東急新横浜線(新横浜~新綱島) - 相鉄都心直通プロジェクト2019・2020(3)

新横浜トンネル陥没地点で行われている地盤注入

相鉄線の都心プロジェクトの続きです。3回目の今回は新横浜駅から北で建設が進んでいる東急新横浜線のうち、新横浜~新綱島(仮称)間のの工事の状況についてです。(相鉄・東急新横浜線の概要については繰り返しの掲載による記事の肥大化を防ぐため省略します。詳細は以下の1回目・2回目の記事をご覧ください。

▼関連記事
相鉄新横浜線(羽沢横浜国大~新横浜) - 相鉄都心直通プロジェクト2019・2020(2)(2020年9月15日作成)
相鉄・JR直通線開業 - 相鉄都心直通プロジェクト2019・2020(1)(2020年8月26日作成)

相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016年9月10日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016年9月7日作成)

■軟弱地盤に大苦戦!

●新横浜間~新綱島間(新横浜トンネル)
新横浜トンネルの位置
新横浜トンネルの位置
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」に加筆したものである。


 新横浜~新綱島間のトンネルは「新横浜トンネル」の名称で、全長は羽沢トンネルとほぼ同じ約3.3km、サイズはやや小さい複線幅の直径9.7mとなっています。新横浜を出てから約1kmは環状2号線の下を進み、その後は道路から外れて住宅地の下を横切ったのち、大倉山駅に向かいます。そこから鶴見川直前までは東急東横線の直下を進み、その後は東横線から外れて鶴見川の下を横断、綱島駅東側に設けられる新綱島駅(仮称)につながります。トンネル自体は新横浜駅側・新綱島駅側のごく一部の区間を除いて比較的強度の高い泥岩や砂層(上総層群)中を通過しますが、着工前の調査の結果この付近の地層には微量のメタンガスが含まれていることが判明しました。メタンガスが掘削中のトンネル内に噴出すると引火・爆発の恐れがあり極めて危険であるため、この区間では泥水加圧式シールド工法が採用されました。これは掘削面を密閉したうえで内部に水を満たし、カッターで削り取られた土砂を水とともに地上の処理プラントに搬出する方式で、掘削面が直接坑内に露出する部分が無いことから安全性に優れた方法となっています。シールドトンネルのセグメントは地盤強度の違いにより合成セグメント(コンクリートと鋼材の複合構造)・RC(鉄筋コンクリート)セグメントの2種類を使い分けています。

新綱島駅端に設けられた新横浜トンネルの発進立坑。建屋内部にコンクリート製のセグメントが積まれている。 建屋に掲出されている鶴見川地下の横断許可標識。
左(1):新綱島駅端に設けられた新横浜トンネルの発進立坑。建屋内部にコンクリート製のセグメントが積まれている。2020年7月15日撮影
右(2):建屋に掲出されている鶴見川地下の横断許可標識。2019年2月21日撮影


陥没地点の位置
陥没地点の位置
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「淡色地図」「全国最新写真」に加筆したものである。


 新横浜トンネルの掘削は新綱島駅端に設けられた立坑から開始されました。2018年10月に発進したシールドマシンは順調に掘削を続けてきましたが、新横浜駅まで残り約550mの地点(港北区大豆戸町まめどちょう、横浜アリーナ手前)まで到達した今年6月、2度に渡りトンネル直上の地上が陥没する事故が発生しました。

1回目の陥没地点(横浜市営バス港北車庫前)。 2回目の陥没地点(バーミヤン新横浜店前)。ボーリング調査と空洞注入が行われている。
左(1):1回目の陥没地点(横浜市営バス港北車庫前)。
右(2):2回目の陥没地点(バーミヤン新横浜店前)。ボーリング調査と空洞注入が行われている。 2020年7月15日撮影


 1回目の陥没事故は6月12日(金)に新横浜駅から600mほど離れた横浜市営バス港北営業所前で発生しました。同地点は6月6日(水)にシールドマシンが通過しており、その後12日朝になって地表面に沈下が見られたことから監視をしていたところ、午後に入って陥没が発生しました。穴のサイズは長さ11m、幅8m、深さ4mと大きななものでしたが、事前に陥没の兆候が表れていたことから迅速に交通規制が行われ、人的被害は回避されました。陥没発生後は直ちに埋め戻し作業が開始されましたが、作業途中で近くに新たな陥没が発見されたことから復旧まで5日間を要し、環状2号線で渋滞が発生するなど混乱が生じました。
 この1回目の陥没事故の復旧が完了してわずか2週間後の6月30日(火)、300mほど離れたバーミヤン新横浜店前で2回目の陥没事故が発生しました。この時も穴の深さは2mほどと大きなものでしたが、発生したのが早朝で交通量が少なく人的被害は回避されています。こちらも直ちに埋め戻しが行われ、4日後に交通規制が解除されています。
 1回目の陥没事故が発生した時点で事態を重く見た鉄道・運輸機構は直ちにシールドトンネルの掘進を停止し、大学教授など有識者を招いた委員会を開催し、原因究明と再発防止策について検討を行いました。委員会では陥没地点における掘削面への水の供給圧力、排出した土砂の量、掘削後の裏込め注入量の3つのデータを中心に検証を行い以下の結論が出されました。

①排泥管に詰まりが発生。 ②掘進停止により砂層が水に曝され流動化。過剰に土砂が取り込まれる。 ③そのまま掘進することにより連続した空洞が形成。裏込め注入の不完全により空洞を埋めきれない。 ④空洞が徐々に沈下し地表まで陥没。
新横浜トンネル地上陥没のメカニズム

①陥没発生地点では砂層が大きな破片の状態で掘削面に流れ込み、排泥管の詰まりが発生。
②これにより掘進停止や掘進速度低下が発生。砂層が水流に長時間曝されたような状態になり流動化。トンネルのサイズを上回る砂が掘削面から取り込まれた。
③この状態で掘進を続けたことによりトンネル上部に連続した空洞が形成された。また、裏込め注入※1は通常通りの量しか行わなかったため空洞が埋めきれなかった。
④時間をかけてトンネル上部の地盤が沈下し地表まで陥没

▼脚注
※1:シールドトンネルのセグメントはシールドマシンの鋼殻の内側で組み立てを行うため、マシンが抜けた後は地盤とセグメントの間に鋼殻の厚さの分だけ空洞ができる。(この空洞を「テールボイド」という。)空洞を放置するとトンネル変形や地表面の沈下などが起きる恐れがあるため、マシンが抜けると同時に空洞に凝固剤を注入する。この作業を裏込め注入という。


原因究明と並行してトンネルが掘削済みの環状2号線上では20m間隔でボーリング調査を行い、地盤に緩みが確認された個所では空洞を埋める注入が実施されました。これ以外の区間については地盤の構造が異なること、トンネル自体がより深い場所にあり陥没の危険性は低いと考えられていますが、鉄道・運輸機構では過去の記録について精査を続けており、不備がある場合はトンネル内から空洞の埋める注入を行うとしています。
 このように再発防止対策について確認が取れたことから、9月2日(水)より新横浜駅までの残る区間についての掘削を再開しています。

●新綱島駅(仮称)
新綱島駅の位置
新綱島駅の位置
※本図は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「年代別写真:2007年」に加筆したものである。


 新綱島駅(仮称)は、鶴見川を渡った直後、東急東横線綱島駅東側の住宅地内に設けられます。地下駅は4層構造で、当初ホームの形状は対向式2面2線で考えられていましたが、新綱島駅から日吉方面へ向かうトンネルが単線シールドトンネル2本に決定したことから、トンネル同士の間隔補確保する目的で島式ホーム1面2線に変更されています。
 なお、新綱島駅の駅名については今年8月10日(月)~9月6日(日)の期間、港北区在住・在職・在学者を対象に公募が実施されました。駅名の候補として自由記述に加え、「新綱島」、「東綱島」の選択肢が用意されました。正式駅名は2020年中に発表予定となっています。

新綱島駅の縦断面図。日吉寄りの35mは推進工法により非開削でホーム階を形成する。
新綱島駅の縦断面図。日吉寄りの35mは推進工法により非開削でホーム階を形成する。

 新綱島駅本体のトンネルは地上から掘り下げる開削工法を基本としていますが、日吉寄りの35mについては地上に低層のマンションが建っていることから、本体部分から推進工法※2でトンネル外枠となる角形の鋼管を並べて打ち込み、内部を掘り広げることで地下4階の線路・ホーム部分のみを掘削する方法が採用されています。
 駅の予定地は鶴見川の氾濫原であるため、地表から約40m(=トンネル底面相当)まで地下水を多量に含む非常に軟弱な粘土や砂が分布しています。このため、掘削に先立ちトンネル外側に鋼製の連続壁を打ち込むとともに、地下水の流入を防ぐため連続壁のさらに下に地盤改良により遮水層を形成しました。鋼製連続壁・遮水層を合わせたこれら土留め壁の深さは実に60mにも及びます。これら軟弱地盤対策には2年近くの時間を要し、相鉄・東急直通線の開業が延期される一因にもなりました。なお、土留め壁は強度が非常に高いことから、完成後は薄いコンクリートで覆ったうえでトンネル側壁にそのまま利用されます。

▼脚注
※2:先端に掘削機が付いた鋼管を後ろからジャッキなどを使って地中に押し込むことによりトンネルを形成する方法。通常は下水管など管径の小さいトンネルで用いられる。


CSM工法で鋼製連続壁を施工中。 新綱島駅の現在の状況。地下でトンネルの構築が進められているが、建屋があるため見えない。""
左(1):CSM工法で鋼製連続壁を施工中。2016年7月3日撮影
右(2):新綱島駅の現在の状況。地下でトンネルの構築が進められているが、建屋があるため見えない。2020年7月15日撮影


 このように難工事となった新綱島駅ですが、新横浜トンネルのような事故などは発生しておらず、現在は地下4階までトンネルがほぼ完成しています。現在は地上出入口となる分岐トンネルや換気口の仕上げなどが進められていますが、地上部分は機材を収めた建屋などがあるため内部の状況は確認できません。

綱島街道沿いでは建物が取り壊され拡幅用地の確保が進む。 新綱島駅前地区市街地再開発事業のタワマン建築計画のお知らせ。
左(1):綱島街道沿いでは建物が取り壊され拡幅用地の確保が進む。
右(2):新綱島駅前地区市街地再開発事業のタワマン建築計画のお知らせ。2020年7月15日撮影


 新綱島駅の新設に合わせて、駅の地上を通る綱島街道(神奈川県道2号東京丸子横浜線)の拡幅ならびに東横線綱島駅東口を含めた再開発が進められています。(事業名称は「新綱島駅周辺地区土地区画整理事業」「新綱島駅前地区市街地再開発事業」「綱島駅東口駅前地区市街地再開発事業」)綱島街道沿いでは古いビルや住宅が次々と取り壊されており、跡地では2023年に地上29階建てのタワーマンションが完成する予定となっています。
 なお、綱島街道沿いにあった銭湯「東京園」については引き続き跡地に綱島トンネル(次回記事で解説)の設備建屋が置かれており、新たな建物の工事が始まる兆しはありません。昨年6月に改訂された地区計画では東京園だった土地の種別が全面的に商業用地に変更されるとともに容積率も大幅に緩和されています。今後の利用動向に注目してまいります。

 このように新横浜~新綱島間は相鉄・東急直通線の中でも特に地盤条件が悪く、工事に苦戦することとなりました。新綱島駅から先は東急東横線の高架下を通り日吉駅に至ります。次回はまた違う意味で難工事となった新綱島~日吉間の状況をお届けします。

▼関連記事(相鉄・東急新横浜線に関する記事のみ)
路線の概要 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(1)(2011年10月3日作成)
現在の工事状況 - 相鉄・JR直通線&相鉄・東急直通線新設工事2011(2)(2011年10月14日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2013年9月・2014年4月取材)(2014年5月13日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材①羽沢~新横浜)(2016年9月7日作成)
相鉄・東急直通線建設工事(2016年取材②新綱島~日吉)(2016年9月10日作成)

▼参考
都心とつながる(都心直通プロジェクト)|未来への取り組み|相鉄グループ
→関連ニュースリリースもここから参照
都市鉄道利便増進事業 相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線
重要構造物と交差・近接する複線断面泥水式シールド-相鉄・東急直通線、新横浜トンネル- 土木施工2019年11月号 77~80ページ
都市部における鋼製地中連続壁の施工-相鉄・東急直通線新綱島駅(仮称)- 土木施工2019年11月号 81~84ページ
角形エレメント推進工法による駅部大断面トンネルの施工-相鉄・東急直通線、綱島トンネル- 土木施工2019年11月号 85~88ページ
神奈川東部方面線 | 建設中のプロジェクト | JRTT 鉄道・運輸機構
→ページ下部に新横浜トンネル陥没事故に関する検討委員会資料
綱島駅周辺地区 - 横浜市 土地区画整理事業等(地区別) このエントリーをはてなブックマークに追加
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