JR飯田橋駅ホーム移設工事(2020年1月25日取材)

カテゴリ:鉄道:建設・工事 | 公開日:2020年03月25日23:27
建設中の飯田橋駅新ホーム脇を通過するE231系500番台。

JR中央線飯田橋駅では、安全性向上対策として現在急カーブ上にあるホーム全体を直線区間に移設する工事が進められています。前回の調査から約1年が経過し、現地では線路の降下作業が終盤を迎えています。1月下旬に調査した現地の様子をお届けします。

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JR飯田橋駅ホーム移設工事(2019年2月16日取材)(2019年3月22日作成)

■JR飯田橋駅の歴史とホーム移設工事の概要
飯田橋駅周辺の1992年の航空写真。現在飯田町駅跡地は大和ハウスや大塚商会の本社がある「飯田橋アイガーデンテラス」となっている。
飯田橋駅周辺の1992年の航空写真。現在飯田町駅跡地は大和ハウスや大塚商会の本社がある「飯田橋アイガーデンテラス」となっている。※航空写真は国土地理院地図・空中写真閲覧サービスより。

 JR中央緩行線の飯田橋いいだばしは、1928(昭和3)年に牛込うしごめ駅・飯田町いいだまち駅の2つの駅を統合して誕生しました。牛込駅は現在の飯田橋駅の新宿寄りにあり、飯田橋駅への統合後は千葉方面から来た電車の折り返し線が設置されていました。一方、飯田町駅は現在の飯田橋駅の千葉寄りにあり、統合後は東京都心で消費される紙の輸送拠点(貨物専用駅)として使用されました。その後飯田町駅は印刷工場の郊外移転や、貨物列車のコンテナ化に伴う対応の困難などにより1999(平成11)年をもって廃止となり、跡地にはオフィスビルが建設されています。また、前述の牛込駅跡地の引上線についても使用頻度の減少や、ATOS(東京圏輸送管理システム)整備に伴う中央線の信号システムのスリム化の動きもあって、現在は線路が撤去されています。

飯田橋駅停車中の電車とホームの間の隙間 ホーム下に設置されている転落検知マット(矢印の先の黒いシート状の物体)
左(1):飯田橋駅停車中の電車とホームの間の隙間
右(2):ホーム下に設置されている転落検知マット(矢印の先の黒いシート状の物体)。2014年11月27日撮影


 飯田橋駅は、牛込駅と飯田町駅の間の半径300mという急カーブ上に設けられました。このような急カーブ区間では、車体中央・両端が線路の外側へ大きくはみ出して通過するため、ホームと電車の間を大きく離す必要があります。飯田橋駅の場合、この隙間が最大で33cmもあるため、乗降客の転落事故が多発しています。JR東日本ではこれまで対策として

●ホーム下の警告用回転ランプ・ブザー
●線路転落検知マット(踏むと駅内外の非常停止信号が点灯する)
●電車とホームの間の隙間に関する警告放送(列車停車中流れ続ける)


などを設置してきましたが、依然として年間10件程度同様の事故が続いています。

飯田橋駅の移設前後の位置
飯田橋駅の移設前後の位置

 そこでJR東日本では、2014(平成26)年に飯田橋駅の抜本的な安全対策としてホーム全体をを新宿寄りの直線区間へ約200m移設し、電車とホームの間の隙間を解消することを発表しました。新宿寄りのホーム移設予定地は前述の引上線跡地であるため、新規の用地取得を行う必要が無く比較的短期間・低コストでホームを移設することが可能です。この工事にあわせて既存の西口駅舎は一旦すべて取り壊し、千代田区と共同で1000m2の駅前広場を備えた新駅舎を建設します。この新駅舎には店舗も併設される予定です。なお、現在のホームの千葉寄りには東口改札がありますが、この改札口はホーム移設後も残される予定となっており、現在のホームは通路として利用されます。
 なお、新ホームの予定地は国の史跡にも指定されている江戸城外堀跡地に位置しています。このため、文化庁や有識者による委員会とも協議の上で新ホームの構造物は史跡の景観を壊さないよう十分考慮された位置・デザインとする予定です。(詳細は2017年10月3日作成記事「■新ホームの基本設計とホーム移設に伴う勾配緩和」節をご覧ください。)工事期間は概ね4~5年を見込んでおり、2020年中の完成を目標に進めていくことになっています。総事業費は概ね100億円を見込んでいます。

■線路の降下作業が大詰め

 JR飯田橋駅ホーム移設工事は2014年より行われています。2016年には西口が快速線の線路脇に設けられた仮設駅舎に移動し、旧西口は完全に取り壊されました。跡地では現在新ホームと新しい西口駅舎の建設が進められています。今回は今年1月25日に調査した現地の様子を元に説明していきます。

ホーム新宿寄りにある駅事務室。線路とホームの降下が進み、周囲との間に大きな段差が発生している。
ホーム中央から新宿方面を見たところ。左の快速線との間に明確な段差ができている。
新宿方面行きの停車目標付近で「出土」した古いコンクリート基礎。
左(1):ホーム新宿寄りにある駅事務室。線路とホームの降下が進み、周囲との間に大きな段差が発生している。
右上(2):ホーム中央から新宿方面を見たところ。左の快速線との間に明確な段差ができている。(同じ場所の2014年11月27日の様子
右下(3):新宿方面行きの停車目標付近で「出土」した古いコンクリート基礎。

 飯田橋駅の新ホームは前述した外堀史跡への侵入量を最小限にする観点から、現在のホームの新宿寄りの端から200mの区間に設けられます。着工前、予定地の半分は33.3‰の急勾配となっており、安全上そのままではホームを設置することができませんでした。また、この区間は線路上空に西口駅舎や牛込橋があるため、線路をかさ上げすることもできませんでした。そこで、逆に現ホームの途中から線路を掘り下げて勾配を18.0~18.5‰に平準化することとしました。
 2018年夏以降はこの線路を掘り下げる工事が行われており、工事区間では線路が通常のバラスト軌道に改築されているほか、架線を吊り下げる金具もボルトを抜き差しすることで高さを調整できる構造に変更されています。線路の降下は終電~初電の間に少しずつバラストを減らすことにより行われており、線路の形状を精密に維持するのが難しいことから、対象区間では45km/hの速度制限が設けられています。
 線路の降下作業が始まってから1年半が経過し、ホーム新宿寄りにある事務室付近ではドアの前に大きな段差ができています。また、線路を掘り下げたことでバラストの下に埋まっていた昔の電化柱の基礎と思われるコンクリートの塊が「出土」しているなど、建設が古い路線ならではの苦労も垣間見ることができました。

建設中の西口新駅舎。駅前広場を設けるため旧駅舎と比べ若干奥まったところに作られている。
建設中の西口新駅舎。駅前広場を設けるため旧駅舎と比べ若干奥まったところに作られている。(同じ場所の2014年11月27日の様子

 新宿寄りの牛込橋脇の旧西口跡では、昨年完成した人工地盤の上で新駅舎の建設が進んでいます。新駅舎と牛込橋の間には千代田区と共同で1,000m2の駅前広場を整備することになっており、新駅舎の構造物は旧駅舎と比べて若干奥まったところに作られています。新駅舎は店舗も併設されることになっており、2~3階建て相当の高さとなっています。

新宿寄りで建設中の新ホーム。ホーム柱には早くも駅名板が取り付けられていた。
新宿寄りで建設中の新ホーム。ホーム柱には早くも駅名板が取り付けられていた。(同じ場所の2018年7月18日の様子

 さらに新宿寄りで建設中の新ホームは、屋根板の取り付けも終わり、一部の柱には「いいだばし[JB16]」と書かれた駅名のプレートが取り付けられるなど、使用開始に向けた準備が開始されています。未撮影ですが、今月中旬に通過した際にはホーム床面のタイルの敷き詰めも始まっていることを確認しています。タイルは信濃町・千駄ヶ谷・代々木の3駅と同様に将来のホームドア設置を前提としたレイアウトになっており、乗降口部分の点状ブロックが2列になっています。


中央線では3月22日(日)に予定通り千駄ヶ谷駅新ホームの使用が開始されました。一方、これらインフラ整備の一つの目標となっていた今年夏の東京オリンピック・パラリンピックは、新型コロナウイルスの世界的大流行を受け、開催が1年程度延期となることが正式に決定しました。日本国内でもいよいよ感染者数の急激な増大が始まっており、「東京封鎖」もささやかれる中、鉄道やバスなどの交通機関も難しい舵取りを迫られることが予想されます。現在も続くインフラ整備への影響についても注視してまいりたいと思います。

▼参考
JR中央線飯田橋駅ホームにおける抜本的な安全対策の着手について - JR東日本(2014年7月2日発表)(PDF/202KB)
【東京五輪に照準】JR東日本の拠点駅大規模改修が続々 ~ 日刊建設工業新聞ブログ
日刊建設工業新聞 » JR東日本/飯田橋駅改良(東京都千代田区)/8月下旬から前田建設JVで既存解体
中央線飯田橋駅改良計画-列車とホームの離隔解消対策- - 日本鉄道施設協会誌2017年1月号84~87ページ
中央線飯田橋駅改良 - 日本鉄道施設協会誌2017年3月号55~57ページ

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JR飯田橋駅ホーム移設工事(2016年6月取材)(2016年8月6日作成)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2017年8月17日取材)(2017年10月3日作成)
JR飯田橋駅ホーム移設工事(2019年2月16日取材)(2019年3月22日作成)

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