京葉線の車両(過去の車両) - 京葉線新東京トンネル(25)

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新東京トンネルを含む京葉都心線新木場~東京間は1990(平成2)年3月10日に開業を迎えた。
前回(第24回)まででこの新東京トンネルの構造に関する解説が終了したので、今回は総武・東京トンネルのレポートのときと同じくこの区間に乗り入れる京葉線と武蔵野線の車両について2回に分けて解説することとする。
■京葉線新東京トンネルに乗り入れる車両の特徴
総武・東京トンネル開業時は前例のない大都市の深部を走る地下鉄道ということで貫通扉やATC(自動列車制御装置)の装備といった地上区間とは大幅に仕様の異なる車両が特別に用意された。一方、京葉線新東京トンネルでは、既に開業済みだった新木場以東の地上区間を走行していた車両を特に改修などは行わずにそのまま乗り入れさせている。これは総武・東京トンネルの時代と比べて、列車の防火対策(不燃化)がはるかに進んでおり地上区間向けの車両であっても地下区間の走行に対応できる耐火性能を持っていることや、列車同士の衝突を確実に防止できるATS-Pが開発され、見通しの悪いトンネル区間でも地上信号を使用しつつ安全な運行が保障されるようになったためである。また、京葉線新東京トンネルはシールドトンネルを多用していることから、比較的断面が大きく貫通扉が無くても、緊急時は側面から避難が可能※1であることもそれを手伝った。
▼脚注
※1:国鉄時代に地下鉄車両の構造基準となっていた「A-A基準」、並びに民営化後二制定された「普通構造鉄道規則」ではトンネルと車体側部の距離が40cm以上ある場合は列車前面の貫通扉を省略できる規定となっていた。(この規則を引き継いだ現在の「鉄道の技術上の基準を定める省令」の解釈基準でも同様の扱いとなっている。)
■過去に乗り入れていた車両
●103系(京葉線・武蔵野線)


左:京葉線の103系。2005年4月11日、千葉みなと駅で撮影
右:武蔵野線の103系。2005年7月4日、海浜幕張駅で撮影
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103系は1963(昭和38)年から1984(昭和59)年にかけて東京・大阪の大都市圏の通勤路線用に投入された車両である。
京葉線と武蔵野線の103系はいずれもこの2線用に製造されたものではなく、他の路線から転用した車両である。京葉線用の編成は当初新習志野駅で分割併合する運用や外房・東金線への直通運用があったため、一部編成が6両+4両の形態となっておりこの中には低運転台のクハ103形やクモハ103形など初期製造の車両も含まれていた。また、武蔵野線用の編成は当初は6両編成であったが、乗客増に伴い1996(平成8)年までに全編成が8両化されており、こちらも一部に初期製造の車両が含まれていた。この初期製造の車両はいずれも老朽化対策で行われた車体更新により地下区間に対応した仕様となっており、新東京トンネル区間への乗り入れ自体に問題はなかったようである。なお、クモハ103形はATS-P形搭載に際して床下にスペースがないため、前面の運行番号表示窓を塞いでその部分に搭載しており、外見上のポイントとなっていた。また、本レポートで解説したとおり京葉線新東京トンネル内には30パーミルを超える急勾配が2箇所あるため、武蔵野線の103系は電動車の数を多くした6M2Tの編成となっていた。
この103系は駅間隔が短い通勤路線用として設計されたため低速重視のギア比になっており、常時最高速度100km/h近くでの走行となる京葉線での運用はかなり無理があった。加えて、1990年代末期になると各線の車両とも老朽化に伴う重大な故障※2が頻発するようになったため、JR東日本では管内にある千両を超える103系を全廃することを決定。以後新型車量への置き換えが急速に進むようになり、京葉線でも次の記事で述べるする201系への置き換えが行われ、2005(平成17)年に消滅した。
▼脚注
※2:特に故障が酷かったのが中央・総武緩行線の103系で、1999(平成11)年には運行中に車内の配電盤から火花が出て乗客が火傷をしたり、床下機器が過熱して発煙し消防車が出動する騒ぎが起きている。
●183系(特急「さざなみ」「わかしお」)

183系0番台。この車両は前面の列車名表示がLED化されていた。2000年7月?、京葉線千葉みなと~稲毛海岸間にて撮影
1990年3月の京葉線東京~蘇我間の全線開業後、本レポートでも触れた未完成の成田新幹線の路盤を活用する形で成田線が成田空港直下の地下駅乗り入れが開始された。これに合わせ、東京と成田空港を直結する特急「成田エクスプレス」の運行が開始された。この成田エクスプレスの運行開始に伴い、総武快速線の線路容量を空ける必要性が生じたため、総武快速線経由で運行されていた内房線の特急「さざなみ」と外房線の特急「わかしお」を京葉線経由に変更された。この両列車で使用されていた183系は総武快速線東京地下駅開業の際製造されたもので、当然のことながら地下区間に対応した設計となっている。このため、ATS-Pの搭載以外は何ら改造を加えることなく京葉線新東京トンネルへの乗り入れが可能となった。
この183系は年月の経過とともにその車内設備(簡易リクライニングシートなど)がサービス上好ましくないものとなり、新型車への置き換えが進み京葉線では2006(平成18)年をもって定期の特急列車から引退した。
▼参考
交友社「鉄道ファン」
2008年10月号(通巻570号)「JR首都圏通勤電車図鑑」
2009年8月号(通巻580号)「JR特急形電車最新カタログ」
ほか
(つづく)
<2012年5月23日:小修正>

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