。
トンネル火災時にはトンネル壁面に50m間隔で設置されている写真左下の泡消火栓と写真右下のスプリンクラー(水噴霧消火設備)を使用して消火活動が行われます。泡消火栓は水をかけると延焼を拡大してしまう恐れがある可燃性液体(ガソリンなど)の消火に使用するもので、噴出圧力も低いため初期消火用に多数設置されています。一方、スプリンクラーは本格的な消火や延焼防止のために用いるものですが、この首都高速のトンネルでは水を霧状に噴出させることで発火物全体を包み込み、効果的に消火を行うことができます。今回はトンネル最奥部でこのスプリンクラーの動作実演が行われていました。


水噴霧消火設備の実演(YouTube)音量注意!!

この地点ではトンネルの片側にしかスプリンクラーが設置されていませんが、水が霧状になっていることによりトンネル反対側まで効果的に散水することができているのがわかります。なお、今回はトンネル内のバルブを操作して散水を行っていますが、開通後は管制室からの遠隔操作により火災時に自動的に散水がおこなわれることになっています。


左:非常口までの距離を示した案内板
右:200~300m間隔で設置されている非常口


事故発生時はトンネル壁面に200~300m間隔で設置された非常口を通って地上に避難することができます。大橋ジャンクションのループトンネルについては直接地上に脱出できる構造となっていますが、地下深部を通るシールドトンネル部分についてはそのような構造にすることはできません。そこで、シールドトンネル部分については壁面に非常口を設ける点は同じですが、その先は路面の下にある換気ダクト(給気)に接続する構造としました。この給気ダクトはトンネル内での火災発生中も新鮮な外気が供給されており、被災者が煙にまかれることなく安全に避難できるようになっています。

この大橋ジャンクションは来る2010年3月28日に中央環状新宿線の西新宿JCT方面が開通、そして3年後の2013(平成25)年度には中央環状品川線大井JCT方面が開通する予定です。首都高速の新時代を象徴する山手トンネル建設の様子に今後も注目していきたいと思います。

▼参考
東京SMOOTH:中央環状線 C2インフォメーションセンター
東京SMOOTH Diary(首都高オフィシャルブログ)各記事
大橋ジャンクション概要:大橋ジャンクションでつながる|東京SMOOTH:中央環状線 C2インフォメーションセンター
中央環状品川線について|東京SMOOTH:中央環状線 C2インフォメーションセンター
※以下は当日現地配布の資料
OHASHI JUNCTION 工事ガイドVer.2 首都高速道路株式会社東京建設局大橋建設グループ
山手トンネルの安全・防災 首都高速道路株式会社
大橋地区第二種市街地再開発事業パンフレット 東急不動産・三井不動産レジデンシャル・有楽土地

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